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旭屋本舗
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「はぁ~…」
ここはガルバンゾ国にある騎士団の一室。
騎士団には隊が集まる大部屋が一つ与えられている。
そこは騎士達が報告書や始末書など事務関係をする為に使われている。
ルークがいるこの大部屋もとある隊の為に与えられた部屋で、
早く片付けてしまわないといけない書類がルークの前にはあるのに
今朝発行された新聞から手を離すことができない。ため息も止まらない。
「はぁ~…ついにか…」
「何がついになんだ?」
「ふぇ!?ゆ、ユーリ!?」
いきなり自分の後から声が聞こえ振り向くとそこにはユーリが昼飯と思われる袋を持って立っていた。
「い、いつからそこに!?」
「さっきから。お前…騎士のくせに気配を見逃すとか…何考えてたんだよ」
「お、お前には関係ないだろ…」
ルークはさきほどまで見ていた新聞を急いで片付けようとしたが、
ユーリに取り上げられてしまった。
「なになに?『星晶採取による森の変化』『ライマ国の王女と公爵家嫡男の婚約正式発表』
『今日のお勧めメニュー』…特に目立った記事なんてないだろ?どうしたんだ?」
「だから…お前には関係ない…」
不貞腐れた顔をしてユーリからそっぽを向くその姿はどこか可愛らしい…
ユーリは少し幸せそうな顔をしながら持っていた袋から一枚の紙を取り出し
ルークの目の前に差し出した。
「何だこれ?」
「ん?鎧の新調書。お前また胸でかくなって苦しそうだったから貰ってきてやった」
不貞腐れていたルークは今度は立ちあがりユーリに向かって怒鳴りだした。
「おまっ…!!!そういうのをセクハラっていうんだぞ!!よくもまぁ、上司に向かってセクハラできるよな!!
つーか俺の胸はでかくなってねぇ!!」
「そうか?どれ…」
「ひっ!!」
平然とした顔でユーリはルークの胸を軽く触る…
触られたルークはぷるぷると震えて驚きと怒りで動けない…
「うーん…やっぱり1カップでかくなってるぞ…成長期なんだからしょうがねぇよ。
ほら、大人しく新しいの新調しろって…あぶねぇ!!!」
怒りのあまり動けなかったルークだったがやっと我に帰りユーリに左ストレートを食らわせようとしたが、
見事にかわされてしまった。
「おまえ…今日という今日はゆるさねぇからな!!」
「別に未来の嫁の胸くらい触っても減るもんじゃないだろ?」
「何時から俺はお前の嫁になったんだ!!!」
「出会った頃から」
言葉だけ聞いていれば惚気としか思えない会話だったが、
ルークがキックやパンチをユーリに向けて攻撃し、それを上手い具合にユーリはかわす…
他人から見れば迷惑な夫婦喧嘩だが、二人はまだ結婚していない。
はやくこの喧嘩を止めないと部屋がめちゃくちゃになってしまうが、
この隊にはこの二人の喧嘩を止めれる人物は存在していなかった…
唯一止められる人物…それは…
「ルーク!!ユーリ!!何をしているんだ!!」
金髪の青年が隊の大部屋に入って来て喧嘩の中心である二人の名前を叫んだ。
「げっ…フレン…」
「あ、フレン…だってユーリがっ!!」
「だってもじゃない!!ルーク様…自分の立場をわかってください!!」
「うぅ~…はぁ~い…」
ユーリの言うことは全く聞かないルークだったが、何故かフレンの言うことだけはしっかりと聞いた。
何でも昔世話になった人物とすごく似ているからとユーリが聞いた覚えがあった。
フレンに怒られルークが不貞腐れているとルークの足元に小さな蒼い塊が寄ってきた。
「わんわん。」
「「………え?犬?」」






子犬と双子






「ルーク様…何をしたかわかりませんがユーリの方が1000%悪いですが…部下達の前であんな派手は喧嘩はやめてください」
「なぁ、フレン…俺とお前同じ隊長なんだから…様を付けるのは…」
「いいえ。同じ隊長でもルーク様と僕とでは違います。僕より先に隊長になられているのですから付けるのは当たり前です」
「フレンは相変わらず真面目だな…」
「わんわん!!」
そう、フレンが訪ねてきたのはガルバンゾ国にある騎士団ルーク隊の部屋。
隊の名前の通りルークが隊長でユーリが副隊長で構成されている。
ルークは16歳という若さで隊長に就任し若い騎士達の憧れの的である。
17歳になった今でも日々伝説を残し続けている…ルークの人気はその若さだけではない。
「あとルーク様…いくら騎士団隊長だからっておてんばがすぎます。たまには女性らしくされないと」
「…だってユーリが…」
「ルーク様の反応が面白くてユーリはちょっかいをかけるんです。反応しなければ大丈夫です」
「わんわん!!」
ルークは女性だ。
口調は男っぽい口調をしているがその立派な胸、細い腰…女性を象徴される部分がしっかりと出始めている。
だが、手入れされていない赤く長い髪…騎士団の鎧はスカートなのでまだ女性とわかるが
普段着はダボダボのズボン、白く裾の長い上着そしてお腹の見えた姿…男性としか思えない格好をしているので
ちょくちょく男性と間違えられていた。
男性と間違えられている原因の一つとして女性と間違えられるユーリがずっとそばにいるのもある。
「わんわん!!」
ルークとユーリはフレンの膝に乗っている子犬に目をやる。
先ほどから気になっていたが、まずフレンの指導が入ってしまい聞けずにいた。
「あぁ…この子ですか?本当はうちの隊に軍用犬として紹介されたのですが…うちにはすでに居ます。
ちょうどルーク様の隊にはまだ軍用犬が居ないことを思い出して連れてきたのです。」
「わんわん!!」
何故か骨を咥えたまま吠える子犬…目つきは悪い…
ルークはこの目つきの悪さを昔どこかで見た気がしているが思い出せない。
「まぁ、確かにうちに軍用犬居ないしな…ってなわけでユーリ頼んだ。」
「何でも俺に仕事振るんじゃねぇよ…軍用犬は主に隊長が飼い主になるんだろ?」
「まぁ、僕のところみたいに違う隊もいるけどね」
ルークは少し考えていたが碧色の瞳はやはりユーリから目を離さない。
「やっぱりユーリが世話するのがいいんじゃ…ほら、ユーリってケーキとか料理得意だし」
「犬はケーキ食べませんよ…」
「つーかそんなもん食わせてこいつ殺す気かお前…」
「え?そうなの!?じゃぁ…メインは魚か?あ、けど俺魚嫌い…」
「「そりゃ猫だ」」
二人同時にツッコミを入れられ少し不貞腐れた表情を見せる。
隊長にまでなったルークだったが、どこか常識が抜けているところがある…
ユーリがルークから目を離せない理由はそこにもあった。
「騎士団から支給されるドックフードを食べさせたらいいんです。あとは毎日散歩させたり…」
「散歩って何処までだ?隣町か?」
「お前の現実逃避するための散歩と一緒にするな…あんな魔物ばっかりの道こいつ生きて帰ってこれねぇよ」
「わふ?」
「だって…俺犬とか動物飼ったことねぇもん…」
ユーリから深いため息しかでなかった…
これはユーリが世話をする選択しか見出されないようだ…ルークに任せたらきっとこいつは一週間も持たない…
そんな気がした。
「ゆ、ユーリ…僕も手伝うからな…」
ユーリの苦労を感じ取ったフレンが救いの手を差し伸べてきた。
ありがたいことだったが…フレンと一緒となると逆に疲れる気がしてならない。
フレンの腕の中にいた子犬だったが、ルークが優しく持ち上げ抱きしめた。
「お、お前結構大人しいんだな…かわいいなぁ~…」
子犬を抱けて嬉しそうに笑うルークのその姿…
年相応の女の子の反応で可愛らしい…その姿を見ていると幸せな気分になる…
ところだったが、ユーリはどうしても目につくところがあった。
「う~…わふ…」
抱きしめられた子犬はルークの福与かな胸に挟まれ身動きが取れない状態である…
表情は特に変っていないが…尻尾がめちゃくちゃ揺れている…子犬だからかわかりやすいやつだ。
「にゃろう…子犬の分際で俺のルークに手出しやがって…」
「動物に嫉妬する君の方がおかしいよ…ところでルーク様」
「ん?何だ?」
抱いていた子犬の頭を撫でながら可愛がっているところにフレンから呼ばれた為顔をあげる
その顔は子犬と遊べて楽しくて仕方がない顔だ。
「頼んでいた書類…できましたよね?」
「…………あ。」
その一言でルークは本日残業が決定した。





「ったく…騎士団に泊りこむのはいいが…休憩室いけよな…」
次の日の朝いつもより早く出勤したユーリは自分達の部屋に入った途端力が抜ける、
何故ならルークは部屋のソファーでぐっすりと眠っていたからだ。
ルークは女性だ…こんなところで寝ていたらどこぞの馬の骨に襲われる可能性だってある。
けど彼女はそんなことを気にしていない…というか知らない様子で
残業で帰れないときはよくこんな状態で眠ってしまっている。
ユーリも昨日は残ると言ったがルークに無理矢理帰らされてしまった…
やはり無理にでも残ればよかったと後悔している。
ソファーの近くに寄るとソファーの下には茶色い小さな塊が散乱している…
拾って調べてみるとどうやらドッグフードのようだ。
傍にドッグフードの袋が残っていたので拾い上げてみると中身はほとんどない。
「こいつ…一日でどんだけ餌やったんだ…」
この餌が散乱しているということはあの子犬もこの部屋にいるはず…
だが子犬の姿がどこにも見当たらない。
ルークを起こさないように探していると…やっと子犬を見つけたが
ユーリは顔に青筋を立てた。
「わふ…」
子犬が居たのはルークの胸の上。
ルークにしっかりと抱きしめなれながら胸の上で気持ちよさそうに眠っていた。
「こいつ…あとでしっかりと躾けてやらないとな…」
犬の躾け方法が決まった。
時計を見るとそろそろ他の騎士達が来る時刻…
ルークの寝顔をもう少し見ておきたいが…他の男に見られたくない。
仕方がないので起こすことにしたが、普通に起こすのは面白くない。
「おーい…ルーク…10秒以内に起きないとキスするぞ~…」
「ん~…あと5分…」
ルークの身体を揺すり起こそうとするが起きる気配がない…
あと10秒以内に起きろといってるのにあと5分とか…悪戯してくださいということなのだろうか。
ユーリは10秒数えるがルークが全く起きる気配がしないため
ルークの顔に少しずつ自分の顔を近づける。
「本当にキスするぞ…あとで怒ってもしらねぇからな…」
ルークとの距離は少しずつ縮んでいく…あともう少しでルークの唇に触れるところで
ユーリの足に激痛が走った。
「いてぇ!!!何だ!?」
足元を見るとルークの上で寝ていたはずの子犬がユーリの足に噛みついている。
「おまえ…そうとう俺とルークの邪魔をしたいみたいだな…今から躾けしてやるよ!!」
子犬は殺気を感じたのかすぐにユーリから離れるとルークの傍へと逃げていく…
そしてタイミング悪くルークが目を覚ました。
「ふあぁ~…あれ?ユーリ…おはよう…」
「………あぁ、おはよう。ほら、朝飯買ってあるから食え」
「ユーリの手料理がいい…お前もそう思うよなラピード。」
「食いたいなら家にこい…作ってやるから。ってラピードって誰だ?」
ルークが子犬を抱きしめながら話しかけている様子から
何となく予想はついたが一応聞いてみた。
「ん?こいつの名前。一生懸命考えたんだ。良い名前だろ?」
「………そうだな」
「あ、こいつの飼い主お前にしておいたから。がんばれよ。」
「そりゃ好都合だ…こいつはしっかりと躾けないといけないからな…」
「ウッ~…ワンワン!!!」
ラピードはルークの腕の中から飛び出すとユーリの足元で吠え出した。
ユーリはめんどくさそうにしながらもラピードのえさの準備をしている。
「ラピードを見たとき誰かに似ていると思ったけど…そうかアッシュだ…」
自分の母国にいる双子の片割れであるアッシュ…
鋭いまなざし、高いプライド…普段は冷たいが何かあればルークを守る優しい性格。
どことなくラピードに似ている気がした。
「アッシュなら…ラピードみたいにキスの邪魔とかもしそうだよな…」
少し残念そうにつぶやくとユーリとラピードの傍へと歩きだした。

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