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旭屋本舗
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ひたひたと体中に嫌な雨が降り注ぐ…
この辺りに近づいてからずっと降り注ぐ雨…
普通の雨ではないことは一目瞭然だ。
そんな雨の中を馬に乗ってやってきた一人の乙女。
乙女は馬を街の入り口に繋ぎカプワ・ノールへと入って行った。




破壊ノ詩 Ⅰ【TFSV03】




騎士団本部内にある食堂で赤い髪の少女達が疲れた顔をしながら
ぐったりと椅子に腰をおろしていた。
少女たちの顔は鏡のようにそっくりで、一目見ただけで二人は双子と判断できる。
「はぁ~…やっとお昼…今日も疲れた~…」
「けどヒスカ…今日は合コンだよ、合コン!!がんばらなくちゃ」
「そうねシャスティル…久しぶりの合コンだもん!!がんばって彼氏ゲットよ!!」
シャスティルとヒスカの目は輝きを取り戻し、
頼んだばかりのヘルシー定食を二人揃って食べ始めた。
「けど…最近ほんと合コン不成立よね…それもユーリのせいなんだから!!」
「全く…うちのルーク隊長の評判落とすから…あーーーーームカツク!!!!」
メラメラと怒りに燃えている二人の後をシャスティルとヒスカとは別の朱い髪の乙女が通りかかった。
「何を怒ってるんだ二人して…」
「「る、ルーク隊長!!!」」
後ろから聞こえた声に驚き振り返ると、そこには自分達の所属している隊の隊長である
ルーク・フェドロックがランチを手にして立っていた。
二人はいそいそとルークの席を開けるとルークは笑顔で「ありがとう」と言った。
「で?何に怒っているんだ?愚痴なら聞くぞ」
「あ…いえ…あの…」
「えっと…最近の男はヘタレが多くてムカツク!!って話をしていたんですよ!!
 隊長もそう思いません?」
「はははは…確かにそうかもな…」
二人の会話を本当に聞いていなかったのかルークは二人の嘘を笑って聞いていた。
本当はユーリの愚痴を言っていたが…ルークにそのことを言えるはずがなかった…
ルークとユーリは親友以上恋人未満の複雑な関係だが…二人ともお互いを意識している…
どこまでの関係かは周りは知らなかったが…二人をよく知る人達は二人をそっと見守っている。
そんなユーリに思いを寄せているルークにユーリの悪口を言うのはダメだと思ったから
二人はごまかしたのだった…
それだけではない、今ユーリは全地域で指名手配をされている。
先日は騎士団の上層部からユーリについてルークが呼び出しをくらったばかりだった。
普段と変わらない明るさで過ごしているルークだったが…内心は違っているだろう…
そんな気遣いからか今ルーク隊内ではルークに対してユーリの話をするのはご法度とされている。
ルークのことだから何をしでかすかわからないからだ…ユルギスの胃の為にも…
「そーだ。ルーク隊長、今日私たち合コンに行くんですけど…隊長も来ません?
 たまには気晴らしにぱーっとしましょうよ♪」
「そ、そうそう。たまには気晴らししましょうよ」
「いや…俺まだ未成年だし…」
そんな他愛もない会話を三人でしていると、
後からよく聞くコンビの会話が聞こえてきて三人の会話は止まってしまった。
「全く…ユーリ・ローウェルにも困ったものであ~る」
「エステリーゼ様を誘拐なんて…大悪党なのだ」
「誘拐という話であるが…噂では駆け落ちって噂であr…「「ちょっとあんた達!!!!!!!!!!」」
三人の後を通ったのはたまたまランチをしようとしていた
アデコールとボッコスの二人だった。
二人の会話…根も葉もない噂話しを耳にしたヒスカとシャスティルは大声でアデコールとボッコスに向かって叫び、
その瞬間うるさかった食堂が時が止まったように静かになった。
「あんた達そんな信憑性もない噂話本気で信じてる気!?」
「そうよ!!ユーリが駆け落ちなんてするはずないじゃない!!」
「そんなくだらない噂話する暇あったら仕事しなさいよ!!」
「あぁ…そっか…だから…」
「「出世逃すんだ」」
シャスティルとヒスカからの酷い言葉に最初は口を開けて聞いていたアデコールとボッコスだったが、
我に返り顔を真っ赤にしながら二人に言い返した。
「何を言うか!!我らシュヴァーン隊を愚弄する気か!?」
「そもそも大罪人の肩を持つなんてルーク隊も落ちぶれたものであ~る!!」
「「何ですって!!??」」
「やめろ…二人とも…」
それまで静かにランチをしていたルークが静かに部下を止めるとアデコールとボッコスに謝罪を述べた。
二人の妙な噂を耳にしてルークに変なスイッチが入ったのかと思っていたが、
特にそんなスイッチは入っていなかったようだ。
「うちの部下が失礼な発言をしてすまない…二人とも元隊員のことを心配してのことなんだ…許してはくれないか?」
「うっ…る、ルーク隊長がそのようにいうのならば…」
「わ、我々も大人気なかったであ~る…」
二人の言葉にルークは笑顔で返すと、食器を所定の位置に返すとシャスティルとヒスカを急がせた。
「ほら、二人ともさっさと食え。仕事だぞ…」
「え?でも…見回りも終わったし…今日の仕事は特に…」
「今日の仕事はな…けど明日からの分を今からするんだ…」
「「はい???」」
シャスティルとヒスカは同時に同じ方向へ首を傾けた。
ルークの言うことがいまいち理解できなかったからだ…明日の分を今日する…
何か急な用事でもあるのだろうか…いや、ルークにそんな用事は今のところなかったはずだ…
今のところは…
「ふふふっ…駆け落ち…駆け落ちねぇ…良い根性してるじゃねーか…あのエローウェル…
 俺が直々に捕まえてその曲がった根性叩き直してやる!!
 いいか、二人とも!!しばらくの間家に帰れるとは思うなよ!!」
「「えぇ!?久しぶりの合コンがあぁ~…」」
ルークの燃える目に反論などできずシャスティルとヒスカはがっくりと肩を落とした。
入っていないと思っていたスイッチは静かにやはり入っていたようだった…






「ということがあったらしい…」
「どーいうことだそれは……」
ユーリ達がカプワ・ノールへと入りフレンと合流しラゴウの家へと侵入作戦を練っていた時、
ふとフレンが思いだしたかのようにユーリにそんな会話を話し始めた。
ユーリには大体の流れは想像できたが、エステル・リタ・カロルには全く流れが掴めていなかった。
「私とユーリが駆け落ちです?」
「アンタ…バカ?」
「ってかルークさんって誰?」
三人にルークの説明をするのは今は面倒だったので
ここではあえて置いておきフレンの会話の続きを聞くことにした。
「で?それからあの隊長さんはどうしたんだよ」
「長期休暇を取ったらしい…いやもぎ取ったが正解か?」
「おいおい…」
フレン曰くユーリを追いかける為に約一カ月分の仕事を数日で無理矢理終わらせ、
上層部の反対を押し切って長期休暇をアレクセイに申し出てもぎ取ったらしい…。
そんな無茶をするから変な伝説ばかり残るんだとユーリは呟いた。
「で?あいつ今どこに居るんだよ…」
「目撃情報によると君たちの後を追って行き…先ほどこの街の入り口で
 ルーク隊長が使ったと思われる馬が見つかった…多分この街のどこかにいる…」
「まじかよ…」
ルークのことだから無茶をしてユーリ達の後を追いかけていたのだが、
どこかでユーリ達を追い越して先にカプワ・ノールへとたどり着いてしまったのだろう…
もしかしたら暗殺者達より危険な存在かもしれない…
「ユルギス副隊長達がカンカンになって怒ってたぞ…
 ルーク隊長を見つけたらすぐに戻るようにユーリから伝えろと…伝書鳩で伝えてきている」
「俺の言うことなんて聞くのかねぇ…つーか俺の心配しろよ」
自業自得だとフレンはきっぱりと言い放つと
ユーリはがっくりと肩を落として宿屋を後にした。
周りを少し気にしながら…もしかしたらルークのことだから
ラゴウの家に突撃していて向こうで出会ってしまうかもしれない…ユーリはそう考えた。
「ねぇユーリ…そのルークさんとはどういう関係なの?」
「お子様にはまだ早い」
「ルーク…ルーク…どこかで聞いたような…」
エステルが何かを思い出そうと必死になっていたが
ラゴウの家に着いたので作戦を開始した。
そして謎のおっさんレイヴンの助け…いや邪魔に会いながらも
なんとか屋敷内に騎士団を入れることに成功したユーリ達は
船で逃げようとするラゴウを追いかけて船へと突入した。
しかし、こんな大騒ぎになってもルークは現れなかった。
下町でちょっとした喧嘩が起きただけでも
隊長という立場とか関係なしに飛んでくるルークだったが…
今回は姿形も見えない…もしかしたらもうこの街を出ているのかと
ユーリはそう考え始めていた。
「ちょっと…何これ…魔道器の魔核ばっかりじゃない…」
リタが船の上にあった箱を調べていると中から魔核ばかりが見つかり
大きな声をあげて驚いていた。
ユーリも一緒になって中を見てみたが…下町の水道魔道器の魔核はどうやらないらしい…
「じゃぁ…こっちの箱には何が入ってるのかな…隙間だらけで何も入ってないっぽいけど…
 うわああああああああぁっ!!!!!!!!!!!!!」
近くに置いてあったみすぼらしい箱を見つけ、
面白半分で蓋を開けてみたカロルだったが中身を見た途端大声で叫び腰を抜かした。
「どうしたカロル!!」
「人が…中から人がっ…も、もしかして死んでたりする!?」
「何だとっ………なっ……!!!」
ユーリが箱の中を覗くと中に居たのは朱い髪の乙女…
そう、ユーリ達より先にこの町に来ているはずの乙女だった…
「る…ルーク!?おい!!しっかりしろルーク!!」
ユーリはルークの身体を持ち上げ身体を揺らしたが、
ルークの腕はゆっくりと力なく床へと落ちていきユーリの顔は真っ青になった…

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