旭屋本舗
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「それじゃぁ、いってくる…あとのことは頼んだぞユルギス…」
「はっ。森は今かなり危険ですのでお気を付けて…シャスティルも無茶はしないでくれ」
「はーい」
まだ朝日が顔を出し始めた時刻、ナイレンとシャスティルは森へ調査へ向かうために
朝早くから出発の準備をしていた。
見送りにきたユルギスに声をかけ今から出発をしようとしたが、
建物の影に隠れてこちらをずっとみている存在に気がついた。
「おい、ルーク。そんなところに隠れていないで出てきたらどうだ?」
シャスティルとユルギスが振りかえると、見つかった為観念したのか
ルークが顔を赤くしながら出てくる。
「よく…わかったな…」
「伊達に隊長やってないんでね。で?何の用だ?朝飯の時間にはまだ早いだろ?」
ルークはどちらかというとぎりぎりまで寝ているタイプだ。
フレンのように早く起きて準備をする性格ではない…そのことはナイレンが一番よくしっている。
「これ…持っていけよ…」
「何だこれ?」
渡されたのは茶色い袋に入ったモノ。
手にとると結構な重さがあり、中身を検討することが難しかった。
「…………弁当」
ルークの言葉にナイレンの目は丸くなり驚いたが、
すぐにいつものように笑うと赤茶色の髪を激しく撫でた。
「普段料理なんてしねぇやつが…今日は夕方から雨でも降るんじゃないのか?」
「う、うっせー!!いらねぇのなら返せ!!」
ナイレンに渡した包み紙を奪い返そうとしたが、ヒラリと交わされ荷物の中へと入れてしまった。
「俺は貰ったものは返さない主義なんでね…それじゃぁ行ってくる。いくぞシャスティル」
そういうとナイレンは馬を動かし森へと向かって行った。
ユルギスがその姿を見送っていると、いつの間にかルークの姿が消えていた。
別レノ唄【TFS03】
今日の占いでは本日はラッキーデーのはずだった…
あまり占いなど信じていない方だったが、良い日だと言われ悪く思う人間は
そうそういない…
けどこの日からユルギスは占いなど一切信じられなくなる…
目の前に居る見たこともない魔物を目の当たりにしてラッキーデーとは言えないからだ。
今日は隊長であるナイレンも森へ調査にでかけ不在。
副隊長であるユルギスが全体指揮を取らなければいけない…
自分に指揮が取れるか不安に感じながらも魔物に襲われている馬車を助け
街の住人を避難させる指示をする。
優秀なメンバーが揃っている隊なのでスムーズに事が進む。
特によく動くのが昨日隊に来たばかりのルークだ。
手慣れた様子で迅速に人々を救助し安全な場所へと運ぶ…
ルーク一人でほとんどの仕事を片付けたようなものだ。
「いったい…彼は何なんだ…?」
ユルギスが不思議に思って見守っていると
街からまだ到着していなかったユーリとヒスカが到着した。
「な、何だあの魔物…!!!」
ユーリが驚くのも無理は無い。
赤い触手はまるで意思をもっているかのように動き、襲いかかる…
その周りには目の色を変えた狼の魔物達…
ユーリが剣に手を取ると大きな物音がした。
物音の正体は馬車が赤い触手に襲われ引きずられてしまった音…
乗っていた人々は無事に避難できているようだ。
それを確認したユーリは剣を再び手にし、
襲いかかってくる狼の魔物達を次々に切り倒すが、
避難したはずの女性から悲痛な訴えが聞こえてきた。
「あ、あの中にまだ娘が…」
「何だって!?って…!!!」
馬車の中に娘が居ると言われ馬車に目を向けると
そこには女の子が一人…そしていつの間にそこにまで移動したのか
ルークが女の子を守るように抱え魔物達に剣を向けていた。
「あ……」
「大丈夫…俺が守ってやるから…安心しろ…」
怖がる女の子を胸に抱きルークは優しい言葉で落ち着かせる…
しかし、女の子を助けようにも道は魔物達で塞がれてしまっている。
ルーク一人ならば切り抜けられるだろう…だが、女の子を片手で抱え
走りぬけるには無理があった…何か突破口でもあれば…
とルークが考えていると空から赤い触手に向けて剣のみが落ちてきて
そして、剣の持ち主も空から舞い降りルークの前へと姿を見せた。
「ばかっ!!一人で全部抱えこもうとするんじゃねぇよ!!」
「ゆ、ユーリ…ごめん…」
「……ほら、その子かせ…俺が連れて行くからお前は後から来る敵を頼む」
「わかった」
ルークは素直に女の子をユーリに渡し駆け抜ける体勢に入った。
ここで「いやだ」と言えば怒るつもりだったユーリだが、
素直な相手の反応に少し驚いてしまう。
「じゃぁ、行くぞ……今だっ!!」
ルークとユーリは魔物達の隙を見て走りだした。
一瞬だけひるんだ魔物達だったが、すぐに前を走るユーリに襲いかかるが、
ユーリは片手で軽々と切り倒していく。
後から襲いかかる魔物はルークが切り倒していくが赤い触手も一緒に襲いかかって来た為
ルークは一度足を止めた。
「ルーク!!何してるんだ!!」
「先に行け!!すぐに行くから…」
「……解った。」
仲間のいる地点まではもう目と鼻の先…
この距離なら女の子をそちらへ置いてルークを助けに行く方が早いと判断したので、
ユーリは再び走り出した。
走りだすと今度はユーリの上空を無数の矢が飛び後から襲ってきた魔物を倒していく…
矢を放ったのはこの街に滞在するギルドのメンバー…
そう、昨日大喧嘩をしたギルドのメンバー達だった。
巨大な身体を持ったギルドのボス、メルゾムが笑いながら登場した。
「よう…坊主…大丈夫か?」
「あぁ…助かったぜ…この子を頼む…」
ユーリは騎士団の仲間に女の子を預けるとすぐに走ってきた道を戻るが…
そこに居たはずの多くの魔物はすでに倒されていた…
残っているのは赤い触手の魔物と数匹の狼の魔物…
「全部ルークが倒したのかよ…すげぇ…」
ルークの後姿がまた森で見かけたアイツを思い浮かばせた…
似ているけど…特徴が違う…アイツとルークの関係が全く見えてこなかった。
ユーリがルークの後ろ姿に見とれていると数匹の狼がルークに襲いかかる。
「ルークっ!!!」
「ッチ…これでもくらいな…岩斬滅砕陣!!!!」
剣で大地に衝撃を与えると数多の岩石が飛び同時に襲ってきた魔物達を吹き飛ばす。
ユーリは慌ててルークに近づくがルークは何処も怪我をしていなかった。
「言っただろ?大勢の相手するときは立ちまわりなんだよ…」
「ははっ…お前余裕だな…心配して損したぜ…」
ルークの笑顔に吊られユーリも笑う。
そして二人同時に走り仲間のところへと戻った。
「ルーク!!無茶をするな!!」
「悪い…ユルギス…」
「はぁ…もういい…撤退するぞ…」
ユルギスの言葉にほとんどの団員が頷いたが、
ルークとユーリだけが首を横に振った。
「……それはできない相談だよな…」
「あぁ…あの赤いやつ…このままにしてられねぇよ…」
ユーリとルークは前線に立っているメルゾムの横に並んで立つ。
ユルギスが二人の名前を叫んでいるが二人の耳には全く届いていない…
「いいのか?二人とも…」
二人は何も答えずにただ剣を魔物に向ける…
それが二人の答えだ。
メルゾムは二人の答えを受け取り同じく身構えるが、
魔物達は森へと逃げ帰って行った。
そしてそのあとを2匹の軍用犬が追いかけて行った。
「お、おい…お前ら待てっ!!!………ランバート?」
ユーリと目が合ったのはナイレンの相棒犬であるランバートだ。
ランバートの目はユーリに何かを訴えているような目をしている…
そして、その鋭い瞳をユーリから森へ移すを仲間を追いかけるように走って行った。
「ランバート!!待てって!!おい!!!」
「ユーリ…行くぞ…ランバート達だけじゃ無理だ」
「…ルーク!!ったく…人の話を聞けよ…」
ランバートの走って行った道をルークをユーリは追いかけ、
そしてそのあとをギルドのメンバー、騎士団の仲間数名が追いかけて行った。
街へ戻ってきたユーリの顔は暗くて…苦しそうな表情をしている。
重い身体…重い剣をなんとかひっぱり騎士団の門の前まで到着し
重かった剣に目を移す…綺麗に拭きとったが罪を流すことはできない…
「くそっ!!」
ユーリは持っていた剣を地面に叩きつけ騎士団の門を開けると
そこには小さな子犬がちょこんとお座りをして待っていた。
「ラピード…」
ラピードはユーリに駆けよるとユーリが捨てた剣の匂いを嗅ぎ、
誰か大切な人を探すように辺りを見回し森の方を見つめた…
ユーリは知っている。
ラピードが誰を探しているのか…誰を待っているのかを…
そしてもうラピードの元へは戻ってこないことを…
お座りをして待っているラピードを抱きかかえると
ラピードの小さな背中に顔を近づけ小さな声で呟いた。
「ラピード…ごめん…俺…お前の父ちゃんを…」
その言葉をラピードが理解したかは解らないが、
優しくユーリの頬を舐める。
ユーリの瞳から何かが流れたが、それは降り出した雨なのかそれとも別の物なのか
はっきりとはわからない…。
ユーリがラピードを抱えているとすぐそばに誰かが居ることに気がついた。
見上げてみるとそこに居たのは赤茶色の人物…ルークだった。
「ユーリ…その…ごめん…」
「ルーク……何でお前が謝るんだ…?」
ルークは何も言わずにユーリに飛びつき
ユーリの胸に顔を埋め、背中に回した手はしっかりとユーリの服を掴んでいる。
両手でラピードを抱えていたユーリは抱き返すことができなかった。
「だって…俺がもっとしっかりしていたら…お前にあんなつらい役目押し付けなかったのに…
俺が森へ入らなかったら…お前の忠告聞いて戻っていたら…ごめん…ほんと…ごめん…
ラピードごめん…俺お前の父上を守ってやれなくて…助けてあげれなくて…ごめん…」」
ラピードを片手だけで持ちルークの顔を無理やり上げさせると
その顔はぐちゃぐちゃになっていて…普段とは全く違う表情だった。
「……俺が選んだ道だ…お前が謝る必要はねぇよ…お前は本当に優しいやつだな…」
瞳から流れた涙を片手で拭きとるとまたユーリの胸に顔を埋めた。
このままここにいると二人ともずぶぬれになってしまうので
ユーリはルークに優しく声をかけた。
「ほら、部屋戻るぞ…」
「やだ…戻りたくない…一人になりたくない…」
ルークの両手はユーリの服をますます強く掴む。
ユーリはため息をつき、ルークの頭を優しく撫でると
ラピードとルークを連れて騎士団の中へと入っていった。
ふと、目を開けると飛び込んできたのは赤茶色の色…
その色の持ち主はすやすやと気持ちよさそうに眠りに入っている。
その両手にはラピードを優しく、大切に抱えながら寝ていた。
ユーリはその姿に頬を緩ませると自分達の身体に毛布が掛かっていることに気がつき、
起き上がると目の前にいたのは朝から森へでかけていたナイレンだった。
「隊長……その…すみませんでした…」
咥えていた煙管を口から離し、ユーリの方を向くとナイレンは静かに口を動かした。
「謝ることはない…ランバートのことすまなかったな…辛いことを押しつけたな…」
「いや……俺は自分で選んだから…しょうがない…けどこいつが…」
ユーリが隣で寝ているルークに目を向けると、
ナイレンもそれにつられて目を向けた、
そしてユーリの言っている意味を理解したのか深いため息をついた。
「優しいやつだからな…そこがいつか命取りにならないか心配だ…
そろそろ部屋に戻れ…風邪ひくぞ。」
「……こいつを置いては戻れねぇし…今は戻りたくない。」
「……………解った、風邪ひくなよ」
ナイレンが立ちあがり犬小屋を出ようとした時、
小さな声がナイレンの耳へ届いた。
「………ゆ……り…どこ………?」
「ルーク…どうした?俺ならここにいるぞ…」
半分だけ開いた瞳がユーリを探し、
ユーリの姿をその瞳でとらえると嬉しそうな表情をしてまたその瞳を閉じる。
片手ではユーリの裾をしっかりと握りしめている。
「……驚いたな。そいつ中々人に懐かないやつなんだが……
お前になら……任しても大丈夫そうだな……」
「何のことだ?」
「いや…今はまだ早い…近いうちにゆっくり話そう…
しばらくそいつらの傍にいてやってくれ…さびしがるだろうからな…」
ナイレンの言う【そいつら】に目を向けると気持ちよさそうに夢の中へと落ちており、
その寝顔を見るとさっきまで冷たかった心がゆっくりと温かくなる。
「あ…そうだ…毛布さんきゅー。二日も続けて悪かったな」
「二日も…?俺が毛布をかけたのは今日が初めてだが?」
「え?じゃぁ…あのひよこ模様入りの毛布は誰の…?」
ユーリの言葉にナイレンは犯人が誰か解ったらしく
言葉にならない笑みを浮かべながら犬小屋を去って行った。
一人まだ犯人が解らず途方に暮れていたユーリは
再び夢へ落ちる為に横になり目を閉じた。
落ちて行く最中に何処からかまた聞き覚えのある音が聞こえてきた。
いや、今まで聞いた音は誰かの唄声だったが、
今日は機械の音…オルゴールのような音だった。
誰が鳴らしているのだろう…何て言う曲なのだろう…
いろいろなことを思いながらユーリは夢へと落ちていった。
「はっ。森は今かなり危険ですのでお気を付けて…シャスティルも無茶はしないでくれ」
「はーい」
まだ朝日が顔を出し始めた時刻、ナイレンとシャスティルは森へ調査へ向かうために
朝早くから出発の準備をしていた。
見送りにきたユルギスに声をかけ今から出発をしようとしたが、
建物の影に隠れてこちらをずっとみている存在に気がついた。
「おい、ルーク。そんなところに隠れていないで出てきたらどうだ?」
シャスティルとユルギスが振りかえると、見つかった為観念したのか
ルークが顔を赤くしながら出てくる。
「よく…わかったな…」
「伊達に隊長やってないんでね。で?何の用だ?朝飯の時間にはまだ早いだろ?」
ルークはどちらかというとぎりぎりまで寝ているタイプだ。
フレンのように早く起きて準備をする性格ではない…そのことはナイレンが一番よくしっている。
「これ…持っていけよ…」
「何だこれ?」
渡されたのは茶色い袋に入ったモノ。
手にとると結構な重さがあり、中身を検討することが難しかった。
「…………弁当」
ルークの言葉にナイレンの目は丸くなり驚いたが、
すぐにいつものように笑うと赤茶色の髪を激しく撫でた。
「普段料理なんてしねぇやつが…今日は夕方から雨でも降るんじゃないのか?」
「う、うっせー!!いらねぇのなら返せ!!」
ナイレンに渡した包み紙を奪い返そうとしたが、ヒラリと交わされ荷物の中へと入れてしまった。
「俺は貰ったものは返さない主義なんでね…それじゃぁ行ってくる。いくぞシャスティル」
そういうとナイレンは馬を動かし森へと向かって行った。
ユルギスがその姿を見送っていると、いつの間にかルークの姿が消えていた。
別レノ唄【TFS03】
今日の占いでは本日はラッキーデーのはずだった…
あまり占いなど信じていない方だったが、良い日だと言われ悪く思う人間は
そうそういない…
けどこの日からユルギスは占いなど一切信じられなくなる…
目の前に居る見たこともない魔物を目の当たりにしてラッキーデーとは言えないからだ。
今日は隊長であるナイレンも森へ調査にでかけ不在。
副隊長であるユルギスが全体指揮を取らなければいけない…
自分に指揮が取れるか不安に感じながらも魔物に襲われている馬車を助け
街の住人を避難させる指示をする。
優秀なメンバーが揃っている隊なのでスムーズに事が進む。
特によく動くのが昨日隊に来たばかりのルークだ。
手慣れた様子で迅速に人々を救助し安全な場所へと運ぶ…
ルーク一人でほとんどの仕事を片付けたようなものだ。
「いったい…彼は何なんだ…?」
ユルギスが不思議に思って見守っていると
街からまだ到着していなかったユーリとヒスカが到着した。
「な、何だあの魔物…!!!」
ユーリが驚くのも無理は無い。
赤い触手はまるで意思をもっているかのように動き、襲いかかる…
その周りには目の色を変えた狼の魔物達…
ユーリが剣に手を取ると大きな物音がした。
物音の正体は馬車が赤い触手に襲われ引きずられてしまった音…
乗っていた人々は無事に避難できているようだ。
それを確認したユーリは剣を再び手にし、
襲いかかってくる狼の魔物達を次々に切り倒すが、
避難したはずの女性から悲痛な訴えが聞こえてきた。
「あ、あの中にまだ娘が…」
「何だって!?って…!!!」
馬車の中に娘が居ると言われ馬車に目を向けると
そこには女の子が一人…そしていつの間にそこにまで移動したのか
ルークが女の子を守るように抱え魔物達に剣を向けていた。
「あ……」
「大丈夫…俺が守ってやるから…安心しろ…」
怖がる女の子を胸に抱きルークは優しい言葉で落ち着かせる…
しかし、女の子を助けようにも道は魔物達で塞がれてしまっている。
ルーク一人ならば切り抜けられるだろう…だが、女の子を片手で抱え
走りぬけるには無理があった…何か突破口でもあれば…
とルークが考えていると空から赤い触手に向けて剣のみが落ちてきて
そして、剣の持ち主も空から舞い降りルークの前へと姿を見せた。
「ばかっ!!一人で全部抱えこもうとするんじゃねぇよ!!」
「ゆ、ユーリ…ごめん…」
「……ほら、その子かせ…俺が連れて行くからお前は後から来る敵を頼む」
「わかった」
ルークは素直に女の子をユーリに渡し駆け抜ける体勢に入った。
ここで「いやだ」と言えば怒るつもりだったユーリだが、
素直な相手の反応に少し驚いてしまう。
「じゃぁ、行くぞ……今だっ!!」
ルークとユーリは魔物達の隙を見て走りだした。
一瞬だけひるんだ魔物達だったが、すぐに前を走るユーリに襲いかかるが、
ユーリは片手で軽々と切り倒していく。
後から襲いかかる魔物はルークが切り倒していくが赤い触手も一緒に襲いかかって来た為
ルークは一度足を止めた。
「ルーク!!何してるんだ!!」
「先に行け!!すぐに行くから…」
「……解った。」
仲間のいる地点まではもう目と鼻の先…
この距離なら女の子をそちらへ置いてルークを助けに行く方が早いと判断したので、
ユーリは再び走り出した。
走りだすと今度はユーリの上空を無数の矢が飛び後から襲ってきた魔物を倒していく…
矢を放ったのはこの街に滞在するギルドのメンバー…
そう、昨日大喧嘩をしたギルドのメンバー達だった。
巨大な身体を持ったギルドのボス、メルゾムが笑いながら登場した。
「よう…坊主…大丈夫か?」
「あぁ…助かったぜ…この子を頼む…」
ユーリは騎士団の仲間に女の子を預けるとすぐに走ってきた道を戻るが…
そこに居たはずの多くの魔物はすでに倒されていた…
残っているのは赤い触手の魔物と数匹の狼の魔物…
「全部ルークが倒したのかよ…すげぇ…」
ルークの後姿がまた森で見かけたアイツを思い浮かばせた…
似ているけど…特徴が違う…アイツとルークの関係が全く見えてこなかった。
ユーリがルークの後ろ姿に見とれていると数匹の狼がルークに襲いかかる。
「ルークっ!!!」
「ッチ…これでもくらいな…岩斬滅砕陣!!!!」
剣で大地に衝撃を与えると数多の岩石が飛び同時に襲ってきた魔物達を吹き飛ばす。
ユーリは慌ててルークに近づくがルークは何処も怪我をしていなかった。
「言っただろ?大勢の相手するときは立ちまわりなんだよ…」
「ははっ…お前余裕だな…心配して損したぜ…」
ルークの笑顔に吊られユーリも笑う。
そして二人同時に走り仲間のところへと戻った。
「ルーク!!無茶をするな!!」
「悪い…ユルギス…」
「はぁ…もういい…撤退するぞ…」
ユルギスの言葉にほとんどの団員が頷いたが、
ルークとユーリだけが首を横に振った。
「……それはできない相談だよな…」
「あぁ…あの赤いやつ…このままにしてられねぇよ…」
ユーリとルークは前線に立っているメルゾムの横に並んで立つ。
ユルギスが二人の名前を叫んでいるが二人の耳には全く届いていない…
「いいのか?二人とも…」
二人は何も答えずにただ剣を魔物に向ける…
それが二人の答えだ。
メルゾムは二人の答えを受け取り同じく身構えるが、
魔物達は森へと逃げ帰って行った。
そしてそのあとを2匹の軍用犬が追いかけて行った。
「お、おい…お前ら待てっ!!!………ランバート?」
ユーリと目が合ったのはナイレンの相棒犬であるランバートだ。
ランバートの目はユーリに何かを訴えているような目をしている…
そして、その鋭い瞳をユーリから森へ移すを仲間を追いかけるように走って行った。
「ランバート!!待てって!!おい!!!」
「ユーリ…行くぞ…ランバート達だけじゃ無理だ」
「…ルーク!!ったく…人の話を聞けよ…」
ランバートの走って行った道をルークをユーリは追いかけ、
そしてそのあとをギルドのメンバー、騎士団の仲間数名が追いかけて行った。
街へ戻ってきたユーリの顔は暗くて…苦しそうな表情をしている。
重い身体…重い剣をなんとかひっぱり騎士団の門の前まで到着し
重かった剣に目を移す…綺麗に拭きとったが罪を流すことはできない…
「くそっ!!」
ユーリは持っていた剣を地面に叩きつけ騎士団の門を開けると
そこには小さな子犬がちょこんとお座りをして待っていた。
「ラピード…」
ラピードはユーリに駆けよるとユーリが捨てた剣の匂いを嗅ぎ、
誰か大切な人を探すように辺りを見回し森の方を見つめた…
ユーリは知っている。
ラピードが誰を探しているのか…誰を待っているのかを…
そしてもうラピードの元へは戻ってこないことを…
お座りをして待っているラピードを抱きかかえると
ラピードの小さな背中に顔を近づけ小さな声で呟いた。
「ラピード…ごめん…俺…お前の父ちゃんを…」
その言葉をラピードが理解したかは解らないが、
優しくユーリの頬を舐める。
ユーリの瞳から何かが流れたが、それは降り出した雨なのかそれとも別の物なのか
はっきりとはわからない…。
ユーリがラピードを抱えているとすぐそばに誰かが居ることに気がついた。
見上げてみるとそこに居たのは赤茶色の人物…ルークだった。
「ユーリ…その…ごめん…」
「ルーク……何でお前が謝るんだ…?」
ルークは何も言わずにユーリに飛びつき
ユーリの胸に顔を埋め、背中に回した手はしっかりとユーリの服を掴んでいる。
両手でラピードを抱えていたユーリは抱き返すことができなかった。
「だって…俺がもっとしっかりしていたら…お前にあんなつらい役目押し付けなかったのに…
俺が森へ入らなかったら…お前の忠告聞いて戻っていたら…ごめん…ほんと…ごめん…
ラピードごめん…俺お前の父上を守ってやれなくて…助けてあげれなくて…ごめん…」」
ラピードを片手だけで持ちルークの顔を無理やり上げさせると
その顔はぐちゃぐちゃになっていて…普段とは全く違う表情だった。
「……俺が選んだ道だ…お前が謝る必要はねぇよ…お前は本当に優しいやつだな…」
瞳から流れた涙を片手で拭きとるとまたユーリの胸に顔を埋めた。
このままここにいると二人ともずぶぬれになってしまうので
ユーリはルークに優しく声をかけた。
「ほら、部屋戻るぞ…」
「やだ…戻りたくない…一人になりたくない…」
ルークの両手はユーリの服をますます強く掴む。
ユーリはため息をつき、ルークの頭を優しく撫でると
ラピードとルークを連れて騎士団の中へと入っていった。
ふと、目を開けると飛び込んできたのは赤茶色の色…
その色の持ち主はすやすやと気持ちよさそうに眠りに入っている。
その両手にはラピードを優しく、大切に抱えながら寝ていた。
ユーリはその姿に頬を緩ませると自分達の身体に毛布が掛かっていることに気がつき、
起き上がると目の前にいたのは朝から森へでかけていたナイレンだった。
「隊長……その…すみませんでした…」
咥えていた煙管を口から離し、ユーリの方を向くとナイレンは静かに口を動かした。
「謝ることはない…ランバートのことすまなかったな…辛いことを押しつけたな…」
「いや……俺は自分で選んだから…しょうがない…けどこいつが…」
ユーリが隣で寝ているルークに目を向けると、
ナイレンもそれにつられて目を向けた、
そしてユーリの言っている意味を理解したのか深いため息をついた。
「優しいやつだからな…そこがいつか命取りにならないか心配だ…
そろそろ部屋に戻れ…風邪ひくぞ。」
「……こいつを置いては戻れねぇし…今は戻りたくない。」
「……………解った、風邪ひくなよ」
ナイレンが立ちあがり犬小屋を出ようとした時、
小さな声がナイレンの耳へ届いた。
「………ゆ……り…どこ………?」
「ルーク…どうした?俺ならここにいるぞ…」
半分だけ開いた瞳がユーリを探し、
ユーリの姿をその瞳でとらえると嬉しそうな表情をしてまたその瞳を閉じる。
片手ではユーリの裾をしっかりと握りしめている。
「……驚いたな。そいつ中々人に懐かないやつなんだが……
お前になら……任しても大丈夫そうだな……」
「何のことだ?」
「いや…今はまだ早い…近いうちにゆっくり話そう…
しばらくそいつらの傍にいてやってくれ…さびしがるだろうからな…」
ナイレンの言う【そいつら】に目を向けると気持ちよさそうに夢の中へと落ちており、
その寝顔を見るとさっきまで冷たかった心がゆっくりと温かくなる。
「あ…そうだ…毛布さんきゅー。二日も続けて悪かったな」
「二日も…?俺が毛布をかけたのは今日が初めてだが?」
「え?じゃぁ…あのひよこ模様入りの毛布は誰の…?」
ユーリの言葉にナイレンは犯人が誰か解ったらしく
言葉にならない笑みを浮かべながら犬小屋を去って行った。
一人まだ犯人が解らず途方に暮れていたユーリは
再び夢へ落ちる為に横になり目を閉じた。
落ちて行く最中に何処からかまた聞き覚えのある音が聞こえてきた。
いや、今まで聞いた音は誰かの唄声だったが、
今日は機械の音…オルゴールのような音だった。
誰が鳴らしているのだろう…何て言う曲なのだろう…
いろいろなことを思いながらユーリは夢へと落ちていった。
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