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旭屋本舗
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遠くの方から子犬の泣き声が聞こえてきた…
何かを知らせようとして必死に鳴いている…
ルークの意識はその声につられどんどんと近くなり、重い瞳を開かせた。
周りを見渡せば自室ではなく軍用犬の小屋…
何故ここに居るのかわからず、
昨夜のことを必死に思い出しているとまた子犬の鳴き声が聞こえた。
「ラピード…?ラピードどうした!?」
ラピードの声を聞き思い出す…昨夜のことを。
魔物に取りこまれたラピードの父、ランバートのことを…
仲間達に襲いかかってきたランバートを止めたのはユーリであることを。
一緒に寝ていたはずのユーリの姿を探すが、辺りを見回しても見つからない。
時刻を見ようとして窓の外を見るが曇っているため太陽の位置で時刻がわからない…
とりあえずルークはラピードが吠えているところへ駆けだし、
そこにあった風景を見て唖然とした。
小屋の外では雨の中ユーリとフレンが馬乗りになって殴り合って喧嘩をしていた。
フレンは確か先日から帝都の方に援軍を頼みに出張していたはずだ…
戻るにしては予定より早すぎる。嫌な予感がルークの頭をよぎったが今はそれどころではない。
二人は確かに仲は良い方ではなかった…しかし、殴り合いの喧嘩をするほど
仲が悪いわけでもなかったはずだ…心のどこかでは認めている…そうルークは感じていた。
二人の間に何があったかわからないがこのまま殴り合いをさせるわけにもいかず、
ルークは犬小屋を飛び出しフレンの上になっていたユーリの腕に飛びついた。
「ユーリやめろっ!!喧嘩なんかしても意味ねーよ!!」
「うるせぇ!!お前は引っ込んでろ!!」
ルークに止めるなと叫んでいると、その隙を見てフレンがユーリの身体を蹴飛ばした。
蹴飛ばされたユーリは地面に尻もちをつき、ルークは無意識にユーリの手を離し飛ばされずに済む。
ユーリはフレンを睨みつけすぐに身体を起こしフレンへと殴りかかったので
ルークは慌てて今度はフレンとユーリの腕に飛びついた。
「二人ともやめろって!!」
飛びついたルークに二人同時に罵声が飛びだしルークが飛びついて止めようとした腕を
勢いよく払いのけた。
「離せって言ってるだろうがっ!!」
「ルーク、離せ!!!」
「うわっ!!!…っく…っあ!!!!」
二人同時に払われた腕はルークの身体を軽々と飛ばし、ルークの身体は壁にぶつかった。
ルークの悲痛な声に我を取り戻したフレンとユーリは慌ててルークの元へと駆け寄った。
「お、おい…ルークっ!!しっかりしろ!!」
「ルーク!!大丈夫かい!?ごめん…君は無関係なのに…」
壁に頭をぶつけた為意識が朦朧として居る中でルークは二人の手を掴み力のない瞳で睨みつける。
「仲間同士で喧嘩するなよ…あと…俺は無関係じゃねぇ…俺達は…な……かま……」
ルークの口はそこで止まってしまう。
ユーリとフレンは顔を真っ青にしながら何度もルークの名前を呼ぶが反応はない。
そこにラピードの声を聞きつけてやってきたヒスカとシャスティルによってルークは医務室へと運ばれた。











予言ノ唄【TFS04】









「お前ら…何回そこに立たされたら気がすむんだ…」
ユーリとフレンは騎士団内で殴り合いの喧嘩をした為
ナイレンの部屋にまた呼び出されてしまった。
怪我をしたルークはまだ医務室で寝て居るためここには居ない。
「とりあえず…風呂入ってこい…話はそれからだ」
「そんな悠長なこと言ってられるのかよ!!」
ユーリがナイレンに食い付くとフレンが辛い顔をしながらナイレンに報告をした。
「式典が終わってから…援軍を出すそうです…それまで現場を保持せよと…」
「はぁ!?」
「そうか…辛い役目をさせてしまったなフレン…悪かった…」
「いえ…」
帝都でかなり辛いことを言われたのか
普段のフレンらしさはどこにもなくただ落ち込んでしまっている。
フレンのことも気になったが、ユーリは別に気になっていることがあったので
重い口を動かしナイレンに問いかけた。
「なぁ…隊長…ルークは?」
「あぁ…あいつはあの程度でくたばる身体じゃないから安心しろ…
 さっき顔見に行ったら【受け身を失敗した自分が悪いから二人を責めるな】って言われたばかりだ…」
「ルーク…あいつらしいな…」
ユーリにはルークがナイレンに向かってそんなことを言っている姿がすぐ目に浮かぶ。
ただこの数日間しか一緒にいないのに何故か安易にルークの行動などが思い浮かぶ…
まるで前世…いや、違う世界でもずっと一緒だったかのように…
ルークの様態を確認できユーリの肩の力が少し抜けると、
ナイレンが笑いながらユーリに話しかけた。
「そんなにあいつのことが気になるのか?……お前、惚れたのか?」
「ば、馬鹿いうんじゃねぇよ!!あいつは男だろ!?
 俺は男にそんな趣味は…………ねぇ……よ……」
ナイレンに指摘され顔を真っ赤にさせ反論を述べたが、
後半になるにつれ言葉に自信が無くなっていくのがわかった。
「どうした?いつもの自信はどこにいったんだ?」
「うるせぇな…俺だってわかんねぇよ…俺がどうしたいとかなんて…あいつは男で俺も男で…
 って、今はそんな話じゃねぇだろうが!!」
「ははははは…そうだったな、すまん。しかし若いってのはいいもんだねぇ…」
ナイレンの横にいた相談役のガリスタが一つ咳払いをし話を戻すように指示を出し、
それに気がついたナイレンは苦笑いをして話を戻す
「そうだな…明日朝から前から睨んでいた湖の遺跡調査に出る」
「本当か!?」
「待ってください!!本部の命令は現場を保持せよとの命令で…」
「俺達の使命はこの街を守ることだ…一刻の猶予もない。」
「………………。」
そこからフレンの父親の話や作戦の指示などを話されユーリとフレンは命令通り
風呂場へと向かったが、その間二人に会話らしい会話は全くなかった。











その夜ユーリは眠れなかった…
明日の作戦のこと、何よりルークの事が気がかりで寝付けない。
医務室から自室へ戻ったらしく心配だがこんな遅くに怪我人の部屋には行けなかった。
昨夜ルークと一緒に寝てその温かさがユーリの腕にしっかりと記憶されている…
複雑なため息をつきながら向かったのはナイレンの部屋。
こんなことを話できるのは隊長以外居ない。
もうすぐナイレンの部屋に着くというところで、
目的の部屋の前で二人の人物が話しているのを見つけた。
影からこっそりのぞいているとその人物はナイレンとルークであることがわかった。
ルークの頭にはまだ包帯が巻かれていてユーリの胸に重いものが圧し掛かる。
「頭の怪我…大丈夫か?ユーリが心配してたぞ。」
「あぁ…これくらい大丈夫…ユーリが…?明日の出発の時謝るよ…」
怪我をしているのにルークは明日の作戦に一緒に行くつもりのようだ…
ナイレンが止めてもルークは絶対についてくる…そんな気がした。
それを理解しているナイレンはため息を一つつくだけでそれ以上それについては何も言わなかった。
「お前…ユーリのことどう思ってるんだ?」
「………あいつは…そんな遠くない未来…世界を変える存在となるよ…」
ルークの言葉にユーリは自分の耳を疑った。
ただの一人の騎士団員に世界を変える力なんてあるはずがない…だが、
ルークの目に迷いはなかった…ただ本当にそれを解っているかのようだった。
「…それはお前がいつも言っている予言ってやつか?」
ナイレンはいつももっている煙管に右手につけてある銀色の魔導器で火を付け煙を吹かす。
しばらく黙ったままだったルークの口がゆっくりと動き言葉を発した。
「いや…これはただの感…いつもの予言じゃねぇよ……」
「だったら、お前が急に俺のところを訪ねてきたのは…何か悪い予言でも見たからか?」
「………それは…」
ルークの口が再び止まり何も話さなくなった。
ユーリには二人の会話が理解できなかった…予言というのは何なのか…
二人の関係がただの隊長と騎士団員には見えない…ユーリの頭はどんどん痛くなっていく。
「………そういえば、いつも付けてた金色の魔導器どうしたんだ?」
「あぁ…あれか…調子が悪くてな…新しいのを新調したんだ」
よく見ればナイレンがいつも腕に着けていたのは金色の魔導器だったはずだが、
今日は確かに銀色の魔導器を見に着けていた。
「ふーん…あれ結構狙ってたのにな…」
「いつかお前のところにいくさ…」
「え?まぁいいや…明日早いし俺寝るわ…おやすみ」
ルークとナイレンは手を振りおやすみのあいさつをするとナイレンは自室へと入り
ルークは自室へ続く廊下を歩きだした。
それはユーリが影で隠れていた方向だった為すれ違う時に見つかると思ったが、
ルークはユーリに気がつかずまっすぐ自室へと向かう。
すれ違う時にルークは小さな声で呟いていた。
「絶対に変えてやる…あんな予言俺が変えてやる…」
ユーリは何のことがわからずただぼんやりとルークの後ろ姿を見つめるしかなかった。
ルークの背中はユーリに比べとても小さい…
だが、その背中にはユーリが抱えているものよりも多くのものを抱えていることがわかった。
ユーリはルークのことが気になったが、当初の目的であるナイレンの部屋を訪ねることにし、
ナイレンの部屋をノックしようとしたが、中から聞き覚えのあるメロディが聞こえてきた。
それはここ数日いつも聞いているメロディ…
最初は誰かの唄声だったが、ここ数日はオルゴールのような機械音…
誰が鳴らしているのかわからなかったが…確かに今日は部屋の中から聞こえている。
ユーリは決心をしてナイレンの部屋を叩いた。

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