旭屋本舗
ようこそいらっしゃいませ。
腐向けサイトですご理解のある方のみどうぞ。
始めての方はカテゴリー【What】をお読みください。
暗い夜空の中ユーリ一行は野宿の準備をしていた。
最初の見張りはルークに決まりそれ以外のメンバーである
カロル、リタ、エステルそしてユーリはそれぞれ眠りにつこうとしていたが
ルークが火の横で日記を書いていることに気が付いた。
ルークと旅を続けて数日経っているユーリとエステルには
普通の光景だったが、先日仲間になったカロルにはそれが珍しく、
ルークの傍へと近づいていった。
「ルーク…何してるの?」
「ん?日記書いてるんだよ…今日リタと出会ったこととか…でかい魔物とか…」
「案外アンタまめなのね…」
リタが少し驚いた声で話しに混ざるとカロルが目を光らせながらルークの袖を引っ張った。
「じゃぁ、じゃぁ僕のことかっこよく書いてよビックベアを倒した時とかのこととかさぁ~」
「えー…日記に嘘書いていいのか?」
カロルのお願いに苦笑いをしながら筆を止めたルークは
頭を書きながら悩み始めた…こんなお願いは初めてのことだから仕方がないだろう…
「だってさぁ~作者の都合で僕とリタの登場シーンはカットされてるし…
それくらいカッコよく書いても罰は当たらないよ!!」
「だったらミュウもカッコよく書いてほしいですの!!」
「は、はぁ!?」
カロルとミュウからおねだり攻撃をされ困り果てたルークは、
傍に居たユーリに助けを求めた。
「ユーリ~…なんとかしてくれよぉ~…」
「はぁ…しょうがねぇな…おーい、カロル先生。かっこよく書かれるには
普段からかっこいい姿でいなきゃダメだろ?カロル先生にはその要素あるのか?」
こう言えば普段自信がないカロルのことだから引き下がるだろうと思っていたが、
何故かカロルは引き下がらず自信満々にユーリに答えた。
「あるよ!!ビックベアの時だけは!!」
「………あっそ…悪い。諦めろルーク」
「えぇ!!??」
唯一の救いに見放されルークはカロルとミュウからのおねだり攻撃を食らい続けた…
リタが切れてタイダルウェーブを発動するまで。
そんな漫才を横目に仲間達に囲まれて困っているルークを
見るのもどこか楽しいと思えてきたユーリが居た。
その思う心の名前をユーリはまだ知らずに…
朱の明星~誘拐~
ハルルの街を目指しているユーリ達はようやく
遠くの方にハルルの木を確認できるところまで来ていた。
「相変わらず綺麗だな…こんな遠くからでもそう思えるんだし」
ルークは遠くにあるハルルの木を見て心が緩んだ。
この綺麗な花をティア達にも見せてあげたい…
そう思っていたがここがどこかも解らない…
ローレライもあれから一度も姿を見せないので少し困っていた。
「ご主人様…大丈夫ですの?」
「怪我でもしたならエステルに見て貰えよ」
心配そうに肩に乗っていたミュウと傍にいたユーリが同時に話しかけてきた。
自分の顔がそれほど暗くなっていたのかと思い慌ててルークは笑顔を見せた。
「だ、大丈夫だって。ほら、早くハルルの街へ行こうぜ。
こんな良い天気なんだから花見とかしたらすっげー綺麗…ん?空が急に…」
空を見上げれば一面に広がる蒼い景色…
しかし、何故かルークの周りだけ徐々に暗くなり始めた。
不思議に思い空を見上げると何かがルークに向かって落ちてくるのがわかった。
最初は小さい点だったが…よくよく見ればつい最近までよく見かけていたものだ。
黄色くて大きな物体…可愛げのないその顔…そう…それは…
「え?あ…あれは………………………………と…と…
トクナガあああああああああああああ!!!???げふっ!!!!!!!!!!!」
そう、それはアニスが何時も背中からぶらさげていた人情トクナガ(戦闘サイズ)だった。
何故かルークめがけて落ちてきてルークの真上に落っこちた。
まさかトクナガが落ちてくるとは思っていなかったルークは
防御もできずに一瞬にして体力が0になり戦闘不能状態にまで落ちた。
ちなみに肩に乗っていたミュウは落ちてきた衝撃で飛ばされ気絶していたがラピードに保護された。
「きゃぁ!!る、ルーク大丈夫ですか!?」
「お、おい!!大丈夫か!?一体何なんだこの人形は!!!」
いきなり可愛げのない人形が落ちてきて驚いたところに後から気配を感じて慌ててユーリは振り向き
そこにいた人物達に言葉を失った。
「な、何なんだお前らは…」
「ん?私達ですか?私達は………正義の使者アビスグリーンです」
「同じくアビスピンク♪」
「えー…あー…お、同じく…アビスオレンジ…ってこの格好で来る意味ないんじゃないのか!?」
そこに居た3人は全員似たようなスーツに身を包み顔が解らないように全体が隠れる仮面をしていた。
グリーンとピンクは何故かノリノリだが…オレンジだけは恥ずかしそうにしている…
きっとオレンジだけが常識人なのだろう。
「うわぁ~戦隊ヒーローって初めてみたかっこいい!!」
「あれはカッコイイのです?」
「そんなわけないでしょ!!」
ヒーローものに憧れる年代なのかカロルだけ目を輝かせていた。
けどぶっちゃけ正義と名乗っているが怪しいものは怪しい…
げんにラピードが警戒しまくって唸っている。
「その正義の使者が何の用だ?ってかこの不細工な人形お前らのか?」
「ひっどーい!!トクナガは不細工じゃないですぅ~ちょー可愛いじゃん!!」
「そ、そうなのか…?」
「いやぁ~…年寄りには解らない感性ですからねぇ~」
このトクナガという人形はピンクの持ち物らしいが…ユーリには可愛いとは思えなかった。
むしろこの不細工な人形の下で目を回して気絶しているルークの方が可愛いと思えた…
本人は気が付いてないけど…末期ですね(真顔
「正義の使者って言ってるわりには…あくどいことするんだな…」
「そんな…私達はただルークを誘かi…じゃなくて、お借りしに来たんですよ。
ただ普通に貸して下さいって言っても面白くないので強硬手段ですが」
「ちょ、旦那!!!面白くないって理由でルークを傷つけるのか!?」
グリーンの言葉を聞いたオレンジが慌てて反論を言いだした。
やはりこの3人の中でオレンジだけは常識人なのだろう…この作戦に参加している時点で
常識人と言っていいのかは不明だが。
しかし、この正義の使者達とルークは顔見知りなのだろうか…
ルークに問い詰めたいがあいにくまだ戦闘不能状態で問い詰めることもできない。
引っ張り出そうとエステルが思考錯誤をしているが人形が重くて引き出せないらしい。
「お前ら…すぐに謝罪して俺に殴られるのがいいか、殴られてから謝罪するのがいいかどっちがいい?」
「おやおや…短気なお方ですね。そんなに短気だとどっかのオールバックみたいに将来ハゲ予備軍になりますよ」
「いやいや、そのネタ身内にしか通じないからな。」
どうやら謝罪するつもりがないらしいのでユーリはカタナを抜いて戦闘態勢に入ったが、
ユーリの背後が急に暗くなり慌てて後を振り返るとさっきまでルークを潰していたトクナガが急に起き上がり、
ルークを抱えてアビスピンクの傍へと移動していった。
「ちょっと!!その人形動けるの!!一体どういう仕組み!?」
動けるとは思っていなかったのかリタの研究心に火が付き目を輝かせ始めた。
けど、今はそれどころではない…ルークがさらわれかけようとしているのだ…
ユーリは誘拐犯(予備軍)を睨みつけるとグリーンが何やらじっとこちらを見ていることに気が付いた。
「グリーンって言ったか?お前俺の顔に何かついているのか?」
「いえ…貴方もしかしてルークのこと…」
「……?ルークが何なんだ?」
グリーンが何を言いたいのか解らず首を傾げるユーリだった。
そんなユーリの姿が面白いのかグリーンは小さく笑うと(仮面で隠れて解らないが雰囲気的に)
トクナガの上に乗り手を上げた。
よく見ればいつの間にかピンクもトクナガの上に乗っている。
「それは私達はそろそろ時間ですのでこれで失礼します。
ルークは少しの間お借りしますね…返してほしければハルルの街までお越しください」
「大佐がその台詞言うとすっごく悪い人に見えますよ~」
「おやおや心外ですねぇ…こんなに良い人なのに」
「どこがだ」
オレンジのツッコミにユーリ達も頷いた。
どう見てもグリーンが首謀者にしか見えない…良い人には絶対見えない…アビスマンスーツを着ていなくても。
「でわ…オレンジ足止めは頼みましたよ」
「え?えぇ!!??そんな話し聞いてないぞ!!!」
「はい、今決めましたから」
「じゃぁねぇ~♪」
そういうとトクナガは走りだし(短足なのでそんなには早くはないが)ハルルの街へと向かっていった。
そしてオレンジだけが残されため息をつくと後から嫌な殺気を感じたので、
恐る恐る振り返るとユーリ達がオレンジを睨みつけて戦闘態勢に入っていた。
「いや…待て…話せばわかる…俺達にも事情があってだな…」
「問答無用です」
「だな…とりあえずルークの居場所吐いて貰おうか!!!」
「そ、それはハルルの宿屋に…ってちょっとまてええええええええええええ!!!」
ユーリ達は一斉にオレンジに切りかかりオレンジは必死になって逃げ始め
ミュウを介抱していたラピードは犬らしくないため息をついてその戦いが終わるのを眺めていた。
アッシュは鏡に映る自分の姿を睨みつけていた。
正確に言えば主に頭皮…オールバックをしている前髪の生え際を…。
「…………やはりあの眼鏡野郎の言う通り若い頃からオールバックをしていたら
若くして………薄くなるのか…?いや…俺のはまだまだ大丈夫だ…けど最近……」
一般人がその姿を見れば腰を抜かすような睨みだったが…どことなく寂しそうな空気も漂わせていた。
そこへドアをノックする音が聞こえてナタリアが部屋へと入って来た。
「あら?アッシュどうかされましたの?おでこなんか押さえて…」
「い、いや…何でもない…大丈夫…俺は大丈夫だ…まだ大丈夫…」
「???」
アッシュは自分に言い聞かせるようにぶつぶつと呟くとナタリアと一緒に宿屋の部屋を出た。
最初の見張りはルークに決まりそれ以外のメンバーである
カロル、リタ、エステルそしてユーリはそれぞれ眠りにつこうとしていたが
ルークが火の横で日記を書いていることに気が付いた。
ルークと旅を続けて数日経っているユーリとエステルには
普通の光景だったが、先日仲間になったカロルにはそれが珍しく、
ルークの傍へと近づいていった。
「ルーク…何してるの?」
「ん?日記書いてるんだよ…今日リタと出会ったこととか…でかい魔物とか…」
「案外アンタまめなのね…」
リタが少し驚いた声で話しに混ざるとカロルが目を光らせながらルークの袖を引っ張った。
「じゃぁ、じゃぁ僕のことかっこよく書いてよビックベアを倒した時とかのこととかさぁ~」
「えー…日記に嘘書いていいのか?」
カロルのお願いに苦笑いをしながら筆を止めたルークは
頭を書きながら悩み始めた…こんなお願いは初めてのことだから仕方がないだろう…
「だってさぁ~作者の都合で僕とリタの登場シーンはカットされてるし…
それくらいカッコよく書いても罰は当たらないよ!!」
「だったらミュウもカッコよく書いてほしいですの!!」
「は、はぁ!?」
カロルとミュウからおねだり攻撃をされ困り果てたルークは、
傍に居たユーリに助けを求めた。
「ユーリ~…なんとかしてくれよぉ~…」
「はぁ…しょうがねぇな…おーい、カロル先生。かっこよく書かれるには
普段からかっこいい姿でいなきゃダメだろ?カロル先生にはその要素あるのか?」
こう言えば普段自信がないカロルのことだから引き下がるだろうと思っていたが、
何故かカロルは引き下がらず自信満々にユーリに答えた。
「あるよ!!ビックベアの時だけは!!」
「………あっそ…悪い。諦めろルーク」
「えぇ!!??」
唯一の救いに見放されルークはカロルとミュウからのおねだり攻撃を食らい続けた…
リタが切れてタイダルウェーブを発動するまで。
そんな漫才を横目に仲間達に囲まれて困っているルークを
見るのもどこか楽しいと思えてきたユーリが居た。
その思う心の名前をユーリはまだ知らずに…
朱の明星~誘拐~
ハルルの街を目指しているユーリ達はようやく
遠くの方にハルルの木を確認できるところまで来ていた。
「相変わらず綺麗だな…こんな遠くからでもそう思えるんだし」
ルークは遠くにあるハルルの木を見て心が緩んだ。
この綺麗な花をティア達にも見せてあげたい…
そう思っていたがここがどこかも解らない…
ローレライもあれから一度も姿を見せないので少し困っていた。
「ご主人様…大丈夫ですの?」
「怪我でもしたならエステルに見て貰えよ」
心配そうに肩に乗っていたミュウと傍にいたユーリが同時に話しかけてきた。
自分の顔がそれほど暗くなっていたのかと思い慌ててルークは笑顔を見せた。
「だ、大丈夫だって。ほら、早くハルルの街へ行こうぜ。
こんな良い天気なんだから花見とかしたらすっげー綺麗…ん?空が急に…」
空を見上げれば一面に広がる蒼い景色…
しかし、何故かルークの周りだけ徐々に暗くなり始めた。
不思議に思い空を見上げると何かがルークに向かって落ちてくるのがわかった。
最初は小さい点だったが…よくよく見ればつい最近までよく見かけていたものだ。
黄色くて大きな物体…可愛げのないその顔…そう…それは…
「え?あ…あれは………………………………と…と…
トクナガあああああああああああああ!!!???げふっ!!!!!!!!!!!」
そう、それはアニスが何時も背中からぶらさげていた人情トクナガ(戦闘サイズ)だった。
何故かルークめがけて落ちてきてルークの真上に落っこちた。
まさかトクナガが落ちてくるとは思っていなかったルークは
防御もできずに一瞬にして体力が0になり戦闘不能状態にまで落ちた。
ちなみに肩に乗っていたミュウは落ちてきた衝撃で飛ばされ気絶していたがラピードに保護された。
「きゃぁ!!る、ルーク大丈夫ですか!?」
「お、おい!!大丈夫か!?一体何なんだこの人形は!!!」
いきなり可愛げのない人形が落ちてきて驚いたところに後から気配を感じて慌ててユーリは振り向き
そこにいた人物達に言葉を失った。
「な、何なんだお前らは…」
「ん?私達ですか?私達は………正義の使者アビスグリーンです」
「同じくアビスピンク♪」
「えー…あー…お、同じく…アビスオレンジ…ってこの格好で来る意味ないんじゃないのか!?」
そこに居た3人は全員似たようなスーツに身を包み顔が解らないように全体が隠れる仮面をしていた。
グリーンとピンクは何故かノリノリだが…オレンジだけは恥ずかしそうにしている…
きっとオレンジだけが常識人なのだろう。
「うわぁ~戦隊ヒーローって初めてみたかっこいい!!」
「あれはカッコイイのです?」
「そんなわけないでしょ!!」
ヒーローものに憧れる年代なのかカロルだけ目を輝かせていた。
けどぶっちゃけ正義と名乗っているが怪しいものは怪しい…
げんにラピードが警戒しまくって唸っている。
「その正義の使者が何の用だ?ってかこの不細工な人形お前らのか?」
「ひっどーい!!トクナガは不細工じゃないですぅ~ちょー可愛いじゃん!!」
「そ、そうなのか…?」
「いやぁ~…年寄りには解らない感性ですからねぇ~」
このトクナガという人形はピンクの持ち物らしいが…ユーリには可愛いとは思えなかった。
むしろこの不細工な人形の下で目を回して気絶しているルークの方が可愛いと思えた…
本人は気が付いてないけど…末期ですね(真顔
「正義の使者って言ってるわりには…あくどいことするんだな…」
「そんな…私達はただルークを誘かi…じゃなくて、お借りしに来たんですよ。
ただ普通に貸して下さいって言っても面白くないので強硬手段ですが」
「ちょ、旦那!!!面白くないって理由でルークを傷つけるのか!?」
グリーンの言葉を聞いたオレンジが慌てて反論を言いだした。
やはりこの3人の中でオレンジだけは常識人なのだろう…この作戦に参加している時点で
常識人と言っていいのかは不明だが。
しかし、この正義の使者達とルークは顔見知りなのだろうか…
ルークに問い詰めたいがあいにくまだ戦闘不能状態で問い詰めることもできない。
引っ張り出そうとエステルが思考錯誤をしているが人形が重くて引き出せないらしい。
「お前ら…すぐに謝罪して俺に殴られるのがいいか、殴られてから謝罪するのがいいかどっちがいい?」
「おやおや…短気なお方ですね。そんなに短気だとどっかのオールバックみたいに将来ハゲ予備軍になりますよ」
「いやいや、そのネタ身内にしか通じないからな。」
どうやら謝罪するつもりがないらしいのでユーリはカタナを抜いて戦闘態勢に入ったが、
ユーリの背後が急に暗くなり慌てて後を振り返るとさっきまでルークを潰していたトクナガが急に起き上がり、
ルークを抱えてアビスピンクの傍へと移動していった。
「ちょっと!!その人形動けるの!!一体どういう仕組み!?」
動けるとは思っていなかったのかリタの研究心に火が付き目を輝かせ始めた。
けど、今はそれどころではない…ルークがさらわれかけようとしているのだ…
ユーリは誘拐犯(予備軍)を睨みつけるとグリーンが何やらじっとこちらを見ていることに気が付いた。
「グリーンって言ったか?お前俺の顔に何かついているのか?」
「いえ…貴方もしかしてルークのこと…」
「……?ルークが何なんだ?」
グリーンが何を言いたいのか解らず首を傾げるユーリだった。
そんなユーリの姿が面白いのかグリーンは小さく笑うと(仮面で隠れて解らないが雰囲気的に)
トクナガの上に乗り手を上げた。
よく見ればいつの間にかピンクもトクナガの上に乗っている。
「それは私達はそろそろ時間ですのでこれで失礼します。
ルークは少しの間お借りしますね…返してほしければハルルの街までお越しください」
「大佐がその台詞言うとすっごく悪い人に見えますよ~」
「おやおや心外ですねぇ…こんなに良い人なのに」
「どこがだ」
オレンジのツッコミにユーリ達も頷いた。
どう見てもグリーンが首謀者にしか見えない…良い人には絶対見えない…アビスマンスーツを着ていなくても。
「でわ…オレンジ足止めは頼みましたよ」
「え?えぇ!!??そんな話し聞いてないぞ!!!」
「はい、今決めましたから」
「じゃぁねぇ~♪」
そういうとトクナガは走りだし(短足なのでそんなには早くはないが)ハルルの街へと向かっていった。
そしてオレンジだけが残されため息をつくと後から嫌な殺気を感じたので、
恐る恐る振り返るとユーリ達がオレンジを睨みつけて戦闘態勢に入っていた。
「いや…待て…話せばわかる…俺達にも事情があってだな…」
「問答無用です」
「だな…とりあえずルークの居場所吐いて貰おうか!!!」
「そ、それはハルルの宿屋に…ってちょっとまてええええええええええええ!!!」
ユーリ達は一斉にオレンジに切りかかりオレンジは必死になって逃げ始め
ミュウを介抱していたラピードは犬らしくないため息をついてその戦いが終わるのを眺めていた。
アッシュは鏡に映る自分の姿を睨みつけていた。
正確に言えば主に頭皮…オールバックをしている前髪の生え際を…。
「…………やはりあの眼鏡野郎の言う通り若い頃からオールバックをしていたら
若くして………薄くなるのか…?いや…俺のはまだまだ大丈夫だ…けど最近……」
一般人がその姿を見れば腰を抜かすような睨みだったが…どことなく寂しそうな空気も漂わせていた。
そこへドアをノックする音が聞こえてナタリアが部屋へと入って来た。
「あら?アッシュどうかされましたの?おでこなんか押さえて…」
「い、いや…何でもない…大丈夫…俺は大丈夫だ…まだ大丈夫…」
「???」
アッシュは自分に言い聞かせるようにぶつぶつと呟くとナタリアと一緒に宿屋の部屋を出た。
ユーリ、エステルそしてルーク(と2匹の動物)が帝都を出て最初に辿りついたのは
デイドン砦
少し準備の為に立ち寄った店で必要なものを見ていると
さっきまで商品をみていたルークがユーリの傍に近づいてきた。
「ゆ~り~♪」
「ん?」
ルークの手には真新しい本…無駄に豪華な本があり、
何故か目を輝かせながらユーリを見つめてくる。
そして手に持っている本を持ちながら両手を合わせて首をかしげ
満面の笑顔をユーリに向けた。
「世界でいちばーんカッコイイユーリ様っ♪
ルークのお願いき・い・て♪」
「……………は?」
いきなりのルークの発言にユーリは固まってしまった…
固まってしまったユーリを見てルークはあれ?っと呟き顔を元に戻した。
「おかしいなぁ…こうやれば大抵の男はお願い聞いてくれるって
アニスが言ってたのに…ユーリって本当は女なのか?」
「………誰が女だ誰が…そもそもアニスって誰だ…お前なんつーもん
教わってるんだ…………お願いって何だよ…」
硬直していたユーリが少し歯切れを悪くしながらもルークのお願いを一応聞いてみた、
手にしているものを見たら予想はだいたいついていたが…念のため。
「ん?アニスは俺の友達。これ、この本買って♪」
「……ダ、ダメだ。資金がねぇのにそんな無駄遣いできるか…だいたい何に使うんだ?
本で魔物を殴るのか?」
「いやぁ…日記つけたくて…」
「日記?」
ルークは少し恥ずかしそうに下を向き少し寂しそうな表情で口を動かした。
「俺ちょっと事情があって…昔医者に日記を書くように言われたんだ…
本当はもう日記つけなくてもいいんだけど…その癖が今もついて…だから…」
医者に日記を強要される原因…どんな病気かがユーリには想像がつかなかった。
その部分を言わないということはルークにとってあまり聞かれたくないこと…
それを無理に聞きだすのはユーリの美学に反していたので聞かないことにした。
「……わかったよ…けど、それはダメだ。店のやつに頼んで本貰ってやるから、
今はエステルと一緒に待ってろ」
下を向いていたルークはユーリの言葉に目を輝かせて喜びを表した。
そして持っていた本を元の場所に戻すとエステルの待つところへ走っていく。
ルークが走って見えなくなったのを確認するとユーリはその場に倒れこんだ。
「な、なな…何なんだ今のあいつ…めちゃくちゃかわっ…いや、あいつは男だ…
男に何を言い出すんだ俺はっ…俺はそんな趣味ねぇ…」
顔を真っ赤にさせたユーリがぶつぶつと呟きながら自分を落ち着かせている様子は
普段の彼からは想像ができない…案外ルークのおねだりは効果があったようだが…
ルークがその事実知をることはこの先なかった…
朱の明星~
「ユーリ、ルーク!!あの門をくぐればハルルの街はすぐそこです!!」
「おぉ~!!ほら、ユーリ!!早く早く!!」
「へいへい…」
外に出るのが初めてなのか、とても嬉しそうにはしゃぐエステル…
そして、自称21歳…けどその行動からどうしても歳下にしか見えないルーク…
この二人を連れて旅をしていると何故か保護者の気分になってしまうユーリだった。
あながち間違えてはない。
この旅が終わるころ…自分は【立派な保育士】…という称号を得ていないか
心配でたまらなかった。
そんな無駄な悩みを抱えながら歩いて行くユーリを余所に、
エステルとルークは目を輝かせながら門へと走っていく…が…
カンカンカンカン!!!!
「魔物だ!!!魔物が襲ってくるぞ!!!」
魔物が砦をおそってきているらしく、外に居た人々が慌てて門の中へと
逃げ込んで行く…しかし、逃げ遅れた人々が門の外へと取り残されかけていた…
それを見たルークとエステルは一目散にその人達のところへとかけていった…
ユーリが止めるのも聞かずに。
「エステル!!怪我をして歩けない人の手当を!!」
「はい!!」
エステルは足を怪我して動けなくなっていた人の傷を癒し始める。
ルークはその間に時間稼ぎをするため魔物達に剣を向けた。
「俺が相手だ!!!」
魔物の一匹がルークに襲いかかる…
すばやく魔物の攻撃を防御し、一度攻撃の手を休めた魔物に切りかかった。
「これでどうだ!!閃光墜刃牙!!!」
敵を敵を回転の衝撃で斬り上げ、留めの一撃として鋭い突きを付きつける…
魔物は倒れてしまい動かなくなる…次の魔物を相手にしようとしたが…
「あ…え?ちょ…剣が折れたっ!!!な、何でだよ!!!」
魔物を倒した瞬間何故か剣が見事に折れてしまった…
たしかにこの剣は下町を出るときにもらったお古だが…
そんな簡単に折れるような剣ではなかったはずだ…
だが現実は現実…ルークはあとでユーリに武器を買ってもらうことにした。
武器を再び失くしたルークは辺りに武器になるものを探し始めた。
けど今度はミュウは傍には居ず武器(?)になるものは
何一つない…ルークは覚悟を決めて襲ってくる別の魔物を睨みつけた。
「うおおおおおおおおおっ!!!これでもくらえええええええええええ!!!!」
ルークの秘奥義【レディアント・ハウル】が発動した。
まともに食らった数匹は跡かたもなく消えていた。
だが、襲いかかる魔物はまだまだいる…剣のないルークにこれ以上戦うことはできなかった。
「おい、ルーク!!走るぞ!!」
後からユーリの声が聞こえた。
振り向くとユーリは小さな子供を抱えて門へと走り出していた。
「やべっ…!!門が閉まるっ!!!」
ルークは全速力で門へと走りだす…しかし、門は閉まる速さを変えずに進んでいく…
そして…門が閉まった。
恐ろして見ていられなかったエステルは両手で顔を隠していた。
恐る恐る手を離し見てみると…そこにはルークとユーリそして子供の姿があった。
「よかった…」
見ていた周りの人々から歓声の声があふれだす。
目立たないようにしていた3人(と2匹)だったが、めちゃくちゃ目立っている…
「平野の主が過ぎるまでは…ここは通せません」
声の方を見ると兵士に突っかかっている二人組の人間が居た。
武器を所持しているので戦えるのだろう…殺気も沸いている。
「平野の主?なるほど…当分ここを通ることはできないことか…」
「えっ!?そんな…ここを通らないとハルルへはいけないのに…
私他に道がないか聞いてきますっ…!!!」
「お、俺も聞いてくる!!」
エステルとルークは別々の方角へ行き人に他の道がないか尋ね始めた。
「ったく…あいつら…行動がそっくりだな…」
「ふふっ…お急ぎのようね…」
ユーリに声をかけてきたのは眼鏡をかけた女性だった…
ルークはいろんな人にハルルへの道を尋ねたが、他に道を知る人はいなかった…
エステルの話を聞けばフレンが危ない…ということだ…
人の命がかかっている…急がなくてはいけないのに…ルークの中には焦る気持ちがいっぱいだ。
ふと、ユーリを見てみると何やら見知らぬ女性と話をしている。
「へ~…眼鏡の女性ってネフリーさんみたいだな…」
「ご主人様…寂しいですの?みなさんに会いたいですの?」
今まで何処にいたのかミュウが道具袋の中から顔を出して心配そうに見つめてきた。
ルークは小さく笑い心配性のミュウの頭を撫でる。
「寂しくないって言ったらウソだけど…今はこんな旅ができて嬉しいよ…」
ユーリのことは少し気になったが、再び情報収集へ戻ろうとした…が。
振り向いた時誰かにぶつかってしまった。
「いててて…あ、すみません…」
見上げるとぶつかってきたのは先ほど兵士相手に突っかかっていた二人だ。
「お前…なかなか腕があるな…先ほどの技見事だったぞ…」
「え?あ…はぁ…けど俺よりアッシュのg…「当たり前ですの!!ご主人さまは強いんですの!!」
再び話の間に入ってきたミュウの耳をひっぱりお仕置きを開始する。
初対面である人間の前でやることではないだろうに…
「どうだ?我達のギルド…【魔狩りの剣】に入らないか?」
「え?ぎ、ギルド…?」
「お前ならすぐ幹部にまでいけるぜ~」
「へ?え?か、幹部????」
この二人が何を話しているのか全くわからなかった…
そもそも【ギルド】の意味がわからない。
オールドラントにはギルドというものが存在していなかったのだから仕方がない。
ルークが二人の勧誘に困り果てていると後から手が伸びてきてルークを引っ張った。
「悪いけど…こいつ俺のツレなんで…変な勧誘は止めて貰えませんかね?」
「え?えぇ!?ゆ、ユーリ!?」
ルークを引っ張ったのはさっきまで別のところにいたユーリだった。
しかも何故か少し不機嫌…な気がする。
「な…テメェ…」
「よせ…少年…考えておいてくれ…今度会った時返事を聞かせてもらう…」
そういうと二人はどこかへと姿を消していった…
二人がどこかへいくとの見送るとユーリはルークの手首を掴み歩き出した。
行き先は多分エステルの方だ…ユーリの目線の先にはエステルがいたからだ。
「ゆ、ユーリ何怒ってるんだ?」
「別に?怒ってなんかねぇぞ…」
嘘だ…と小さく呟くがユーリには聞こえてなかったのか何も返事が帰ってこない…
いや、聞こえていたがあえて返事をしなかっただけかもしれない。
「あいつら…何だったんだ?あ、あれがアニスの言ってたナンパってやつか?」
「そのアニスってやつが何を教えたかはしらねぇけど…そんな感じだ(多分」
「あれ?けど、普通ナンパは男が女にするんだよな?え?もしかして俺女と間違えられたのか?」
「…………そうなんじゃねぇのか?(棒読み」
何故か少し冷たい態度を取るユーリはそのままズカズカと歩いていき、エステルの前に辿りついた。
どうやらユーリが抜け道を見つけたらしく、そのままその抜け道へと行くことになったが、
エステルの目線がルークとユーリの一部をじっと見つめている。
エステルの目線を追ってみるとそこにはルークの手首を掴んだユーリの手だった。
「ち、違うぞエステル!!これはこいつがさっき変な男に絡まれてて…その時助けて…」
「え?、ルーク…ナンパというのにあったのです?大丈夫でした?」
「あ?いや、まて…ナンパじゃなくて勧誘だって…」
「やっぱりあれが噂のナンパなのか…エステル…俺女に見える?」
「おーい、お前もナンパって確定するなー。その腹筋みて女に間違えられるわけねぇだろ」
「いいえ。ルークは立派な男性です…でも…ルークは可愛いです。」
「えぇ!?」
「はぁ…もういい…お前ら好きにしろ…」
ツッコミどころが多すぎて対処しきれなくなったユーリさん…諦めたようです。
しかし、ここで諦めずにルーク達の誤解を解けばのちのち面倒なことにはならなかったと後で後悔する…。
「お、俺…男らしくなる!!!二度とナンパ何かには合わないように!!」
「ルークがんばです!!」
「ご主人さまファイトですの!!」
「おーい…お前ら…さっさといくぞ…」
この二人のボケボケ会話についていくのが面倒になったユーリは先を急ごうと二人を催促した。
しかし、ルークはすごく重要なことを思い出した。
「あ、ユーリ…ごめん…お願いがるんだけど…」
「…今度は何だ…?」
「剣折れたから…買って♪」
折れた剣を見せて可愛らしく首を横に折っておねだりするが、
いろいろと溜まっていたユーリに蒼破刃という名のお仕置きをされた。
ここはクオイの森…
入った者には呪いが降りかかるという…曰くつきの森。
ユーリは呪いなど信じてはいない…むしろ今目の前にいるこのボケボケコンビの相手をする方が
呪いより恐ろしいものだった。
「ざ、ザコガッ!!近寄ンジャネェ!!!」
「ご主人さまかっこいいですの♪」
「流石ルークです。魔物が一撃で倒れました♪」
「やっぱ男らしくするなら…アッシュのいう台詞だな♪」
「はぁ~……」
エステルに「可愛い」と言われたのが相当ショックだったのか、
男らしくなると宣言してからというもの戦闘後に誰かを真似した台詞を言うようになった。
ぶちゃけ言えば…似合っていない。
あんな目をキラキラ輝かせたヒヨコ頭が、あんなぶっきらぼうな台詞を言っても効果はない…
むしろ少年が大人に憧れるような感覚…背伸びをしているようにしか見えず男らしくない。
ちなみにエステルが魔物を倒す度に褒めているが…
それはルークがほとんどの魔物を一撃で倒しているからであって、
決して台詞がカッコイイという意味ではない。
だが、ルークは台詞がカッコイイと勘違いしているらしく…
ルークとエステルの間に正しい会話が成立していなかった。
こんな二人に挟まれ頭が痛くなるのは当たり前…
まともに会話できるのが現在ラピードのみだが…いくら相方といっても犬だ。
普通に会話できる人間がそろそろ欲しい時期にきていた。
余談だが、唯一の救いの星であるラピードはルークに少しずつ懐いてきている為
ラピードがあちら側へ行ってしまうのも時間の問題だ。
(ミュウとは会話が成立できるとは端から思っていない)
しかしそろそろあの片言の台詞も聞き飽きた為止めたいが
それを止めるには根本的な原因…先ほどのギルド勧誘をナンパと思いこんでしまった事件の誤解を
解かなければいけない…ぶっちゃけ言えばめんどくさい。
けど、あの台詞もやめてほしい…最初の頃の台詞の方がユーリ的には好みだ。
今夜あたりにでも誤解を解こうとこっそり決意していた。
「そういえば…先ほどからの台詞は誰かの真似です?」
エステルがやっと台詞にツッコミを入れた。
ユーリは心の中でそのまま【にあっていない】と言えと叫んだが…
願いは叶わずそのまま会話は進んでいく…
「あぁ…アッシュの台詞だよ」
「アッシュ…さん?」
ルークは何故か少し考え事をした後ゆっくりと話始めた…
「うん…もう一人の俺…一応表的な関係は双子の兄貴…だったかな?。
アッシュはすぐ怒って…言葉は悪いし…人の話は聞かないし、自分勝手だし…
けど、すっごく優しくて…頼りになって…カッコイイよ」
少し照れくさそうに笑いながらルークは語る…目を閉じればすぐに思い浮かぶ深紅の姿。
この場に居たら赤面しながら「屑がっ!!!」と言ってそうだが今は残念だから居ない…
代わりに今頃アッシュはくしゃみでもしているのはないだろうか。
「ルークはその方のことが大好きなんですね」
「ふぇ!?な、何でそうなるんだよ!!!」
「………」
エステルの言葉にルークの顔は髪と同じくらい真っ赤になる。
そんな顔のルークを見ながらユーリは少し面白くないような顔をし、
小さく笑いながらエステルは話の続きをはじめた。
「だって…ルークすごく優しそうな表情をしながら話するんですもの…
是非いつかお会いしたいです。」
「そんな顔してたかなぁ…?あぁ、今度紹介してやるよ!!他にもティアとかガイとか…
あとナタリアにアニスにジェイドもだろ…あ、あとフローリアンとか…ピオニー陛下もか?」
両手の指で紹介したい人達の名前を次々と上げていく…一体何人紹介するつもりなのだろう…
「ルークにはお友達がいっぱいですね…」
「エステルも友達だろ?会った時エステルのこともみんなに紹介するからな♪」
「わぁ、ありがとうございます♪」
エステルは嬉しそうにルークに笑いかけていると、
ラピードがルークの足元に寄っていき何かを訴えるように吠えた。
「わんわんっ!!」
「もちろんラピードのこともな!!あ、あとユーリも!!」
「俺はおまけかよ…」
「別におまけとかじゃねぇし…ユーリ今日機嫌悪くねぇ?」
と言ってもルークとユーリは出会って二日弱しか立っていないのでユーリという人物を
まだ掴めていなかった…
どんな人なのだろうと興味はあったが中々そこまで会話をできていないでいる。
「きっとユーリはルークがアッシュさんのお話を楽しそうにするから…嫉妬しているんです。」
「え?嫉妬?」
ルークがユーリの顔を見るとバツの悪そうな表情を少し見せた。
「………そんなんじゃねぇよ…ほら、行くぞ」
「はーい…ん?なぁ、ユーリ…あれ何だ?」
ルークが指を差した方には森には似合わない機械が置いてあった…
近づいて見てみると音機関ではない…下町でみた魔導器に似ていた。
「これ…魔導器ってやつ?」
「そうみたいだな…」
「でもどうしてこんなところに…」
エステルが魔導器に触った瞬間…魔導器から光が放たれた。
そしてエステルはその場に倒れこんだ…
「「エステル!!!」」
ユーリが近づいてエステルの様子を確認すると気絶しているだけのようだった。
とりあえずこの場に居ては危険だと判断し、少し離れた場所で休憩をとることにした。
エステルを寝かせ火を焚いてからしばらく経つがエステルが目覚める気配はない…
ルークはエステルの様子を心配そうに見つめながら昼間ユーリから貰った本に何かを書いていた。
「すぐに目覚めるから心配するな…それより日記を書いているのか?」
ルークの隣に移動したユーリはルークが書いていた日記を少し覗き見ると
ユーリの気配に気がついていなかったのかルークは慌てて日記を隠した。
「え?あ…ちょ…見るなよ!!!」
「………お前…その文字…」
「え?フォニック言語だけど…?」
聞いたことのない言語だった。
だが、ルークとは普通に会話ができる…今思えばルークは商品の文字が読めていないように思える。
出会った頃から変ったやつだと思っていたユーリだったが、
ルークという存在は何か自分達とは全く異なっている気がしてきた。
「そういえば…お前の故郷はどこなんだ?」
「ん?キムラスカ王国のバチカル通称光の都…だったかな?」
「……………。」
帝国以外の国の名前を聞くことが初めてだった。
もしかしたらルークは自分達では想像がつかないところから来たのではないか…
そう思えて仕方がなかった。
けど、ルークの様子からみてもしかしたらルーク自身もこの世界のことを
あまり理解できていないのではないかと思うところが見られた。
これ以上聞くのはまだ早いと判断したユーリはごまかすようにルークの頭を優しく撫でた。
「もし、立ち寄ることがあったら…道案内よろしくな」
「もちろん!!って、何子供扱いするんだよ!!俺は男らしくなるんだからな!!」
「……またそれか…」
ユーリはエステルが目覚めるまでの間に誤解を解こうと説明をしたが、
ルークから誤解を解けるまであと数日かかってしまった…
今後ユーリはルークに間違えたことを教えてはいけないと肝に銘じた。
「へ、へくしゅんっ…!!!!」
「まぁ、アッシュ…風邪ですの?」
ここはバチカルにあるファブレ家の庭…
そこにはかつてこの世界を救う為に旅をした仲間達が集まっていた。
そう、突如消えてしまったルークを探す為に集まったのだ。
ジェイドの見方からして音素乖離などを起こして消えてしまった…ではなかった為
一安心していたところだった。
もし、乖離で消えてしまっていたらずっとそばにいたミュウが知らせるはずだが、
そのミュウすら消えてしまっているので二人は一緒にどこかへ消えたと考えるのが正しい。
「いや…特に熱などはない…ナタリア心配するな」
「…もしかしたら誰かがアッシュのことを噂してるだけかもな」
ガイがナタリアを安心させるために言葉をかけるが…ナタリアにはその言葉は届いていないようだ。
「いいえ、風邪はひき始めが肝心といいます!!今すぐ横になりなさい!!」
「いや…別に風邪ではない…それにあの屑をさがさないと…」
「ダメです!!あなたが倒れてしまってはルークが戻ってきた時に悲しみますわ!!
そうです…私が手料理を作って看病してさしあげますわ」
「……は?」
ナタリアからでた提案にアッシュは固まった。
そう…ナタリアの手料理は数年経った今でも相変わらず生物兵器だからだ。
先日ナタリアの手料理をルークと一緒に食べ(食べさせられ)、数日寝込んだことを思い出し
なんとかして手料理から逃れようとするが…
「うわぁ~ナタリアやっさしぃ~。それだとアッシュの風邪もイチコロだね☆(生命的な意味含め」
「いやぁ~…若いというのはすばらしいですねぇ…うらやましい限りです」
悪の譜術使いと小悪魔に裏切られた…
二人の言葉にナタリアはますますやる気の瞳だ。
「てめぇらっ…心にもないこと言うんじゃ「さぁ、アッシュ。まずは部屋でゆっくり休みましょう♪」
前衛であるアッシュだったが、ナタリアに手を上げることなどできずずるずるとナタリアに引っ張られて行った。
ナタリアに引きずられている間何か二人に対してひどいことを言っていた気がするが…
聞こえなかったことにしておこう。
「た、大佐…アッシュを助けなくていいのですか?」
「ルークが居なくなってからほぼ寝ていないようですし…丁度いいんじゃないですか?」
「そんなこと言って…大佐はただ単に面白そうだったからでしょ~♪」
「おや、ばれてしまいましたか」
「旦那ぁ~…」
相変わらずのジェイドの発言に一同は呆れてしまった。
そしてナタリアの愛の籠った看病を受けたアッシュは
自分の噂をした屑に制裁を加えることを心に誓ったのだった…。
「だあああああああああーー!!!ひまだあああああ!!!!」
「うっせぇぞ、この屑があああああああ!!!!!(オーバートラスト)」
「え?ちょ、アッシュ…秘奥義は…遠慮したいなぁ♪」
「黙れ…人に公務押しつけて…何が暇だ!!!これでも食らいやがれ!!紋牙鳴衝斬!!!!」
「うわああああああああ!!!!!!!」
朱の明星~再旅~
「いてててっ…何もアッシュのやつ秘奥義なんて使わなくても…」
「ご主人様、大丈夫ですの?」
「あぁ…大丈夫だよ」
ファブレ家にある自室のベッドに沈み、先ほどアッシュに食らった傷を見る…
流石に手加減はしているのか痛みはあったが傷はそんなに深くはなかった。
そんなルークの姿を心配そうに見るミュウ…
1年だけルークの傍にいるはずだったが、ルークの傍が居心地が良かったのか
契約期間をすぎてもルークの傍から離れようとはしなかった。
ルークは退屈そうなため息をつき思いだす…世界を救ったあの旅を…
ローレライを解放して自分の身体は消えたはずだった。
けど、帰って来た…アッシュと一緒に…
時間はかかったけど、みんなの元に帰ってきた。
けど、そのあと待っていた生活は退屈な生活だ。
ルークとは対照的に仲間達は世界中で世界を良くしようと走りまわっている…
ナタリアとアッシュはキムラスカで…
ティアはユリアシティで…
アニスはローレライ教団…
ガイとジェイドはマルクト…
何もしていないのは自分だけだった…
いや、戻ってきた最初はアッシュと公務を手伝っていたが…
アッシュの仕事を増やしてばかりで…早い話しがアッシュの堪忍袋が切れた。
そりゃもう家が吹っ飛ぶのではないかというくらい切れられた…
レプリカ関係の公務の時はルークが居る方が話がすすむので連れていってもらえるが、
最近では全くその話も来ない。
これではまるで旅に出る前と一緒…
いや、一度外の味を知ってしまったためそれ以上の苦痛だった。
一人旅でもしようかと思ったが…両親、過保護な親友などなどに止められてしまった。
自慢ではないが結構レベルも高いのでそうそう危ない目には合わないはずだったが、
ガイ達が心配してるのはレベルではなく、ルークの性格だった。
どっかのオールバック同様…一度頭に血が上ると猪突猛進…チーグルもまっしぐらな性格…
困ってる人を見過ごせない甘い性格…
この性格を持って事件に巻き込まれないという人間の方がどうかしいる。
むしろ事件の方から寄ってきそうだった。
そんなこんなで一人旅は反対者が多く未だに実行できていない。
「はぁ…また旅がしてぇなぁ…」
「みゅぅ~…」
ルークが寂しい顔をするためかミュウまで釣られて悲しい顔をする。
そんなミュウの頭を優しくルークは撫でた…
「ご主人様、部屋に居るから剣を持たなくても大丈夫ですの。」
「それもそうだな…」
平和になった今外に出るのでさえある程度は安全な世の中だ。
ルークはミュウに言われるがまま机に愛用の剣を置いたその時…
『愛しき我が半身よ…そんなに旅がしたいか…?』
「ふぇ!?」
「みゅぅ!?」
いきなりのことだった為かなり間抜けな声が出てしまった。
アッシュが居たらまた「屑がっ!?」と言われてしまいそうだ…
しかし、今はそんなツッコミ役は居ず…そのまま話は進む。
ルークの前に現れたのは丸い小さな光…そう、ローレライだった。
解放されたローレライだったが、何故かちょくちょくルークの前へと現れた…
前もって言ってくれれば飯とか用意するのに…と毎度ルークは呟くが
毎度いきなり現れてルークと話をして満足したらまた消える…その繰り返しだった。
ちなみにアッシュの前へは一度も現れたことはないらしい。 ばーいアッシュの証言
「って、ローレライ!!いきなり現れるな!!ノックくらいしろっ!!!」
「ご主人さま…ローレライさんには手がないですの」
「あ、そうか…」
そもそも精霊にドアをノックする習慣があるのかが疑問だ。
そろそろツッコミ役が欲しいです…ボケ&ボケの会話は疲れます…(作者が
『愛しき我が半身よ…旅はしたくないのか?』
ローレライにはツッコミという要素はないらしく、そのまま話を進めて行く…
【旅】という言葉にルークの目は子犬のような輝きだ。
「行きたい!!!こんな退屈な生活もう飽きた!!!」
「ご主人様がいくのなら僕も行くですの!!」
『…あい、解った…我が愛しき半身の願い…叶えよう…』
ローレライの言葉が良い終わらないうちにルークとミュウの身体は光へと包まれた。
ルークが目を開けると何故か水の中…水の中なのに息ができた。
泳げないミュウは慌てていた為頭を撫でて落ち着かせていると
今度は水が流れだした。
必死になって流れる方向と逆の方へ泳ぐが、流れが強く逆らうことができず
流されているといきなり外へと放りだされた。
「うわあああああああああああああああああっ!!!!!!」
空に放り出された時見た景色は今までみたこともない世界…
見たこともない城…下町…そして空に浮かぶ結界のようなもの…
世界を回ってきたルークだったがこの町を見るのは初めてだった。
「ど、どこなんだここは…」
放りだされた力で浮いていた身体が急に下へと落下しはじめた。
下に落下するということは重力がある証拠…
結構な高さまで放りだされた為自分の足で着地するのは不可能と判断したルークは
自分の身体にひっついて居たミュウを引きはがした。
「ミュウ、ミュウウィングだ!!!!」
「え?でも…高くは飛べないですの」
「安全に着地するだけだ!!!いいからウィングだ!!!」
「わ、わかりましたですの…ミュゥウイング!!!ですのっ」
急速に落ちていたルークの身体はミュウの力により落ちる速度を弱めた。
そして安全に着地できる距離までおりるとミュウを離し地面へと降り立った。
降りた場所は何故か町全体が水浸しになっており、町の住人が必死になってそれを止めようとしていたが、
ルークの派手な出現によりその作業は中断されてしまった。
「あっちゃ~…俺変に目立ってるし…ここは何処なんだ…?」
周りの人の視線を気にしながら辺りを伺っているルークに小さな少年が話しかけてきた。
「え?お兄さん今空から来なかった…?」
「あ…えっと…や、屋根から落ちて…空から落ちたように見えたんだよ…
人間が空飛べるわけねぇだろっ!!!」
「飛べますのっ!!ミュウの力で飛べまs「お前は黙ってろっ!!!」
余計なことを言い出す自分のペットを道具袋に押し込んでルークは少年に笑いかけた。
「あ、そうなんだ…見かけない人だね…僕テッドって言うんだよろしく。」
「俺はルーク。ルーク・フォン・ファブレだ。よろしくな。しかし…変った町だな…水ばっかりで」
さっきまでルークを見ていた町の人も作業に戻り始めていた。
ルークのことより生活を守ることの方が大事だからだ…
「あぁ…水道魔導器が調子悪くなって…このままだと町が沈んじゃうよ…」
「え!?それは大変だ!!!俺も何か手伝うよ!!」
ルークは水道魔導器がよくわからなかったが、町が沈むとなったら一大事。
町の人と一緒に土を盛る作業を手伝おうとしていたが、
テッドに服を引っ張られ作業へ行けなかった。
「待ってルーク!!ルークは町の外から来たんだよね?」
「え?あ…まぁ、多分外から?」
あまり状況が把握できてなかったルークだったが、この町がバチカルではないことは確かだった。
この町とは別の街から来たのだから外になるだろう…と判断したのだ。
どういう経由で来たとかは別として…
「だったら強いよね!?ユーリが魔核を探しにいったきり戻ってこないんだ…
魔核があればこの状況は収まるから…お願いユーリを探してきて!!多分お城のどこかにるから!!!」
「ユーリ…?」
「えっと…真っ黒い服に…同じような黒の長い髪で…えっと…身長は高くて…けど細くて…
口は悪いけど中身はいい人で…あ、あとよく女の人と間違えられる!!!」
ルークはテッドの言葉に固まっていた。
テッドはユーリという人物の特徴を言っているのだろうが…全く想像がつかなかった。
「身長は高いくせに細い…?で女によく間違えられる?ということは性別は男か…」
ルークの頭ではユーリという人物のイメージを固めることはできなかった…
ジェイドやガイが居ればもっとテッドから詳しく聞けるかもしれないが、
とりあえずそれっぽい人物に声をかければなんとかなるだろう…と思った。
ルークは町の中央にそびえ立つバチカルとはまた違う城に目を向けた…。
「三つ数える間に殺してやる…」
「だからっ…俺はフレンじゃねぇ!!!」
お城の一室で響き合う金属音…
漆黒の青年はいきなり襲いかかってきた人物に悪戦苦闘していた。
「人違いだって言ってるだろうがっ!!!!」
漆黒の青年が振りかざした刃が、襲いかかってきた人物の皮膚を少し切る…
すると自分の血を見た瞬間襲いかかってきた人物の瞳の色が変った…
「上がってキタ…良い感じに上がってキタ…!!!」
漆黒の青年は自分の後にいる少女の姿を少し見る…
全くわけのわからない展開…フレンと間違われて殺されるのだけは勘弁だ…
もう一度襲ってきた人物に切りかかろうとした時…窓からその場には似合わない声が聞こえた…
「あ、あの~…お取り込み中すみません…」
窓から現れたのは朱色の青年…ガラスの破片を器用に避けて中へと入って来た。
「オイ…てめぇ…邪魔するんじゃねぇ…」
襲ってきた人物は朱色の青年を睨みつける…
普通の人間ならばその殺気に満ちた瞳に睨まれただけで顔色を変えるはずだが、
朱色の青年は少しも表情を変えずに…むしろ笑って話しかけてきた。
「あ、俺の用事が終わったら帰りますんで…ちょっと、人探しをしてて…城の中にいるって聞いたんだけど…」
(何なんだコイツ…この空気で笑ってやがる…馬鹿か?)
漆黒の青年は呆れた表情で朱色の青年を見つめる…
鍛えられた朱色の青年の身体…弱くはないはずだが…この状態はまずかった…殺されかけない…
「邪魔するんじゃねええええええええええええええ!!!!!」
「しまったっ!!!逃げろ!!!!」
漆黒の青年に向けられていた刃が朱色の青年へと変ってしまった。
このままではあの青年が殺されてしまう…そう思ったが…漆黒の青年の予想は裏切られた…良い意味で。
「おっと…あぶねぇなぁ…なぁ、お兄さん、真っ黒い服に…同じような黒の長い髪で…えっと…身長は高くて…けど細くて…
口は悪いけど中身はいい人で…あ、あとよく女の人と間違えられる…名前忘れたけどそんな人知らない?」
朱色の青年は襲いかかってきた刃を紙一重で交わした…交わされた勢いで襲いかかってきた人物は壁に激突した
そんな中でも相変わらず自分のペースだ…
どんだけ図太い神経してるんだ…と疑ってしまう。
「なぁ、あんた達もしらねぇ?真っ黒い服に…同じような黒の長い髪で…えっと…身長は高くて…けど細くて…
口は悪いけど中身はいい人で…あ、あとよく女の人と間違えられる人」
「え?えぇっと…」
朱色の青年は漆黒の青年と少女に同じ質問をしてきた。
少女はチラリと横目で漆黒の青年に目をやった…漆黒の青年は思い当たる節があるらしく…何故か青筋を立てている。
「あ、あの…その方のお名前は…?」
「え?あー…なんだっけ?ゆ…ゆ…湯?」
「ユーリさんですの!!!」
どこにいたのか水色の動物が朱色の青年の変りに答えた。
その名前を聞いた瞬間…漆黒の青年の顔に青筋が増えた…
「あ、ユーリさんなら知ってます…」
「え?ほんとかよ!?いやぁ…俺、真っ黒い服に…同じような黒の長い髪で…えっと…身長は高くて…けど細くて…
口は悪いけど中身はいい人で…あ、あとよく女の人と間違えられるやつなんて想像できなくて…
よっぽど変ったやつなんだなぁって思ってた!!!何で男なのに女と間違えられるんだよ!!って
あ、ごめん…君の知り合いなのに…」
「え?あ…えっと…あのっ…」
少女の瞳は朱色の青年と漆黒の青年の間を行き来する…
その間にも漆黒の青年の顔には青筋が増える…
「悪かったなぁ…変ってるやるで…」
「何でアンタが怒るんだ?」
「俺を無視するんじゃねええええええええええええええええええ!!!!!!」
朱色の青年の後からまた刃が襲いかかった。
「ったく…しつこい男は嫌われるってアニスが言ってたぞ!!!!烈破掌!!!!!!」
襲いかかってきた刃を再び紙一重で交わし、相手の胸に自分の掌底を叩き込み敵を吹き飛ばした。
「ぐあっ!!!!!」
襲いかかってきた人物は壁まで吹き飛ばされた。
「っく…てめぇ…強いな…」
よろめきながら立ったが…かなりのダメージを食らっているのが一目でわかった。
「あ?俺は別に強くなんかn…「ご主人様は強いですの!!世界を守るくらい強いですのっ!!最強ですの!!」
道具袋にかくれていた水色の動物がまた飛び出し何故か自慢げに話しだした。
「このブタザルっ!!!余計なこと言うんじゃねええええええええ!!!」
「みゅうううううううううううううう!!!!」
朱色の青年は何故か顔を真っ赤にしながら水色の動物を踏みつけた。
動物虐待になるだろ…と外野になりつつある漆黒の青年は思ったが止めなかった…
「…最強か…いいねぇ…キサマ…名前はっ…」
「え?俺なんかよりアッシュのがつy…「ルークですのっ!!!ルーク・フォン・ファブレですの!!!」
余計なこというなっ!!!とルークと呼ばれた青年は水色の動物を踏みつけた。
「ルーク…ルークか…覚えたぜ…これならどうだああああああああ!!!!」
後を向いていたルークの背中を二本の刃が再び襲いかかったが再び交わされた…
しかし今度はルークの目は笑っていない…相手を睨みつけ左手を腰に回したが…
「え?あれ?剣がねぇ!!!!」
「ご主人様の剣はお部屋に置いてきたですのっ!!!」
「ああああああ!!!しまった!!!このブタザル!!!てめぇのせいだ!!!!
どうするんだ!!交わせても反撃できねぇじゃねぇか!!!!」
「ご、ごめんなさいですの!!!」
ルークと水色の動物が漫才を繰り広げている間にも二本の刃は絶え間なくルークに襲いかかる…
ルークは何とか交わしているがこのままいつまで交わせるかはわからなかった。
「おいおい…俺も忘れるんじゃねぇぞ!!!」
横から鋭い刃がルークを助けた。
それはさっきまでずっとやりとりを見ていた漆黒の青年だった…
「そうだったな…フレン…お前も殺さないとな…」
「だから俺はフレンじゃねぇって!!!」
ルークに向けられていた刃は今度は漆黒の青年と標的を移す…
押されつつある漆黒の青年…
その青年を助けたいルークだったが、今の自分には武器がなかった。
「くそ…どうしたら…ん?」
武器になるものを探していると目にとまったのは自分の肩にひっついている動物…
ルークは水色の動物の頭を持つと左手を大きく振りかざした。
「これでもくらえっ!!!ミュゥアタアアアアアアアアアアアアアク!!!!」
「ですのっ!!!!!!!!!」
勢いよく投げられた水色の動物…しかし腕を振りすぎたのか何故か味方である漆黒の青年へと飛んで行った…
「うぉ!!!あぶね!!!」
間一髪ミュウアタックを避けた漆黒の青年…するどい目つきでルークを睨みつけた。
「ご、ごめん…手元が狂って…あっ…」
「ぐはっ!!!!!」
漆黒の青年に避けられたミュウアタックは床に当たり、そのまま跳ね返り…襲いかかってきた人物へと命中した。
「うあぁ…いたそぉ~…それ岩も破壊するんだぜ…」
投げといて他人事のように言うな。
当てられた本人はまだしぶとく生きていた…あんた本当に人間ですか?
そこへ服面をした男たちが入ってきた。
「ザキ引き揚げろ!!!騎士達に気がつかれた!!!」
「っち…次は…殺ス…」
ザキと呼ばれた青年はその服面達と姿を消した…
「はぁ…なんとか追い払ったか…あ、そうだ!!!ユーリさんの場所教えてくれる?」
「え?あの…あ…」
ルークは少女の前へ駆け寄り笑顔で声をかけたが、少女はユーリの場所を答える前に窓の外を指さした。
振りかえり窓の外を見ると…燃えていた…お城が真っ赤に…
「お、お城が…」
「さっきのやつらのせいか…?これ俺のせいになってないよなっ…」
慌てて外の様子を見る少女と青年を余所にルークは水色の動物の両耳をひっぱっていた。
「てめぇっ!!そういえばさっき下で火吹いてたよな!!!あれお前のせいかっ!!!!」
「ご、ごめんなさいですのっ~~~~~!!!!」
「おい、お二人さん!!!何じゃれあってるんだ!!!逃げるぞ…っく…!!!」
漆黒の青年はその場に倒れこんだ…
見ると深い傷を負っている…さきほどのザキと呼ばれるやつにやられたに違いなかった。
「ユーリさん…じっとしててください…すぐ手当を…」
少女が両手に手をやると、暖かい光が傷を癒していく…
その姿はまるでティアを思い出させる…よくルークも旅の途中怪我をしてティアに治して貰っていた…説教付きで。
「へ~…君は第七音譜術士なんだ…って…ん?ユーリ…?」
ルークはユーリと呼ばれた漆黒の青年に目をやる…
「俺がアンタの探してたユーリ…ユーリ・ローウェルだ…」
「え?ええええええええっ!!!あ…確かにっ黒い服に…同じような黒の長い髪で…えっと…身長は高くて…けど細くて…
口は悪いけど中身はいい人?で…あ、あとよく女の人と間違えられる…確かに間違えられそう…」
「アンタ…喧嘩売ってるのか?」
「もう!!動かないでください!!!」
ユーリの傷を治していた少女に怒られルークはしゅんと悲しげな表情を見せる…
一瞬ユーリは自分の目を疑ったが…ルークに子犬のような耳や尻尾が生えていたように見えた…
ユーリは疲れているのかと納得し見なかったことにする。
しばらくするとユーリの怪我は治せたのか、少女がユーリから離れた…
「アンタ…名前は?」
「エステリーゼです…フレンからユーリさんのことは聞いてます」
「ふーん…城の中にそんな話する相手いたんだな…」
「あ、俺ルーク!!ルーク・フォン・ファブレ!!!」
「聞いてねぇつーの…」
ユーリが呆れた表情でルークを見るとまたしゅんとした顔をルークが見せる、するとまた子犬の耳や尻尾が見えたので
ユーリはやっぱり自分は疲れているのだと確定した。
「うふふふ…ルーク、よろしくお願いします。」
「あぁ!!よろしく!!!」
さっきまで悲しげな表情をみせていたルークだったが、一気に喜びの表情へと変った…
その表情からしてユーリは自分より年下と判断できた。
「みゅぅ~!!!火がそこまで来たですのっ!!!」
周りを見回すとさっきまでそこにはなかった火がすぐそこまでへきていた。
「おい、ミュウ!!水はでねぇのか!!!」
「ミュウは火しか吹けないですの…」
「お前っちとは成長しろよ!!!」
「みゅぅ~…」
ミュウが使えない…ルークは譜術は使えなかった為火を消すことはできない。
ジェイドが居れば変ったかもしれないが…今この場にいない仲間のことを思う前に行動しなければならない。
ルークとユーリは一緒の考えだったのか二人同時に窓を見た。
「おい、飛ぶぞ!!!」
「え?ええぇ!!??」
「ちょ、何で俺まで掴むんだ!!!」
ユーリはエステリーゼを片手で抱え込み、反対側の手でルークの服を掴み窓から飛び出した。
「ユーリ…ルーク遅いなぁ…」
テッドが心配そうに城を見つめていると傍にた青色の犬が急に吠え出した。
「え?何?ラピード…あ!!!」
ラピードの吠える方角を見ると、城の方からユーリ、ルークそして見知らぬ少女が走ってくるのが見えた。
「ユーリお帰り!!!ルークありがとう!!ユーリを探して出してくれて!!!」
「へへへへっ…どういたしまして」
お礼を言われたルークは嬉しそうに、照れながらわらった。
そんな表情をユーリは少し笑いながら見ていると、老人がユーリに話しかけてきた。
「悪い知らせだ…魔導器を修理した貴族…やっぱり魔核泥棒だったぞ…」
「なんと…」
「貴族…?」
ルークは二人の会話の内容がよくわかなかったが、これだけはわかった…
貴族が町の人を苦しめている…
「これは…一つ、魔核泥棒をブン殴りに結界の外へ行くか…お前はどうする?」
ユーリはエステリーゼに問いかけた。
エステリーゼは町の様子を眺めながら小さくつぶやいた…
「もちろん、フレンを追いかけます…」
「よし、じゃぁ決まりだな…どこまで一緒かわからねぇけどよろしくな…エステル」
ユーリとエステルの行く道は決まった…
その様子を見るルーク…そこへテッドが心配そうにユーリを見つめる、ルークの服を無意識に掴みながら。
ルークはそんなテッドを見てある決意をした。
「俺も行く…俺も魔核泥棒捕まえにいく!!」
「お前…協力してくれるのはありがたいが…別にこの町のやつでもないのに…いいのか?」
「あぁ!!貴族が町の人を苦しめるなんて許せねぇ!!
とっつかまえてナタリアに貴族とは何かって説教してもらわないと!!!」
「…ナタリアって…誰だ?」
ユーリの質問は聞こえてないのかルークは一人張り切っている…
そんな姿に何故か心が緩む…
先ほどのザキとの戦いをみて実戦経験はあるようだし、戦力はあるほうがよいと考えた。
「よろしくな…ルーク…」
ユーリは利き手である左手を差しだすと、ルークは慌てて左手を服で拭きユーリと握手をした。
「あぁ…よろしくなっ!!!」
まるで太陽のような笑顔でルークは笑いかけた。
その時ユーリの中で心の中が何故かほんのりと温かくなった…
何故かはその時のユーリにはまだわからんかった…それを知るのはまだ先…
「ご主人様が行くのならミュウも行くですの!!!」
「ワンワン!!!」
二匹の動物が自分達も行くとアピールをしてきた。
「あぁ…紹介が遅れたな。こっちは俺の相棒…ラピードだ。」
「あー…こっちはチーグルのミュウ。訳あってしゃべれるけど…気にしないでくれ」
「ですのっ♪」
紹介されたミュウをエステルとユーリは見つめた。
どうみても魔物だが、見たことのない魔物だった…いや、二人とも魔物にそんな詳しいわけではなかった。
しかし、言葉を離す魔物など聞いたことがなかった…気にするなと言われる方が無理な話だ。
「あー…まぁ、おいおい話すよ…それより旅支度しようぜ!!!」
「あぁ…そうだな…」
「そうですねっ」
「ワンワンっ!!!」
「ですのっ!!!」
こうして3人と2匹の長い長い旅は始まった…
この時彼らの中にはこの度が世界を変える旅になるとは…誰も思っていなかった。
「そういえば…ルークはおいくつですの?」
「ん?えっと…アッシュが21歳だから…21歳…(多分」
(なっ!!!!俺と同じ歳かよ…17歳くらいかと思ってた…)
大人ですねっ!!と嬉しそうなエステルとルークが会話をする中、
一人ショックを受けて凹んでいるユーリの姿が見られた。
だが、ユーリの読みはあながち間違えてはいない…
何故ならルークの姿は世界を救った17歳の時から何一つ変っていないのだから…
「うっせぇぞ、この屑があああああああ!!!!!(オーバートラスト)」
「え?ちょ、アッシュ…秘奥義は…遠慮したいなぁ♪」
「黙れ…人に公務押しつけて…何が暇だ!!!これでも食らいやがれ!!紋牙鳴衝斬!!!!」
「うわああああああああ!!!!!!!」
朱の明星~再旅~
「いてててっ…何もアッシュのやつ秘奥義なんて使わなくても…」
「ご主人様、大丈夫ですの?」
「あぁ…大丈夫だよ」
ファブレ家にある自室のベッドに沈み、先ほどアッシュに食らった傷を見る…
流石に手加減はしているのか痛みはあったが傷はそんなに深くはなかった。
そんなルークの姿を心配そうに見るミュウ…
1年だけルークの傍にいるはずだったが、ルークの傍が居心地が良かったのか
契約期間をすぎてもルークの傍から離れようとはしなかった。
ルークは退屈そうなため息をつき思いだす…世界を救ったあの旅を…
ローレライを解放して自分の身体は消えたはずだった。
けど、帰って来た…アッシュと一緒に…
時間はかかったけど、みんなの元に帰ってきた。
けど、そのあと待っていた生活は退屈な生活だ。
ルークとは対照的に仲間達は世界中で世界を良くしようと走りまわっている…
ナタリアとアッシュはキムラスカで…
ティアはユリアシティで…
アニスはローレライ教団…
ガイとジェイドはマルクト…
何もしていないのは自分だけだった…
いや、戻ってきた最初はアッシュと公務を手伝っていたが…
アッシュの仕事を増やしてばかりで…早い話しがアッシュの堪忍袋が切れた。
そりゃもう家が吹っ飛ぶのではないかというくらい切れられた…
レプリカ関係の公務の時はルークが居る方が話がすすむので連れていってもらえるが、
最近では全くその話も来ない。
これではまるで旅に出る前と一緒…
いや、一度外の味を知ってしまったためそれ以上の苦痛だった。
一人旅でもしようかと思ったが…両親、過保護な親友などなどに止められてしまった。
自慢ではないが結構レベルも高いのでそうそう危ない目には合わないはずだったが、
ガイ達が心配してるのはレベルではなく、ルークの性格だった。
どっかのオールバック同様…一度頭に血が上ると猪突猛進…チーグルもまっしぐらな性格…
困ってる人を見過ごせない甘い性格…
この性格を持って事件に巻き込まれないという人間の方がどうかしいる。
むしろ事件の方から寄ってきそうだった。
そんなこんなで一人旅は反対者が多く未だに実行できていない。
「はぁ…また旅がしてぇなぁ…」
「みゅぅ~…」
ルークが寂しい顔をするためかミュウまで釣られて悲しい顔をする。
そんなミュウの頭を優しくルークは撫でた…
「ご主人様、部屋に居るから剣を持たなくても大丈夫ですの。」
「それもそうだな…」
平和になった今外に出るのでさえある程度は安全な世の中だ。
ルークはミュウに言われるがまま机に愛用の剣を置いたその時…
『愛しき我が半身よ…そんなに旅がしたいか…?』
「ふぇ!?」
「みゅぅ!?」
いきなりのことだった為かなり間抜けな声が出てしまった。
アッシュが居たらまた「屑がっ!?」と言われてしまいそうだ…
しかし、今はそんなツッコミ役は居ず…そのまま話は進む。
ルークの前に現れたのは丸い小さな光…そう、ローレライだった。
解放されたローレライだったが、何故かちょくちょくルークの前へと現れた…
前もって言ってくれれば飯とか用意するのに…と毎度ルークは呟くが
毎度いきなり現れてルークと話をして満足したらまた消える…その繰り返しだった。
ちなみにアッシュの前へは一度も現れたことはないらしい。 ばーいアッシュの証言
「って、ローレライ!!いきなり現れるな!!ノックくらいしろっ!!!」
「ご主人さま…ローレライさんには手がないですの」
「あ、そうか…」
そもそも精霊にドアをノックする習慣があるのかが疑問だ。
そろそろツッコミ役が欲しいです…ボケ&ボケの会話は疲れます…(作者が
『愛しき我が半身よ…旅はしたくないのか?』
ローレライにはツッコミという要素はないらしく、そのまま話を進めて行く…
【旅】という言葉にルークの目は子犬のような輝きだ。
「行きたい!!!こんな退屈な生活もう飽きた!!!」
「ご主人様がいくのなら僕も行くですの!!」
『…あい、解った…我が愛しき半身の願い…叶えよう…』
ローレライの言葉が良い終わらないうちにルークとミュウの身体は光へと包まれた。
ルークが目を開けると何故か水の中…水の中なのに息ができた。
泳げないミュウは慌てていた為頭を撫でて落ち着かせていると
今度は水が流れだした。
必死になって流れる方向と逆の方へ泳ぐが、流れが強く逆らうことができず
流されているといきなり外へと放りだされた。
「うわあああああああああああああああああっ!!!!!!」
空に放り出された時見た景色は今までみたこともない世界…
見たこともない城…下町…そして空に浮かぶ結界のようなもの…
世界を回ってきたルークだったがこの町を見るのは初めてだった。
「ど、どこなんだここは…」
放りだされた力で浮いていた身体が急に下へと落下しはじめた。
下に落下するということは重力がある証拠…
結構な高さまで放りだされた為自分の足で着地するのは不可能と判断したルークは
自分の身体にひっついて居たミュウを引きはがした。
「ミュウ、ミュウウィングだ!!!!」
「え?でも…高くは飛べないですの」
「安全に着地するだけだ!!!いいからウィングだ!!!」
「わ、わかりましたですの…ミュゥウイング!!!ですのっ」
急速に落ちていたルークの身体はミュウの力により落ちる速度を弱めた。
そして安全に着地できる距離までおりるとミュウを離し地面へと降り立った。
降りた場所は何故か町全体が水浸しになっており、町の住人が必死になってそれを止めようとしていたが、
ルークの派手な出現によりその作業は中断されてしまった。
「あっちゃ~…俺変に目立ってるし…ここは何処なんだ…?」
周りの人の視線を気にしながら辺りを伺っているルークに小さな少年が話しかけてきた。
「え?お兄さん今空から来なかった…?」
「あ…えっと…や、屋根から落ちて…空から落ちたように見えたんだよ…
人間が空飛べるわけねぇだろっ!!!」
「飛べますのっ!!ミュウの力で飛べまs「お前は黙ってろっ!!!」
余計なことを言い出す自分のペットを道具袋に押し込んでルークは少年に笑いかけた。
「あ、そうなんだ…見かけない人だね…僕テッドって言うんだよろしく。」
「俺はルーク。ルーク・フォン・ファブレだ。よろしくな。しかし…変った町だな…水ばっかりで」
さっきまでルークを見ていた町の人も作業に戻り始めていた。
ルークのことより生活を守ることの方が大事だからだ…
「あぁ…水道魔導器が調子悪くなって…このままだと町が沈んじゃうよ…」
「え!?それは大変だ!!!俺も何か手伝うよ!!」
ルークは水道魔導器がよくわからなかったが、町が沈むとなったら一大事。
町の人と一緒に土を盛る作業を手伝おうとしていたが、
テッドに服を引っ張られ作業へ行けなかった。
「待ってルーク!!ルークは町の外から来たんだよね?」
「え?あ…まぁ、多分外から?」
あまり状況が把握できてなかったルークだったが、この町がバチカルではないことは確かだった。
この町とは別の街から来たのだから外になるだろう…と判断したのだ。
どういう経由で来たとかは別として…
「だったら強いよね!?ユーリが魔核を探しにいったきり戻ってこないんだ…
魔核があればこの状況は収まるから…お願いユーリを探してきて!!多分お城のどこかにるから!!!」
「ユーリ…?」
「えっと…真っ黒い服に…同じような黒の長い髪で…えっと…身長は高くて…けど細くて…
口は悪いけど中身はいい人で…あ、あとよく女の人と間違えられる!!!」
ルークはテッドの言葉に固まっていた。
テッドはユーリという人物の特徴を言っているのだろうが…全く想像がつかなかった。
「身長は高いくせに細い…?で女によく間違えられる?ということは性別は男か…」
ルークの頭ではユーリという人物のイメージを固めることはできなかった…
ジェイドやガイが居ればもっとテッドから詳しく聞けるかもしれないが、
とりあえずそれっぽい人物に声をかければなんとかなるだろう…と思った。
ルークは町の中央にそびえ立つバチカルとはまた違う城に目を向けた…。
「三つ数える間に殺してやる…」
「だからっ…俺はフレンじゃねぇ!!!」
お城の一室で響き合う金属音…
漆黒の青年はいきなり襲いかかってきた人物に悪戦苦闘していた。
「人違いだって言ってるだろうがっ!!!!」
漆黒の青年が振りかざした刃が、襲いかかってきた人物の皮膚を少し切る…
すると自分の血を見た瞬間襲いかかってきた人物の瞳の色が変った…
「上がってキタ…良い感じに上がってキタ…!!!」
漆黒の青年は自分の後にいる少女の姿を少し見る…
全くわけのわからない展開…フレンと間違われて殺されるのだけは勘弁だ…
もう一度襲ってきた人物に切りかかろうとした時…窓からその場には似合わない声が聞こえた…
「あ、あの~…お取り込み中すみません…」
窓から現れたのは朱色の青年…ガラスの破片を器用に避けて中へと入って来た。
「オイ…てめぇ…邪魔するんじゃねぇ…」
襲ってきた人物は朱色の青年を睨みつける…
普通の人間ならばその殺気に満ちた瞳に睨まれただけで顔色を変えるはずだが、
朱色の青年は少しも表情を変えずに…むしろ笑って話しかけてきた。
「あ、俺の用事が終わったら帰りますんで…ちょっと、人探しをしてて…城の中にいるって聞いたんだけど…」
(何なんだコイツ…この空気で笑ってやがる…馬鹿か?)
漆黒の青年は呆れた表情で朱色の青年を見つめる…
鍛えられた朱色の青年の身体…弱くはないはずだが…この状態はまずかった…殺されかけない…
「邪魔するんじゃねええええええええええええええ!!!!!」
「しまったっ!!!逃げろ!!!!」
漆黒の青年に向けられていた刃が朱色の青年へと変ってしまった。
このままではあの青年が殺されてしまう…そう思ったが…漆黒の青年の予想は裏切られた…良い意味で。
「おっと…あぶねぇなぁ…なぁ、お兄さん、真っ黒い服に…同じような黒の長い髪で…えっと…身長は高くて…けど細くて…
口は悪いけど中身はいい人で…あ、あとよく女の人と間違えられる…名前忘れたけどそんな人知らない?」
朱色の青年は襲いかかってきた刃を紙一重で交わした…交わされた勢いで襲いかかってきた人物は壁に激突した
そんな中でも相変わらず自分のペースだ…
どんだけ図太い神経してるんだ…と疑ってしまう。
「なぁ、あんた達もしらねぇ?真っ黒い服に…同じような黒の長い髪で…えっと…身長は高くて…けど細くて…
口は悪いけど中身はいい人で…あ、あとよく女の人と間違えられる人」
「え?えぇっと…」
朱色の青年は漆黒の青年と少女に同じ質問をしてきた。
少女はチラリと横目で漆黒の青年に目をやった…漆黒の青年は思い当たる節があるらしく…何故か青筋を立てている。
「あ、あの…その方のお名前は…?」
「え?あー…なんだっけ?ゆ…ゆ…湯?」
「ユーリさんですの!!!」
どこにいたのか水色の動物が朱色の青年の変りに答えた。
その名前を聞いた瞬間…漆黒の青年の顔に青筋が増えた…
「あ、ユーリさんなら知ってます…」
「え?ほんとかよ!?いやぁ…俺、真っ黒い服に…同じような黒の長い髪で…えっと…身長は高くて…けど細くて…
口は悪いけど中身はいい人で…あ、あとよく女の人と間違えられるやつなんて想像できなくて…
よっぽど変ったやつなんだなぁって思ってた!!!何で男なのに女と間違えられるんだよ!!って
あ、ごめん…君の知り合いなのに…」
「え?あ…えっと…あのっ…」
少女の瞳は朱色の青年と漆黒の青年の間を行き来する…
その間にも漆黒の青年の顔には青筋が増える…
「悪かったなぁ…変ってるやるで…」
「何でアンタが怒るんだ?」
「俺を無視するんじゃねええええええええええええええええええ!!!!!!」
朱色の青年の後からまた刃が襲いかかった。
「ったく…しつこい男は嫌われるってアニスが言ってたぞ!!!!烈破掌!!!!!!」
襲いかかってきた刃を再び紙一重で交わし、相手の胸に自分の掌底を叩き込み敵を吹き飛ばした。
「ぐあっ!!!!!」
襲いかかってきた人物は壁まで吹き飛ばされた。
「っく…てめぇ…強いな…」
よろめきながら立ったが…かなりのダメージを食らっているのが一目でわかった。
「あ?俺は別に強くなんかn…「ご主人様は強いですの!!世界を守るくらい強いですのっ!!最強ですの!!」
道具袋にかくれていた水色の動物がまた飛び出し何故か自慢げに話しだした。
「このブタザルっ!!!余計なこと言うんじゃねええええええええ!!!」
「みゅうううううううううううううう!!!!」
朱色の青年は何故か顔を真っ赤にしながら水色の動物を踏みつけた。
動物虐待になるだろ…と外野になりつつある漆黒の青年は思ったが止めなかった…
「…最強か…いいねぇ…キサマ…名前はっ…」
「え?俺なんかよりアッシュのがつy…「ルークですのっ!!!ルーク・フォン・ファブレですの!!!」
余計なこというなっ!!!とルークと呼ばれた青年は水色の動物を踏みつけた。
「ルーク…ルークか…覚えたぜ…これならどうだああああああああ!!!!」
後を向いていたルークの背中を二本の刃が再び襲いかかったが再び交わされた…
しかし今度はルークの目は笑っていない…相手を睨みつけ左手を腰に回したが…
「え?あれ?剣がねぇ!!!!」
「ご主人様の剣はお部屋に置いてきたですのっ!!!」
「ああああああ!!!しまった!!!このブタザル!!!てめぇのせいだ!!!!
どうするんだ!!交わせても反撃できねぇじゃねぇか!!!!」
「ご、ごめんなさいですの!!!」
ルークと水色の動物が漫才を繰り広げている間にも二本の刃は絶え間なくルークに襲いかかる…
ルークは何とか交わしているがこのままいつまで交わせるかはわからなかった。
「おいおい…俺も忘れるんじゃねぇぞ!!!」
横から鋭い刃がルークを助けた。
それはさっきまでずっとやりとりを見ていた漆黒の青年だった…
「そうだったな…フレン…お前も殺さないとな…」
「だから俺はフレンじゃねぇって!!!」
ルークに向けられていた刃は今度は漆黒の青年と標的を移す…
押されつつある漆黒の青年…
その青年を助けたいルークだったが、今の自分には武器がなかった。
「くそ…どうしたら…ん?」
武器になるものを探していると目にとまったのは自分の肩にひっついている動物…
ルークは水色の動物の頭を持つと左手を大きく振りかざした。
「これでもくらえっ!!!ミュゥアタアアアアアアアアアアアアアク!!!!」
「ですのっ!!!!!!!!!」
勢いよく投げられた水色の動物…しかし腕を振りすぎたのか何故か味方である漆黒の青年へと飛んで行った…
「うぉ!!!あぶね!!!」
間一髪ミュウアタックを避けた漆黒の青年…するどい目つきでルークを睨みつけた。
「ご、ごめん…手元が狂って…あっ…」
「ぐはっ!!!!!」
漆黒の青年に避けられたミュウアタックは床に当たり、そのまま跳ね返り…襲いかかってきた人物へと命中した。
「うあぁ…いたそぉ~…それ岩も破壊するんだぜ…」
投げといて他人事のように言うな。
当てられた本人はまだしぶとく生きていた…あんた本当に人間ですか?
そこへ服面をした男たちが入ってきた。
「ザキ引き揚げろ!!!騎士達に気がつかれた!!!」
「っち…次は…殺ス…」
ザキと呼ばれた青年はその服面達と姿を消した…
「はぁ…なんとか追い払ったか…あ、そうだ!!!ユーリさんの場所教えてくれる?」
「え?あの…あ…」
ルークは少女の前へ駆け寄り笑顔で声をかけたが、少女はユーリの場所を答える前に窓の外を指さした。
振りかえり窓の外を見ると…燃えていた…お城が真っ赤に…
「お、お城が…」
「さっきのやつらのせいか…?これ俺のせいになってないよなっ…」
慌てて外の様子を見る少女と青年を余所にルークは水色の動物の両耳をひっぱっていた。
「てめぇっ!!そういえばさっき下で火吹いてたよな!!!あれお前のせいかっ!!!!」
「ご、ごめんなさいですのっ~~~~~!!!!」
「おい、お二人さん!!!何じゃれあってるんだ!!!逃げるぞ…っく…!!!」
漆黒の青年はその場に倒れこんだ…
見ると深い傷を負っている…さきほどのザキと呼ばれるやつにやられたに違いなかった。
「ユーリさん…じっとしててください…すぐ手当を…」
少女が両手に手をやると、暖かい光が傷を癒していく…
その姿はまるでティアを思い出させる…よくルークも旅の途中怪我をしてティアに治して貰っていた…説教付きで。
「へ~…君は第七音譜術士なんだ…って…ん?ユーリ…?」
ルークはユーリと呼ばれた漆黒の青年に目をやる…
「俺がアンタの探してたユーリ…ユーリ・ローウェルだ…」
「え?ええええええええっ!!!あ…確かにっ黒い服に…同じような黒の長い髪で…えっと…身長は高くて…けど細くて…
口は悪いけど中身はいい人?で…あ、あとよく女の人と間違えられる…確かに間違えられそう…」
「アンタ…喧嘩売ってるのか?」
「もう!!動かないでください!!!」
ユーリの傷を治していた少女に怒られルークはしゅんと悲しげな表情を見せる…
一瞬ユーリは自分の目を疑ったが…ルークに子犬のような耳や尻尾が生えていたように見えた…
ユーリは疲れているのかと納得し見なかったことにする。
しばらくするとユーリの怪我は治せたのか、少女がユーリから離れた…
「アンタ…名前は?」
「エステリーゼです…フレンからユーリさんのことは聞いてます」
「ふーん…城の中にそんな話する相手いたんだな…」
「あ、俺ルーク!!ルーク・フォン・ファブレ!!!」
「聞いてねぇつーの…」
ユーリが呆れた表情でルークを見るとまたしゅんとした顔をルークが見せる、するとまた子犬の耳や尻尾が見えたので
ユーリはやっぱり自分は疲れているのだと確定した。
「うふふふ…ルーク、よろしくお願いします。」
「あぁ!!よろしく!!!」
さっきまで悲しげな表情をみせていたルークだったが、一気に喜びの表情へと変った…
その表情からしてユーリは自分より年下と判断できた。
「みゅぅ~!!!火がそこまで来たですのっ!!!」
周りを見回すとさっきまでそこにはなかった火がすぐそこまでへきていた。
「おい、ミュウ!!水はでねぇのか!!!」
「ミュウは火しか吹けないですの…」
「お前っちとは成長しろよ!!!」
「みゅぅ~…」
ミュウが使えない…ルークは譜術は使えなかった為火を消すことはできない。
ジェイドが居れば変ったかもしれないが…今この場にいない仲間のことを思う前に行動しなければならない。
ルークとユーリは一緒の考えだったのか二人同時に窓を見た。
「おい、飛ぶぞ!!!」
「え?ええぇ!!??」
「ちょ、何で俺まで掴むんだ!!!」
ユーリはエステリーゼを片手で抱え込み、反対側の手でルークの服を掴み窓から飛び出した。
「ユーリ…ルーク遅いなぁ…」
テッドが心配そうに城を見つめていると傍にた青色の犬が急に吠え出した。
「え?何?ラピード…あ!!!」
ラピードの吠える方角を見ると、城の方からユーリ、ルークそして見知らぬ少女が走ってくるのが見えた。
「ユーリお帰り!!!ルークありがとう!!ユーリを探して出してくれて!!!」
「へへへへっ…どういたしまして」
お礼を言われたルークは嬉しそうに、照れながらわらった。
そんな表情をユーリは少し笑いながら見ていると、老人がユーリに話しかけてきた。
「悪い知らせだ…魔導器を修理した貴族…やっぱり魔核泥棒だったぞ…」
「なんと…」
「貴族…?」
ルークは二人の会話の内容がよくわかなかったが、これだけはわかった…
貴族が町の人を苦しめている…
「これは…一つ、魔核泥棒をブン殴りに結界の外へ行くか…お前はどうする?」
ユーリはエステリーゼに問いかけた。
エステリーゼは町の様子を眺めながら小さくつぶやいた…
「もちろん、フレンを追いかけます…」
「よし、じゃぁ決まりだな…どこまで一緒かわからねぇけどよろしくな…エステル」
ユーリとエステルの行く道は決まった…
その様子を見るルーク…そこへテッドが心配そうにユーリを見つめる、ルークの服を無意識に掴みながら。
ルークはそんなテッドを見てある決意をした。
「俺も行く…俺も魔核泥棒捕まえにいく!!」
「お前…協力してくれるのはありがたいが…別にこの町のやつでもないのに…いいのか?」
「あぁ!!貴族が町の人を苦しめるなんて許せねぇ!!
とっつかまえてナタリアに貴族とは何かって説教してもらわないと!!!」
「…ナタリアって…誰だ?」
ユーリの質問は聞こえてないのかルークは一人張り切っている…
そんな姿に何故か心が緩む…
先ほどのザキとの戦いをみて実戦経験はあるようだし、戦力はあるほうがよいと考えた。
「よろしくな…ルーク…」
ユーリは利き手である左手を差しだすと、ルークは慌てて左手を服で拭きユーリと握手をした。
「あぁ…よろしくなっ!!!」
まるで太陽のような笑顔でルークは笑いかけた。
その時ユーリの中で心の中が何故かほんのりと温かくなった…
何故かはその時のユーリにはまだわからんかった…それを知るのはまだ先…
「ご主人様が行くのならミュウも行くですの!!!」
「ワンワン!!!」
二匹の動物が自分達も行くとアピールをしてきた。
「あぁ…紹介が遅れたな。こっちは俺の相棒…ラピードだ。」
「あー…こっちはチーグルのミュウ。訳あってしゃべれるけど…気にしないでくれ」
「ですのっ♪」
紹介されたミュウをエステルとユーリは見つめた。
どうみても魔物だが、見たことのない魔物だった…いや、二人とも魔物にそんな詳しいわけではなかった。
しかし、言葉を離す魔物など聞いたことがなかった…気にするなと言われる方が無理な話だ。
「あー…まぁ、おいおい話すよ…それより旅支度しようぜ!!!」
「あぁ…そうだな…」
「そうですねっ」
「ワンワンっ!!!」
「ですのっ!!!」
こうして3人と2匹の長い長い旅は始まった…
この時彼らの中にはこの度が世界を変える旅になるとは…誰も思っていなかった。
「そういえば…ルークはおいくつですの?」
「ん?えっと…アッシュが21歳だから…21歳…(多分」
(なっ!!!!俺と同じ歳かよ…17歳くらいかと思ってた…)
大人ですねっ!!と嬉しそうなエステルとルークが会話をする中、
一人ショックを受けて凹んでいるユーリの姿が見られた。
だが、ユーリの読みはあながち間違えてはいない…
何故ならルークの姿は世界を救った17歳の時から何一つ変っていないのだから…