旭屋本舗
ようこそいらっしゃいませ。
腐向けサイトですご理解のある方のみどうぞ。
始めての方はカテゴリー【What】をお読みください。
「あそこに今回狙う魔核があるわ…」
「ん?兵隊達が警護している宝物庫とは全然違う場所じゃねぇか…」
「そんなの知らないわよ。あそこの部屋から反応あるんだから!!」
「へいへい…りょーかい。それじゃぁ…いきますかっ…」
漆黒の服に包まれた青年は夜の色に包まれながら
標的のある部屋へと静かに駆けて行った。
Steal
ユーリが辿りついた屋敷の部屋…
そこは本邸から少し離れた小さな小屋の様な部屋。
窓から静かに中を覗き込むと机とベッド…最低限の生活用品しかない…
しかし、ここに誰かが住んでいるのは確かだ。
「ここで誰かに守らせているのか…?けど…誰が…?」
中を観察しているとドアをノックする音が聞こえたので
静かに身を隠すが、中の様子が解るように窓の傍からはあまり離れないようにする。
「………どーぞ。」
「……まだ寝ていなかったのか?」
「あぁ…何か寝付けなくて……泥棒の予告時間もうすぐだろ?
こんなところに居ていいのかよ…」
部屋に入ってきたのは自分がよく知る人物とそっくりな青年…
フレンと双子の兄弟ですと言われても信じてしまいそうなくらい似ていた。
そして、話の相手はベッドの中で寝ていたが
ゆっくりとだるそうに身体を起こしユーリにその姿を見せた。
赤く燃えるような長髪…いや、赤というより朱に近い色だ…
「あぁ…もうすぐ予告時間だ…今日はもうここには来れないから…
大人しく寝ていろよ?絶対お前を守ってやるから…」
「別に頼んでねぇし…それに…この部屋から外に出れるなら俺…」
「ルーク!!我儘をいうな…何時か…旦那様も解ってくださる…」
「…………ガイうぜー…もう寝るから出て行けよ」
「わかった。お休みルーク」
「おやすみ」
ガイは静かに扉を閉め、
ルークはその閉まった扉を静かに見つめまたベッドへと潜り込んだ。
ガイとルークの会話を聞いていてわかったが
ここはルークの部屋らしい…このままここにかくれていても
ルークが部屋から出て行くことはない。
人に見られるのは他の仲間達が五月蠅いのでしたくはなかったが、
今回ばかりは仕方がないと思いユーリは窓を押すと簡単に窓が開いた。
「誰だ!?」
窓が開いた音でベッドで寝ていたルークが飛び起きる。
「よぅ、今夜の月は綺麗だぜ?月見とかご一緒にどうだ?」
ユーリは軽々と窓から部屋に侵入すると突然枕がユーリめがけて飛んできた。
「おっと…あぶねぇ」
軽々とその枕を避けると投げてきた人物に視線を向けると
避けられると思っていなかったのかおどおどとベッドの中で困り果てていた。
「お、お前が…今日うちの家宝の魔核を盗むって予告状を出してきた…怪盗ヴェスペリアか…」
「正解。宝物庫にはアンタの家宝【聖なる焔】は無いことはわかってるんだ…
お前が持ってるんだろ?大人しく俺に渡しな」
ユーリは持っていた剣を抜きルークに突き刺した。
初めて向けられる剣に戸惑いを隠し切れていなかったが、
その碧色の目はしっかりとユーリを睨みつけた。
「っは…あんな魔核持っていきたいなら持っていけよ…お前に盗めるわけないけどな…
あれは別名【不幸を呼ぶ聖焔】とも呼ばれてるんだぜ…てめぇが手にいれたら不幸になるぞ」
「不幸になるかどうかは俺が決める…大人しく出しな」
剣先でルークの顎を軽く突き魔核を出すように要求するが、
ルークは一向にユーリの言うことを聞こうとはしない…
このままでは埒が明かないのでユーリは耳に着けていた小さなヘッドフォンに手を置いた。
「おい…部屋に侵入できたが魔核がみつからねぇんだ…どこかわかるか?」
『はぁ?あんたの目の前にあるじゃない機械はそう反応してるわよ。』
「…は?俺の目の前って…」
ユーリの目の前にあるのは…いや居るのはルークただ一人。
まさかと思いユーリはルークの腕を掴んだ。
『あ、今魔核手に入れた?ものすごい反応してるわよ。』
「…………お前が持ってるのか…大人しく出せよ」
「渡したら…どうするつもりだ?返答次第で考えてやるよ」
ルークはしっかりとした瞳でユーリを睨みつける…
その瞳はどこか生気を失っている瞳だが…奥では輝きが消えていなかった。
「…はぁ…壊すんだよ…俺達が狙う魔核は人間に害を与える魔核だけだ…」
「壊す…のか…戦争とかにつかわねぇのか?」
「はぁ?俺何かが戦争起こして何の得があるんだよ…いい加減渡せ」
「そうか…戦争に…は使わないんだな…だったら…いいや…連れていけよ…」
さっきまでユーリを睨みつけていた瞳は消え
何かを決めたような瞳へと映り変った…
「連れていけよ…って何言ってるんだ?」
「俺がお前の探してる魔核の【聖なる焔】だ…」
「は、はぁ!?」
ユーリは驚きのあまりルークの手を離し数歩後へと下がる。
かなりの力でルークの手を掴んでいたので
やっと離された手をルークは痛そうに反対側の手で掴まれた箇所を撫でる。
「正確にいえば…俺はファブレ家の嫡男【アッシュ】と魔核【聖なる焔】を合わせたレプリカ…
けど、魔核の力はちゃんと持ってるぞ…」
「れ、レプリカって…何でそんなものを…」
ルークは言いづらいのか少し口を動かしていたが
ユーリにも聞こえるような声で説明を始めた。
「魔核が意思を持って…人間の命令だけで魔導器を動かせたら…どう思う?」
「そりゃ…いろいろと便利で…ま、まさかっ…」
ユーリはルークが先ほど言ったキーワードと
ルークの話の意味を合わせてルークが言いたいことを推理する…
ルークが言ったキーワード…それは…
「そう…戦争で使う為に俺は作られたんだよ…」
「………。」
驚きのあまりユーリからは言葉が出ない…
あまり良くない動きをファブレ家がしているとは聞いていたが…
ここまでとは予想していなかった。
「まぁ、俺はアッシュ曰く劣化しているから…魔核の力を自由に使えなくて…
戦争なんかに使えないそうだけどな…だから俺はこの部屋に閉じ込められてる…
敵対国に取られないように…情報が漏れないように…」
ルーク手を見ると震えていた。
怒りからなのか…それとも悲しみからなのかは分からない…
だが、確かにその手は震え自分の生きる道を探していた。
「最初は使いものにならないから…破棄する予定だったけど…
俺の身体に傷を付けて壊したら…魔核のオリジナルに力が戻らないからって…
だから自然に……………」
碧色の瞳からは涙が流れていた…
ユーリはルークに何て言ってやればいいかわからない…
どうすればこの涙を止めてやれるかもわからない……
何も言わず、ルークの頭を優しく撫でた。
「同情してるのかよ…ほら、さっさと壊せよ…お前らの目的はそれだろ?」
「俺は…人間を壊すほど…落ちぶれてねぇよ…生きたいと思わないのか?」
「………俺は生きている限り…周りに不幸を呼ぶんだ…
現に俺が生まれて…この計画に関わった人間…ファブレ家の人間を不幸した。
もし、力が使えていたら…別の人間を不幸にしてた…だから俺は…」
ユーリは何も言わずルークを抱きしめた。
人からの愛を知らず生かされ続けたこの魔核を…
いや、一部の人間からは愛されていたのだろう…けど、それを壊すほどの人間の欲望。
助けたい…救いたい…守りたい…それだけが今のユーリを動かした。
「ちょっと…俺に付き合え…」
「は?ちょ…何しやがる!!」
抱きしめていたルークの身体を軽々と抱きかかえ
ユーリは入ってきた窓から外へと飛び出して闇夜を駆け抜けて行った。
そして目的の場所へとたどり着くとルークを静かに下ろした。
「ほら、見ろよ…」
「え?あ……すげぇ…」
ルークが見たのは初めてみる夜の街灯…
それはまるで宝石のように漆黒のじゅうたんに散らばり輝いているが
どこか寂しげな雰囲気を残していた。
「俺…部屋から10年間出たこと無かったから…初めてみた…」
「10年もあの狭い部屋にいたのか…俺には無理だな…」
「俺やっぱり…生きてたら駄目だ…俺はきっといつかこの世界を壊す…」
「……………覚悟はいいのか?」
静かにルークは頷いた。
それを確認したユーリは剣を鞘から抜きルークへと切りつけた。
だが、いくら経っても何も感じない…
感覚まで劣化してしまったのかと思い閉じていた瞳を開くと目の前にはユーリが笑いながら居た。
ユーリの手を見るとそこには赤い髪の束…
自分の髪の毛を確認すると長かったはずの髪は短く切られていた。
「これで魔核のお前は居ない…ここに居るのは人間のお前だ…」
「へ?あ…俺…人間…?生きてていいのか?俺一人ぼっちじゃ…」
「あぁ…いいぜ…俺がずっとお前と一緒に居る」
「でも…お前が不幸に…」
「言っただろ?不幸かどうかは俺が決める…」
「…………」
ルークは何も言わずにユーリに抱きついた。
いや、何かを言っていたが…小さすぎてユーリには届いてなかった…
次の日ファブレ家から魔核【聖なる焔】が盗まれたというニュースが
国中に報道された。
ファブレ家から【聖なる焔】が盗まれてから一年が経とうとしていた。
ルークの世話係をしていたガイはファブレ家の使用人を止めた新しい生活を始めている。
「たっく…ジェイドの旦那は人使いが荒いよなぁ…」
ジェイドに頼まれた買い物をしていると何処からか懐かしい声が聞こえてきた。
「ユーリてめぇもっとゆっくり歩きやがれ!!」
「これでも温室育ちのお坊ちゃんに合わせてるつもりなんだがな…」
「……にゃろう…そこで待ってろよ!!すぐに追いついてやるからな!!」
「今度の仕事…お前を連れて行くのやめるかな…」
「ぜってー連れていけよ!!相棒おいていくとか無しだからな!!」
「へいへい」
振りかえり声の主を探すがそこには目的の人はいなかった。
いや、一瞬だけ赤い色を持った青年が見えたが…声を掛けることはできなかった。
彼は新しい人生を歩いている…それだけを確認できただけでも嬉しかった。
ガイは頼まれていたものを探し出し、一緒にレターセットを買った。
ファブレ家で使用人…いや親友だった自分より彼のことを心配している
もう一人の赤毛の彼に連絡をするために…。
「ん?兵隊達が警護している宝物庫とは全然違う場所じゃねぇか…」
「そんなの知らないわよ。あそこの部屋から反応あるんだから!!」
「へいへい…りょーかい。それじゃぁ…いきますかっ…」
漆黒の服に包まれた青年は夜の色に包まれながら
標的のある部屋へと静かに駆けて行った。
Steal
ユーリが辿りついた屋敷の部屋…
そこは本邸から少し離れた小さな小屋の様な部屋。
窓から静かに中を覗き込むと机とベッド…最低限の生活用品しかない…
しかし、ここに誰かが住んでいるのは確かだ。
「ここで誰かに守らせているのか…?けど…誰が…?」
中を観察しているとドアをノックする音が聞こえたので
静かに身を隠すが、中の様子が解るように窓の傍からはあまり離れないようにする。
「………どーぞ。」
「……まだ寝ていなかったのか?」
「あぁ…何か寝付けなくて……泥棒の予告時間もうすぐだろ?
こんなところに居ていいのかよ…」
部屋に入ってきたのは自分がよく知る人物とそっくりな青年…
フレンと双子の兄弟ですと言われても信じてしまいそうなくらい似ていた。
そして、話の相手はベッドの中で寝ていたが
ゆっくりとだるそうに身体を起こしユーリにその姿を見せた。
赤く燃えるような長髪…いや、赤というより朱に近い色だ…
「あぁ…もうすぐ予告時間だ…今日はもうここには来れないから…
大人しく寝ていろよ?絶対お前を守ってやるから…」
「別に頼んでねぇし…それに…この部屋から外に出れるなら俺…」
「ルーク!!我儘をいうな…何時か…旦那様も解ってくださる…」
「…………ガイうぜー…もう寝るから出て行けよ」
「わかった。お休みルーク」
「おやすみ」
ガイは静かに扉を閉め、
ルークはその閉まった扉を静かに見つめまたベッドへと潜り込んだ。
ガイとルークの会話を聞いていてわかったが
ここはルークの部屋らしい…このままここにかくれていても
ルークが部屋から出て行くことはない。
人に見られるのは他の仲間達が五月蠅いのでしたくはなかったが、
今回ばかりは仕方がないと思いユーリは窓を押すと簡単に窓が開いた。
「誰だ!?」
窓が開いた音でベッドで寝ていたルークが飛び起きる。
「よぅ、今夜の月は綺麗だぜ?月見とかご一緒にどうだ?」
ユーリは軽々と窓から部屋に侵入すると突然枕がユーリめがけて飛んできた。
「おっと…あぶねぇ」
軽々とその枕を避けると投げてきた人物に視線を向けると
避けられると思っていなかったのかおどおどとベッドの中で困り果てていた。
「お、お前が…今日うちの家宝の魔核を盗むって予告状を出してきた…怪盗ヴェスペリアか…」
「正解。宝物庫にはアンタの家宝【聖なる焔】は無いことはわかってるんだ…
お前が持ってるんだろ?大人しく俺に渡しな」
ユーリは持っていた剣を抜きルークに突き刺した。
初めて向けられる剣に戸惑いを隠し切れていなかったが、
その碧色の目はしっかりとユーリを睨みつけた。
「っは…あんな魔核持っていきたいなら持っていけよ…お前に盗めるわけないけどな…
あれは別名【不幸を呼ぶ聖焔】とも呼ばれてるんだぜ…てめぇが手にいれたら不幸になるぞ」
「不幸になるかどうかは俺が決める…大人しく出しな」
剣先でルークの顎を軽く突き魔核を出すように要求するが、
ルークは一向にユーリの言うことを聞こうとはしない…
このままでは埒が明かないのでユーリは耳に着けていた小さなヘッドフォンに手を置いた。
「おい…部屋に侵入できたが魔核がみつからねぇんだ…どこかわかるか?」
『はぁ?あんたの目の前にあるじゃない機械はそう反応してるわよ。』
「…は?俺の目の前って…」
ユーリの目の前にあるのは…いや居るのはルークただ一人。
まさかと思いユーリはルークの腕を掴んだ。
『あ、今魔核手に入れた?ものすごい反応してるわよ。』
「…………お前が持ってるのか…大人しく出せよ」
「渡したら…どうするつもりだ?返答次第で考えてやるよ」
ルークはしっかりとした瞳でユーリを睨みつける…
その瞳はどこか生気を失っている瞳だが…奥では輝きが消えていなかった。
「…はぁ…壊すんだよ…俺達が狙う魔核は人間に害を与える魔核だけだ…」
「壊す…のか…戦争とかにつかわねぇのか?」
「はぁ?俺何かが戦争起こして何の得があるんだよ…いい加減渡せ」
「そうか…戦争に…は使わないんだな…だったら…いいや…連れていけよ…」
さっきまでユーリを睨みつけていた瞳は消え
何かを決めたような瞳へと映り変った…
「連れていけよ…って何言ってるんだ?」
「俺がお前の探してる魔核の【聖なる焔】だ…」
「は、はぁ!?」
ユーリは驚きのあまりルークの手を離し数歩後へと下がる。
かなりの力でルークの手を掴んでいたので
やっと離された手をルークは痛そうに反対側の手で掴まれた箇所を撫でる。
「正確にいえば…俺はファブレ家の嫡男【アッシュ】と魔核【聖なる焔】を合わせたレプリカ…
けど、魔核の力はちゃんと持ってるぞ…」
「れ、レプリカって…何でそんなものを…」
ルークは言いづらいのか少し口を動かしていたが
ユーリにも聞こえるような声で説明を始めた。
「魔核が意思を持って…人間の命令だけで魔導器を動かせたら…どう思う?」
「そりゃ…いろいろと便利で…ま、まさかっ…」
ユーリはルークが先ほど言ったキーワードと
ルークの話の意味を合わせてルークが言いたいことを推理する…
ルークが言ったキーワード…それは…
「そう…戦争で使う為に俺は作られたんだよ…」
「………。」
驚きのあまりユーリからは言葉が出ない…
あまり良くない動きをファブレ家がしているとは聞いていたが…
ここまでとは予想していなかった。
「まぁ、俺はアッシュ曰く劣化しているから…魔核の力を自由に使えなくて…
戦争なんかに使えないそうだけどな…だから俺はこの部屋に閉じ込められてる…
敵対国に取られないように…情報が漏れないように…」
ルーク手を見ると震えていた。
怒りからなのか…それとも悲しみからなのかは分からない…
だが、確かにその手は震え自分の生きる道を探していた。
「最初は使いものにならないから…破棄する予定だったけど…
俺の身体に傷を付けて壊したら…魔核のオリジナルに力が戻らないからって…
だから自然に……………」
碧色の瞳からは涙が流れていた…
ユーリはルークに何て言ってやればいいかわからない…
どうすればこの涙を止めてやれるかもわからない……
何も言わず、ルークの頭を優しく撫でた。
「同情してるのかよ…ほら、さっさと壊せよ…お前らの目的はそれだろ?」
「俺は…人間を壊すほど…落ちぶれてねぇよ…生きたいと思わないのか?」
「………俺は生きている限り…周りに不幸を呼ぶんだ…
現に俺が生まれて…この計画に関わった人間…ファブレ家の人間を不幸した。
もし、力が使えていたら…別の人間を不幸にしてた…だから俺は…」
ユーリは何も言わずルークを抱きしめた。
人からの愛を知らず生かされ続けたこの魔核を…
いや、一部の人間からは愛されていたのだろう…けど、それを壊すほどの人間の欲望。
助けたい…救いたい…守りたい…それだけが今のユーリを動かした。
「ちょっと…俺に付き合え…」
「は?ちょ…何しやがる!!」
抱きしめていたルークの身体を軽々と抱きかかえ
ユーリは入ってきた窓から外へと飛び出して闇夜を駆け抜けて行った。
そして目的の場所へとたどり着くとルークを静かに下ろした。
「ほら、見ろよ…」
「え?あ……すげぇ…」
ルークが見たのは初めてみる夜の街灯…
それはまるで宝石のように漆黒のじゅうたんに散らばり輝いているが
どこか寂しげな雰囲気を残していた。
「俺…部屋から10年間出たこと無かったから…初めてみた…」
「10年もあの狭い部屋にいたのか…俺には無理だな…」
「俺やっぱり…生きてたら駄目だ…俺はきっといつかこの世界を壊す…」
「……………覚悟はいいのか?」
静かにルークは頷いた。
それを確認したユーリは剣を鞘から抜きルークへと切りつけた。
だが、いくら経っても何も感じない…
感覚まで劣化してしまったのかと思い閉じていた瞳を開くと目の前にはユーリが笑いながら居た。
ユーリの手を見るとそこには赤い髪の束…
自分の髪の毛を確認すると長かったはずの髪は短く切られていた。
「これで魔核のお前は居ない…ここに居るのは人間のお前だ…」
「へ?あ…俺…人間…?生きてていいのか?俺一人ぼっちじゃ…」
「あぁ…いいぜ…俺がずっとお前と一緒に居る」
「でも…お前が不幸に…」
「言っただろ?不幸かどうかは俺が決める…」
「…………」
ルークは何も言わずにユーリに抱きついた。
いや、何かを言っていたが…小さすぎてユーリには届いてなかった…
次の日ファブレ家から魔核【聖なる焔】が盗まれたというニュースが
国中に報道された。
ファブレ家から【聖なる焔】が盗まれてから一年が経とうとしていた。
ルークの世話係をしていたガイはファブレ家の使用人を止めた新しい生活を始めている。
「たっく…ジェイドの旦那は人使いが荒いよなぁ…」
ジェイドに頼まれた買い物をしていると何処からか懐かしい声が聞こえてきた。
「ユーリてめぇもっとゆっくり歩きやがれ!!」
「これでも温室育ちのお坊ちゃんに合わせてるつもりなんだがな…」
「……にゃろう…そこで待ってろよ!!すぐに追いついてやるからな!!」
「今度の仕事…お前を連れて行くのやめるかな…」
「ぜってー連れていけよ!!相棒おいていくとか無しだからな!!」
「へいへい」
振りかえり声の主を探すがそこには目的の人はいなかった。
いや、一瞬だけ赤い色を持った青年が見えたが…声を掛けることはできなかった。
彼は新しい人生を歩いている…それだけを確認できただけでも嬉しかった。
ガイは頼まれていたものを探し出し、一緒にレターセットを買った。
ファブレ家で使用人…いや親友だった自分より彼のことを心配している
もう一人の赤毛の彼に連絡をするために…。
ルーク(♀)
ガルバンゾ国の騎士団に所属。クラスは隊長。
私服が公式の服と変らない為よく男性と間違われる。
髪は長髪ですくすくとティア並のメロン化中(笑)
ユーリ・ローウェル
ガルバンゾ国の騎士団に所属。クラスは副隊長。
ルーク隊の副隊長だが、いろいろと問題児。
騎士団は性に合わないと自覚はしているが
ルークを守るために所属している。
フレン
ガルバンゾ国の騎士団に所属。クラスは隊長。
ユーリとルークを唯一叱れる人。
アスベル
ガルバンゾ国の騎士団に所属。クラスは一般。
エステル
ガルバンゾ国の王女。
「おいおい…夏祭りなんだから浴衣くらい着ろよな…」
「任務中だっつーの…」
「ルーク…浴衣着てくれないんです?」
「任務中だってば!!!」
賑わう下町で怒りを込めた声が響き渡った。
祭りの音
世間は夏真っ盛りで世界各地で夏祭りが数多く開かれている。
ここガルバンゾ国も例外ではなく帝都の下町で今日は夏祭りが開かれており、
綿あめ、射的、わなげ…数多くの店が立ち並び賑わいを見せている。
そんな中ピンクの色を持つ少女が下町の子供たちよりも
瞳を輝かせながら屋台を見つめていた。
「うわぁ~…すごく賑やかです…どのお店から遊びましょうか…」
「エステリーゼ様…あまり目立つ行動は止めてください…
王女がお忍びで夏祭りに外出していたことがばれたら…後々面倒なので…」
朱い色を持った少女がエステリーゼと呼ばれたピンク色の少女に注意をする…
その話し方は実に丁寧で紳士的な雰囲気を出していた。
「ルーク…他の人が居ないときは普通に話してくださいと言ったはずです。
いくら私の護衛中でも敬語は嫌です。あと呼び名もエステルです!!」
「ですが…」
エステルに逆に怒られてしまい戸惑うルーク…
どうするべきか迷っているとエステルを挟みルークと反対側にいた
漆黒の青年が呆れながらに声をかけた。
「お言葉に甘えておけよ…敬語なんて使ってたら逆に目立つつーの」
「ユーリ!!お前は普段から敬語を使うようにしろ!!!」
「へいへい…」
ルークに睨まれたがユーリに効果は無く…
相変わらずゆるい返事しか帰ってこない…
変らないユーリの態度にルークからはため息しか出てこなかった。
本来なら騎士団に所属しているユーリとルークは治安維持の為
祭りを巡回しないといけないはずだったが、
王女であるエステルが今年はどうしても祭りに行きたいと言いだした為
ルークとユーリが護衛として選ばれた。
騎士団の制服だと目立ってしまうので今は私服の二人。
ユーリとエステルからはルークが浴衣ではないことに不満の声があがるが
今は仕事中…動きにくい服はダメだ。
ルークは隊長、ユーリは副隊長なので仕事は山積みだったが、
エステルからの推薦により断ることができなかった。
祭りが終わったあと二人は机の上に山積みになった書類と格闘する…
そんなことは知らないエステルは屋台を一軒一軒物珍しそうに見学している。
「これが任務じゃなきゃ楽しめるんだがなぁ…お前もいるし」
「ユーリ…恥ずかしいこというな…」
屋台の光で顔の変化は解らなかったが、ルークの顔は真っ赤になっていた。
「ルーク!!ユーリ!!これみんなで食べましょう!!」
エステルが指を差したのは綿菓子。
ルークは言われた通り三つ綿菓子の代金を払っていると、
隣の屋台から威勢のいい声が聞こえてきた。
「よぅ。そこの赤毛の兄ちゃん!!二人もべっぴんな姉ちゃん連れて両手に花だねぇ!!
どうだい?うちの射的で二人にカッコイイところでも見せてやらないかい!!」
「赤毛の兄ちゃん…?」
「二人のべっぴんな姉ちゃん…?」
「です?」
ユーリとルークはお互いに顔を見合わせながら硬い表情を見せる。
エステルは買ったばかりの綿菓子を美味しそうに食べながら小さくわらった。
「ルークとユーリ性別間違われてますね。ルークが女性で、ユーリが男性なのに…」
「お前が女顔なのがいけないんだよ…」
「お前のその男の服が悪いんだよ…胸だけはあるくせに…」
「うっせー!!好きでここが成長してるんじゃねぇ!!」
「赤毛の兄ちゃんよ!!遊んでいかないかい?あ、そこの黒髪の姉ちゃんもよかったら遊んでいきなよ!!」
屋台の亭主にまた性別を間違われ二人は同時に亭主を睨みつけた。
睨みつけられた亭主はその威圧感に圧倒されて数歩後にさがってしまう…
「射的か…どうする?ルーク隊長…」
「っは…そりゃお言葉に甘えて遊ぼうじゃねぇか…もちろん本気でな…」
ルークは二人分の料金を台に叩き付けると亭主をまた睨みつけた…
この時の二人の姿は騎士団に所属しているものとは思えないほど
殺気が漂っていたとエステルは言う…
「流石帝都の祭りだと活気があるんですね…」
「そうだなアスベル…こういう時は治安も乱れやすい…心して任務に当たるように」
「はい、フレン隊長!!」
騎士団の制服を身にまといながらフレンとアスベルは祭りの中を巡回していた。
下町育ちであるフレンにはここでは顔見知りが多いのか
ちょくちょく声をかけられて中々前へ進めなかったが…
フレンは嫌な顔一つせず応対していく。
入ったばかりのアスベルにはそんなフレンの行動からも学ぶものがあり、
憧れと尊敬の眼差しでフレンを見ていると
一つの屋台が変に賑わっていることに気がついた。
時々歓声が聞こえてくるので喧嘩ではないようだ。
「フレン隊長…あれは何でしょう?」
「ん?あれは…?少し調べた方がいいな」
フレンとアスベルは急いで人々が多く集まる屋台へと足を向ける。
騎士団が来たということで集まっていた人々は素直に道をあけ
賑わう屋台の真中へとすぐに移動することができたが、
その屋台の光景を見てフレンとアスベルは声を出すことができなかった。
「お、お客さんっ…勘弁してください!!赤字になっちまう!!」
「遊んでいけって言ったのはそっちだろ?」
そう言いながら朱い少女は射的の弾を放つと弾は勢いよく狙った商品へと飛んでいくが、
商品を当てて本来なら役割を終えるはずの弾は壁を跳ね返り別の商品へと当てる。
それが数回続き1発の弾で数個の商品が落ちて行った。
「え?あ、あれ…コルクの弾ですよね?あんなに跳ね返るものなんですか…?すごい…」
「感心している場合じゃないだろアスベル!!ルーク様!!何をなさってるんですか!!」
「え?あ…ふ、フレン!?え?あっ!!!」
フレンに急に声をかけられ標準がずれたのか弾は1つの商品だけを当てて普通に落ちていった。
「あーあー…最後の弾だったのに…フレンが声かけるから手元が狂ったじゃねぇか」
「え?あ…すみません…」
「じゃぁ落とした数は俺の方が多いから俺の勝ちだな…」
「ちぇ~…」
ルークの傍で見ていたユーリは勝ち誇った顔をしながらルークに笑いかける。
そばには射的で取ったであろう商品が山になって置いてあった…
「二人とも…何をされてるんですか…」
「いや、だって…そこのおっさんが遊べっていうから…本気で遊んだ」
ルークが取った商品を両手に抱えている横で
射的の亭主はかなり落ち込んでいる…多分この二人のせいで赤字確定なのだろう…
呆れた顔をしているフレンの横にエステルが近寄り事情を説明した。
「なるほど…性別を間違えられて…二人とも子供じゃないんですから…」
「うるせー。間違える方が悪いんだよ」
「まぁ、ストレス解消になったしいいんじゃね?」
ルークはユーリが取った商品と自分が取った商品を一緒に並べると
ポケットから長方形の紙と取り出しペンで紙に文字を書いた。
その書いた紙を落ち込んでいる亭主に差し出した。
「おっさん、悪かったな…これで赤字にはならないか?」
亭主は差し出された紙を見て驚き慌てながらルークに紙を返した。
「こ、こんな大金受け取れません!!うちだって商売なんですから…」
「騒がせた詫びだ…受け取ってくれ。子供とかいるんだろ?何か買ってやれ」
「え?あ…はぁ…ありがとうございます…」
亭主は大人しく紙を受け取り深く頭を下げた。
「おい…お前いくらの小切手渡したんだ…」
「ん?別に普通の金額だけど?あ、この商品明日下町のチビ達にあげるか…」
ルークの言葉にユーリはため息しかでなかった。
普通の金額というのはルークにとっては普通かもしれないが、
世間一般的に言えば結構な金額…と思われる。
金銭感覚が一般と違う隊長に頭を悩ませていると
野次馬の声がユーリの耳に届いてきた。
「おい…あの朱い人もしかしてルーク隊長じゃ…」
「じゃぁあの黒い人はユーリ副隊長?きゃー…カッコイイ…」
自分達の正体がばれた為ここの場所には居られない…
エステルの腕を掴むとユーリはルークに声をかけた。
「おい、そろそろ逃げるぞ。」
「え?あ…うん…ん?逃げるって何から?」
何から逃げるのかわかっていなかったルークだったが、
ユーリに言われるがままそのあとを追いかけていき
静かな貴族街の近くまで走り続けた。
「はぁ…はぁ…ユーリ…足早いです…」
「あ、悪い…大丈夫か?」
「エステル…水でも飲むか?」
普段走り慣れていないであろうエステルは息がかなり荒れていた。
エステルを落ち着かせていると一緒に追いかけていたフレンとアスベルが追いついてきた。
「全く…ユーリもルーク様もエステリーゼ様の護衛ならもっと目立たないように…」
「はいはい。悪かったなめだっちまって」
「あ…エステル…ごめん。俺達のせいであんまり祭り楽しめなかったよな」
ルークがエステルに手を合わせて謝っていると
息が落ち着いてきたエステルは楽しそうに笑った。
「いいえ…すごく楽しかったです!!騎士団では銃を扱う訓練もしているのですね!!」
「え?そうなんですか?フレン隊長…」
「………いや。あの二人がおかしいだけだ」
フレンとアスベルは乾いた笑いをしていたが
エステルは信じているようで目を輝かせながらルークに尊敬の眼差しをみせる。
「あ、そろそろ戻らないと…ルーク、ユーリ今日はありがとうです」
近くに会った時計を見ると外出許可が終わる時刻に迫っていた。
本当はもっと遊びたいのだろうが…約束だから仕方がない。
「では、僕達がお送りします…」
「フレン、アスベル…ありがとうです。ルーク、ユーリおやすみなさい。また会いましょう。」
「あぁ…またな。おやすみ」
「エステルまたなー」
3人の後姿が見えなくなるまで見送ると
ユーリとルークは騎士団に向けて歩き出した。
下町からは相変わらず賑やかな声が聞こえてきて今日の夜は少し違っていた。
「何だかんだで仕事中なのにあそんじゃったな…」
「まぁ、いいんじゃねぇの?そういえばさっき勝ったご褒美がまだだったな…」
ユーリはにやりとルークに向けて笑うので、
その顔に少し嫌な予感がするルークだった。
「はぁ?そんな約束してねーし…それに勝ったとかって数は1つちg…」
ルークが良い終わる前にユーリはその唇を塞いだ。
そして次に頬、耳にキスをするとまた悪戯小僧のような笑いでルークを見つめる。
「な、何するんだよお前は!!!俺はお前の上司だぞ!!」
「俺はお前を上司だなんて思ったことはねぇよ…」
「じゃぁ、何て思ってるんだよ…」
顔を真っ赤にしながらユーリを睨みつけるが
その顔は誘っているようにしか見えない…。
「ん?もちろん…未来の嫁。」
今度は額に軽くキスを落とすと止めていた足を動かせた。
「か、勝手に嫁にするな!!おい、聞いてるのか!?ユーリ!!!」
顔をさらに赤くさせたルークは大声でユーリの名前を呼ぶ。
普段の静かな夜なら許されないことだが、
今日は祭り…ユーリを呼ぶルークの声と心臓の音は
祭りの賑やかな音で消されて行った…。
ガルバンゾ国の騎士団に所属。クラスは隊長。
私服が公式の服と変らない為よく男性と間違われる。
髪は長髪ですくすくとティア並のメロン化中(笑)
ユーリ・ローウェル
ガルバンゾ国の騎士団に所属。クラスは副隊長。
ルーク隊の副隊長だが、いろいろと問題児。
騎士団は性に合わないと自覚はしているが
ルークを守るために所属している。
フレン
ガルバンゾ国の騎士団に所属。クラスは隊長。
ユーリとルークを唯一叱れる人。
アスベル
ガルバンゾ国の騎士団に所属。クラスは一般。
エステル
ガルバンゾ国の王女。
「おいおい…夏祭りなんだから浴衣くらい着ろよな…」
「任務中だっつーの…」
「ルーク…浴衣着てくれないんです?」
「任務中だってば!!!」
賑わう下町で怒りを込めた声が響き渡った。
祭りの音
世間は夏真っ盛りで世界各地で夏祭りが数多く開かれている。
ここガルバンゾ国も例外ではなく帝都の下町で今日は夏祭りが開かれており、
綿あめ、射的、わなげ…数多くの店が立ち並び賑わいを見せている。
そんな中ピンクの色を持つ少女が下町の子供たちよりも
瞳を輝かせながら屋台を見つめていた。
「うわぁ~…すごく賑やかです…どのお店から遊びましょうか…」
「エステリーゼ様…あまり目立つ行動は止めてください…
王女がお忍びで夏祭りに外出していたことがばれたら…後々面倒なので…」
朱い色を持った少女がエステリーゼと呼ばれたピンク色の少女に注意をする…
その話し方は実に丁寧で紳士的な雰囲気を出していた。
「ルーク…他の人が居ないときは普通に話してくださいと言ったはずです。
いくら私の護衛中でも敬語は嫌です。あと呼び名もエステルです!!」
「ですが…」
エステルに逆に怒られてしまい戸惑うルーク…
どうするべきか迷っているとエステルを挟みルークと反対側にいた
漆黒の青年が呆れながらに声をかけた。
「お言葉に甘えておけよ…敬語なんて使ってたら逆に目立つつーの」
「ユーリ!!お前は普段から敬語を使うようにしろ!!!」
「へいへい…」
ルークに睨まれたがユーリに効果は無く…
相変わらずゆるい返事しか帰ってこない…
変らないユーリの態度にルークからはため息しか出てこなかった。
本来なら騎士団に所属しているユーリとルークは治安維持の為
祭りを巡回しないといけないはずだったが、
王女であるエステルが今年はどうしても祭りに行きたいと言いだした為
ルークとユーリが護衛として選ばれた。
騎士団の制服だと目立ってしまうので今は私服の二人。
ユーリとエステルからはルークが浴衣ではないことに不満の声があがるが
今は仕事中…動きにくい服はダメだ。
ルークは隊長、ユーリは副隊長なので仕事は山積みだったが、
エステルからの推薦により断ることができなかった。
祭りが終わったあと二人は机の上に山積みになった書類と格闘する…
そんなことは知らないエステルは屋台を一軒一軒物珍しそうに見学している。
「これが任務じゃなきゃ楽しめるんだがなぁ…お前もいるし」
「ユーリ…恥ずかしいこというな…」
屋台の光で顔の変化は解らなかったが、ルークの顔は真っ赤になっていた。
「ルーク!!ユーリ!!これみんなで食べましょう!!」
エステルが指を差したのは綿菓子。
ルークは言われた通り三つ綿菓子の代金を払っていると、
隣の屋台から威勢のいい声が聞こえてきた。
「よぅ。そこの赤毛の兄ちゃん!!二人もべっぴんな姉ちゃん連れて両手に花だねぇ!!
どうだい?うちの射的で二人にカッコイイところでも見せてやらないかい!!」
「赤毛の兄ちゃん…?」
「二人のべっぴんな姉ちゃん…?」
「です?」
ユーリとルークはお互いに顔を見合わせながら硬い表情を見せる。
エステルは買ったばかりの綿菓子を美味しそうに食べながら小さくわらった。
「ルークとユーリ性別間違われてますね。ルークが女性で、ユーリが男性なのに…」
「お前が女顔なのがいけないんだよ…」
「お前のその男の服が悪いんだよ…胸だけはあるくせに…」
「うっせー!!好きでここが成長してるんじゃねぇ!!」
「赤毛の兄ちゃんよ!!遊んでいかないかい?あ、そこの黒髪の姉ちゃんもよかったら遊んでいきなよ!!」
屋台の亭主にまた性別を間違われ二人は同時に亭主を睨みつけた。
睨みつけられた亭主はその威圧感に圧倒されて数歩後にさがってしまう…
「射的か…どうする?ルーク隊長…」
「っは…そりゃお言葉に甘えて遊ぼうじゃねぇか…もちろん本気でな…」
ルークは二人分の料金を台に叩き付けると亭主をまた睨みつけた…
この時の二人の姿は騎士団に所属しているものとは思えないほど
殺気が漂っていたとエステルは言う…
「流石帝都の祭りだと活気があるんですね…」
「そうだなアスベル…こういう時は治安も乱れやすい…心して任務に当たるように」
「はい、フレン隊長!!」
騎士団の制服を身にまといながらフレンとアスベルは祭りの中を巡回していた。
下町育ちであるフレンにはここでは顔見知りが多いのか
ちょくちょく声をかけられて中々前へ進めなかったが…
フレンは嫌な顔一つせず応対していく。
入ったばかりのアスベルにはそんなフレンの行動からも学ぶものがあり、
憧れと尊敬の眼差しでフレンを見ていると
一つの屋台が変に賑わっていることに気がついた。
時々歓声が聞こえてくるので喧嘩ではないようだ。
「フレン隊長…あれは何でしょう?」
「ん?あれは…?少し調べた方がいいな」
フレンとアスベルは急いで人々が多く集まる屋台へと足を向ける。
騎士団が来たということで集まっていた人々は素直に道をあけ
賑わう屋台の真中へとすぐに移動することができたが、
その屋台の光景を見てフレンとアスベルは声を出すことができなかった。
「お、お客さんっ…勘弁してください!!赤字になっちまう!!」
「遊んでいけって言ったのはそっちだろ?」
そう言いながら朱い少女は射的の弾を放つと弾は勢いよく狙った商品へと飛んでいくが、
商品を当てて本来なら役割を終えるはずの弾は壁を跳ね返り別の商品へと当てる。
それが数回続き1発の弾で数個の商品が落ちて行った。
「え?あ、あれ…コルクの弾ですよね?あんなに跳ね返るものなんですか…?すごい…」
「感心している場合じゃないだろアスベル!!ルーク様!!何をなさってるんですか!!」
「え?あ…ふ、フレン!?え?あっ!!!」
フレンに急に声をかけられ標準がずれたのか弾は1つの商品だけを当てて普通に落ちていった。
「あーあー…最後の弾だったのに…フレンが声かけるから手元が狂ったじゃねぇか」
「え?あ…すみません…」
「じゃぁ落とした数は俺の方が多いから俺の勝ちだな…」
「ちぇ~…」
ルークの傍で見ていたユーリは勝ち誇った顔をしながらルークに笑いかける。
そばには射的で取ったであろう商品が山になって置いてあった…
「二人とも…何をされてるんですか…」
「いや、だって…そこのおっさんが遊べっていうから…本気で遊んだ」
ルークが取った商品を両手に抱えている横で
射的の亭主はかなり落ち込んでいる…多分この二人のせいで赤字確定なのだろう…
呆れた顔をしているフレンの横にエステルが近寄り事情を説明した。
「なるほど…性別を間違えられて…二人とも子供じゃないんですから…」
「うるせー。間違える方が悪いんだよ」
「まぁ、ストレス解消になったしいいんじゃね?」
ルークはユーリが取った商品と自分が取った商品を一緒に並べると
ポケットから長方形の紙と取り出しペンで紙に文字を書いた。
その書いた紙を落ち込んでいる亭主に差し出した。
「おっさん、悪かったな…これで赤字にはならないか?」
亭主は差し出された紙を見て驚き慌てながらルークに紙を返した。
「こ、こんな大金受け取れません!!うちだって商売なんですから…」
「騒がせた詫びだ…受け取ってくれ。子供とかいるんだろ?何か買ってやれ」
「え?あ…はぁ…ありがとうございます…」
亭主は大人しく紙を受け取り深く頭を下げた。
「おい…お前いくらの小切手渡したんだ…」
「ん?別に普通の金額だけど?あ、この商品明日下町のチビ達にあげるか…」
ルークの言葉にユーリはため息しかでなかった。
普通の金額というのはルークにとっては普通かもしれないが、
世間一般的に言えば結構な金額…と思われる。
金銭感覚が一般と違う隊長に頭を悩ませていると
野次馬の声がユーリの耳に届いてきた。
「おい…あの朱い人もしかしてルーク隊長じゃ…」
「じゃぁあの黒い人はユーリ副隊長?きゃー…カッコイイ…」
自分達の正体がばれた為ここの場所には居られない…
エステルの腕を掴むとユーリはルークに声をかけた。
「おい、そろそろ逃げるぞ。」
「え?あ…うん…ん?逃げるって何から?」
何から逃げるのかわかっていなかったルークだったが、
ユーリに言われるがままそのあとを追いかけていき
静かな貴族街の近くまで走り続けた。
「はぁ…はぁ…ユーリ…足早いです…」
「あ、悪い…大丈夫か?」
「エステル…水でも飲むか?」
普段走り慣れていないであろうエステルは息がかなり荒れていた。
エステルを落ち着かせていると一緒に追いかけていたフレンとアスベルが追いついてきた。
「全く…ユーリもルーク様もエステリーゼ様の護衛ならもっと目立たないように…」
「はいはい。悪かったなめだっちまって」
「あ…エステル…ごめん。俺達のせいであんまり祭り楽しめなかったよな」
ルークがエステルに手を合わせて謝っていると
息が落ち着いてきたエステルは楽しそうに笑った。
「いいえ…すごく楽しかったです!!騎士団では銃を扱う訓練もしているのですね!!」
「え?そうなんですか?フレン隊長…」
「………いや。あの二人がおかしいだけだ」
フレンとアスベルは乾いた笑いをしていたが
エステルは信じているようで目を輝かせながらルークに尊敬の眼差しをみせる。
「あ、そろそろ戻らないと…ルーク、ユーリ今日はありがとうです」
近くに会った時計を見ると外出許可が終わる時刻に迫っていた。
本当はもっと遊びたいのだろうが…約束だから仕方がない。
「では、僕達がお送りします…」
「フレン、アスベル…ありがとうです。ルーク、ユーリおやすみなさい。また会いましょう。」
「あぁ…またな。おやすみ」
「エステルまたなー」
3人の後姿が見えなくなるまで見送ると
ユーリとルークは騎士団に向けて歩き出した。
下町からは相変わらず賑やかな声が聞こえてきて今日の夜は少し違っていた。
「何だかんだで仕事中なのにあそんじゃったな…」
「まぁ、いいんじゃねぇの?そういえばさっき勝ったご褒美がまだだったな…」
ユーリはにやりとルークに向けて笑うので、
その顔に少し嫌な予感がするルークだった。
「はぁ?そんな約束してねーし…それに勝ったとかって数は1つちg…」
ルークが良い終わる前にユーリはその唇を塞いだ。
そして次に頬、耳にキスをするとまた悪戯小僧のような笑いでルークを見つめる。
「な、何するんだよお前は!!!俺はお前の上司だぞ!!」
「俺はお前を上司だなんて思ったことはねぇよ…」
「じゃぁ、何て思ってるんだよ…」
顔を真っ赤にしながらユーリを睨みつけるが
その顔は誘っているようにしか見えない…。
「ん?もちろん…未来の嫁。」
今度は額に軽くキスを落とすと止めていた足を動かせた。
「か、勝手に嫁にするな!!おい、聞いてるのか!?ユーリ!!!」
顔をさらに赤くさせたルークは大声でユーリの名前を呼ぶ。
普段の静かな夜なら許されないことだが、
今日は祭り…ユーリを呼ぶルークの声と心臓の音は
祭りの賑やかな音で消されて行った…。
「はぁ~…」
ここはガルバンゾ国にある騎士団の一室。
騎士団には隊が集まる大部屋が一つ与えられている。
そこは騎士達が報告書や始末書など事務関係をする為に使われている。
ルークがいるこの大部屋もとある隊の為に与えられた部屋で、
早く片付けてしまわないといけない書類がルークの前にはあるのに
今朝発行された新聞から手を離すことができない。ため息も止まらない。
「はぁ~…ついにか…」
「何がついになんだ?」
「ふぇ!?ゆ、ユーリ!?」
いきなり自分の後から声が聞こえ振り向くとそこにはユーリが昼飯と思われる袋を持って立っていた。
「い、いつからそこに!?」
「さっきから。お前…騎士のくせに気配を見逃すとか…何考えてたんだよ」
「お、お前には関係ないだろ…」
ルークはさきほどまで見ていた新聞を急いで片付けようとしたが、
ユーリに取り上げられてしまった。
「なになに?『星晶採取による森の変化』『ライマ国の王女と公爵家嫡男の婚約正式発表』
『今日のお勧めメニュー』…特に目立った記事なんてないだろ?どうしたんだ?」
「だから…お前には関係ない…」
不貞腐れた顔をしてユーリからそっぽを向くその姿はどこか可愛らしい…
ユーリは少し幸せそうな顔をしながら持っていた袋から一枚の紙を取り出し
ルークの目の前に差し出した。
「何だこれ?」
「ん?鎧の新調書。お前また胸でかくなって苦しそうだったから貰ってきてやった」
不貞腐れていたルークは今度は立ちあがりユーリに向かって怒鳴りだした。
「おまっ…!!!そういうのをセクハラっていうんだぞ!!よくもまぁ、上司に向かってセクハラできるよな!!
つーか俺の胸はでかくなってねぇ!!」
「そうか?どれ…」
「ひっ!!」
平然とした顔でユーリはルークの胸を軽く触る…
触られたルークはぷるぷると震えて驚きと怒りで動けない…
「うーん…やっぱり1カップでかくなってるぞ…成長期なんだからしょうがねぇよ。
ほら、大人しく新しいの新調しろって…あぶねぇ!!!」
怒りのあまり動けなかったルークだったがやっと我に帰りユーリに左ストレートを食らわせようとしたが、
見事にかわされてしまった。
「おまえ…今日という今日はゆるさねぇからな!!」
「別に未来の嫁の胸くらい触っても減るもんじゃないだろ?」
「何時から俺はお前の嫁になったんだ!!!」
「出会った頃から」
言葉だけ聞いていれば惚気としか思えない会話だったが、
ルークがキックやパンチをユーリに向けて攻撃し、それを上手い具合にユーリはかわす…
他人から見れば迷惑な夫婦喧嘩だが、二人はまだ結婚していない。
はやくこの喧嘩を止めないと部屋がめちゃくちゃになってしまうが、
この隊にはこの二人の喧嘩を止めれる人物は存在していなかった…
唯一止められる人物…それは…
「ルーク!!ユーリ!!何をしているんだ!!」
金髪の青年が隊の大部屋に入って来て喧嘩の中心である二人の名前を叫んだ。
「げっ…フレン…」
「あ、フレン…だってユーリがっ!!」
「だってもじゃない!!ルーク様…自分の立場をわかってください!!」
「うぅ~…はぁ~い…」
ユーリの言うことは全く聞かないルークだったが、何故かフレンの言うことだけはしっかりと聞いた。
何でも昔世話になった人物とすごく似ているからとユーリが聞いた覚えがあった。
フレンに怒られルークが不貞腐れているとルークの足元に小さな蒼い塊が寄ってきた。
「わんわん。」
「「………え?犬?」」
子犬と双子
「ルーク様…何をしたかわかりませんがユーリの方が1000%悪いですが…部下達の前であんな派手は喧嘩はやめてください」
「なぁ、フレン…俺とお前同じ隊長なんだから…様を付けるのは…」
「いいえ。同じ隊長でもルーク様と僕とでは違います。僕より先に隊長になられているのですから付けるのは当たり前です」
「フレンは相変わらず真面目だな…」
「わんわん!!」
そう、フレンが訪ねてきたのはガルバンゾ国にある騎士団ルーク隊の部屋。
隊の名前の通りルークが隊長でユーリが副隊長で構成されている。
ルークは16歳という若さで隊長に就任し若い騎士達の憧れの的である。
17歳になった今でも日々伝説を残し続けている…ルークの人気はその若さだけではない。
「あとルーク様…いくら騎士団隊長だからっておてんばがすぎます。たまには女性らしくされないと」
「…だってユーリが…」
「ルーク様の反応が面白くてユーリはちょっかいをかけるんです。反応しなければ大丈夫です」
「わんわん!!」
ルークは女性だ。
口調は男っぽい口調をしているがその立派な胸、細い腰…女性を象徴される部分がしっかりと出始めている。
だが、手入れされていない赤く長い髪…騎士団の鎧はスカートなのでまだ女性とわかるが
普段着はダボダボのズボン、白く裾の長い上着そしてお腹の見えた姿…男性としか思えない格好をしているので
ちょくちょく男性と間違えられていた。
男性と間違えられている原因の一つとして女性と間違えられるユーリがずっとそばにいるのもある。
「わんわん!!」
ルークとユーリはフレンの膝に乗っている子犬に目をやる。
先ほどから気になっていたが、まずフレンの指導が入ってしまい聞けずにいた。
「あぁ…この子ですか?本当はうちの隊に軍用犬として紹介されたのですが…うちにはすでに居ます。
ちょうどルーク様の隊にはまだ軍用犬が居ないことを思い出して連れてきたのです。」
「わんわん!!」
何故か骨を咥えたまま吠える子犬…目つきは悪い…
ルークはこの目つきの悪さを昔どこかで見た気がしているが思い出せない。
「まぁ、確かにうちに軍用犬居ないしな…ってなわけでユーリ頼んだ。」
「何でも俺に仕事振るんじゃねぇよ…軍用犬は主に隊長が飼い主になるんだろ?」
「まぁ、僕のところみたいに違う隊もいるけどね」
ルークは少し考えていたが碧色の瞳はやはりユーリから目を離さない。
「やっぱりユーリが世話するのがいいんじゃ…ほら、ユーリってケーキとか料理得意だし」
「犬はケーキ食べませんよ…」
「つーかそんなもん食わせてこいつ殺す気かお前…」
「え?そうなの!?じゃぁ…メインは魚か?あ、けど俺魚嫌い…」
「「そりゃ猫だ」」
二人同時にツッコミを入れられ少し不貞腐れた表情を見せる。
隊長にまでなったルークだったが、どこか常識が抜けているところがある…
ユーリがルークから目を離せない理由はそこにもあった。
「騎士団から支給されるドックフードを食べさせたらいいんです。あとは毎日散歩させたり…」
「散歩って何処までだ?隣町か?」
「お前の現実逃避するための散歩と一緒にするな…あんな魔物ばっかりの道こいつ生きて帰ってこれねぇよ」
「わふ?」
「だって…俺犬とか動物飼ったことねぇもん…」
ユーリから深いため息しかでなかった…
これはユーリが世話をする選択しか見出されないようだ…ルークに任せたらきっとこいつは一週間も持たない…
そんな気がした。
「ゆ、ユーリ…僕も手伝うからな…」
ユーリの苦労を感じ取ったフレンが救いの手を差し伸べてきた。
ありがたいことだったが…フレンと一緒となると逆に疲れる気がしてならない。
フレンの腕の中にいた子犬だったが、ルークが優しく持ち上げ抱きしめた。
「お、お前結構大人しいんだな…かわいいなぁ~…」
子犬を抱けて嬉しそうに笑うルークのその姿…
年相応の女の子の反応で可愛らしい…その姿を見ていると幸せな気分になる…
ところだったが、ユーリはどうしても目につくところがあった。
「う~…わふ…」
抱きしめられた子犬はルークの福与かな胸に挟まれ身動きが取れない状態である…
表情は特に変っていないが…尻尾がめちゃくちゃ揺れている…子犬だからかわかりやすいやつだ。
「にゃろう…子犬の分際で俺のルークに手出しやがって…」
「動物に嫉妬する君の方がおかしいよ…ところでルーク様」
「ん?何だ?」
抱いていた子犬の頭を撫でながら可愛がっているところにフレンから呼ばれた為顔をあげる
その顔は子犬と遊べて楽しくて仕方がない顔だ。
「頼んでいた書類…できましたよね?」
「…………あ。」
その一言でルークは本日残業が決定した。
「ったく…騎士団に泊りこむのはいいが…休憩室いけよな…」
次の日の朝いつもより早く出勤したユーリは自分達の部屋に入った途端力が抜ける、
何故ならルークは部屋のソファーでぐっすりと眠っていたからだ。
ルークは女性だ…こんなところで寝ていたらどこぞの馬の骨に襲われる可能性だってある。
けど彼女はそんなことを気にしていない…というか知らない様子で
残業で帰れないときはよくこんな状態で眠ってしまっている。
ユーリも昨日は残ると言ったがルークに無理矢理帰らされてしまった…
やはり無理にでも残ればよかったと後悔している。
ソファーの近くに寄るとソファーの下には茶色い小さな塊が散乱している…
拾って調べてみるとどうやらドッグフードのようだ。
傍にドッグフードの袋が残っていたので拾い上げてみると中身はほとんどない。
「こいつ…一日でどんだけ餌やったんだ…」
この餌が散乱しているということはあの子犬もこの部屋にいるはず…
だが子犬の姿がどこにも見当たらない。
ルークを起こさないように探していると…やっと子犬を見つけたが
ユーリは顔に青筋を立てた。
「わふ…」
子犬が居たのはルークの胸の上。
ルークにしっかりと抱きしめなれながら胸の上で気持ちよさそうに眠っていた。
「こいつ…あとでしっかりと躾けてやらないとな…」
犬の躾け方法が決まった。
時計を見るとそろそろ他の騎士達が来る時刻…
ルークの寝顔をもう少し見ておきたいが…他の男に見られたくない。
仕方がないので起こすことにしたが、普通に起こすのは面白くない。
「おーい…ルーク…10秒以内に起きないとキスするぞ~…」
「ん~…あと5分…」
ルークの身体を揺すり起こそうとするが起きる気配がない…
あと10秒以内に起きろといってるのにあと5分とか…悪戯してくださいということなのだろうか。
ユーリは10秒数えるがルークが全く起きる気配がしないため
ルークの顔に少しずつ自分の顔を近づける。
「本当にキスするぞ…あとで怒ってもしらねぇからな…」
ルークとの距離は少しずつ縮んでいく…あともう少しでルークの唇に触れるところで
ユーリの足に激痛が走った。
「いてぇ!!!何だ!?」
足元を見るとルークの上で寝ていたはずの子犬がユーリの足に噛みついている。
「おまえ…そうとう俺とルークの邪魔をしたいみたいだな…今から躾けしてやるよ!!」
子犬は殺気を感じたのかすぐにユーリから離れるとルークの傍へと逃げていく…
そしてタイミング悪くルークが目を覚ました。
「ふあぁ~…あれ?ユーリ…おはよう…」
「………あぁ、おはよう。ほら、朝飯買ってあるから食え」
「ユーリの手料理がいい…お前もそう思うよなラピード。」
「食いたいなら家にこい…作ってやるから。ってラピードって誰だ?」
ルークが子犬を抱きしめながら話しかけている様子から
何となく予想はついたが一応聞いてみた。
「ん?こいつの名前。一生懸命考えたんだ。良い名前だろ?」
「………そうだな」
「あ、こいつの飼い主お前にしておいたから。がんばれよ。」
「そりゃ好都合だ…こいつはしっかりと躾けないといけないからな…」
「ウッ~…ワンワン!!!」
ラピードはルークの腕の中から飛び出すとユーリの足元で吠え出した。
ユーリはめんどくさそうにしながらもラピードのえさの準備をしている。
「ラピードを見たとき誰かに似ていると思ったけど…そうかアッシュだ…」
自分の母国にいる双子の片割れであるアッシュ…
鋭いまなざし、高いプライド…普段は冷たいが何かあればルークを守る優しい性格。
どことなくラピードに似ている気がした。
「アッシュなら…ラピードみたいにキスの邪魔とかもしそうだよな…」
少し残念そうにつぶやくとユーリとラピードの傍へと歩きだした。
ここはガルバンゾ国にある騎士団の一室。
騎士団には隊が集まる大部屋が一つ与えられている。
そこは騎士達が報告書や始末書など事務関係をする為に使われている。
ルークがいるこの大部屋もとある隊の為に与えられた部屋で、
早く片付けてしまわないといけない書類がルークの前にはあるのに
今朝発行された新聞から手を離すことができない。ため息も止まらない。
「はぁ~…ついにか…」
「何がついになんだ?」
「ふぇ!?ゆ、ユーリ!?」
いきなり自分の後から声が聞こえ振り向くとそこにはユーリが昼飯と思われる袋を持って立っていた。
「い、いつからそこに!?」
「さっきから。お前…騎士のくせに気配を見逃すとか…何考えてたんだよ」
「お、お前には関係ないだろ…」
ルークはさきほどまで見ていた新聞を急いで片付けようとしたが、
ユーリに取り上げられてしまった。
「なになに?『星晶採取による森の変化』『ライマ国の王女と公爵家嫡男の婚約正式発表』
『今日のお勧めメニュー』…特に目立った記事なんてないだろ?どうしたんだ?」
「だから…お前には関係ない…」
不貞腐れた顔をしてユーリからそっぽを向くその姿はどこか可愛らしい…
ユーリは少し幸せそうな顔をしながら持っていた袋から一枚の紙を取り出し
ルークの目の前に差し出した。
「何だこれ?」
「ん?鎧の新調書。お前また胸でかくなって苦しそうだったから貰ってきてやった」
不貞腐れていたルークは今度は立ちあがりユーリに向かって怒鳴りだした。
「おまっ…!!!そういうのをセクハラっていうんだぞ!!よくもまぁ、上司に向かってセクハラできるよな!!
つーか俺の胸はでかくなってねぇ!!」
「そうか?どれ…」
「ひっ!!」
平然とした顔でユーリはルークの胸を軽く触る…
触られたルークはぷるぷると震えて驚きと怒りで動けない…
「うーん…やっぱり1カップでかくなってるぞ…成長期なんだからしょうがねぇよ。
ほら、大人しく新しいの新調しろって…あぶねぇ!!!」
怒りのあまり動けなかったルークだったがやっと我に帰りユーリに左ストレートを食らわせようとしたが、
見事にかわされてしまった。
「おまえ…今日という今日はゆるさねぇからな!!」
「別に未来の嫁の胸くらい触っても減るもんじゃないだろ?」
「何時から俺はお前の嫁になったんだ!!!」
「出会った頃から」
言葉だけ聞いていれば惚気としか思えない会話だったが、
ルークがキックやパンチをユーリに向けて攻撃し、それを上手い具合にユーリはかわす…
他人から見れば迷惑な夫婦喧嘩だが、二人はまだ結婚していない。
はやくこの喧嘩を止めないと部屋がめちゃくちゃになってしまうが、
この隊にはこの二人の喧嘩を止めれる人物は存在していなかった…
唯一止められる人物…それは…
「ルーク!!ユーリ!!何をしているんだ!!」
金髪の青年が隊の大部屋に入って来て喧嘩の中心である二人の名前を叫んだ。
「げっ…フレン…」
「あ、フレン…だってユーリがっ!!」
「だってもじゃない!!ルーク様…自分の立場をわかってください!!」
「うぅ~…はぁ~い…」
ユーリの言うことは全く聞かないルークだったが、何故かフレンの言うことだけはしっかりと聞いた。
何でも昔世話になった人物とすごく似ているからとユーリが聞いた覚えがあった。
フレンに怒られルークが不貞腐れているとルークの足元に小さな蒼い塊が寄ってきた。
「わんわん。」
「「………え?犬?」」
子犬と双子
「ルーク様…何をしたかわかりませんがユーリの方が1000%悪いですが…部下達の前であんな派手は喧嘩はやめてください」
「なぁ、フレン…俺とお前同じ隊長なんだから…様を付けるのは…」
「いいえ。同じ隊長でもルーク様と僕とでは違います。僕より先に隊長になられているのですから付けるのは当たり前です」
「フレンは相変わらず真面目だな…」
「わんわん!!」
そう、フレンが訪ねてきたのはガルバンゾ国にある騎士団ルーク隊の部屋。
隊の名前の通りルークが隊長でユーリが副隊長で構成されている。
ルークは16歳という若さで隊長に就任し若い騎士達の憧れの的である。
17歳になった今でも日々伝説を残し続けている…ルークの人気はその若さだけではない。
「あとルーク様…いくら騎士団隊長だからっておてんばがすぎます。たまには女性らしくされないと」
「…だってユーリが…」
「ルーク様の反応が面白くてユーリはちょっかいをかけるんです。反応しなければ大丈夫です」
「わんわん!!」
ルークは女性だ。
口調は男っぽい口調をしているがその立派な胸、細い腰…女性を象徴される部分がしっかりと出始めている。
だが、手入れされていない赤く長い髪…騎士団の鎧はスカートなのでまだ女性とわかるが
普段着はダボダボのズボン、白く裾の長い上着そしてお腹の見えた姿…男性としか思えない格好をしているので
ちょくちょく男性と間違えられていた。
男性と間違えられている原因の一つとして女性と間違えられるユーリがずっとそばにいるのもある。
「わんわん!!」
ルークとユーリはフレンの膝に乗っている子犬に目をやる。
先ほどから気になっていたが、まずフレンの指導が入ってしまい聞けずにいた。
「あぁ…この子ですか?本当はうちの隊に軍用犬として紹介されたのですが…うちにはすでに居ます。
ちょうどルーク様の隊にはまだ軍用犬が居ないことを思い出して連れてきたのです。」
「わんわん!!」
何故か骨を咥えたまま吠える子犬…目つきは悪い…
ルークはこの目つきの悪さを昔どこかで見た気がしているが思い出せない。
「まぁ、確かにうちに軍用犬居ないしな…ってなわけでユーリ頼んだ。」
「何でも俺に仕事振るんじゃねぇよ…軍用犬は主に隊長が飼い主になるんだろ?」
「まぁ、僕のところみたいに違う隊もいるけどね」
ルークは少し考えていたが碧色の瞳はやはりユーリから目を離さない。
「やっぱりユーリが世話するのがいいんじゃ…ほら、ユーリってケーキとか料理得意だし」
「犬はケーキ食べませんよ…」
「つーかそんなもん食わせてこいつ殺す気かお前…」
「え?そうなの!?じゃぁ…メインは魚か?あ、けど俺魚嫌い…」
「「そりゃ猫だ」」
二人同時にツッコミを入れられ少し不貞腐れた表情を見せる。
隊長にまでなったルークだったが、どこか常識が抜けているところがある…
ユーリがルークから目を離せない理由はそこにもあった。
「騎士団から支給されるドックフードを食べさせたらいいんです。あとは毎日散歩させたり…」
「散歩って何処までだ?隣町か?」
「お前の現実逃避するための散歩と一緒にするな…あんな魔物ばっかりの道こいつ生きて帰ってこれねぇよ」
「わふ?」
「だって…俺犬とか動物飼ったことねぇもん…」
ユーリから深いため息しかでなかった…
これはユーリが世話をする選択しか見出されないようだ…ルークに任せたらきっとこいつは一週間も持たない…
そんな気がした。
「ゆ、ユーリ…僕も手伝うからな…」
ユーリの苦労を感じ取ったフレンが救いの手を差し伸べてきた。
ありがたいことだったが…フレンと一緒となると逆に疲れる気がしてならない。
フレンの腕の中にいた子犬だったが、ルークが優しく持ち上げ抱きしめた。
「お、お前結構大人しいんだな…かわいいなぁ~…」
子犬を抱けて嬉しそうに笑うルークのその姿…
年相応の女の子の反応で可愛らしい…その姿を見ていると幸せな気分になる…
ところだったが、ユーリはどうしても目につくところがあった。
「う~…わふ…」
抱きしめられた子犬はルークの福与かな胸に挟まれ身動きが取れない状態である…
表情は特に変っていないが…尻尾がめちゃくちゃ揺れている…子犬だからかわかりやすいやつだ。
「にゃろう…子犬の分際で俺のルークに手出しやがって…」
「動物に嫉妬する君の方がおかしいよ…ところでルーク様」
「ん?何だ?」
抱いていた子犬の頭を撫でながら可愛がっているところにフレンから呼ばれた為顔をあげる
その顔は子犬と遊べて楽しくて仕方がない顔だ。
「頼んでいた書類…できましたよね?」
「…………あ。」
その一言でルークは本日残業が決定した。
「ったく…騎士団に泊りこむのはいいが…休憩室いけよな…」
次の日の朝いつもより早く出勤したユーリは自分達の部屋に入った途端力が抜ける、
何故ならルークは部屋のソファーでぐっすりと眠っていたからだ。
ルークは女性だ…こんなところで寝ていたらどこぞの馬の骨に襲われる可能性だってある。
けど彼女はそんなことを気にしていない…というか知らない様子で
残業で帰れないときはよくこんな状態で眠ってしまっている。
ユーリも昨日は残ると言ったがルークに無理矢理帰らされてしまった…
やはり無理にでも残ればよかったと後悔している。
ソファーの近くに寄るとソファーの下には茶色い小さな塊が散乱している…
拾って調べてみるとどうやらドッグフードのようだ。
傍にドッグフードの袋が残っていたので拾い上げてみると中身はほとんどない。
「こいつ…一日でどんだけ餌やったんだ…」
この餌が散乱しているということはあの子犬もこの部屋にいるはず…
だが子犬の姿がどこにも見当たらない。
ルークを起こさないように探していると…やっと子犬を見つけたが
ユーリは顔に青筋を立てた。
「わふ…」
子犬が居たのはルークの胸の上。
ルークにしっかりと抱きしめなれながら胸の上で気持ちよさそうに眠っていた。
「こいつ…あとでしっかりと躾けてやらないとな…」
犬の躾け方法が決まった。
時計を見るとそろそろ他の騎士達が来る時刻…
ルークの寝顔をもう少し見ておきたいが…他の男に見られたくない。
仕方がないので起こすことにしたが、普通に起こすのは面白くない。
「おーい…ルーク…10秒以内に起きないとキスするぞ~…」
「ん~…あと5分…」
ルークの身体を揺すり起こそうとするが起きる気配がない…
あと10秒以内に起きろといってるのにあと5分とか…悪戯してくださいということなのだろうか。
ユーリは10秒数えるがルークが全く起きる気配がしないため
ルークの顔に少しずつ自分の顔を近づける。
「本当にキスするぞ…あとで怒ってもしらねぇからな…」
ルークとの距離は少しずつ縮んでいく…あともう少しでルークの唇に触れるところで
ユーリの足に激痛が走った。
「いてぇ!!!何だ!?」
足元を見るとルークの上で寝ていたはずの子犬がユーリの足に噛みついている。
「おまえ…そうとう俺とルークの邪魔をしたいみたいだな…今から躾けしてやるよ!!」
子犬は殺気を感じたのかすぐにユーリから離れるとルークの傍へと逃げていく…
そしてタイミング悪くルークが目を覚ました。
「ふあぁ~…あれ?ユーリ…おはよう…」
「………あぁ、おはよう。ほら、朝飯買ってあるから食え」
「ユーリの手料理がいい…お前もそう思うよなラピード。」
「食いたいなら家にこい…作ってやるから。ってラピードって誰だ?」
ルークが子犬を抱きしめながら話しかけている様子から
何となく予想はついたが一応聞いてみた。
「ん?こいつの名前。一生懸命考えたんだ。良い名前だろ?」
「………そうだな」
「あ、こいつの飼い主お前にしておいたから。がんばれよ。」
「そりゃ好都合だ…こいつはしっかりと躾けないといけないからな…」
「ウッ~…ワンワン!!!」
ラピードはルークの腕の中から飛び出すとユーリの足元で吠え出した。
ユーリはめんどくさそうにしながらもラピードのえさの準備をしている。
「ラピードを見たとき誰かに似ていると思ったけど…そうかアッシュだ…」
自分の母国にいる双子の片割れであるアッシュ…
鋭いまなざし、高いプライド…普段は冷たいが何かあればルークを守る優しい性格。
どことなくラピードに似ている気がした。
「アッシュなら…ラピードみたいにキスの邪魔とかもしそうだよな…」
少し残念そうにつぶやくとユーリとラピードの傍へと歩きだした。
一緒にいると胸が痛くて、苦しくて…
こんな気持ち初めてで…
目と目が合うと恥ずかしくて目を逸らす。
そんな俺を見てあいつは笑う。
どうせ俺は世間知らずのお坊ちゃんで、
俺の中にあるこの気持ちの意味が解らない。
あいつの傍にいるのが苦しくて…
だから俺は今日も逃げ出した。
En premier amour
ここはある街にある世界でも大規模な学校【テイルズ学園】。
かなり大きな規模を持っているこの学園は世界でも珍しい学科が存在し、
毎年多くの入学希望者が押し寄せる。
そんな学科の一つが【芸能科】であり、将来この世界の芸能界を背負っていく
卵達を育成する学科であるが、一般人がそう簡単には入れる学科ではなかった。
この学科には願書で入学する者、そしてスカウトされて入る者…この二つに分けられる。
彼らはそれぞれに自分の夢と希望を持ちながら日々勉強をしているが、
学生時代にデビューするものも数多く居る。
学校側からのプロデュースでデビューした者は数知れず…その多くが今や有名人だ。
そんなデビューした者達には一般学生とは別の寮が与えられる。
特別寮のとある一室…部屋の表札には【アッシュ・フォン・ファブレ】と書かれた部屋で、
壁に掛ったカレンダーにオレンジ色のペンでルークは日付に○印を書く。
その日は明後日の土曜日で、
ルークにとって嬉しい日でもり、複雑な気持ちな日である。
「おい…屑が…人のカレンダーに何勝手に落書きしてやがる…」
机に向かって勉強をしていたアッシュが振り返りルークを睨みつけるが、
アッシュの睨みなど何のその…笑いながら次々にオレンジ色のペンでカレンダーに予定を書き込んで行く。
「別にいいじゃん♪あ、オレンジ色が俺のスケジュールで赤がアッシュだからな!!」
オレンジ色のペンで予定を書き終えると次に赤色のペンで次々に予定を書き込んでいくが、
右手にはアッシュがいつも持っている手帳が握られている。
多分鞄の中を勝手に開けて探し出したのだろう…いつものことなのでアッシュはもう怒る気も失せていた。
「ったく…で?明後日の対策はできてるのかよ…極度の上がり症の屑が…」
アッシュの言葉に意気揚々とアッシュの予定を勝手に書きこんでいたルークの手が止まり、
アッシュの方を向いたルークの表情は今にも泣きそうだった。
「全然できてねぇんだよぉ~…俺もうどうしよう…またヘマしたら折角決まったデビューが台無しだし、
みんなに迷惑かけるし…アッシュの名前に傷つくし…ガイやナタリアそれにティアは悲しむし…
ああぁ!!!ぜってー何かしたらジェイドとアニスからいじめられるうううううううう!!!
わあああん!!!俺どうしたらいいんだよぉ~!!!」
半分泣きながらアッシュの背中に飛びつくが、アッシュは裏拳でルークをはじき返し床に転がした。
それ以上頭悪くなったら困るのはアッシュ…貴方なのに…
話は逸れたが、ルークは明後日ついにデビューが決まった。
本来の予定なら先にデビューしたアッシュと一緒に【双子】を押してデビューする予定だったが、
大人の事情によりそれは却下され、アッシュだけが先にデビューしたのだ。
ちなみに、アッシュが学園内でスカウトされ、ナタリアに強引に転科させられたが
道連れにルークも一緒に転科させられたことは一部の人間しかしらない事情である。
噂によればデビューが却下された理由はアッシュが音t…「屑がっ!!!余計なことしゃべるんじゃねぇ!!!」
「アッシュ…誰と話してるんだ?」
「うっせー…お前には関係ねぇ…」
げほげほ…話を戻そう…明後日デビューで
ルークはアッシュとではなく同じ学科であるルークを入れた6名の男子でデビューが決まった。
そのお披露目会みたいなライブが明後日の土曜日に行われるのである。
やっと決まったデビューだったがルークは複雑な問題が二つあった。
一つが自分で性格である。
もともと表舞台に立つと緊張してしまい動けなくなってしまうのだった。
つまり上がり症なのである…芸能界に入る者としては決定的な致命傷である。
一人だと駄目かもしれないが、グループでならいけるのでは…と考えた学園側だったが、
ルークの上がり症は相変わらず治らず…いつも舞台でヘマをしてしまっている。
仲間達は優しく接してくれているが…本心は呆れているに違いない…とルークは思っている。
「ったく…この前教えた観客を野菜と思えはどうだった?」
「腹が鳴った」
「じゃぁ…お前が勝手にゲーセンで取ってきたそこのチーグルのぬいぐるみと思うのは?」
「逆に無性にむかついた」
「…………じゃぁ、何で1万も使ってそいつら取って来たんだ…この屑が…」
「だってぇ~…男のプライドってやつ?」
ルークが拗ねた表情をしながらベッドの上にあったオレンジ色のチーグルぬいぐるみ(特大)を抱きかかえた。
これは先日ゲーセンに行った時に1万円使ってルークが取ってきたのだった。
ちなみにルークの部屋には水色のチーグルぬいぐるみ(特大)が居座っている。
むりやりそんなぬいぐるみを押しつけられ捨てればいいものを、アッシュは一応置いている。
何だかんだいいつつ兄のことを思っている…仲がいい(?)兄弟…である。
「やっぱ無理無理無理ッ!!俺には無理だぁ!!!」
「うっせーぞこの屑がっ!!!いい加減腹括りやがれ!!!」
この上がり症をどうすればいいか考えたがいい案が浮かばず…ルークはデビューが少し嫌になってきていた。
しかし、歌のレッスンやダンスのレッスンは真面目に通っているので…
複雑な気持ちなのだろう…
ここでデビューを断れば、自分にいろいろ教えてくれたヴァン師匠…歌を(可愛らしく)歌う練習に付き合ってくれたティア、
決めポーズの方法を教えてくれたガイ…手料理を作って差し入れとして持ってきてくれたナタリア…
衣装を作ってくれたアニス達に申し訳が立たないのがデビューを諦めきれない要因の一つだ。
(ちなみにジェイドが上がり症を治す薬をくれたが、アッシュに没収された)
アッシュと同じ世界に立ちたいという気持ちもあるのが正解だが…
しかし、ルークにはもう一つ土曜日のデビューで頭を悩ませているものがあった…
それは…
「上がり症のやつは何とかするとして…お前、同室の狼野郎とはどうなった?
今日も居心地が悪くなって逃げ出してきたんだろ?」
「うぐっ…おっしゃる通りです…」
デビューをした者は一般寮から特別寮へと移動をする…ルーク達はグループなので
グループ同士で相部屋となった…そこまではよかったのだが一緒の部屋になった相手が問題だった。
「何であのユーリと相部屋なんだよ…顔は綺麗だし、スタイルもいいし…身長高いし…
俺とあいつおんなじ人間なのかよって思う…」
「お前が屑なだけだろ…」
「うるせー…はぁ…」
芸能科でもトップクラスの成績を持つユーリ・ローウェル…
彼の人気はデビューをしていないのにデビューした者達より人気だ。
学園内外問わずファングループが居る…そんな彼と一緒にデビューできるのは光栄だったが、
自分との差がいろいろと見つけてしまい…悲しい気持ちになってくる。
彼ならばすでにデビューしても可笑しくないはずだが…何故デビューしていないのかは
学園の七不思議の一つである。
ユーリを見ていると憂鬱な気持ちにもなるがそれだけではなかった。
「何かユーリを見ていると胸が苦しく…いや熱く?なって…目と目が合うと恥ずかしくなって…
一緒にいるのが辛くなって…何で何だろう…俺病気なのかな…?やっぱり保健室に行くべきか?」
「保健室に行ってもお前のその馬鹿は治らねぇからやめろ…この鈍感無自覚野郎が…」
一緒の部屋に居ると辛いので最近ではほとんどをアッシュの部屋で過ごしている。
アッシュにしてはいい迷惑だろう…
しかし、こんな相談をできるのはアッシュやガイだけで…二人に相談をしたらものすごく苦い顔をされた為
他の人には相談をしていない…
一緒に居るのが辛いのにユーリはしつこくルークにちょっかいをかけてきたのでますます苦手になっていった。
「はぁ~…あー…もうすぐダンスの最終調整の時間なのに…会いたくねぇ…けどいかねぇと迷惑かかるし…
あー…どうしよう、どうしようアッシュ…」
「…ナタリアの飯でも食ってしばらくそのうざい口封印されてこい…」
「やだよ~…俺まだ死にたくねぇ…!!!」
二人ともナタリアに対してかなり失礼ですよ…
ルークが云々と悩んでいるとドアをたたく音がしたのですばやくルークはベッドにかくれた。
「アッシュ!!ユーリだったら俺はいねぇって言ってくれ!!!」
「……たっく、俺を巻き込むんじゃねぇ…」
と言いながらルークの靴を見えないところに隠し、部屋のドアを開けて来客に応対をする。
ルークは布団の中から誰が来たかを確認するために耳をすませると
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「なぁ、アッシュ…ルーク来てないか?もうすぐレッスンなのに部屋にいないらしいんだ…」
「…………あの屑ならここには居ないが?」
「えぇ~…じゃぁどこいったんだろう…思い当たる場所他にねぇのに…」
部屋を訪れたのは一緒にデビューする予定のロイドのようだ。
別にロイドなら見つかっても怖くはないのに…なぜアッシュはルークは居ないと嘘をついたのだろう…
ルークは訪問者がロイドとわかるとベッドを抜け出して玄関に顔を見せた。
「あ、ロイドごめん!!俺ならい…る…って…えぇ!!!???」
玄関にロイドが居た…だがその後ににやにやと悪いことを考えていそうな表情をしながら
立っているユーリの姿があったのだ…
「な、何でユーリも居るんだよ!!!ロイドの声しかしてねぇじゃん!!!」
「そりゃ俺ここに来てから声出してねぇしな…こんな単純な手に引っ掛かるとは流石お坊ちゃんだな…」
そう、これはユーリの作戦だった。
自分が訪問しても兄馬鹿であるアッシュに追い返されえるのは目に見えていたので、
ルークと仲が良いロイドに頼んでアッシュの部屋まで迎えに来た。
ロイドだけなら別に追い返す必要のないアッシュだったが、ユーリが居たから「居ない」と言ったのに…
見事にひっかかってしまったルークだ…。
「さーて…お坊ちゃんも見つかったことだし…行くとしますか…」
「へ?あ…え?ちょ…!!!」
ユーリはルークを軽々と肩に乗せるとそのまま一目散にどこかへと去って行った…
ルークの叫び声がものすごい勢いで遠くなるのでかなりのスピードなのがわかる。
「なぁ…アッシュ…あれって誘拐かな?」
「………一時間してレッスン室に現れなかったら…通報(フレンに)してくれ…」
その後通報(フレンに)されたユーリは御縄につき、ルークは無事解放されたとかされなかったとか…
「だああああああああっ…!!!何の対策も浮かばないまま今日になっちまったあああああああ!!!」
「る、ルーク!!!頭を掻き毟ったら髪型が乱れるからだめだよ!!!」
「うぐっ…じゃぁガイ!!頭かせっ!!!」
「な、何で俺なんだ!!!!」
クレスに注意されたルークは少し拗ねた顔をしたが、
相当いろいろと溜まっていたが髪を掻き毟りたかたが、セットが終わった自分の髪は触れなかった為
近くにいたガイの頭を変りに掻き毟り始めた。
ちなみに傍にはアッシュも居たが…そこは…ねぇ…
いろいろと…若い頃からオールバックだと髪が…「屑がっ!!!余計な心配してるんじゃねぇ!!!」
はい、すみません…。
保護者(特にルーク)兼今回のデビューするグループのリーダーであるクレスが心配そうにルークを見つける中
他のメンバーであるロイド、アスベル、ジュードは自分達の振り付けなどを再確認していたが、
ユーリだけは無償に苛立っているルークをじっとみつめていた。
「ユーリ…一応聞くけど…何を見ているんだい?」
「ん?…あいつの腰って殺人兵器だよな…へそなんかだしやがって…変な男に襲われたらどうするんだ…
衣裳係に言っておかねぇとな…」
「…………ユーリ以外にそんな物騒な考えする人いないよ…一応君もアイドルなんだから…
発言には気をつけてくれ…」
「へいへい…」
ユーリの幼馴染であるフレンはユーリの頭を指で軽く突いた。
今から本番…顔などに傷をつけるわけにもいかずこれくらいで我慢しているのだ…
本当はもっとブン殴りたい…
今日はついにやってきた6人のデビュー日。
衣装も着替え、メイクもしあとは自分達の順番を待つだけだが…
ルークが特に落ち着いていなかった…自分の上がり症を気にしているのだろう。
子供の頃やった学芸会で木の役をしたが、台詞がないのに緊張してヘマをして大恥をかいたことがある…
今回は自分達の自己紹介、歌にダンスまである…ルークは不安で仕方がなかった。
「だ、大丈夫…いっぱい、いっぱい練習したんだからっ…大丈夫…」
「練習のしすぎで逆効果もあるけどな…」
アッシュが小さく呟くがルークには届いておらず【人】という字を掌に描き必死になって飲み込んでいる…
喉がつまりそうなくらい飲んでいる。
「ルーク…ほら、行くよ。」
「ふえぇ!?あ、う…うん…」
アスベルに言われルークは慌てた。
見れば他のメンバー達はすでに舞台に向かって居た為急いで舞台へと向かう。
ソデから舞台へと出てみれば見渡す限り人…人…人…
メンバーが出てきた途端黄色い歓声が会場内に響き渡った。
自分の定位置にまで来たのはいいが…やはり緊張してしまい動けない…
「みんな、今日は僕達のデビューを見に来てくれてありがとう!!!」
リーダーであるクレスが会場のファンにお礼を言う。
打ち合わせ通りだ、ここからメンバー一人一人の自己紹介が始まる…
最初はクレス、次にロイド…そして…
「じゃぁ、次はオレンジ色がカラーであるルークだよ!!」
「ふ、ふぇ!?あ…えぇ!?」
そう、ロイドの次はルークの番だ。
いきなり自分の名前を呼ばれ変な声が出てしまった。
周りをみると自分の方に目が集中しているのがわかる…
あんだけ練習した自己紹介も頭が真っ白になり何を言えばいいかがわからない…
顔の温度がどんどん上昇していくのがわかる…
「あの…その…俺…ッ…」
ルークがマイクを握り締めて言葉にならない声を出していると
どこからか声が聞こえた。
「はい、赤毛の君のお名前は?」
「えぇ!?あ、えっと…ルーク…ルーク・フォン・ファブレ!!!」
「じゃぁ、身長と体重は?」
「えっと…この前の健康診断で…身長は171cmで…体重が68kg!!」
「好きな食べ物は?」
「あ、えー…チキンとエビ!!」
「じゃぁ…スリーサイズは?」
「えー…スリーサイズは………………ん?スリーサイズ?」
我に返り不可思議な質問をしてくる人物…そう、自分の横にいつの間にかいたユーリの方を見た。
その顔はニヤリと笑っているが相変わらず絵になっている…
「スリーサイズは?」
「なっ…男にそんなの聞くんじゃねぇよ!!何でそんなこと聞くんだよ!!」
「俺はただファンのみんなの心の声が聞こえたから、それを代弁しているだけだよ。
ほら、言えよスリーサイズ」
「そ、そんなの聞きたがるはずねぇだろ!!」
しかし観客席からは「言ってー♪」との歓声が聞こえる。
観客の味方はどうやらユーリなようだ…
「ほら、ファンのみんなも言って欲しいみたいだし言えよ。
わからないなら俺が今すぐ測ってやろうか?」
マイクを持っていない右手の指が意気揚々と動き出す…
やるきだ…こいつならこの場でやりかねない…
とルークは身の危険を感じた。
「ろ、ロイド!!助けてくれ!!」
傍にいた仲のいいロイドの後にかくれるが…
神は助けてくれなかった。
「男のスリーサイズってどうやって測るんだ?」
「疑問に思うのはそこかよ!!」
このままだとロイドまでユーリ側についてスリーサイズを測ろうとするに違いないが…
ここで本当の神の助けが入った。
「はいはい、3人共そこまで。今はルークの自己紹介の番なんだからね。
ほら、ルーク…大丈夫かい?」
クレスが優しくルークの頭を撫でた。
クレスは同じ歳のはずだが…時々お兄さんのように思えた。
「あ…うん…ごめん…」
「謝らなくていいよ、自己紹介…続きできるかい?」
ふと周りを見ればアスベル、ジュードが小さく笑いマイクに入らないくらい小さな声で
【がんばれ】と言ってくれた。
それだけでルークはなんだか今までもやもやしていた心が少しずつ晴れていく気がする…
「身長171センチ、体重68キロでエビとチキンが好きでスリーサイズは秘密なルークお坊ちゃん。
自己紹介俺が手伝いましょうか?」
「いらねぇーつーの!!一人でできるし!!」
いつのまにか緊張していた心が無くなっている。
あまり認めたくはないがそのきっかけを作ってくれたのは他ならぬユーリだった。
ファンのみんなからも「がんばってー!!」と声が聞こえた。
「えっと、慌ててごめんな!!改めまして俺の名前はルーク。
ルーク・フォン・ファブレ!!カラーはオレンジ色が俺の色なんだ!!
俺、上がり症で…馬鹿で…いろいろとヘマとかもするけど。
がんばって変るからみんな応援よろしくな!!」
深いお辞儀をすると観客から拍手があがった。
他のメンバーからも拍手をしてくれているのがわかる…
なんだかルークは照れくさくなって頬を染めると観客から黄色い歓声があがった。
「じゃぁ、次はブラックがカラーのユーリ!!」
クレスがユーリの名前を呼ぶと観客から今までにないくらい大きな歓声があがる。
これが自分とユーリの差…
ファンに向かって話すユーリの姿はかっこいい…認めたくないが。
少し自信を持ち始めたルークはユーリに対しても正面を向いていこうと思った…
一緒に居て何故かつらいけど…ユーリともっと話をすればそれがわかるかもしれない…
そう思ったからだ。
自己紹介が終わったユーリと目が合った。
やっぱり目が合うと顔が真っ赤になり、心臓がドキドキと動き出す…
またいつものように目を逸らしてしまうとユーリが小さなため息をついたのがわかる。
普段ならそこで終わっていたが、今日は違っていた。
「あの…その…あ、ありがとう…」
下を向いていたが真っ赤にした顔でユーリに向かってお礼を言う…
マイクの電源は切ってあるのでユーリにしか聞こえていないはずだ。
ユーリは驚いた顔をして何かを言いかけたが…
みんなの自己紹介が終わり曲が始まってしまった為ユーリが何を言いたかったのかはわからなかった。
「おいユーリ!!何やってるんだよ!!離せってば!!!」
「うるせー…黙ってついてこい…」
ライブは無事終了…メンバー達はソデに引いたが舞台から見えなくなった途端
ユーリはルークの手を握り一目散にその場を離れた。
他のメンバー達の声が聞こえたがそんなの無視だ。
ルークの心臓は何故か止まらない…ユーリに握られている手は温度を上げて行く。
離せと言うが離してくれる気配はない。
さきほど舞台でヘマをしたことにたいして怒っているのだろうか…?
不安だけがルークの中を駆け抜けていく。
舞台裏の誰もいない場所に来るとユーリはルークを壁側へと押しつけた。
「いたっ…おい…なんだ…よ…」
ユーリの瞳を見ると何時になく真剣な表情…
女でなくても頬を染めてしまいそうなくらい綺麗で…
ルークの心臓の音は強くなるばかり。
ユーリにまで聞こえてしまいそうなくらい動いている。
ユーリは何も言わずにルークを抱きしめた。
いきなりのことでルークの頭の中はパニック状態になっている。
「ちょ…ユーリッ!!な、何!?え?ちょ…やめろってばっ!!!」
「うるせー…あんな顔されて…我慢できる男なんて…男じゃねぇよ…」
ユーリの腕はますます強くなるばかり…
何を言ってもユーリはまともな返事をしてくれない。
どれくらい時間が経ったのだろう…ユーリがやっと少しだけ腕を緩めてくれた。
「………いきなりすまない。」
「え…いや…あの、その…我慢って…俺に対して何を我慢してたんだ?」
「………………。」
ユーリは何も返事をしなかった。
やはり自分が避けていたことにたいしての不満だろうか…
もうヘマばかりするルークに対しての怒りだろうか…
そんなことばかり浮かび憂鬱になる。
「ごめ…ユーリ…同室のやつに避けられてたら…嫌だよな…ほんとごめん。」
少し涙を浮かべながらルークはユーリに対して謝罪をする。
小さい声でごめん…と何度も呟く姿にユーリは渋い顔をみせた。
「ばか…ちげぇよ…そんなこと気にしてない。あー…もう、フレンに止められてたが
どうでもいい…ルーク…いいかよく聞け。」
「え?あ、うん…」
「俺はお前のことが好きなんだ」
「…………………は?」
予想外の言葉にルークは言葉を失うが言葉の意味を理解すると
顔がまた赤くなりはじめた…今日だけでどれだけ体温変化をしているのだろう。
「嫌だったデビューを了承したのも…お前がこのメンバーに居たからだ。それくらい好きなんだ。
お前だって俺のこと好きだから逃げてたんだろ?」
「お、俺がユーリのことを……好き?」
【好き】と言う言葉が鍵になり、ルークの中にあった最後の靄が綺麗に晴れた。
あぁ…そうか、自分はユーリのことが好きだったんだ。
だから胸がドキドキしたり、苦しくなったり…
何だそうか…そうなんだ…
ルークはユーリに抱きついた。
後ろに倒れそうになったユーリだったが、なんとか持ちこたえてルークを支えた。
「うん、俺も…ユーリのことが好き…やっとわかった…大好きなんだ…」
「はははっ…気がつくのおせぇよ…」
そして二人はお互いの唇を合わせる。
初めてのキスはレモンのように酸っぱいのかと思っていたが…
何故か甘かった。
そんな二人を物陰から見守る数名の姿が見られた。
「え…えぇ~…なぁ、クレス…うちの学園って恋愛禁止だよな?」
「うーん…ロイドの言うとおりだけど…男同士だから校則違反にはならないのかな?」
「もともと同性同士の前提の下で作られているわけじゃない気がするんだが…」
「お、俺達こんなところ見てていいの!?」
「やっと気が付きやがったか…あの屑め…」
「なぁ、何時とめに入るんだ?」
「そろそろ止めないとルークが食べられてしまう…
あ…やばい。手を出し始めた!!!」
あわててフレンが物陰から飛び出しユーリに蹴りを入れて襲われていたルークを救い出すが、
友人達に見られていたのを知ったルークは顔を真っ赤にして気絶した。
その後アッシュの部屋にあるカレンダーには
赤・オレンジ・黒のスケジュールが書かれるようになった。
こんな気持ち初めてで…
目と目が合うと恥ずかしくて目を逸らす。
そんな俺を見てあいつは笑う。
どうせ俺は世間知らずのお坊ちゃんで、
俺の中にあるこの気持ちの意味が解らない。
あいつの傍にいるのが苦しくて…
だから俺は今日も逃げ出した。
En premier amour
ここはある街にある世界でも大規模な学校【テイルズ学園】。
かなり大きな規模を持っているこの学園は世界でも珍しい学科が存在し、
毎年多くの入学希望者が押し寄せる。
そんな学科の一つが【芸能科】であり、将来この世界の芸能界を背負っていく
卵達を育成する学科であるが、一般人がそう簡単には入れる学科ではなかった。
この学科には願書で入学する者、そしてスカウトされて入る者…この二つに分けられる。
彼らはそれぞれに自分の夢と希望を持ちながら日々勉強をしているが、
学生時代にデビューするものも数多く居る。
学校側からのプロデュースでデビューした者は数知れず…その多くが今や有名人だ。
そんなデビューした者達には一般学生とは別の寮が与えられる。
特別寮のとある一室…部屋の表札には【アッシュ・フォン・ファブレ】と書かれた部屋で、
壁に掛ったカレンダーにオレンジ色のペンでルークは日付に○印を書く。
その日は明後日の土曜日で、
ルークにとって嬉しい日でもり、複雑な気持ちな日である。
「おい…屑が…人のカレンダーに何勝手に落書きしてやがる…」
机に向かって勉強をしていたアッシュが振り返りルークを睨みつけるが、
アッシュの睨みなど何のその…笑いながら次々にオレンジ色のペンでカレンダーに予定を書き込んで行く。
「別にいいじゃん♪あ、オレンジ色が俺のスケジュールで赤がアッシュだからな!!」
オレンジ色のペンで予定を書き終えると次に赤色のペンで次々に予定を書き込んでいくが、
右手にはアッシュがいつも持っている手帳が握られている。
多分鞄の中を勝手に開けて探し出したのだろう…いつものことなのでアッシュはもう怒る気も失せていた。
「ったく…で?明後日の対策はできてるのかよ…極度の上がり症の屑が…」
アッシュの言葉に意気揚々とアッシュの予定を勝手に書きこんでいたルークの手が止まり、
アッシュの方を向いたルークの表情は今にも泣きそうだった。
「全然できてねぇんだよぉ~…俺もうどうしよう…またヘマしたら折角決まったデビューが台無しだし、
みんなに迷惑かけるし…アッシュの名前に傷つくし…ガイやナタリアそれにティアは悲しむし…
ああぁ!!!ぜってー何かしたらジェイドとアニスからいじめられるうううううううう!!!
わあああん!!!俺どうしたらいいんだよぉ~!!!」
半分泣きながらアッシュの背中に飛びつくが、アッシュは裏拳でルークをはじき返し床に転がした。
それ以上頭悪くなったら困るのはアッシュ…貴方なのに…
話は逸れたが、ルークは明後日ついにデビューが決まった。
本来の予定なら先にデビューしたアッシュと一緒に【双子】を押してデビューする予定だったが、
大人の事情によりそれは却下され、アッシュだけが先にデビューしたのだ。
ちなみに、アッシュが学園内でスカウトされ、ナタリアに強引に転科させられたが
道連れにルークも一緒に転科させられたことは一部の人間しかしらない事情である。
噂によればデビューが却下された理由はアッシュが音t…「屑がっ!!!余計なことしゃべるんじゃねぇ!!!」
「アッシュ…誰と話してるんだ?」
「うっせー…お前には関係ねぇ…」
げほげほ…話を戻そう…明後日デビューで
ルークはアッシュとではなく同じ学科であるルークを入れた6名の男子でデビューが決まった。
そのお披露目会みたいなライブが明後日の土曜日に行われるのである。
やっと決まったデビューだったがルークは複雑な問題が二つあった。
一つが自分で性格である。
もともと表舞台に立つと緊張してしまい動けなくなってしまうのだった。
つまり上がり症なのである…芸能界に入る者としては決定的な致命傷である。
一人だと駄目かもしれないが、グループでならいけるのでは…と考えた学園側だったが、
ルークの上がり症は相変わらず治らず…いつも舞台でヘマをしてしまっている。
仲間達は優しく接してくれているが…本心は呆れているに違いない…とルークは思っている。
「ったく…この前教えた観客を野菜と思えはどうだった?」
「腹が鳴った」
「じゃぁ…お前が勝手にゲーセンで取ってきたそこのチーグルのぬいぐるみと思うのは?」
「逆に無性にむかついた」
「…………じゃぁ、何で1万も使ってそいつら取って来たんだ…この屑が…」
「だってぇ~…男のプライドってやつ?」
ルークが拗ねた表情をしながらベッドの上にあったオレンジ色のチーグルぬいぐるみ(特大)を抱きかかえた。
これは先日ゲーセンに行った時に1万円使ってルークが取ってきたのだった。
ちなみにルークの部屋には水色のチーグルぬいぐるみ(特大)が居座っている。
むりやりそんなぬいぐるみを押しつけられ捨てればいいものを、アッシュは一応置いている。
何だかんだいいつつ兄のことを思っている…仲がいい(?)兄弟…である。
「やっぱ無理無理無理ッ!!俺には無理だぁ!!!」
「うっせーぞこの屑がっ!!!いい加減腹括りやがれ!!!」
この上がり症をどうすればいいか考えたがいい案が浮かばず…ルークはデビューが少し嫌になってきていた。
しかし、歌のレッスンやダンスのレッスンは真面目に通っているので…
複雑な気持ちなのだろう…
ここでデビューを断れば、自分にいろいろ教えてくれたヴァン師匠…歌を(可愛らしく)歌う練習に付き合ってくれたティア、
決めポーズの方法を教えてくれたガイ…手料理を作って差し入れとして持ってきてくれたナタリア…
衣装を作ってくれたアニス達に申し訳が立たないのがデビューを諦めきれない要因の一つだ。
(ちなみにジェイドが上がり症を治す薬をくれたが、アッシュに没収された)
アッシュと同じ世界に立ちたいという気持ちもあるのが正解だが…
しかし、ルークにはもう一つ土曜日のデビューで頭を悩ませているものがあった…
それは…
「上がり症のやつは何とかするとして…お前、同室の狼野郎とはどうなった?
今日も居心地が悪くなって逃げ出してきたんだろ?」
「うぐっ…おっしゃる通りです…」
デビューをした者は一般寮から特別寮へと移動をする…ルーク達はグループなので
グループ同士で相部屋となった…そこまではよかったのだが一緒の部屋になった相手が問題だった。
「何であのユーリと相部屋なんだよ…顔は綺麗だし、スタイルもいいし…身長高いし…
俺とあいつおんなじ人間なのかよって思う…」
「お前が屑なだけだろ…」
「うるせー…はぁ…」
芸能科でもトップクラスの成績を持つユーリ・ローウェル…
彼の人気はデビューをしていないのにデビューした者達より人気だ。
学園内外問わずファングループが居る…そんな彼と一緒にデビューできるのは光栄だったが、
自分との差がいろいろと見つけてしまい…悲しい気持ちになってくる。
彼ならばすでにデビューしても可笑しくないはずだが…何故デビューしていないのかは
学園の七不思議の一つである。
ユーリを見ていると憂鬱な気持ちにもなるがそれだけではなかった。
「何かユーリを見ていると胸が苦しく…いや熱く?なって…目と目が合うと恥ずかしくなって…
一緒にいるのが辛くなって…何で何だろう…俺病気なのかな…?やっぱり保健室に行くべきか?」
「保健室に行ってもお前のその馬鹿は治らねぇからやめろ…この鈍感無自覚野郎が…」
一緒の部屋に居ると辛いので最近ではほとんどをアッシュの部屋で過ごしている。
アッシュにしてはいい迷惑だろう…
しかし、こんな相談をできるのはアッシュやガイだけで…二人に相談をしたらものすごく苦い顔をされた為
他の人には相談をしていない…
一緒に居るのが辛いのにユーリはしつこくルークにちょっかいをかけてきたのでますます苦手になっていった。
「はぁ~…あー…もうすぐダンスの最終調整の時間なのに…会いたくねぇ…けどいかねぇと迷惑かかるし…
あー…どうしよう、どうしようアッシュ…」
「…ナタリアの飯でも食ってしばらくそのうざい口封印されてこい…」
「やだよ~…俺まだ死にたくねぇ…!!!」
二人ともナタリアに対してかなり失礼ですよ…
ルークが云々と悩んでいるとドアをたたく音がしたのですばやくルークはベッドにかくれた。
「アッシュ!!ユーリだったら俺はいねぇって言ってくれ!!!」
「……たっく、俺を巻き込むんじゃねぇ…」
と言いながらルークの靴を見えないところに隠し、部屋のドアを開けて来客に応対をする。
ルークは布団の中から誰が来たかを確認するために耳をすませると
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「なぁ、アッシュ…ルーク来てないか?もうすぐレッスンなのに部屋にいないらしいんだ…」
「…………あの屑ならここには居ないが?」
「えぇ~…じゃぁどこいったんだろう…思い当たる場所他にねぇのに…」
部屋を訪れたのは一緒にデビューする予定のロイドのようだ。
別にロイドなら見つかっても怖くはないのに…なぜアッシュはルークは居ないと嘘をついたのだろう…
ルークは訪問者がロイドとわかるとベッドを抜け出して玄関に顔を見せた。
「あ、ロイドごめん!!俺ならい…る…って…えぇ!!!???」
玄関にロイドが居た…だがその後ににやにやと悪いことを考えていそうな表情をしながら
立っているユーリの姿があったのだ…
「な、何でユーリも居るんだよ!!!ロイドの声しかしてねぇじゃん!!!」
「そりゃ俺ここに来てから声出してねぇしな…こんな単純な手に引っ掛かるとは流石お坊ちゃんだな…」
そう、これはユーリの作戦だった。
自分が訪問しても兄馬鹿であるアッシュに追い返されえるのは目に見えていたので、
ルークと仲が良いロイドに頼んでアッシュの部屋まで迎えに来た。
ロイドだけなら別に追い返す必要のないアッシュだったが、ユーリが居たから「居ない」と言ったのに…
見事にひっかかってしまったルークだ…。
「さーて…お坊ちゃんも見つかったことだし…行くとしますか…」
「へ?あ…え?ちょ…!!!」
ユーリはルークを軽々と肩に乗せるとそのまま一目散にどこかへと去って行った…
ルークの叫び声がものすごい勢いで遠くなるのでかなりのスピードなのがわかる。
「なぁ…アッシュ…あれって誘拐かな?」
「………一時間してレッスン室に現れなかったら…通報(フレンに)してくれ…」
その後通報(フレンに)されたユーリは御縄につき、ルークは無事解放されたとかされなかったとか…
「だああああああああっ…!!!何の対策も浮かばないまま今日になっちまったあああああああ!!!」
「る、ルーク!!!頭を掻き毟ったら髪型が乱れるからだめだよ!!!」
「うぐっ…じゃぁガイ!!頭かせっ!!!」
「な、何で俺なんだ!!!!」
クレスに注意されたルークは少し拗ねた顔をしたが、
相当いろいろと溜まっていたが髪を掻き毟りたかたが、セットが終わった自分の髪は触れなかった為
近くにいたガイの頭を変りに掻き毟り始めた。
ちなみに傍にはアッシュも居たが…そこは…ねぇ…
いろいろと…若い頃からオールバックだと髪が…「屑がっ!!!余計な心配してるんじゃねぇ!!!」
はい、すみません…。
保護者(特にルーク)兼今回のデビューするグループのリーダーであるクレスが心配そうにルークを見つける中
他のメンバーであるロイド、アスベル、ジュードは自分達の振り付けなどを再確認していたが、
ユーリだけは無償に苛立っているルークをじっとみつめていた。
「ユーリ…一応聞くけど…何を見ているんだい?」
「ん?…あいつの腰って殺人兵器だよな…へそなんかだしやがって…変な男に襲われたらどうするんだ…
衣裳係に言っておかねぇとな…」
「…………ユーリ以外にそんな物騒な考えする人いないよ…一応君もアイドルなんだから…
発言には気をつけてくれ…」
「へいへい…」
ユーリの幼馴染であるフレンはユーリの頭を指で軽く突いた。
今から本番…顔などに傷をつけるわけにもいかずこれくらいで我慢しているのだ…
本当はもっとブン殴りたい…
今日はついにやってきた6人のデビュー日。
衣装も着替え、メイクもしあとは自分達の順番を待つだけだが…
ルークが特に落ち着いていなかった…自分の上がり症を気にしているのだろう。
子供の頃やった学芸会で木の役をしたが、台詞がないのに緊張してヘマをして大恥をかいたことがある…
今回は自分達の自己紹介、歌にダンスまである…ルークは不安で仕方がなかった。
「だ、大丈夫…いっぱい、いっぱい練習したんだからっ…大丈夫…」
「練習のしすぎで逆効果もあるけどな…」
アッシュが小さく呟くがルークには届いておらず【人】という字を掌に描き必死になって飲み込んでいる…
喉がつまりそうなくらい飲んでいる。
「ルーク…ほら、行くよ。」
「ふえぇ!?あ、う…うん…」
アスベルに言われルークは慌てた。
見れば他のメンバー達はすでに舞台に向かって居た為急いで舞台へと向かう。
ソデから舞台へと出てみれば見渡す限り人…人…人…
メンバーが出てきた途端黄色い歓声が会場内に響き渡った。
自分の定位置にまで来たのはいいが…やはり緊張してしまい動けない…
「みんな、今日は僕達のデビューを見に来てくれてありがとう!!!」
リーダーであるクレスが会場のファンにお礼を言う。
打ち合わせ通りだ、ここからメンバー一人一人の自己紹介が始まる…
最初はクレス、次にロイド…そして…
「じゃぁ、次はオレンジ色がカラーであるルークだよ!!」
「ふ、ふぇ!?あ…えぇ!?」
そう、ロイドの次はルークの番だ。
いきなり自分の名前を呼ばれ変な声が出てしまった。
周りをみると自分の方に目が集中しているのがわかる…
あんだけ練習した自己紹介も頭が真っ白になり何を言えばいいかがわからない…
顔の温度がどんどん上昇していくのがわかる…
「あの…その…俺…ッ…」
ルークがマイクを握り締めて言葉にならない声を出していると
どこからか声が聞こえた。
「はい、赤毛の君のお名前は?」
「えぇ!?あ、えっと…ルーク…ルーク・フォン・ファブレ!!!」
「じゃぁ、身長と体重は?」
「えっと…この前の健康診断で…身長は171cmで…体重が68kg!!」
「好きな食べ物は?」
「あ、えー…チキンとエビ!!」
「じゃぁ…スリーサイズは?」
「えー…スリーサイズは………………ん?スリーサイズ?」
我に返り不可思議な質問をしてくる人物…そう、自分の横にいつの間にかいたユーリの方を見た。
その顔はニヤリと笑っているが相変わらず絵になっている…
「スリーサイズは?」
「なっ…男にそんなの聞くんじゃねぇよ!!何でそんなこと聞くんだよ!!」
「俺はただファンのみんなの心の声が聞こえたから、それを代弁しているだけだよ。
ほら、言えよスリーサイズ」
「そ、そんなの聞きたがるはずねぇだろ!!」
しかし観客席からは「言ってー♪」との歓声が聞こえる。
観客の味方はどうやらユーリなようだ…
「ほら、ファンのみんなも言って欲しいみたいだし言えよ。
わからないなら俺が今すぐ測ってやろうか?」
マイクを持っていない右手の指が意気揚々と動き出す…
やるきだ…こいつならこの場でやりかねない…
とルークは身の危険を感じた。
「ろ、ロイド!!助けてくれ!!」
傍にいた仲のいいロイドの後にかくれるが…
神は助けてくれなかった。
「男のスリーサイズってどうやって測るんだ?」
「疑問に思うのはそこかよ!!」
このままだとロイドまでユーリ側についてスリーサイズを測ろうとするに違いないが…
ここで本当の神の助けが入った。
「はいはい、3人共そこまで。今はルークの自己紹介の番なんだからね。
ほら、ルーク…大丈夫かい?」
クレスが優しくルークの頭を撫でた。
クレスは同じ歳のはずだが…時々お兄さんのように思えた。
「あ…うん…ごめん…」
「謝らなくていいよ、自己紹介…続きできるかい?」
ふと周りを見ればアスベル、ジュードが小さく笑いマイクに入らないくらい小さな声で
【がんばれ】と言ってくれた。
それだけでルークはなんだか今までもやもやしていた心が少しずつ晴れていく気がする…
「身長171センチ、体重68キロでエビとチキンが好きでスリーサイズは秘密なルークお坊ちゃん。
自己紹介俺が手伝いましょうか?」
「いらねぇーつーの!!一人でできるし!!」
いつのまにか緊張していた心が無くなっている。
あまり認めたくはないがそのきっかけを作ってくれたのは他ならぬユーリだった。
ファンのみんなからも「がんばってー!!」と声が聞こえた。
「えっと、慌ててごめんな!!改めまして俺の名前はルーク。
ルーク・フォン・ファブレ!!カラーはオレンジ色が俺の色なんだ!!
俺、上がり症で…馬鹿で…いろいろとヘマとかもするけど。
がんばって変るからみんな応援よろしくな!!」
深いお辞儀をすると観客から拍手があがった。
他のメンバーからも拍手をしてくれているのがわかる…
なんだかルークは照れくさくなって頬を染めると観客から黄色い歓声があがった。
「じゃぁ、次はブラックがカラーのユーリ!!」
クレスがユーリの名前を呼ぶと観客から今までにないくらい大きな歓声があがる。
これが自分とユーリの差…
ファンに向かって話すユーリの姿はかっこいい…認めたくないが。
少し自信を持ち始めたルークはユーリに対しても正面を向いていこうと思った…
一緒に居て何故かつらいけど…ユーリともっと話をすればそれがわかるかもしれない…
そう思ったからだ。
自己紹介が終わったユーリと目が合った。
やっぱり目が合うと顔が真っ赤になり、心臓がドキドキと動き出す…
またいつものように目を逸らしてしまうとユーリが小さなため息をついたのがわかる。
普段ならそこで終わっていたが、今日は違っていた。
「あの…その…あ、ありがとう…」
下を向いていたが真っ赤にした顔でユーリに向かってお礼を言う…
マイクの電源は切ってあるのでユーリにしか聞こえていないはずだ。
ユーリは驚いた顔をして何かを言いかけたが…
みんなの自己紹介が終わり曲が始まってしまった為ユーリが何を言いたかったのかはわからなかった。
「おいユーリ!!何やってるんだよ!!離せってば!!!」
「うるせー…黙ってついてこい…」
ライブは無事終了…メンバー達はソデに引いたが舞台から見えなくなった途端
ユーリはルークの手を握り一目散にその場を離れた。
他のメンバー達の声が聞こえたがそんなの無視だ。
ルークの心臓は何故か止まらない…ユーリに握られている手は温度を上げて行く。
離せと言うが離してくれる気配はない。
さきほど舞台でヘマをしたことにたいして怒っているのだろうか…?
不安だけがルークの中を駆け抜けていく。
舞台裏の誰もいない場所に来るとユーリはルークを壁側へと押しつけた。
「いたっ…おい…なんだ…よ…」
ユーリの瞳を見ると何時になく真剣な表情…
女でなくても頬を染めてしまいそうなくらい綺麗で…
ルークの心臓の音は強くなるばかり。
ユーリにまで聞こえてしまいそうなくらい動いている。
ユーリは何も言わずにルークを抱きしめた。
いきなりのことでルークの頭の中はパニック状態になっている。
「ちょ…ユーリッ!!な、何!?え?ちょ…やめろってばっ!!!」
「うるせー…あんな顔されて…我慢できる男なんて…男じゃねぇよ…」
ユーリの腕はますます強くなるばかり…
何を言ってもユーリはまともな返事をしてくれない。
どれくらい時間が経ったのだろう…ユーリがやっと少しだけ腕を緩めてくれた。
「………いきなりすまない。」
「え…いや…あの、その…我慢って…俺に対して何を我慢してたんだ?」
「………………。」
ユーリは何も返事をしなかった。
やはり自分が避けていたことにたいしての不満だろうか…
もうヘマばかりするルークに対しての怒りだろうか…
そんなことばかり浮かび憂鬱になる。
「ごめ…ユーリ…同室のやつに避けられてたら…嫌だよな…ほんとごめん。」
少し涙を浮かべながらルークはユーリに対して謝罪をする。
小さい声でごめん…と何度も呟く姿にユーリは渋い顔をみせた。
「ばか…ちげぇよ…そんなこと気にしてない。あー…もう、フレンに止められてたが
どうでもいい…ルーク…いいかよく聞け。」
「え?あ、うん…」
「俺はお前のことが好きなんだ」
「…………………は?」
予想外の言葉にルークは言葉を失うが言葉の意味を理解すると
顔がまた赤くなりはじめた…今日だけでどれだけ体温変化をしているのだろう。
「嫌だったデビューを了承したのも…お前がこのメンバーに居たからだ。それくらい好きなんだ。
お前だって俺のこと好きだから逃げてたんだろ?」
「お、俺がユーリのことを……好き?」
【好き】と言う言葉が鍵になり、ルークの中にあった最後の靄が綺麗に晴れた。
あぁ…そうか、自分はユーリのことが好きだったんだ。
だから胸がドキドキしたり、苦しくなったり…
何だそうか…そうなんだ…
ルークはユーリに抱きついた。
後ろに倒れそうになったユーリだったが、なんとか持ちこたえてルークを支えた。
「うん、俺も…ユーリのことが好き…やっとわかった…大好きなんだ…」
「はははっ…気がつくのおせぇよ…」
そして二人はお互いの唇を合わせる。
初めてのキスはレモンのように酸っぱいのかと思っていたが…
何故か甘かった。
そんな二人を物陰から見守る数名の姿が見られた。
「え…えぇ~…なぁ、クレス…うちの学園って恋愛禁止だよな?」
「うーん…ロイドの言うとおりだけど…男同士だから校則違反にはならないのかな?」
「もともと同性同士の前提の下で作られているわけじゃない気がするんだが…」
「お、俺達こんなところ見てていいの!?」
「やっと気が付きやがったか…あの屑め…」
「なぁ、何時とめに入るんだ?」
「そろそろ止めないとルークが食べられてしまう…
あ…やばい。手を出し始めた!!!」
あわててフレンが物陰から飛び出しユーリに蹴りを入れて襲われていたルークを救い出すが、
友人達に見られていたのを知ったルークは顔を真っ赤にして気絶した。
その後アッシュの部屋にあるカレンダーには
赤・オレンジ・黒のスケジュールが書かれるようになった。
久しぶりに入ったその部屋は何も変っていなかった…
俺があいつの世話係として居た頃から何一つ変っていないその部屋。
いつでもあいつが帰って来てもいいように
普段から掃除をしてあるのが一目でわかる。
もうあいつは帰って来ないのに…
0時を知らせる鐘が何処からか聞こえる。
そろそろ戻って明日の準備をしないといけないので
名残惜しくはあったが、その部屋を出ようとしたが…
何処からか聞こえてくる音に足を止められてしまった。
To me after ten years
ガイが久しぶりに入った部屋…ファブレ家にあるルークの部屋。
ルークの部屋から聞こえた音に釣られて音の主を探してみると、
部屋の角…しかも何故か隠すように小さな箱が置かれていた。
箱の蓋を見ると今日の日付になっている。
これは指定したその日になれば鍵が開くという仕組みの音機関だと推測できた。
鍵が開いた証として先ほどの小さな音が流れたのだろう…
ガイは小さな箱を開けてみると中には数枚の手紙が入ってる。
宛名を見てみると汚い字で【10年後の俺へ】と書かれていた。
「今から10年前って言えば…ルークが14歳前後の頃か…」
あまり良い気はしなかったがガイはベッドに腰をかけて手紙を読み始めた。
10年後の俺へ
10年後の俺へ、元気ですか?俺は元気です。
きおくそーしつになってからお医者さんに言われたとおり
毎日がんばって日記もつけてます。
けど、面白いこともないし毎日がおなじような日記になってます。
10年後の俺はもう大人になってるから
屋敷の外にもいっぱい遊びに行けてるよな?
俺もはやく自由に外で遊びたい…
ガイと遊んだり師匠と稽古するのも楽しいけど。
外が見たい…外で遊びたい…
外の世界はどんなのですか?
いっぱい人がいますか?
天気は晴れてますか?
10年後の俺はいっぱい外で遊べてると思うのでうらやましいです。
ナタリアとの約束思いだせましたか?
俺は未だに思い出せません。
会うたびに怒られてうぜーです。
長くなりましたがこれにて失礼します。
ルーク・フォン・ファブレより
「天気は晴れてますか?って…それは屋敷の中でも外でも変らないって…」
字が書けるようになった嬉しさからかこの手紙を書いたのだろう…
綴りが間違いだらけだが…なんとか読める字だ。
ルークの可愛さに笑いが出たガイだったが、
この手紙からどれだけ外に憧れていたかがわかった…
これを書いた数年後ルークは旅をすることになる。
願ってもない外の世界…けどそれは彼の人生の終焉を迎える旅でもあった。
「ルーク…もっと外の世界楽しみたかったよなぁ…世界を救う旅とかじゃなくて
観光とか…もっと気軽に遊びに行きたかったよなぁ…」
ルークが居なくなってから何度流したのだろうか…
最近は涙が出ないくらい落ち着いていたのに…
ガイは他の手紙を読み始めると
その中には自分宛の手紙も入っていた。
10年後のガイへ
10年後のガイへ、元気ですか?俺は元気です。
10年後も俺達はずっと一緒ですか?
外の世界に出た俺は元気ですか?
ガイの言う音機関の街に俺は行きたいです。
ガイなら外に出れるようになった俺を
一番に連れて行ってくれそうだけど…
これからも俺と仲良くしてください。
ルーク・フォン・ファブレより
「はははっ…俺への手紙短いな…」
短い手紙だったが、ルークの素直な気持ちがとてもわかった…
まだこのころは性格が曲がっていないのか…と思ってしまうくらい
素直な気持ちが書かれている…手紙だから素直なのかもしれない。
他にも両親への手紙、メイド達への手紙、ペールへの手紙…
などなど屋敷の人達宛の手紙が箱の中に詰められていた。
そして一番底にあった手紙には宛名が書かれていなかった…
不審に思い中身を読み後悔をした。
「あのバカッ…ナタリアへの手紙なのに宛名書きわすれてやがる…」
宛名が抜けていた手紙はナタリアへの手紙だった。
最後に書いたから忘れたのか…またはあえてなのかはわからない。
10年後のナタリアへ
10年後のナタリアへ、元気ですか?俺は元気です。
ナタリアがいつも言ってる約束…思い出せましたか?
今の俺はまだ思い出せていません。
ごめんなさい…
けど、きっといつか思いだすので待っていてください。
10年後の俺達はもしかしてけっこんとかしてますか?
もし、結婚していたら…ナタリア、おめでとう。
幸せになってください…って俺が幸せにしないといけないんだよな!!
こんな俺だけどずっとずっとこれからもよろしくおねがいします。
ルーク・フォン・ファブレより
「これ…ナタリアが読んだら泣いて喜びそうだな…」
本人より先に読んでしまったことに怒られてしまいそうだが、
それは仕方がない…と思う。
「ほんと…なんで鍵を開ける日が今日なんだろうかねぇ…狙ってたのか?あいつ…」
旅を終えてから赤毛の青年が帰還した…
けれど彼はガイの待っていた青年ではなかった。
その時わかった…もう彼は戻ってこないのだと…
今でも瞳を閉じれば鮮明に思い出せる…
あの朱い(あかい)髪…碧の瞳…自分より少し低い身長…たまに生きているかのように動くヒヨコ頭。
少し高い声で笑うあの笑顔…拗ねた表情…怒った表情…泣いた表情…最後のあの寂しそうな顔。
こんなにも自分は彼のことを思っているのに…彼は戻ってきてはくれなかった。
「ったく…親友をもっと大切にしろよな…」
部屋の時計を見るとかなり遅い時間になってしまっていた。
そろそろ寝ないと本当に明日…いや今日の予定に支障がでてしまう。
「この手紙はサプライズな祝辞だな…」
今日はキムラスカにとってとても大切な日。
新しい王と王女の誕生日。
彼と彼女の結婚式。
彼らの子供はどんな子なのだろう…
やはり髪の毛は紅いのだろうか…いや母親に似て金髪かな?
そんな温かい想像が生まれ冷たくなった心が少しあたたくなる。
「ルーク…一緒にお祝いしてやろうな…」
傍で彼が笑った気がした。
ガイは小さく微笑みながらルークの部屋をあとにした。
願わくば…もっと彼とこの部屋で…過ごしたかった…と心で思いながら…
ベッドのシーツを温かい太陽の匂いに包まれたシーツに変えていると、
急に背中に何かが乗ってきた。
首だけを背中に向けると見えたのは小さな朱い髪。
「おい…降りろって…お前のベッドのシーツ変えてるんだから」
「やーだぁーえほんよんでくれなきゃやぁだー」
「はいはい…読んでやるから降りろって」
「やったぁ~♪」
小さな朱い少年は背中から降りると
水色のチーグルのぬいぐるみ…いや、ぬいぐるみ型のりゅっくから本を取り出し
瞳を輝かせながら手にした絵本を見せた。
「またこの絵本か…お前も好きだねぇ…」
「うん!!だって、ちちうえとおじうえがでてるんだもん。おれこのはなしだいすき!!」
朱い少年は太陽のような笑顔で笑った。
よほどこの絵本が好きなのだろう…この前買ってもらったばかりなのに
すでにボロボロになりだしている…一日何度も読んでいたら仕方がない。
しかも外へ出かける時も持っていく。
あの専用のチーグルリュックに入れて持ち歩くから困ったものだった。
「言っておくが、この話には俺も出てるんだからな」
「うん、しってる。ガイもカレーにかつやくなんでしょ?」
「カレーじゃなくて華麗にな…まぁ読んでやるからここ座れ」
「うん!!!」
朱い少年はガイの膝の上に座ると慣れた手つきで絵本を開いた。
「えっと…『むかしむかし、この世界には【予言】が存在しました。
ある時その【予言】を恨む青年が現れました。その青年は【予言】とこの世界を消そうとしていたのです。
この物語は世界を救う為に活躍した、二人の紅き青年とその仲間達の物語です…』」
俺があいつの世話係として居た頃から何一つ変っていないその部屋。
いつでもあいつが帰って来てもいいように
普段から掃除をしてあるのが一目でわかる。
もうあいつは帰って来ないのに…
0時を知らせる鐘が何処からか聞こえる。
そろそろ戻って明日の準備をしないといけないので
名残惜しくはあったが、その部屋を出ようとしたが…
何処からか聞こえてくる音に足を止められてしまった。
To me after ten years
ガイが久しぶりに入った部屋…ファブレ家にあるルークの部屋。
ルークの部屋から聞こえた音に釣られて音の主を探してみると、
部屋の角…しかも何故か隠すように小さな箱が置かれていた。
箱の蓋を見ると今日の日付になっている。
これは指定したその日になれば鍵が開くという仕組みの音機関だと推測できた。
鍵が開いた証として先ほどの小さな音が流れたのだろう…
ガイは小さな箱を開けてみると中には数枚の手紙が入ってる。
宛名を見てみると汚い字で【10年後の俺へ】と書かれていた。
「今から10年前って言えば…ルークが14歳前後の頃か…」
あまり良い気はしなかったがガイはベッドに腰をかけて手紙を読み始めた。
10年後の俺へ
10年後の俺へ、元気ですか?俺は元気です。
きおくそーしつになってからお医者さんに言われたとおり
毎日がんばって日記もつけてます。
けど、面白いこともないし毎日がおなじような日記になってます。
10年後の俺はもう大人になってるから
屋敷の外にもいっぱい遊びに行けてるよな?
俺もはやく自由に外で遊びたい…
ガイと遊んだり師匠と稽古するのも楽しいけど。
外が見たい…外で遊びたい…
外の世界はどんなのですか?
いっぱい人がいますか?
天気は晴れてますか?
10年後の俺はいっぱい外で遊べてると思うのでうらやましいです。
ナタリアとの約束思いだせましたか?
俺は未だに思い出せません。
会うたびに怒られてうぜーです。
長くなりましたがこれにて失礼します。
ルーク・フォン・ファブレより
「天気は晴れてますか?って…それは屋敷の中でも外でも変らないって…」
字が書けるようになった嬉しさからかこの手紙を書いたのだろう…
綴りが間違いだらけだが…なんとか読める字だ。
ルークの可愛さに笑いが出たガイだったが、
この手紙からどれだけ外に憧れていたかがわかった…
これを書いた数年後ルークは旅をすることになる。
願ってもない外の世界…けどそれは彼の人生の終焉を迎える旅でもあった。
「ルーク…もっと外の世界楽しみたかったよなぁ…世界を救う旅とかじゃなくて
観光とか…もっと気軽に遊びに行きたかったよなぁ…」
ルークが居なくなってから何度流したのだろうか…
最近は涙が出ないくらい落ち着いていたのに…
ガイは他の手紙を読み始めると
その中には自分宛の手紙も入っていた。
10年後のガイへ
10年後のガイへ、元気ですか?俺は元気です。
10年後も俺達はずっと一緒ですか?
外の世界に出た俺は元気ですか?
ガイの言う音機関の街に俺は行きたいです。
ガイなら外に出れるようになった俺を
一番に連れて行ってくれそうだけど…
これからも俺と仲良くしてください。
ルーク・フォン・ファブレより
「はははっ…俺への手紙短いな…」
短い手紙だったが、ルークの素直な気持ちがとてもわかった…
まだこのころは性格が曲がっていないのか…と思ってしまうくらい
素直な気持ちが書かれている…手紙だから素直なのかもしれない。
他にも両親への手紙、メイド達への手紙、ペールへの手紙…
などなど屋敷の人達宛の手紙が箱の中に詰められていた。
そして一番底にあった手紙には宛名が書かれていなかった…
不審に思い中身を読み後悔をした。
「あのバカッ…ナタリアへの手紙なのに宛名書きわすれてやがる…」
宛名が抜けていた手紙はナタリアへの手紙だった。
最後に書いたから忘れたのか…またはあえてなのかはわからない。
10年後のナタリアへ
10年後のナタリアへ、元気ですか?俺は元気です。
ナタリアがいつも言ってる約束…思い出せましたか?
今の俺はまだ思い出せていません。
ごめんなさい…
けど、きっといつか思いだすので待っていてください。
10年後の俺達はもしかしてけっこんとかしてますか?
もし、結婚していたら…ナタリア、おめでとう。
幸せになってください…って俺が幸せにしないといけないんだよな!!
こんな俺だけどずっとずっとこれからもよろしくおねがいします。
ルーク・フォン・ファブレより
「これ…ナタリアが読んだら泣いて喜びそうだな…」
本人より先に読んでしまったことに怒られてしまいそうだが、
それは仕方がない…と思う。
「ほんと…なんで鍵を開ける日が今日なんだろうかねぇ…狙ってたのか?あいつ…」
旅を終えてから赤毛の青年が帰還した…
けれど彼はガイの待っていた青年ではなかった。
その時わかった…もう彼は戻ってこないのだと…
今でも瞳を閉じれば鮮明に思い出せる…
あの朱い(あかい)髪…碧の瞳…自分より少し低い身長…たまに生きているかのように動くヒヨコ頭。
少し高い声で笑うあの笑顔…拗ねた表情…怒った表情…泣いた表情…最後のあの寂しそうな顔。
こんなにも自分は彼のことを思っているのに…彼は戻ってきてはくれなかった。
「ったく…親友をもっと大切にしろよな…」
部屋の時計を見るとかなり遅い時間になってしまっていた。
そろそろ寝ないと本当に明日…いや今日の予定に支障がでてしまう。
「この手紙はサプライズな祝辞だな…」
今日はキムラスカにとってとても大切な日。
新しい王と王女の誕生日。
彼と彼女の結婚式。
彼らの子供はどんな子なのだろう…
やはり髪の毛は紅いのだろうか…いや母親に似て金髪かな?
そんな温かい想像が生まれ冷たくなった心が少しあたたくなる。
「ルーク…一緒にお祝いしてやろうな…」
傍で彼が笑った気がした。
ガイは小さく微笑みながらルークの部屋をあとにした。
願わくば…もっと彼とこの部屋で…過ごしたかった…と心で思いながら…
ベッドのシーツを温かい太陽の匂いに包まれたシーツに変えていると、
急に背中に何かが乗ってきた。
首だけを背中に向けると見えたのは小さな朱い髪。
「おい…降りろって…お前のベッドのシーツ変えてるんだから」
「やーだぁーえほんよんでくれなきゃやぁだー」
「はいはい…読んでやるから降りろって」
「やったぁ~♪」
小さな朱い少年は背中から降りると
水色のチーグルのぬいぐるみ…いや、ぬいぐるみ型のりゅっくから本を取り出し
瞳を輝かせながら手にした絵本を見せた。
「またこの絵本か…お前も好きだねぇ…」
「うん!!だって、ちちうえとおじうえがでてるんだもん。おれこのはなしだいすき!!」
朱い少年は太陽のような笑顔で笑った。
よほどこの絵本が好きなのだろう…この前買ってもらったばかりなのに
すでにボロボロになりだしている…一日何度も読んでいたら仕方がない。
しかも外へ出かける時も持っていく。
あの専用のチーグルリュックに入れて持ち歩くから困ったものだった。
「言っておくが、この話には俺も出てるんだからな」
「うん、しってる。ガイもカレーにかつやくなんでしょ?」
「カレーじゃなくて華麗にな…まぁ読んでやるからここ座れ」
「うん!!!」
朱い少年はガイの膝の上に座ると慣れた手つきで絵本を開いた。
「えっと…『むかしむかし、この世界には【予言】が存在しました。
ある時その【予言】を恨む青年が現れました。その青年は【予言】とこの世界を消そうとしていたのです。
この物語は世界を救う為に活躍した、二人の紅き青年とその仲間達の物語です…』」
