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旭屋本舗
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久しぶりに入ったその部屋は何も変っていなかった…
俺があいつの世話係として居た頃から何一つ変っていないその部屋。
いつでもあいつが帰って来てもいいように
普段から掃除をしてあるのが一目でわかる。

もうあいつは帰って来ないのに…

0時を知らせる鐘が何処からか聞こえる。
そろそろ戻って明日の準備をしないといけないので
名残惜しくはあったが、その部屋を出ようとしたが…
何処からか聞こえてくる音に足を止められてしまった。





To me after ten years




ガイが久しぶりに入った部屋…ファブレ家にあるルークの部屋。
ルークの部屋から聞こえた音に釣られて音の主を探してみると、
部屋の角…しかも何故か隠すように小さな箱が置かれていた。
箱の蓋を見ると今日の日付になっている。
これは指定したその日になれば鍵が開くという仕組みの音機関だと推測できた。
鍵が開いた証として先ほどの小さな音が流れたのだろう…
ガイは小さな箱を開けてみると中には数枚の手紙が入ってる。
宛名を見てみると汚い字で【10年後の俺へ】と書かれていた。
「今から10年前って言えば…ルークが14歳前後の頃か…」
あまり良い気はしなかったがガイはベッドに腰をかけて手紙を読み始めた。




10年後の俺へ

10年後の俺へ、元気ですか?俺は元気です。
きおくそーしつになってからお医者さんに言われたとおり
毎日がんばって日記もつけてます。
けど、面白いこともないし毎日がおなじような日記になってます。
10年後の俺はもう大人になってるから
屋敷の外にもいっぱい遊びに行けてるよな?
俺もはやく自由に外で遊びたい…
ガイと遊んだり師匠と稽古するのも楽しいけど。
外が見たい…外で遊びたい…
外の世界はどんなのですか?
いっぱい人がいますか?
天気は晴れてますか?
10年後の俺はいっぱい外で遊べてると思うのでうらやましいです。
ナタリアとの約束思いだせましたか?
俺は未だに思い出せません。
会うたびに怒られてうぜーです。
長くなりましたがこれにて失礼します。

ルーク・フォン・ファブレより



「天気は晴れてますか?って…それは屋敷の中でも外でも変らないって…」
字が書けるようになった嬉しさからかこの手紙を書いたのだろう…
綴りが間違いだらけだが…なんとか読める字だ。
ルークの可愛さに笑いが出たガイだったが、
この手紙からどれだけ外に憧れていたかがわかった…
これを書いた数年後ルークは旅をすることになる。
願ってもない外の世界…けどそれは彼の人生の終焉を迎える旅でもあった。
「ルーク…もっと外の世界楽しみたかったよなぁ…世界を救う旅とかじゃなくて
観光とか…もっと気軽に遊びに行きたかったよなぁ…」
ルークが居なくなってから何度流したのだろうか…
最近は涙が出ないくらい落ち着いていたのに…
ガイは他の手紙を読み始めると
その中には自分宛の手紙も入っていた。



10年後のガイへ

10年後のガイへ、元気ですか?俺は元気です。
10年後も俺達はずっと一緒ですか?
外の世界に出た俺は元気ですか?
ガイの言う音機関の街に俺は行きたいです。
ガイなら外に出れるようになった俺を
一番に連れて行ってくれそうだけど…
これからも俺と仲良くしてください。

ルーク・フォン・ファブレより



「はははっ…俺への手紙短いな…」
短い手紙だったが、ルークの素直な気持ちがとてもわかった…
まだこのころは性格が曲がっていないのか…と思ってしまうくらい
素直な気持ちが書かれている…手紙だから素直なのかもしれない。
他にも両親への手紙、メイド達への手紙、ペールへの手紙…
などなど屋敷の人達宛の手紙が箱の中に詰められていた。
そして一番底にあった手紙には宛名が書かれていなかった…
不審に思い中身を読み後悔をした。
「あのバカッ…ナタリアへの手紙なのに宛名書きわすれてやがる…」
宛名が抜けていた手紙はナタリアへの手紙だった。
最後に書いたから忘れたのか…またはあえてなのかはわからない。




10年後のナタリアへ


10年後のナタリアへ、元気ですか?俺は元気です。
ナタリアがいつも言ってる約束…思い出せましたか?
今の俺はまだ思い出せていません。
ごめんなさい…
けど、きっといつか思いだすので待っていてください。
10年後の俺達はもしかしてけっこんとかしてますか?
もし、結婚していたら…ナタリア、おめでとう。
幸せになってください…って俺が幸せにしないといけないんだよな!!
こんな俺だけどずっとずっとこれからもよろしくおねがいします。

ルーク・フォン・ファブレより




「これ…ナタリアが読んだら泣いて喜びそうだな…」
本人より先に読んでしまったことに怒られてしまいそうだが、
それは仕方がない…と思う。
「ほんと…なんで鍵を開ける日が今日なんだろうかねぇ…狙ってたのか?あいつ…」
旅を終えてから赤毛の青年が帰還した…
けれど彼はガイの待っていた青年ではなかった。
その時わかった…もう彼は戻ってこないのだと…
今でも瞳を閉じれば鮮明に思い出せる…
あの朱い(あかい)髪…碧の瞳…自分より少し低い身長…たまに生きているかのように動くヒヨコ頭。
少し高い声で笑うあの笑顔…拗ねた表情…怒った表情…泣いた表情…最後のあの寂しそうな顔。
こんなにも自分は彼のことを思っているのに…彼は戻ってきてはくれなかった。
「ったく…親友をもっと大切にしろよな…」
部屋の時計を見るとかなり遅い時間になってしまっていた。
そろそろ寝ないと本当に明日…いや今日の予定に支障がでてしまう。
「この手紙はサプライズな祝辞だな…」
今日はキムラスカにとってとても大切な日。
新しい王と王女の誕生日。
彼と彼女の結婚式。
彼らの子供はどんな子なのだろう…
やはり髪の毛は紅いのだろうか…いや母親に似て金髪かな?
そんな温かい想像が生まれ冷たくなった心が少しあたたくなる。
「ルーク…一緒にお祝いしてやろうな…」
傍で彼が笑った気がした。
ガイは小さく微笑みながらルークの部屋をあとにした。
願わくば…もっと彼とこの部屋で…過ごしたかった…と心で思いながら…





ベッドのシーツを温かい太陽の匂いに包まれたシーツに変えていると、
急に背中に何かが乗ってきた。
首だけを背中に向けると見えたのは小さな朱い髪。
「おい…降りろって…お前のベッドのシーツ変えてるんだから」
「やーだぁーえほんよんでくれなきゃやぁだー」
「はいはい…読んでやるから降りろって」
「やったぁ~♪」
小さな朱い少年は背中から降りると
水色のチーグルのぬいぐるみ…いや、ぬいぐるみ型のりゅっくから本を取り出し
瞳を輝かせながら手にした絵本を見せた。
「またこの絵本か…お前も好きだねぇ…」
「うん!!だって、ちちうえとおじうえがでてるんだもん。おれこのはなしだいすき!!」
朱い少年は太陽のような笑顔で笑った。
よほどこの絵本が好きなのだろう…この前買ってもらったばかりなのに
すでにボロボロになりだしている…一日何度も読んでいたら仕方がない。
しかも外へ出かける時も持っていく。
あの専用のチーグルリュックに入れて持ち歩くから困ったものだった。
「言っておくが、この話には俺も出てるんだからな」
「うん、しってる。ガイもカレーにかつやくなんでしょ?」
「カレーじゃなくて華麗にな…まぁ読んでやるからここ座れ」
「うん!!!」
朱い少年はガイの膝の上に座ると慣れた手つきで絵本を開いた。
「えっと…『むかしむかし、この世界には【予言】が存在しました。
ある時その【予言】を恨む青年が現れました。その青年は【予言】とこの世界を消そうとしていたのです。
この物語は世界を救う為に活躍した、二人の紅き青年とその仲間達の物語です…』」

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