旭屋本舗
ようこそいらっしゃいませ。
腐向けサイトですご理解のある方のみどうぞ。
始めての方はカテゴリー【What】をお読みください。
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「あ、ルーク様…クリームはその程度でよろしいかと…」
「そうなのか…わかった。スポンジは焼けたかな?」
「んー…もうちょっとみたいですね」
ある日の午後。
いつもと変わらないバンエルティア号だったが、食堂だけは何時もと違う色が混じっていた。
それは髪を短くしたルーク。
昼を過ぎ食堂が落ち着きを見せたこの時間にルークはせっせとケーキを作っている。
理由はもうすぐ帰ってくる恋人の為…
一週間ほど護衛で家を開けているのできっと疲れた顔をして帰ってくると予想したルークは、
彼の大好きなケーキを作って待っていようと先ほど昼寝をしていた時に思いつきクレアとロックスに手伝いを頼んだ。
もうすぐで焼き上がるスポンジを嬉しそうに待っていると食堂のドアが開いた。
「ただいま~…わりぃ、何か甘いものねぇか?」
「あ、ユーリお帰り!!」
食堂の扉をあけたのは死んだような目をしたユーリだった。
その姿から相当疲れているのがわかったが、
恋人が帰ってきたので嬉しそうにひよこ頭をひょこひょこと動かしルークはユーリに近づく。
その姿はクレアの頬を緩ませたがその時ルークの頭から花びらが一枚落ちたことに気が付いた。
「ルーク…?珍しいなこんな時間にここにいるなんて…………」
「あ…えっと…ユーリの為にさ…ケーキ作ってて…もう少しで出来上がるから待っててくれよな」
「へー…お前がケーキねぇ……ん?」
死んだような目をしていたユーリの目が何故か獲物を狙うような狼の目に変った。
それに気が付いたルークは首を傾げてユーリを見つめる。
「ユーリ…?どうかしたか…?」
「……………………。」
ユーリは何も返事をしない。
不思議そうに見つめるルークだったが、次の瞬間言葉を失った…
いや、その場にいたクレス、ロックスも言葉を失った。
「ユーリ……?え?」
ガブッ。
ルークに近づいたユーリはルークの匂いを嗅ぐと、
何故かルークの首元に無言で噛みついた。
「えぇ!!???はぇ!!!!!!!!?????????
な、何しやがるんだこのエロ狼があああああああああああああああああ!!!!」
「ぐはっ!!!」
顔を真っ赤にしたルークは利き腕で烈破掌をユーリに食わせた。
桜×変態×称号
ルークの部屋の入り口にはには大きな文字で
『変態狼立ち入り禁止』
と書かれた紙が貼られたいた。
その紙を見たユーリはがっくりと肩を落とした。
「アンタ、サイテーよね…」
「ユーリ…サイテーです。」
「君というやつは…見損なったよ」
同じ国の出身であるリタ、エステル、フレンは先ほどからかなり厳しい言葉を投げてくる。
ユーリはルークに謝りたくここまで来たが…先ほどから声を掛けても返事がない。
「なぁ、ルーク久しぶりに剣の稽古をしないか?」
「そうそう、剣の稽古ついでにユーリの話も聞いてやってくれよ」
「俺の話はついでかよ…」
親友であるクレスとロイドが声を掛けても全くの無反応。
よほど怒っているらしい…
ユーリ自身もひどいことをしたと心から反省している。
「ルーク悪い…言い訳にしかならねぇだろうけど…お前の身体から甘い花のような匂いが漂ってて…
無意識で噛みついてた…ほんとすまねぇ…」
そう、あの時何故かルークの身体からは甘い匂いが漂った。
ケーキの匂いではない…ほかほかと温かい太陽のような甘い香り…
その匂いを嗅いだ瞬間ユーリは無意識でルークに噛みついていた。
「無意識で噛みつくなんてサイテー」
「うるせー…本当のことなんだからしょうがねぇだろ…」
扉が開かないルークの部屋をもう一度見返し、ため息をつくと一度食堂に戻って
また改めてここに謝罪に来ようとしたが、その時扉が開く音がした。
「お、俺から…花のような甘い香りがしたって…ほんとか?」
ルークはまだ警戒しているのか扉から半分だけ顔を出しユーリを睨みつけた。
ルークが睨みつけても可愛いだけだったが、今はそれをいう状況ではない…
その言葉を飲み込みユーリは力強くうなづいた。
「あぁ…すっげー良い香りだった…」
「だったら…俺のせいだ…ごめん…」
「は?」
その場に居たメンバー全員がルークの言葉に首を傾げた。
今回の件は100%ユーリが悪い…それなのになぜルークが悪くなるのか…
接点が全く見つからなかった。
「お、俺午前中眠くて…甲板で昼寝してたら…桜の花にいつの間にか埋もれてて…
一応風呂入ったんだけど…甘い香りとれてなかったんだな…ごめん」
花びらに埋もれるくらい寝てたってどれくらいだよと言いたかったが
ルークの言葉で全てが理解できた。
ユーリが反応した甘い香りとは桜の香り。
甘くて優しくて…太陽のような甘い香り…その香りに無性に糖分が欲しかったユーリは
無意識に反応してしまいルークに噛みついたのだった。
原因が解ったとはいえ悪いのはユーリだが…
「あ…いや…悪りぃ…俺も我慢効かなくて…良い大人が…」
「ユーリは疲れてたんだからしょうがねぇーよ…俺こそごめん…叩いて…」
部屋から半分だけ身体を出していたルークはやっと部屋から出てきて
ユーリの傍に行き抱きついた。
抱きつかれたユーリは嬉しそうにしっかりとルークを抱きしめた。
それを見ていたメンバー達はため息をついたり、笑ったりなど各々の反応をみせた。
「あ…ケーキ…作りかけどうしよう…クリームはできてるんだけど…」
あまりの衝撃な出来事だったのでルークはケーキ作りを放棄して部屋に逃げ込んだ。
クレアとロックスがスポンジを取り出してくれてるとは思うが…
今から作るには晩御飯の準備と鉢合わせになってしまうので邪魔なだけだった。
「俺はクリームだけでもいいぜ…」
「え?そうなのか?」
「あぁ…ただしお前の身体にn……「ユーリ!!!!!!!!!」」
ユーリが良い終わる前にフレンから強烈なツッコミが後頭部に入りユーリは気絶をした。
「え?あ…ユーリ!?大丈夫か?ユーリ!!!」
心配そうにユーリの身体をルークが揺すったが完全にノックアウトされており、
ユーリの目が覚めたのは次の日になってからだった。
そして目覚めたユーリは『変態な狼取り扱い注意』という称号を手に入れた。
「そうなのか…わかった。スポンジは焼けたかな?」
「んー…もうちょっとみたいですね」
ある日の午後。
いつもと変わらないバンエルティア号だったが、食堂だけは何時もと違う色が混じっていた。
それは髪を短くしたルーク。
昼を過ぎ食堂が落ち着きを見せたこの時間にルークはせっせとケーキを作っている。
理由はもうすぐ帰ってくる恋人の為…
一週間ほど護衛で家を開けているのできっと疲れた顔をして帰ってくると予想したルークは、
彼の大好きなケーキを作って待っていようと先ほど昼寝をしていた時に思いつきクレアとロックスに手伝いを頼んだ。
もうすぐで焼き上がるスポンジを嬉しそうに待っていると食堂のドアが開いた。
「ただいま~…わりぃ、何か甘いものねぇか?」
「あ、ユーリお帰り!!」
食堂の扉をあけたのは死んだような目をしたユーリだった。
その姿から相当疲れているのがわかったが、
恋人が帰ってきたので嬉しそうにひよこ頭をひょこひょこと動かしルークはユーリに近づく。
その姿はクレアの頬を緩ませたがその時ルークの頭から花びらが一枚落ちたことに気が付いた。
「ルーク…?珍しいなこんな時間にここにいるなんて…………」
「あ…えっと…ユーリの為にさ…ケーキ作ってて…もう少しで出来上がるから待っててくれよな」
「へー…お前がケーキねぇ……ん?」
死んだような目をしていたユーリの目が何故か獲物を狙うような狼の目に変った。
それに気が付いたルークは首を傾げてユーリを見つめる。
「ユーリ…?どうかしたか…?」
「……………………。」
ユーリは何も返事をしない。
不思議そうに見つめるルークだったが、次の瞬間言葉を失った…
いや、その場にいたクレス、ロックスも言葉を失った。
「ユーリ……?え?」
ガブッ。
ルークに近づいたユーリはルークの匂いを嗅ぐと、
何故かルークの首元に無言で噛みついた。
「えぇ!!???はぇ!!!!!!!!?????????
な、何しやがるんだこのエロ狼があああああああああああああああああ!!!!」
「ぐはっ!!!」
顔を真っ赤にしたルークは利き腕で烈破掌をユーリに食わせた。
桜×変態×称号
ルークの部屋の入り口にはには大きな文字で
『変態狼立ち入り禁止』
と書かれた紙が貼られたいた。
その紙を見たユーリはがっくりと肩を落とした。
「アンタ、サイテーよね…」
「ユーリ…サイテーです。」
「君というやつは…見損なったよ」
同じ国の出身であるリタ、エステル、フレンは先ほどからかなり厳しい言葉を投げてくる。
ユーリはルークに謝りたくここまで来たが…先ほどから声を掛けても返事がない。
「なぁ、ルーク久しぶりに剣の稽古をしないか?」
「そうそう、剣の稽古ついでにユーリの話も聞いてやってくれよ」
「俺の話はついでかよ…」
親友であるクレスとロイドが声を掛けても全くの無反応。
よほど怒っているらしい…
ユーリ自身もひどいことをしたと心から反省している。
「ルーク悪い…言い訳にしかならねぇだろうけど…お前の身体から甘い花のような匂いが漂ってて…
無意識で噛みついてた…ほんとすまねぇ…」
そう、あの時何故かルークの身体からは甘い匂いが漂った。
ケーキの匂いではない…ほかほかと温かい太陽のような甘い香り…
その匂いを嗅いだ瞬間ユーリは無意識でルークに噛みついていた。
「無意識で噛みつくなんてサイテー」
「うるせー…本当のことなんだからしょうがねぇだろ…」
扉が開かないルークの部屋をもう一度見返し、ため息をつくと一度食堂に戻って
また改めてここに謝罪に来ようとしたが、その時扉が開く音がした。
「お、俺から…花のような甘い香りがしたって…ほんとか?」
ルークはまだ警戒しているのか扉から半分だけ顔を出しユーリを睨みつけた。
ルークが睨みつけても可愛いだけだったが、今はそれをいう状況ではない…
その言葉を飲み込みユーリは力強くうなづいた。
「あぁ…すっげー良い香りだった…」
「だったら…俺のせいだ…ごめん…」
「は?」
その場に居たメンバー全員がルークの言葉に首を傾げた。
今回の件は100%ユーリが悪い…それなのになぜルークが悪くなるのか…
接点が全く見つからなかった。
「お、俺午前中眠くて…甲板で昼寝してたら…桜の花にいつの間にか埋もれてて…
一応風呂入ったんだけど…甘い香りとれてなかったんだな…ごめん」
花びらに埋もれるくらい寝てたってどれくらいだよと言いたかったが
ルークの言葉で全てが理解できた。
ユーリが反応した甘い香りとは桜の香り。
甘くて優しくて…太陽のような甘い香り…その香りに無性に糖分が欲しかったユーリは
無意識に反応してしまいルークに噛みついたのだった。
原因が解ったとはいえ悪いのはユーリだが…
「あ…いや…悪りぃ…俺も我慢効かなくて…良い大人が…」
「ユーリは疲れてたんだからしょうがねぇーよ…俺こそごめん…叩いて…」
部屋から半分だけ身体を出していたルークはやっと部屋から出てきて
ユーリの傍に行き抱きついた。
抱きつかれたユーリは嬉しそうにしっかりとルークを抱きしめた。
それを見ていたメンバー達はため息をついたり、笑ったりなど各々の反応をみせた。
「あ…ケーキ…作りかけどうしよう…クリームはできてるんだけど…」
あまりの衝撃な出来事だったのでルークはケーキ作りを放棄して部屋に逃げ込んだ。
クレアとロックスがスポンジを取り出してくれてるとは思うが…
今から作るには晩御飯の準備と鉢合わせになってしまうので邪魔なだけだった。
「俺はクリームだけでもいいぜ…」
「え?そうなのか?」
「あぁ…ただしお前の身体にn……「ユーリ!!!!!!!!!」」
ユーリが良い終わる前にフレンから強烈なツッコミが後頭部に入りユーリは気絶をした。
「え?あ…ユーリ!?大丈夫か?ユーリ!!!」
心配そうにユーリの身体をルークが揺すったが完全にノックアウトされており、
ユーリの目が覚めたのは次の日になってからだった。
そして目覚めたユーリは『変態な狼取り扱い注意』という称号を手に入れた。
ある日ユーリが食堂で甘いおやつを幸せそうに食べていると、
エステルが真剣な表情で食堂へ現れそのまま真っすぐユーリの傍へと来た。
「ん?エステル…どうした?」
「ユーリ…………私を弟子にしてください!!!」
「はぁ?」
いきなり目の前でエステルが頭を下げられたユーリは、
頭をポリポリとかいて困った顔をした。
チョコ×チョコ×チョコ
「で?ルーク坊ちゃんは何でナタリアに食堂へ呼ばれたんだ?
まーた何かしでかしたのか?」
「またって何だまたって何もしてねぇつーの!!」
ナタリアに至急食堂へ呼び出されたルークは
ガイを引き連れて怒りながら食堂へと足を向けていた。
今日はこれからヴァンと剣の稽古の予定だったが、
今朝早くにナタリアに昼過ぎに食堂へ来るように言われ
無視をしようとしていたが、ヴァンに行くように指示を出されてしまい
しぶしぶ食堂へ行くことになった。
一人で行かないのは……ナタリアに怒られたりしたらどうしようという思いから
用心棒としてガイを連れて来た。
そんなルークが食堂の前にまで来ると中から数名の声が聞こえた。
ナタリアだけが待っていると思っていたがどうやら違うらしい…
おそるおそる食堂の扉を開けてみると、中にはバンエルティア号に乗っている
多くの女性陣が食堂に集結していた。
「な、何だ…?何かの祭りか?」
「あー…うん…女性にとっては祭りかもな…じゃぁ俺用事残してるから戻るな」
「え?はぁ?ちょ…ガイ!!??」
ガイは何故女性陣が食堂に集まっているのか察しがついたらしく、
そのスピードを生かして一目散に食堂から姿を消した。
ルークもナタリアに見つかる前に戻ろうとしたが…
「ルーク、遅かったですわね。お待ちしていましたわ」
残念ながらナタリアに見つかってしまった。
しぶしぶナタリアの方を向くと、
ナタリアは普段の格好の上にエプロンをつけて料理をする準備に入っていた。
そしてその横にはおなじくエプロンをつけたティアとアニスが並んでいる。
「あれぇ~?何でルークまで居るの?今は男子禁制だよ?」
「うっせー…ナタリアに呼ばれたんだよ。」
「ナタリアに?」
ティアが不思議そうな顔をしてナタリアを見ると、
ルークが来てくれたことが嬉しいのか顔を輝かせて喜んでいる。
「そうですわ、人手が足りないのでルークにも手伝ってもらおうと思いまして…
いいえ、ルークには作る義務がありますわ」
「はぁ?何を作るんだよ」
「今日はね女性陣みんなでチョコを作るんだよ。午前と午後の部に分かれて食堂を使うの」
「何で…チョコ…?」
店で買えばチョコなんて沢山買えるのに、何故わざわざチョコを作るのかルークには理解ができなかった。
そんなルークの顔を見てティアがため息をつき説明を始めた。
「もうすぐね、バレンタインって日で好きな人にチョコを渡す日が来るのよ…
あなたもナタリアから貰ってたでしょ?」
「は?俺貰ったことねーし」
「ごめんなさい…私今年初めて知ったので…」
申し訳なさそうに縮こまるナタリアを見てティアは慌てて慰め始める。
ふと思い出すとこの時期のガイの部屋には大量にチョコが置いてあったことを思い出した。
さすがに一人では食べきれない量だったので二人で食べた思い出がある。
ガイに何故チョコを貰ったのか聞いた時『女の子にとって大切な日なんだよ』と説明された気がする…
今まで興味がなくすっかりと忘れていたが…
「ん?お坊ちゃんもチョコ作るのか?誰に渡すのかねぇ…」
調理場に居たユーリがルークの姿を見てニヤニヤと笑いながら声をかけてきて、
その横にはエステルも居ていつものように小さくあいさつをしてくれる。
「何でお前がここに居るんだよ…男子禁制だろ」
「俺は今日はお菓子作りの先生してるんだよ…殺人兵器を作らせない監督者ともいうけどな」
確かにナタリアを含め料理を作らせたら殺人兵器を生み出す女性が数名脳裏をよぎった。
午前中の部で体調不良者が出ていないところをみると監督者の責任は果たしているようだ…
「ルークは私のチョコ作りの手伝いの為に来たのですわ」
「はぁ?つーか何で俺が手伝うんだよ」
「ていうーかナタリアがチョコあげるのはルークとアッシュでしょ?手伝ったらだめじゃん」
アニスが首を傾げながらナタリアとルークを見上げる。
確かにアニスの言う通りナタリアの婚約者はルークなのだからルークに渡すのが筋だ。
まぁ、アッシュにもナタリアのことだから渡すだろう…と思われていたが…
「いいえ、私が渡すのはルークでもアッシュでもありませんわ」
「えぇ!?じゃぁ誰に渡すの!?」
てっきりルークのアッシュに渡すと思っていたアニスは大きな声を出して驚いた。
しかし、貰う側であるはずのルークは興味がない顔をしているが、
ルーク以外の人はナタリアが誰に渡すのか興味深々だ。
「私がチョコを渡すのは……………………ライマ国の人々ですわ!!
私が最も愛しているのはライマ国の民ですもの!!」
「えええええええええぇ!?ライマ国の民って何万人分つくるの!?」
「無茶よナタリア!!考え直して!!」
「確かに一人では無理かもしれませんが…同じ王家で民を愛しているルークとなら作れますわ!!」
「何でそうなるんだ!!俺は手伝わねーからな!!」
なんとかナタリアを止めようとするアニスとティアを余所に
ルークは無関係という顔をしながら欠伸をしていた。
その様子が面白いのかエステルがくすくすと笑いながらライマ国チームを眺めていた。
「うふふふ…ナタリアは民思いですのね…」
「あー…わりぃエステル…俺今日からライマ国の人間になるわ」
ユーリの言葉に隣にいたエステルは目を丸くして驚いた。
冗談かと思っていたが…ユーリの目は本気だ。
「えぇ!?チョコで国を捨てないでください!!ユーリはいつも下町の娘さん達から
沢山チョコ貰っているってレイブンが言ってましたよ?」
「いや…毎年貰ってたけどよ…今年はこの船だし…チョコそんなに貰えそうにねーだろ…
毎年この時期は俺にとって至福の時期だったんだけどな…」
例年より少ないと解りきっている今年の数にため息しかでないユーリがいた。
「だあぁー!!!もううぜーーー!!俺は手伝わねーからな!!」
今だにライマ国チームはナタリアへの説得をしていた…それが我慢できなくなったルークは
怒りだし一人で食堂をあとにした。
「あ、ちょっとお待ちなさいルーク!!!」
「はははは…流石だな…まぁ、とりあえず始めるか」
ユーリの掛け声でチョコづくり教室は午後の部を迎えた。
次の日、ユーリが疲れた顔をしながら朝食を食べる為に食堂へと向かった。
お菓子作りが得意なユーリだったが、流石にあの人数を教えるのは一苦労だった為
次の日にまで疲れが残ってしまった。
今日は簡単な依頼だけして部屋でゆっくりと昼寝でもしようと考えながら食堂へ向かうと
何やら食堂から喧嘩をする声が聞こえてきた。
少し進んで声を聞いてみると声の主はティアとルークだとわかった。
「全く…こんなに買ってきて一体どうするの!!」
「うっせー!!俺がどれだけ買おうが俺の買ってだろ!!」
「食べれる量だけ買いなさい!!」
「う、うっせー!!俺のやることにいちいち口出しすんじゃねーよ!!」
この二人の喧嘩はいつものことなのであまり気にせずに食堂へ入ったが、
食堂のテーブルにあったものに目を丸くした。
「おいおいお坊ちゃんよ…なんだよこれは…」
「あぁ?見りゃわかるだろ…チョコだ」
「いや…そうだろうけど…この量は…」
テーブルに置かれたチョコの山はテーブルが見えないくらいの量だった…
ティアの話からするとルークが店で買ってきたようだが…
「昨日…街ぶらついてたら…余ったから買って欲しいて言われたんだよ…
だから…買った…それだけだし」
「だからってこんなにも買うことないでしょ!!一人で食べきれるの!?」
確かにそうだ…頼まれて買うにしても限度というのがある…
ユーリですらこんな量のチョコは見たことがなかった。
「う、うっせー!!ロイドやクレスとかにも分けるからいいんだよ!!
それにそこの甘党な大罪人が居るから残ることなんてねーし!!
俺…眠いから寝るから!!」
「ちょっとルーク!!まちなさい!!」
そういうとルークは食堂を出てそのルークを追いかけるようにティアも出て行った。
ユーリがため息をつきながら大量のチョコを眺めていると
ガイが隣へ来て笑いながらユーリに話しかけてきた。
「あいつ…相変わらず素直じゃないよな…」
「それはいつものことだろ?」
何をいまさらと思いながらもガイの話の続きを聞いた。
「昨日あれからルークに買いものに誘われたんだ。そしたら行き先がお菓子屋でさ…
チョコをみんなにあげたかったみたいだけど…人数が途中でわからなくなって。
とりあえず店のチョコ全部買って来たんだよ…いやぁ…持って帰るのに苦労した」
「なんちゅー極端な…」
数なんて適当でいいのに…と思いながらも必死に人数を数えるルークの姿を思い浮かべると
微笑ましく思い自然と顔が緩む…
「あとお前なんかルークに言ったのか?下町の女なんかに数負けれるかー!!って叫んでたぜ?」
「ははははは…どんな対抗意識燃やしてるんだよ…」
相変わらず素直じゃないルークの為に
今日のおやつはこの大量のチョコで作った甘いお菓子を作ろうと思った。
世界一愛情の籠ったお菓子を…
来年は彼の愛情を独り占めできるように…
エステルが真剣な表情で食堂へ現れそのまま真っすぐユーリの傍へと来た。
「ん?エステル…どうした?」
「ユーリ…………私を弟子にしてください!!!」
「はぁ?」
いきなり目の前でエステルが頭を下げられたユーリは、
頭をポリポリとかいて困った顔をした。
チョコ×チョコ×チョコ
「で?ルーク坊ちゃんは何でナタリアに食堂へ呼ばれたんだ?
まーた何かしでかしたのか?」
「またって何だまたって何もしてねぇつーの!!」
ナタリアに至急食堂へ呼び出されたルークは
ガイを引き連れて怒りながら食堂へと足を向けていた。
今日はこれからヴァンと剣の稽古の予定だったが、
今朝早くにナタリアに昼過ぎに食堂へ来るように言われ
無視をしようとしていたが、ヴァンに行くように指示を出されてしまい
しぶしぶ食堂へ行くことになった。
一人で行かないのは……ナタリアに怒られたりしたらどうしようという思いから
用心棒としてガイを連れて来た。
そんなルークが食堂の前にまで来ると中から数名の声が聞こえた。
ナタリアだけが待っていると思っていたがどうやら違うらしい…
おそるおそる食堂の扉を開けてみると、中にはバンエルティア号に乗っている
多くの女性陣が食堂に集結していた。
「な、何だ…?何かの祭りか?」
「あー…うん…女性にとっては祭りかもな…じゃぁ俺用事残してるから戻るな」
「え?はぁ?ちょ…ガイ!!??」
ガイは何故女性陣が食堂に集まっているのか察しがついたらしく、
そのスピードを生かして一目散に食堂から姿を消した。
ルークもナタリアに見つかる前に戻ろうとしたが…
「ルーク、遅かったですわね。お待ちしていましたわ」
残念ながらナタリアに見つかってしまった。
しぶしぶナタリアの方を向くと、
ナタリアは普段の格好の上にエプロンをつけて料理をする準備に入っていた。
そしてその横にはおなじくエプロンをつけたティアとアニスが並んでいる。
「あれぇ~?何でルークまで居るの?今は男子禁制だよ?」
「うっせー…ナタリアに呼ばれたんだよ。」
「ナタリアに?」
ティアが不思議そうな顔をしてナタリアを見ると、
ルークが来てくれたことが嬉しいのか顔を輝かせて喜んでいる。
「そうですわ、人手が足りないのでルークにも手伝ってもらおうと思いまして…
いいえ、ルークには作る義務がありますわ」
「はぁ?何を作るんだよ」
「今日はね女性陣みんなでチョコを作るんだよ。午前と午後の部に分かれて食堂を使うの」
「何で…チョコ…?」
店で買えばチョコなんて沢山買えるのに、何故わざわざチョコを作るのかルークには理解ができなかった。
そんなルークの顔を見てティアがため息をつき説明を始めた。
「もうすぐね、バレンタインって日で好きな人にチョコを渡す日が来るのよ…
あなたもナタリアから貰ってたでしょ?」
「は?俺貰ったことねーし」
「ごめんなさい…私今年初めて知ったので…」
申し訳なさそうに縮こまるナタリアを見てティアは慌てて慰め始める。
ふと思い出すとこの時期のガイの部屋には大量にチョコが置いてあったことを思い出した。
さすがに一人では食べきれない量だったので二人で食べた思い出がある。
ガイに何故チョコを貰ったのか聞いた時『女の子にとって大切な日なんだよ』と説明された気がする…
今まで興味がなくすっかりと忘れていたが…
「ん?お坊ちゃんもチョコ作るのか?誰に渡すのかねぇ…」
調理場に居たユーリがルークの姿を見てニヤニヤと笑いながら声をかけてきて、
その横にはエステルも居ていつものように小さくあいさつをしてくれる。
「何でお前がここに居るんだよ…男子禁制だろ」
「俺は今日はお菓子作りの先生してるんだよ…殺人兵器を作らせない監督者ともいうけどな」
確かにナタリアを含め料理を作らせたら殺人兵器を生み出す女性が数名脳裏をよぎった。
午前中の部で体調不良者が出ていないところをみると監督者の責任は果たしているようだ…
「ルークは私のチョコ作りの手伝いの為に来たのですわ」
「はぁ?つーか何で俺が手伝うんだよ」
「ていうーかナタリアがチョコあげるのはルークとアッシュでしょ?手伝ったらだめじゃん」
アニスが首を傾げながらナタリアとルークを見上げる。
確かにアニスの言う通りナタリアの婚約者はルークなのだからルークに渡すのが筋だ。
まぁ、アッシュにもナタリアのことだから渡すだろう…と思われていたが…
「いいえ、私が渡すのはルークでもアッシュでもありませんわ」
「えぇ!?じゃぁ誰に渡すの!?」
てっきりルークのアッシュに渡すと思っていたアニスは大きな声を出して驚いた。
しかし、貰う側であるはずのルークは興味がない顔をしているが、
ルーク以外の人はナタリアが誰に渡すのか興味深々だ。
「私がチョコを渡すのは……………………ライマ国の人々ですわ!!
私が最も愛しているのはライマ国の民ですもの!!」
「えええええええええぇ!?ライマ国の民って何万人分つくるの!?」
「無茶よナタリア!!考え直して!!」
「確かに一人では無理かもしれませんが…同じ王家で民を愛しているルークとなら作れますわ!!」
「何でそうなるんだ!!俺は手伝わねーからな!!」
なんとかナタリアを止めようとするアニスとティアを余所に
ルークは無関係という顔をしながら欠伸をしていた。
その様子が面白いのかエステルがくすくすと笑いながらライマ国チームを眺めていた。
「うふふふ…ナタリアは民思いですのね…」
「あー…わりぃエステル…俺今日からライマ国の人間になるわ」
ユーリの言葉に隣にいたエステルは目を丸くして驚いた。
冗談かと思っていたが…ユーリの目は本気だ。
「えぇ!?チョコで国を捨てないでください!!ユーリはいつも下町の娘さん達から
沢山チョコ貰っているってレイブンが言ってましたよ?」
「いや…毎年貰ってたけどよ…今年はこの船だし…チョコそんなに貰えそうにねーだろ…
毎年この時期は俺にとって至福の時期だったんだけどな…」
例年より少ないと解りきっている今年の数にため息しかでないユーリがいた。
「だあぁー!!!もううぜーーー!!俺は手伝わねーからな!!」
今だにライマ国チームはナタリアへの説得をしていた…それが我慢できなくなったルークは
怒りだし一人で食堂をあとにした。
「あ、ちょっとお待ちなさいルーク!!!」
「はははは…流石だな…まぁ、とりあえず始めるか」
ユーリの掛け声でチョコづくり教室は午後の部を迎えた。
次の日、ユーリが疲れた顔をしながら朝食を食べる為に食堂へと向かった。
お菓子作りが得意なユーリだったが、流石にあの人数を教えるのは一苦労だった為
次の日にまで疲れが残ってしまった。
今日は簡単な依頼だけして部屋でゆっくりと昼寝でもしようと考えながら食堂へ向かうと
何やら食堂から喧嘩をする声が聞こえてきた。
少し進んで声を聞いてみると声の主はティアとルークだとわかった。
「全く…こんなに買ってきて一体どうするの!!」
「うっせー!!俺がどれだけ買おうが俺の買ってだろ!!」
「食べれる量だけ買いなさい!!」
「う、うっせー!!俺のやることにいちいち口出しすんじゃねーよ!!」
この二人の喧嘩はいつものことなのであまり気にせずに食堂へ入ったが、
食堂のテーブルにあったものに目を丸くした。
「おいおいお坊ちゃんよ…なんだよこれは…」
「あぁ?見りゃわかるだろ…チョコだ」
「いや…そうだろうけど…この量は…」
テーブルに置かれたチョコの山はテーブルが見えないくらいの量だった…
ティアの話からするとルークが店で買ってきたようだが…
「昨日…街ぶらついてたら…余ったから買って欲しいて言われたんだよ…
だから…買った…それだけだし」
「だからってこんなにも買うことないでしょ!!一人で食べきれるの!?」
確かにそうだ…頼まれて買うにしても限度というのがある…
ユーリですらこんな量のチョコは見たことがなかった。
「う、うっせー!!ロイドやクレスとかにも分けるからいいんだよ!!
それにそこの甘党な大罪人が居るから残ることなんてねーし!!
俺…眠いから寝るから!!」
「ちょっとルーク!!まちなさい!!」
そういうとルークは食堂を出てそのルークを追いかけるようにティアも出て行った。
ユーリがため息をつきながら大量のチョコを眺めていると
ガイが隣へ来て笑いながらユーリに話しかけてきた。
「あいつ…相変わらず素直じゃないよな…」
「それはいつものことだろ?」
何をいまさらと思いながらもガイの話の続きを聞いた。
「昨日あれからルークに買いものに誘われたんだ。そしたら行き先がお菓子屋でさ…
チョコをみんなにあげたかったみたいだけど…人数が途中でわからなくなって。
とりあえず店のチョコ全部買って来たんだよ…いやぁ…持って帰るのに苦労した」
「なんちゅー極端な…」
数なんて適当でいいのに…と思いながらも必死に人数を数えるルークの姿を思い浮かべると
微笑ましく思い自然と顔が緩む…
「あとお前なんかルークに言ったのか?下町の女なんかに数負けれるかー!!って叫んでたぜ?」
「ははははは…どんな対抗意識燃やしてるんだよ…」
相変わらず素直じゃないルークの為に
今日のおやつはこの大量のチョコで作った甘いお菓子を作ろうと思った。
世界一愛情の籠ったお菓子を…
来年は彼の愛情を独り占めできるように…
未来×浮気×三十路
リタの開発した「10年バズーカー」に当たってしまったルーク…
開発者の話だと10年後と入れ替わってしまうということだが、
煙が立ちあがりルークが無事かがまだわからない。
けど、煙の中人影がそこにあるので誰かがいるのは間違いない…はず。
「けほっ、けほっ…い、いきなりなんだ…?」
聞き覚えのある声が煙の中から聞こえてきたので、
ユーリは慌てて煙の中から腕をひっぱり煙の無いところへと引っ張りだした。
「うわぁっ!!へ?何???」
煙の中から現れたのは赤…いや朱色の髪をした青年…そう、ルークだった…
けど、【今】ユーリ達が知っているルークではない。
【今】のルークは髪の毛を先日バッサリと切ったので短いはずだが、
この場所に居るルークは髪の毛が長い。
初めてユーリと出会った頃と同じくらいの髪の長さだった。
「お、お前…ルークか?」
「はぁ?何言ってるんだ?俺の名前はルーク・フォン・ファブレ…ユーリ頭大丈夫か?」
ユーリからの質問にルークは首を傾げながらも丁寧に答えた。
昔のルークならもっと雑にバッサリと答えていたはず…
多分10年後のルークなのだろうが、ユーリは念の為にもう一つ質問をした。
「お前…今いくつだ?」
「今年で27歳。お前…最近会わないからって…恋人の年齢忘れたのか?」
ルークの言葉で肩の力がどっと抜けたユーリはその場に座り込む。
実験はどうやら成功したようだ…17歳のルークは多分10年後の世界へと飛んでいるはずだ…
状況がいまいち飲み込めていないルークは辺りをきょろきょろしながら首を傾げる。
ユーリは座りながら27歳のルークを見つめると17歳のルークといくつか違う点を見つけた。
まず、目に入るのはその髪の長さ。
バッサリと切る前も見事な朱色の髪で先が金色という変ったグラデーションだったが、
当時は手入れも面倒だった為枝毛などが目立っていた…けど今は違う。
女性並に綺麗な長髪…定期的に髪を切っているのか毛先がきちんと整っている。
そして、よく見て気が付くのがその肉体。
身長はさほど変わっていないように見えるが、17歳の頃より痩せている…
すっきりとした身体になったと言うべきか…
27歳のルークをユーリがまじまじと見ているといきなり目の前にルークの顔が入りガラにもなく驚いてしまった。
「うわっ!!いきなり顔を近づけるな!!」
「えー…何ガイ見たいなこと言ってるんだよ…それよりお前何か若返った?シワが減ったような…」
「し、シワ…」
10年後といえばユーリは三十路に入ってしまっている…
シワの一つくらいあっても不思議ではないはずだが…その言葉に少しショックを受けた。
「若いのも当たり前よ…ここはアンタの居た世界から10年も前の世界なんだから」
傍観者になっていたリタが呆れた口調で会話に参加してきた。
最初はリタの言葉に首をかしげていたルークだったが、何か思い当たる節があるのか両手を合わせてひらめいた顔をする。
「あ、俺が10年後の世界に行ったって今日だったのか…あー…ユーリも間が悪いつーかなんつーか…
連れ出すならもっと別の日に……」
「俺が何だって?」
座っていたユーリがようやく立ちあがりぶつぶつと言っているルークの傍へ寄り、
頭の先から足元までをもう一度見返す。
何度見てもいい方向にしかも自分好みで…りっぱに成長している…ユーリはよくやった俺と心の中で呟く。
「あー…こっちの話。けど、俺より年下のユーリか…何かカワイイ~」
「なっ!!!」
まぁ、普通は今まで年上だった人物が年下になることなどあるはずもない…
珍しい体験をしているルークは嬉しそうにユーリに抱きつき、頬をすりすりと合わせる。
17歳のルークならこんなことできるはずもない…大胆な方向にも成長をしているようだ…
まぁ、恋人が恋人だから仕方ない気もする…
「ルーク?何故髪の毛が伸びているのです?」
「る、ルーク様っ!?」
そこへ騒ぎを聞き付けたエステルとフレンが研究室へと来た。
普段ならユーリが説明する役だが、ルークとイチャコラ(一方的な)をしている為説明ができないので
珍しくリタが今までの経緯を説明すると二人は驚きながらも自分より年上のルークに目を向ける。
「まぁ、1時間くらいしたら自然と元の世界に戻るから…」
「ならよかったです。ルーク、一緒に朝ご飯でもいかがです?」
ユーリにひっついて離れないルークはエステルに呼ばれ一度きょとんとした顔をしながらも、
相手がエステルだと解るとまるで子犬のようにエステルの傍へと飛んで行った…もちろんユーリに抱きついたまま。
「うわ~!!エステルじゃん!!久しぶり!!やっぱり若いな…あ、女性にそんなこと言ったらダメだよな…」
自分の言葉にあわてて謝罪を入れるとエステルは小さく笑いながらルークに話かけた。
「ルークはやっぱりずっとルークなんですね。お久しぶりというのは私とルークはしばらく会っていないのですか?」
「あー…だってエステルは…「はい、ストーーーーーーーーップ!!!」
ルークがエステルのことについて話そうとした時、リタがルークとエステルの間に入り二人の会話を無理矢理止めた。
「な、何するんだよ…折角話してるのに…」
「あのね、未来のことを教えるのはダメ!!未来が変わるかもしれないでしょ!!」
「あ、そうなのか…解った俺言わない…」
「おー…それは良いことだ…ってかそろそろ俺を離してくれないか?」
リタに注意されいたルークはふと自分の脇を見ると苦しそうにしているユーリが居た。
ルークは慌ててユーリを離すとユーリは数回咳をして呆れた声を出してルークを睨みつける。
「お前…馬鹿力なんだよ…」
「あー…悪い…つい嬉しくて…」
照れながら笑うその笑顔は今も未来も変わらず…ユーリの心を温かくしてくれる…
そんな変らないルークの姿を見て小さく笑ったユーリはルークの頭を数回撫でてから食堂へと足を向けた。
「で…何でホットケーキなんだ?」
「だって俺今日の朝はホットケーキってユーリと約束したし」
「いや、約束したのは未来の俺で…」
「今も未来もユーリはユーリだろ?約束くらいちゃんと守れよ」
「………へいへい」
そんなやりとりがあった為ユーリはしぶしぶホットケーキをルーク、エステル、フレンそして自分の分も焼き、
テーブルの上に並べ始めた。一緒にハチミツと生クリームも添えているところがやっぱりユーリだ。
着々と並んでいくホットケーキによっぽど食べたかったのか
「待て」を命令されている子犬のように目をキラキラと輝かせながら今か今かと待っている。
本当に27歳なのかと疑ってしまうが…ルークならこんな27歳に成長してもおかしくないだろうと思えた。
そして準備ができると4人同時に頂きますとあいさつをしてホットケーキを食べ始めた。
「美味しいです…流石ユーリですね!!」
「うん、すごく美味しい…ですよね、ルーク様」
「う、うん……」
エステル、フレンは絶賛してくれたホットケーキだったが、
一番食べたいと言っていたルークの反応がいまいち悪い…ユーリは味付けが悪かったのかと
ホットケーキを口にしてみるが…不味くはない…
「ルーク…不味かったか?」
「え?い、いや…すっげー美味いんだけど…いつものユーリの味じゃねーなぁって…」
「いつもの?」
「何かいつもはすっげー感動するんだけど…これも美味いはずなのに…なんでだろ…」
ユーリはホットケーキの作り方を思い返してみた。
特に変った作業をするところはないはず…未来の自分はどうやってルークを満足させていたのか…
「ユーリにコツとか聞いても…『愛情が入っているから美味いんだよ』ってはぐらかされるんだよな…」
その言葉にフレンとユーリは同時に吹きだしたが、エステルは笑いながら会話を続けた。
「未来のユーリってどんな感じなのです?」
「んー?昔からカッコよかったけど…相変わらずかっこいいよ。料理も美味いし優しいし…」
普段のルークから聞くことなんて絶対にない言葉がぽんぽんと出てきて
珍しくユーリが赤面し始めた。そんなユーリを見てフレンは苦笑いをするしかない。
エステルと会話をしているルークが長い髪が邪魔になったのか一本に縛り始めた。
その姿にユーリの心は揺れた…髪長い方がいいなと…
「どうしてまた髪を伸ばしたんです?」
「あー…ユーリがこっちの方が好きだからって…」
「ユーリが?」
エステルとフレンが同時にユーリの方を向いた。
確かにユーリは実のところ髪の毛が長いルークの方が好きだ…
その理由を頭で想像し嫌な予感が過った。
「お、おい…ルーク…ちょっとそれを言うのは…」
「何かヤッてる時とか長い方が良いし、白いところに俺の朱色が散らばるのも良いからとかで…」
「白いところにです?」
「うん」
エステルが純粋でよかった…と心から思うユーリだったが、フレンには理解できたようで…
鬼のような表情をしてユーリを睨みつけている…これはあとで説教コースだ…
その後も10年後のユーリの話をルークは未来に影響が無い程度で話をしてくれるが…
会話がユーリ自身のことのはずなのに…別の人物のことを話しているようで…面白くなかった…
「ユーリ…顔に出ているよ…君らしくない…」
「しょうがねぇだろ…」
自分の愛おしい人が他の男と付き合っているみたいで…複雑な気持ちだ…
しかもルークから惚気話を聞かされる日が来るとは思ってもいなかった…
そうこうしているうちにそろそろ1時間が経過しようとしていた。
「そろそろ戻れる時間だな…」
「そうですね、こういう時どういう挨拶をしたらいいんでしょう?」
エステルがルークへ送る言葉に悩んでいるとユーリが後から助け舟を出した。
「またなでいいだろ…10年後には会えるんだしな」
「確かに…じゃぁ、ルーク様…10年後にまた…」
「そうですね、ルーク…10年後にお会いしましょう」
フレンとエステルが友達を送るように握手をして送りだしたが、
ユーリは違っていた…複雑そうな顔をまだしている…それに気が付いたルークはユーリに近づき、軽いキスをした。
「なっ…!!!」
「へへへっ…大丈夫だって…10年間俺の気持ちは変わらないからさ…」
無邪気そうな顔で笑うその笑顔は今と同じ…そう、何時でもルークはルーク…それに気が付いたユーリはようやく
普段の顔に戻ることができた。
「何か今日はお前に振り回されてるな…」
「安心しろ…10年後のお前は俺をちゃんと振り回してるから」
どんな三十路に成長してるんだよ…とユーリは思ったが口には出さなかった。
ふとルークの足元を見ると煙が立ち始めていた。
「そろそろか…じゃぁ、ありがとうな…あ、そうだフレン…そろそろ間の悪いところ直しておけよ」
「え?あ…はぁ…」
ルークの言葉にいまいち理解ができなかったフレンは途切れた返事をした。
そしてルークの身体が煙に完全に包まれ煙が無くなった時に現れたルークは髪の毛の短いルークだった。
「……………………よ、よう…おかえり…」
「ただいま…で、ユーリ…この状況を説明してもらおうか?」
ルークのいうこの状況と言うのはベッドの上でユーリに押し倒されている状況。
今までルークは10年前の世界に居た…つまり先ほどまでユーリの下に居たのは10年前…
つまり17歳のルークだったことがわかる…つまりユーリは…
「お前…17歳の俺に手を出そうとしてたのか…?」
「あ…いや…その…17歳のお前が異様に可愛くてな…つい…ムラッっと…」
ユーリは急いでその場から離れようとしたが、遅かった…
「このっ……浮気者ッ!!!!!!」
「っうううううう!!!!」
ルークの平手打ち(左手)がユーリの頬に見事に当たりユーリの右頬を赤く膨らませた。
しかもそれから機嫌を悪くさせユーリと一向に会話をしようとしない…
「いい加減機嫌なおせ…しょうがねぇだろ…久しぶりにお前とヤレると思ったら急に10年後と入れ替わって…
お預け食らって…お前とこうして会話するのも一か月ぶりなんだぞ…」
膨れてユーリの顔を見ようとしなかったルークがようやくユーリに顔を向けるが…
その顔はまだ機嫌の悪い時の顔だ。
「それはしょうがねーだろ…新人メンバーの引率や長期依頼とかで二人ともすれ違いばっかりで…」
「やっとお互いに時間ができて会えたと思ったら、お前にまた新規メンバーの引率の依頼が入って……我慢できなくなった俺が
お前を旅行という名目の誘拐をしてやっとこの小屋で二人っきりになれたんだ…我慢なんてできるかよ…」
ユーリはたまに予想外の行動をする…王女誘拐も本当は無罪ではないのでは…と思ってしまうくらいだ…
ルークが拗ねた顔でユーリを睨みつけているとベッドに座っていたユーリが隣へこいと呼びだし、
しぶしぶユーリの隣へと移動するといきなりベッドに押し倒され朱色の髪の毛が真っ白いベッドへと散らばった。
「お前…その歳にもなって…我慢っていうのしらねーの?」
「お前のことに関しては…しらねぇな…」
余裕の顔をしたユーリはルークにキスを落とし、
諦めたルークはユーリの首に手を回し…自らもキスをした。
「まぁ、相手は俺だから浮気じゃねーってことにしてやるよ」
「そりゃどーも…」
お互いに目と目が合い笑いながらもユーリの手は止まろうとはしなかった…
痩せているが無駄のない筋肉のついたルークの身体に手を沿わせて始め、
ルークの身体はその温度に反応を始めた………が、
「ユーーーーーーリーーーーーー!!!!ルーク様を誘拐したってどういうことだ!!!
今ライマ国とアドリビトムから騎士団に捜索依頼が…………………………」
いきなり部屋に入ってきたのはユーリの幼馴染でもあるフレンだった。
もちろんユーリとルーク達は固まり、恋人達の甘い空気を壊したフレンも固まってしまい、
そのあとをアスベルが入ってきて苦笑いをしながら固まっているフレンの身体を揺らす。
「ほら…隊長…ちゃんと中の様子を確認してから入ってくださいって言ったじゃないですか…
何回この二人の空気を壊せば気が済むんですか…」
アスベルの声で我に返ったルークは顔を真っ赤にさせながらも目の前にいるユーリに顔を向けると
折角久しぶりの恋人達の時間を壊され…キレていた…
愛用の刀を手に取ると本気モードでフレンに刀を振り下ろしていた。
固まっていたフレンだが、そこは騎士…殺気に反応して見事な白羽取りでユーリの攻撃を受け止めた。
「うわぁっ!!!ゆ、ユーリ何するんだ!!そりゃ二人の邪魔をしたのは悪かったけど…」
「問答無用…お前はホント昔から邪魔ばっかりしやがって………今日という今日はゆるさねぇ…
腹ッ括りやがれ!!!」
「こんな場面で名言を言わないでくれ!!!」
二人の攻防をベッドの上で呆れた表情で見ていたルークをアスベルが駆け寄り二人を止めるように頼みこんだが…
「俺ちゃんと10年前で忠告したし………だから助けねーし…ルミナシアが破壊するくらいになったら止めるよ…」
「ちょ…ルークさまっ!!!」
ルークは不貞腐れてそのままベッドへと寝転がり眠りにつきはじめた。
フレンとユーリの攻防はその後続き大変なことになりかけたそうだが、
ルークを探しに来たアッシュとガイそしてカノンノに止められてルミナシアの平和は守られた…。
リタの開発した「10年バズーカー」に当たってしまったルーク…
開発者の話だと10年後と入れ替わってしまうということだが、
煙が立ちあがりルークが無事かがまだわからない。
けど、煙の中人影がそこにあるので誰かがいるのは間違いない…はず。
「けほっ、けほっ…い、いきなりなんだ…?」
聞き覚えのある声が煙の中から聞こえてきたので、
ユーリは慌てて煙の中から腕をひっぱり煙の無いところへと引っ張りだした。
「うわぁっ!!へ?何???」
煙の中から現れたのは赤…いや朱色の髪をした青年…そう、ルークだった…
けど、【今】ユーリ達が知っているルークではない。
【今】のルークは髪の毛を先日バッサリと切ったので短いはずだが、
この場所に居るルークは髪の毛が長い。
初めてユーリと出会った頃と同じくらいの髪の長さだった。
「お、お前…ルークか?」
「はぁ?何言ってるんだ?俺の名前はルーク・フォン・ファブレ…ユーリ頭大丈夫か?」
ユーリからの質問にルークは首を傾げながらも丁寧に答えた。
昔のルークならもっと雑にバッサリと答えていたはず…
多分10年後のルークなのだろうが、ユーリは念の為にもう一つ質問をした。
「お前…今いくつだ?」
「今年で27歳。お前…最近会わないからって…恋人の年齢忘れたのか?」
ルークの言葉で肩の力がどっと抜けたユーリはその場に座り込む。
実験はどうやら成功したようだ…17歳のルークは多分10年後の世界へと飛んでいるはずだ…
状況がいまいち飲み込めていないルークは辺りをきょろきょろしながら首を傾げる。
ユーリは座りながら27歳のルークを見つめると17歳のルークといくつか違う点を見つけた。
まず、目に入るのはその髪の長さ。
バッサリと切る前も見事な朱色の髪で先が金色という変ったグラデーションだったが、
当時は手入れも面倒だった為枝毛などが目立っていた…けど今は違う。
女性並に綺麗な長髪…定期的に髪を切っているのか毛先がきちんと整っている。
そして、よく見て気が付くのがその肉体。
身長はさほど変わっていないように見えるが、17歳の頃より痩せている…
すっきりとした身体になったと言うべきか…
27歳のルークをユーリがまじまじと見ているといきなり目の前にルークの顔が入りガラにもなく驚いてしまった。
「うわっ!!いきなり顔を近づけるな!!」
「えー…何ガイ見たいなこと言ってるんだよ…それよりお前何か若返った?シワが減ったような…」
「し、シワ…」
10年後といえばユーリは三十路に入ってしまっている…
シワの一つくらいあっても不思議ではないはずだが…その言葉に少しショックを受けた。
「若いのも当たり前よ…ここはアンタの居た世界から10年も前の世界なんだから」
傍観者になっていたリタが呆れた口調で会話に参加してきた。
最初はリタの言葉に首をかしげていたルークだったが、何か思い当たる節があるのか両手を合わせてひらめいた顔をする。
「あ、俺が10年後の世界に行ったって今日だったのか…あー…ユーリも間が悪いつーかなんつーか…
連れ出すならもっと別の日に……」
「俺が何だって?」
座っていたユーリがようやく立ちあがりぶつぶつと言っているルークの傍へ寄り、
頭の先から足元までをもう一度見返す。
何度見てもいい方向にしかも自分好みで…りっぱに成長している…ユーリはよくやった俺と心の中で呟く。
「あー…こっちの話。けど、俺より年下のユーリか…何かカワイイ~」
「なっ!!!」
まぁ、普通は今まで年上だった人物が年下になることなどあるはずもない…
珍しい体験をしているルークは嬉しそうにユーリに抱きつき、頬をすりすりと合わせる。
17歳のルークならこんなことできるはずもない…大胆な方向にも成長をしているようだ…
まぁ、恋人が恋人だから仕方ない気もする…
「ルーク?何故髪の毛が伸びているのです?」
「る、ルーク様っ!?」
そこへ騒ぎを聞き付けたエステルとフレンが研究室へと来た。
普段ならユーリが説明する役だが、ルークとイチャコラ(一方的な)をしている為説明ができないので
珍しくリタが今までの経緯を説明すると二人は驚きながらも自分より年上のルークに目を向ける。
「まぁ、1時間くらいしたら自然と元の世界に戻るから…」
「ならよかったです。ルーク、一緒に朝ご飯でもいかがです?」
ユーリにひっついて離れないルークはエステルに呼ばれ一度きょとんとした顔をしながらも、
相手がエステルだと解るとまるで子犬のようにエステルの傍へと飛んで行った…もちろんユーリに抱きついたまま。
「うわ~!!エステルじゃん!!久しぶり!!やっぱり若いな…あ、女性にそんなこと言ったらダメだよな…」
自分の言葉にあわてて謝罪を入れるとエステルは小さく笑いながらルークに話かけた。
「ルークはやっぱりずっとルークなんですね。お久しぶりというのは私とルークはしばらく会っていないのですか?」
「あー…だってエステルは…「はい、ストーーーーーーーーップ!!!」
ルークがエステルのことについて話そうとした時、リタがルークとエステルの間に入り二人の会話を無理矢理止めた。
「な、何するんだよ…折角話してるのに…」
「あのね、未来のことを教えるのはダメ!!未来が変わるかもしれないでしょ!!」
「あ、そうなのか…解った俺言わない…」
「おー…それは良いことだ…ってかそろそろ俺を離してくれないか?」
リタに注意されいたルークはふと自分の脇を見ると苦しそうにしているユーリが居た。
ルークは慌ててユーリを離すとユーリは数回咳をして呆れた声を出してルークを睨みつける。
「お前…馬鹿力なんだよ…」
「あー…悪い…つい嬉しくて…」
照れながら笑うその笑顔は今も未来も変わらず…ユーリの心を温かくしてくれる…
そんな変らないルークの姿を見て小さく笑ったユーリはルークの頭を数回撫でてから食堂へと足を向けた。
「で…何でホットケーキなんだ?」
「だって俺今日の朝はホットケーキってユーリと約束したし」
「いや、約束したのは未来の俺で…」
「今も未来もユーリはユーリだろ?約束くらいちゃんと守れよ」
「………へいへい」
そんなやりとりがあった為ユーリはしぶしぶホットケーキをルーク、エステル、フレンそして自分の分も焼き、
テーブルの上に並べ始めた。一緒にハチミツと生クリームも添えているところがやっぱりユーリだ。
着々と並んでいくホットケーキによっぽど食べたかったのか
「待て」を命令されている子犬のように目をキラキラと輝かせながら今か今かと待っている。
本当に27歳なのかと疑ってしまうが…ルークならこんな27歳に成長してもおかしくないだろうと思えた。
そして準備ができると4人同時に頂きますとあいさつをしてホットケーキを食べ始めた。
「美味しいです…流石ユーリですね!!」
「うん、すごく美味しい…ですよね、ルーク様」
「う、うん……」
エステル、フレンは絶賛してくれたホットケーキだったが、
一番食べたいと言っていたルークの反応がいまいち悪い…ユーリは味付けが悪かったのかと
ホットケーキを口にしてみるが…不味くはない…
「ルーク…不味かったか?」
「え?い、いや…すっげー美味いんだけど…いつものユーリの味じゃねーなぁって…」
「いつもの?」
「何かいつもはすっげー感動するんだけど…これも美味いはずなのに…なんでだろ…」
ユーリはホットケーキの作り方を思い返してみた。
特に変った作業をするところはないはず…未来の自分はどうやってルークを満足させていたのか…
「ユーリにコツとか聞いても…『愛情が入っているから美味いんだよ』ってはぐらかされるんだよな…」
その言葉にフレンとユーリは同時に吹きだしたが、エステルは笑いながら会話を続けた。
「未来のユーリってどんな感じなのです?」
「んー?昔からカッコよかったけど…相変わらずかっこいいよ。料理も美味いし優しいし…」
普段のルークから聞くことなんて絶対にない言葉がぽんぽんと出てきて
珍しくユーリが赤面し始めた。そんなユーリを見てフレンは苦笑いをするしかない。
エステルと会話をしているルークが長い髪が邪魔になったのか一本に縛り始めた。
その姿にユーリの心は揺れた…髪長い方がいいなと…
「どうしてまた髪を伸ばしたんです?」
「あー…ユーリがこっちの方が好きだからって…」
「ユーリが?」
エステルとフレンが同時にユーリの方を向いた。
確かにユーリは実のところ髪の毛が長いルークの方が好きだ…
その理由を頭で想像し嫌な予感が過った。
「お、おい…ルーク…ちょっとそれを言うのは…」
「何かヤッてる時とか長い方が良いし、白いところに俺の朱色が散らばるのも良いからとかで…」
「白いところにです?」
「うん」
エステルが純粋でよかった…と心から思うユーリだったが、フレンには理解できたようで…
鬼のような表情をしてユーリを睨みつけている…これはあとで説教コースだ…
その後も10年後のユーリの話をルークは未来に影響が無い程度で話をしてくれるが…
会話がユーリ自身のことのはずなのに…別の人物のことを話しているようで…面白くなかった…
「ユーリ…顔に出ているよ…君らしくない…」
「しょうがねぇだろ…」
自分の愛おしい人が他の男と付き合っているみたいで…複雑な気持ちだ…
しかもルークから惚気話を聞かされる日が来るとは思ってもいなかった…
そうこうしているうちにそろそろ1時間が経過しようとしていた。
「そろそろ戻れる時間だな…」
「そうですね、こういう時どういう挨拶をしたらいいんでしょう?」
エステルがルークへ送る言葉に悩んでいるとユーリが後から助け舟を出した。
「またなでいいだろ…10年後には会えるんだしな」
「確かに…じゃぁ、ルーク様…10年後にまた…」
「そうですね、ルーク…10年後にお会いしましょう」
フレンとエステルが友達を送るように握手をして送りだしたが、
ユーリは違っていた…複雑そうな顔をまだしている…それに気が付いたルークはユーリに近づき、軽いキスをした。
「なっ…!!!」
「へへへっ…大丈夫だって…10年間俺の気持ちは変わらないからさ…」
無邪気そうな顔で笑うその笑顔は今と同じ…そう、何時でもルークはルーク…それに気が付いたユーリはようやく
普段の顔に戻ることができた。
「何か今日はお前に振り回されてるな…」
「安心しろ…10年後のお前は俺をちゃんと振り回してるから」
どんな三十路に成長してるんだよ…とユーリは思ったが口には出さなかった。
ふとルークの足元を見ると煙が立ち始めていた。
「そろそろか…じゃぁ、ありがとうな…あ、そうだフレン…そろそろ間の悪いところ直しておけよ」
「え?あ…はぁ…」
ルークの言葉にいまいち理解ができなかったフレンは途切れた返事をした。
そしてルークの身体が煙に完全に包まれ煙が無くなった時に現れたルークは髪の毛の短いルークだった。
「……………………よ、よう…おかえり…」
「ただいま…で、ユーリ…この状況を説明してもらおうか?」
ルークのいうこの状況と言うのはベッドの上でユーリに押し倒されている状況。
今までルークは10年前の世界に居た…つまり先ほどまでユーリの下に居たのは10年前…
つまり17歳のルークだったことがわかる…つまりユーリは…
「お前…17歳の俺に手を出そうとしてたのか…?」
「あ…いや…その…17歳のお前が異様に可愛くてな…つい…ムラッっと…」
ユーリは急いでその場から離れようとしたが、遅かった…
「このっ……浮気者ッ!!!!!!」
「っうううううう!!!!」
ルークの平手打ち(左手)がユーリの頬に見事に当たりユーリの右頬を赤く膨らませた。
しかもそれから機嫌を悪くさせユーリと一向に会話をしようとしない…
「いい加減機嫌なおせ…しょうがねぇだろ…久しぶりにお前とヤレると思ったら急に10年後と入れ替わって…
お預け食らって…お前とこうして会話するのも一か月ぶりなんだぞ…」
膨れてユーリの顔を見ようとしなかったルークがようやくユーリに顔を向けるが…
その顔はまだ機嫌の悪い時の顔だ。
「それはしょうがねーだろ…新人メンバーの引率や長期依頼とかで二人ともすれ違いばっかりで…」
「やっとお互いに時間ができて会えたと思ったら、お前にまた新規メンバーの引率の依頼が入って……我慢できなくなった俺が
お前を旅行という名目の誘拐をしてやっとこの小屋で二人っきりになれたんだ…我慢なんてできるかよ…」
ユーリはたまに予想外の行動をする…王女誘拐も本当は無罪ではないのでは…と思ってしまうくらいだ…
ルークが拗ねた顔でユーリを睨みつけているとベッドに座っていたユーリが隣へこいと呼びだし、
しぶしぶユーリの隣へと移動するといきなりベッドに押し倒され朱色の髪の毛が真っ白いベッドへと散らばった。
「お前…その歳にもなって…我慢っていうのしらねーの?」
「お前のことに関しては…しらねぇな…」
余裕の顔をしたユーリはルークにキスを落とし、
諦めたルークはユーリの首に手を回し…自らもキスをした。
「まぁ、相手は俺だから浮気じゃねーってことにしてやるよ」
「そりゃどーも…」
お互いに目と目が合い笑いながらもユーリの手は止まろうとはしなかった…
痩せているが無駄のない筋肉のついたルークの身体に手を沿わせて始め、
ルークの身体はその温度に反応を始めた………が、
「ユーーーーーーリーーーーーー!!!!ルーク様を誘拐したってどういうことだ!!!
今ライマ国とアドリビトムから騎士団に捜索依頼が…………………………」
いきなり部屋に入ってきたのはユーリの幼馴染でもあるフレンだった。
もちろんユーリとルーク達は固まり、恋人達の甘い空気を壊したフレンも固まってしまい、
そのあとをアスベルが入ってきて苦笑いをしながら固まっているフレンの身体を揺らす。
「ほら…隊長…ちゃんと中の様子を確認してから入ってくださいって言ったじゃないですか…
何回この二人の空気を壊せば気が済むんですか…」
アスベルの声で我に返ったルークは顔を真っ赤にさせながらも目の前にいるユーリに顔を向けると
折角久しぶりの恋人達の時間を壊され…キレていた…
愛用の刀を手に取ると本気モードでフレンに刀を振り下ろしていた。
固まっていたフレンだが、そこは騎士…殺気に反応して見事な白羽取りでユーリの攻撃を受け止めた。
「うわぁっ!!!ゆ、ユーリ何するんだ!!そりゃ二人の邪魔をしたのは悪かったけど…」
「問答無用…お前はホント昔から邪魔ばっかりしやがって………今日という今日はゆるさねぇ…
腹ッ括りやがれ!!!」
「こんな場面で名言を言わないでくれ!!!」
二人の攻防をベッドの上で呆れた表情で見ていたルークをアスベルが駆け寄り二人を止めるように頼みこんだが…
「俺ちゃんと10年前で忠告したし………だから助けねーし…ルミナシアが破壊するくらいになったら止めるよ…」
「ちょ…ルークさまっ!!!」
ルークは不貞腐れてそのままベッドへと寝転がり眠りにつきはじめた。
フレンとユーリの攻防はその後続き大変なことになりかけたそうだが、
ルークを探しに来たアッシュとガイそしてカノンノに止められてルミナシアの平和は守られた…。
ユーリは疲れきった顔をしながらバンエルティア号へと戻ってくると
第一声でユーリらしい言葉を発した。
「あー…疲れた…何か甘いもの食いてぇ…」
「ユーリお疲れ様。クレアが食堂でピーチパイ焼いてくれてるよ」
たまたまアンジュのところへ用があり来ていたカノンノが
クエストから戻ったユーリに優しく声をかける。
しかし、ユーリにとっては天使のようなカノンノの笑顔より甘いもの…
クレアのピーチパイの方が重要でその言葉を耳にした途端死んだ魚のような瞳が、
急に生きかえり意気揚々と食堂へ向かった。
暴走男×ケーキ×苦労人
「フレンさまっ~!!!!!」
自分の名前を呼ばれ振り返ると、遠くの方からロックスが慌ててフレンの方へと
飛んでくるのが見えた。そしてフレンの前で勢いよく止まると息を切らせながら話はじめる。
「ロックス…大丈夫かい?」
「は、はい…だいじょうぶ…です…それよりっ…ユーリさまが…食堂で…」
「ユーリが!?」
変な料理でも食べて腹を壊したのか、それとも甘い物の食べ過ぎで腹を壊したのか…
いろいろなシナリオがフレンの頭をよぎったが、考えるよりまず行動をする方がベストだ。
フレンは息を切らせたロックスを腕で抱え食堂に走り食堂のドアを開けて唖然とする。
食堂に居たユーリの周りには大量の小麦粉、卵、牛乳などなど…一体どこからこれだけの材料を
集めて来たのかと問い詰めたくなるような状態だった。
そんな食材の真中でユーリは小麦粉をボールに入れて材料を混ぜている最中だった為
フレンはおそるおそるユーリに問いかけた。
「ゆ…ユーリ…この状況どうしたんだい?」
「よぅ…フレンか…見てわからねぇのか?ケーキ作ってるんだよ。」
「いや…うん…僕の目が正常ならこれがケーキを作ってるところには全く見えないんだが…」
「そうか…眼科行った方がいいんじゃないか?」
普通の材料の量を見ればフレンもこの光景を見ればケーキ作り…お菓子作りの最中と解るが、
その量が半端ない…一体何人分作るつもりなのだと聞きたいくらいの量だった。
そんな量を見てすぐにケーキ作りと判断できる方が通だと見える。
ユーリ並の甘党になればわかるのかもしれないが…
「何故こんなことに…?一体何があったんだ?」
「そ、それは…僕からご説明します…」
息を切らせていたロックスが元に戻りフレンに何故このような状況になったのかを説明し始めるが
それはあまりにもくだらない…ことが原因だった。
「今日はユーリ様は朝からクエストに行かれていたことはご存じですか?」
「あぁ…結構難易度の高い依頼だった気がするけど…知ってるよ」
本人から直接聞いた訳ではない。エステルが朝食の時フレンに報告してくれたから知っていた。
「普段軽くクエストをこなしていたユーリ様ですが…今回ばかりは大変だったらしく…疲れ切った顔で
バンエルティア号へと戻られ、クレア様の焼かれたピーチパイが食堂にあると聞き食堂まで来られたのですが…」
「まさか……………ユーリの分がなかったとか?」
「はい…ユーリ様の分は別に置いておいたのですが…誰かが間違えて持って行ってしまったらしく…」
くだらない…フレンの心にはその言葉で埋め尽くされてしまう。確かにユーリは超甘党だ…自分の分が無いのは相当ショックだろう…
しかし、何故このような状態になるのかがわからない…もくもくと材料をかき混ぜ続けるユーリを横目に
フレンはロックスと話を続ける。
「で…そこまでは解ったけど…なぜこんなことに?」
「それが…僕にもよくわからず…自分の分がないことを知ったユーリ様の体内から何かが切れる音がすると
急に食堂を飛び出し…戻ってきた時にはこの大量の材料をもって戻られ…材料をかき混ぜ続けているのです…」
「………キレたのか…」
体内から何かが切れる音…それはユーリの堪忍袋の緒だろう…いやいや普通相手に聞こえるのもどうかと思うが…
それはそれで置いておこう…そうでないと話が進まない(真顔)
とりあえず、ユーリはキレた。
疲れきって楽しみにしていたピーチパイが無い…無いのなら自分で作ってしまえ…そういう結論に出たのだろう…
特に被害などはでないと思うが…作ろうとしている量が量だ…なんとか止めてしまわないとロックスが泣く。
フレンは材料をかき混ぜ続けるユーリの傍により優しく声をかける。
「ユーリ…甘いものが食べれなかったのは残念だと思うけど…一体何人分作る気だい?
自分一人で食べる量を作らないと…みんなが心配するよ?」
「これ全部俺の分だが…?」
「え?…………一体君はどんなケーキを作ろうとしてるんだい!?」
ユーリは傍に置いてあった紙をフレンに渡し、フレンがそれをまじまじと見ると再び声を失った…
紙に書いてあるのは長い髪、そして特徴的なだぼだぼな服を着た人間…そしてメモのように書かれた身長171センチ・体重68キロ…
これに該当する人間をフレンは一人しか知らなかった…いや彼以外考えられない。
「これは…ルーク様?」
「あぁ…等身大ルーク・フォン・ファブレケーキverだ」
何時の間に生クリームを作る作業に移っていたのだろう…
生クリームの付いた泡だて器をフレンの方へ突き刺しドヤ顔で決める。
その姿は若い乙女が見たら黄色い歓声をあげるだろう…けど言ってることは残念ながら変態だ。
「………君は正気かい?」
「俺はいつだって真面目だ。」
その瞳は自分の正義を貫き通す男の瞳…いやいや、こんな正義を貫かれたらそっちもそっちで困る。
なんとかしなければ…フレンの後で台所を占領され泣きそうな顔をしているロックスの為にも…
いや、こんなケーキのテーマになっているルークの為にもここは騎士団隊長フレン…男の見せどころだ。多分。
「ユーリ…よく考えてくれ…ケーキでルーク様を作れるはずないだろう」
「フレン様…ツッコミどころはそこですか…」
この幼馴染にしてこの幼馴染有…どこかずれている下町メンバーだが、
今のユーリを止めれるのはフレンしかいない…そうロックスは確信して不安そうにフレンを見守ることにした。
「いや…作れる。何故ならスリーサイズとかもしっかり本物と同じように作るんだからな!!」
「いやいやいや…ルーク様のスリーサイズって一体いつの間に測ったんだい!?」
「目視に決まってるだろ…安心しろ…1mmもずれて測ってるってことはねぇからな!!」
「そこは偉そうにするところじゃないだろ!!最近よくルーク様を見つめていると思ったら…何をしてるんだい君は!!!
彼は他国の王位継承者なんだぞ!!失礼にもほどがある!!」
フレンさん…他国の王位継承者じゃなくても目視でスリーサイズを測られたら誰にだって失礼ですから。
まず男のスリーサイズって何ですか?フレンの後でツッコミたいが任せてしまった手前ツッコミを入れることができない
ロックスが悶え苦しんでいる…ユーリを止めるのが先か、ロックスが我慢しきれずにツッコミを入れるか…どちらが先だろう…
「ったく…フレンはうっせーな…ならこっちならどうだ?」
「こっち……?なっ!?」
フレンが新しく手渡されたのは別の紙…しかしそこには先ほどとほとんど変わらない絵が描かれているが、
若干メモ書きされているスリーサイズ、身長、体重が違っている…しかもこのスリーサイズは…
「ゆ、ユーリこれは……」
「等身大ルーク・フォン・ファブレ(♀)ケーキver」
「君は正気かい?」
「俺はいつだって真面目だ」
それもさっき同じ内容を会話しましたから…。
フレンの口からはため息しかでなかったが、ユーリは楽しそうに語りだした。
「安心しろフレン…その女verはな…あのお坊ちゃんの先祖などのドクメントを調べあげ、そしてあいつのドクメント情報を合わせ
もし女だった場合のスリーサイズを何度も線密に計算し出されたスリーサイズだ…間違ってるはずがねぇ」
「だれもそんなところ心配していないから。むしろどうやってそのドクメントを調べ上げたのか詳しく聞かせてもらえないか!?」
「企業秘密だ」
「どこの企業ですか!?」
耐えることのできなかったロックスがついにツッコミを入れてしまう…
いや…ロックスじゃなくても今のユーリには誰でもツッコミを入れてしまうだろう…
カッコイイユーリさんはいずこに………かむばっく、かっこいいユーリさん。
「はぁ……ユーリ…いい加減にやめないか…?みんなに迷惑がかかってしまうよ…」
「断る。これは男の夢だ、ロマンだ…止めたいのなら力づくで止めてみな…」
「仕方がないね…」
「ちょ、ちょっとフレンさま!?」
フレンが愛用の剣を取り出し刃をユーリに向けるとユーリはにやりと笑い
傍にあった自分の愛刀を持ち戦闘態勢に入る。こんな食堂でこの2人が戦えば食堂は再起不能は間違いない…
アンジュでも呼んでこの二人の喧嘩を止めてもらおうかと思ったその時…食堂のドアが開き一人の人物が現れた。
「あ?フレンにロックス……それに…っげ…大罪人まで…お前ら何やってるんだ?」
「ルーク様!?何故こちらに?って…それは……」
いきなり登場したルークに表紙の抜けた声をフレンがあげるが、ルークの持っていたものに目を奪われてしまった…
ルークの持っていたものはピーチパイ…そう、クレアの作ったピーチパイだった。
「あ?あぁ…これか?何か今日のおやつってことで食堂で配ってたんだけどな…ここで食べるとうぜーから
部屋で食べようと思って俺が持って行ったらガイのやつが俺の分まで持ってきてやがって…1個余ったから返しにきたんだよ…
別に俺は悪くねぇのに…なんで俺が………」
文句をいいながらルークは持ってきたピーチパイを机の上に置いた。
そう、ユーリの分が足りなくなったのはルークが持って行ってしまったからだ…いや、ルークは今回悪くない…
たまたまガイが気を利かせてルークと自分の分を部屋へ持って行っただけだ。誰が悪いとかそういうのはない。
だがユーリにはそれは関係なかった。
「あー…………フレン。俺やっぱ今日ケーキ作るのやめるわ……ってか必要ねぇし…」
「ユーリ…!!やっと正気に戻ったんだね!!はぁ~…良かった…って必要ないって
クレアさんのピーチパイが食べれるからかい?」
ユーリは作っていた生クリームの入ったボールを手に取りにやりと笑った。
その笑顔は何かとてつもなく悪いことを考えている顔だ…
「………本物に生クリーム塗って食べたら…一石二鳥だろ?」
「なっ…………!!!!!」
フレンは本日何度めかは解らないがまたまた絶句した…この男は…本当に救いようがない…馬鹿だ。
そう心に感じたフレンだった。
「ん?何に生クリームを塗って食べるんだ?相変わらずこの大罪人は甘党だな……」
「る、ルーク様逃げてください!!!」
「へ?な、何でだ?ってうわぁっ!!!!」
フレンはルークを抱きかかえると一目散に食堂を飛び出してルークを安全な場所へと連れて行こうとしたが…
「あ…こら待ちやがれ!!フレンそいつをどこに連れていく気だ!!おいフレン!!!」
生クリームの入ったボールを持ったユーリがフレンを追いかけ
2人…いや3人の追いかけっこはアンジュが止めに入った夕方まで続き3人はしっかりとお仕置きを受ける羽目になった。
「ちょ…なんで俺まで…俺は悪くねえええええええええええええええええ!!!!」
第一声でユーリらしい言葉を発した。
「あー…疲れた…何か甘いもの食いてぇ…」
「ユーリお疲れ様。クレアが食堂でピーチパイ焼いてくれてるよ」
たまたまアンジュのところへ用があり来ていたカノンノが
クエストから戻ったユーリに優しく声をかける。
しかし、ユーリにとっては天使のようなカノンノの笑顔より甘いもの…
クレアのピーチパイの方が重要でその言葉を耳にした途端死んだ魚のような瞳が、
急に生きかえり意気揚々と食堂へ向かった。
暴走男×ケーキ×苦労人
「フレンさまっ~!!!!!」
自分の名前を呼ばれ振り返ると、遠くの方からロックスが慌ててフレンの方へと
飛んでくるのが見えた。そしてフレンの前で勢いよく止まると息を切らせながら話はじめる。
「ロックス…大丈夫かい?」
「は、はい…だいじょうぶ…です…それよりっ…ユーリさまが…食堂で…」
「ユーリが!?」
変な料理でも食べて腹を壊したのか、それとも甘い物の食べ過ぎで腹を壊したのか…
いろいろなシナリオがフレンの頭をよぎったが、考えるよりまず行動をする方がベストだ。
フレンは息を切らせたロックスを腕で抱え食堂に走り食堂のドアを開けて唖然とする。
食堂に居たユーリの周りには大量の小麦粉、卵、牛乳などなど…一体どこからこれだけの材料を
集めて来たのかと問い詰めたくなるような状態だった。
そんな食材の真中でユーリは小麦粉をボールに入れて材料を混ぜている最中だった為
フレンはおそるおそるユーリに問いかけた。
「ゆ…ユーリ…この状況どうしたんだい?」
「よぅ…フレンか…見てわからねぇのか?ケーキ作ってるんだよ。」
「いや…うん…僕の目が正常ならこれがケーキを作ってるところには全く見えないんだが…」
「そうか…眼科行った方がいいんじゃないか?」
普通の材料の量を見ればフレンもこの光景を見ればケーキ作り…お菓子作りの最中と解るが、
その量が半端ない…一体何人分作るつもりなのだと聞きたいくらいの量だった。
そんな量を見てすぐにケーキ作りと判断できる方が通だと見える。
ユーリ並の甘党になればわかるのかもしれないが…
「何故こんなことに…?一体何があったんだ?」
「そ、それは…僕からご説明します…」
息を切らせていたロックスが元に戻りフレンに何故このような状況になったのかを説明し始めるが
それはあまりにもくだらない…ことが原因だった。
「今日はユーリ様は朝からクエストに行かれていたことはご存じですか?」
「あぁ…結構難易度の高い依頼だった気がするけど…知ってるよ」
本人から直接聞いた訳ではない。エステルが朝食の時フレンに報告してくれたから知っていた。
「普段軽くクエストをこなしていたユーリ様ですが…今回ばかりは大変だったらしく…疲れ切った顔で
バンエルティア号へと戻られ、クレア様の焼かれたピーチパイが食堂にあると聞き食堂まで来られたのですが…」
「まさか……………ユーリの分がなかったとか?」
「はい…ユーリ様の分は別に置いておいたのですが…誰かが間違えて持って行ってしまったらしく…」
くだらない…フレンの心にはその言葉で埋め尽くされてしまう。確かにユーリは超甘党だ…自分の分が無いのは相当ショックだろう…
しかし、何故このような状態になるのかがわからない…もくもくと材料をかき混ぜ続けるユーリを横目に
フレンはロックスと話を続ける。
「で…そこまでは解ったけど…なぜこんなことに?」
「それが…僕にもよくわからず…自分の分がないことを知ったユーリ様の体内から何かが切れる音がすると
急に食堂を飛び出し…戻ってきた時にはこの大量の材料をもって戻られ…材料をかき混ぜ続けているのです…」
「………キレたのか…」
体内から何かが切れる音…それはユーリの堪忍袋の緒だろう…いやいや普通相手に聞こえるのもどうかと思うが…
それはそれで置いておこう…そうでないと話が進まない(真顔)
とりあえず、ユーリはキレた。
疲れきって楽しみにしていたピーチパイが無い…無いのなら自分で作ってしまえ…そういう結論に出たのだろう…
特に被害などはでないと思うが…作ろうとしている量が量だ…なんとか止めてしまわないとロックスが泣く。
フレンは材料をかき混ぜ続けるユーリの傍により優しく声をかける。
「ユーリ…甘いものが食べれなかったのは残念だと思うけど…一体何人分作る気だい?
自分一人で食べる量を作らないと…みんなが心配するよ?」
「これ全部俺の分だが…?」
「え?…………一体君はどんなケーキを作ろうとしてるんだい!?」
ユーリは傍に置いてあった紙をフレンに渡し、フレンがそれをまじまじと見ると再び声を失った…
紙に書いてあるのは長い髪、そして特徴的なだぼだぼな服を着た人間…そしてメモのように書かれた身長171センチ・体重68キロ…
これに該当する人間をフレンは一人しか知らなかった…いや彼以外考えられない。
「これは…ルーク様?」
「あぁ…等身大ルーク・フォン・ファブレケーキverだ」
何時の間に生クリームを作る作業に移っていたのだろう…
生クリームの付いた泡だて器をフレンの方へ突き刺しドヤ顔で決める。
その姿は若い乙女が見たら黄色い歓声をあげるだろう…けど言ってることは残念ながら変態だ。
「………君は正気かい?」
「俺はいつだって真面目だ。」
その瞳は自分の正義を貫き通す男の瞳…いやいや、こんな正義を貫かれたらそっちもそっちで困る。
なんとかしなければ…フレンの後で台所を占領され泣きそうな顔をしているロックスの為にも…
いや、こんなケーキのテーマになっているルークの為にもここは騎士団隊長フレン…男の見せどころだ。多分。
「ユーリ…よく考えてくれ…ケーキでルーク様を作れるはずないだろう」
「フレン様…ツッコミどころはそこですか…」
この幼馴染にしてこの幼馴染有…どこかずれている下町メンバーだが、
今のユーリを止めれるのはフレンしかいない…そうロックスは確信して不安そうにフレンを見守ることにした。
「いや…作れる。何故ならスリーサイズとかもしっかり本物と同じように作るんだからな!!」
「いやいやいや…ルーク様のスリーサイズって一体いつの間に測ったんだい!?」
「目視に決まってるだろ…安心しろ…1mmもずれて測ってるってことはねぇからな!!」
「そこは偉そうにするところじゃないだろ!!最近よくルーク様を見つめていると思ったら…何をしてるんだい君は!!!
彼は他国の王位継承者なんだぞ!!失礼にもほどがある!!」
フレンさん…他国の王位継承者じゃなくても目視でスリーサイズを測られたら誰にだって失礼ですから。
まず男のスリーサイズって何ですか?フレンの後でツッコミたいが任せてしまった手前ツッコミを入れることができない
ロックスが悶え苦しんでいる…ユーリを止めるのが先か、ロックスが我慢しきれずにツッコミを入れるか…どちらが先だろう…
「ったく…フレンはうっせーな…ならこっちならどうだ?」
「こっち……?なっ!?」
フレンが新しく手渡されたのは別の紙…しかしそこには先ほどとほとんど変わらない絵が描かれているが、
若干メモ書きされているスリーサイズ、身長、体重が違っている…しかもこのスリーサイズは…
「ゆ、ユーリこれは……」
「等身大ルーク・フォン・ファブレ(♀)ケーキver」
「君は正気かい?」
「俺はいつだって真面目だ」
それもさっき同じ内容を会話しましたから…。
フレンの口からはため息しかでなかったが、ユーリは楽しそうに語りだした。
「安心しろフレン…その女verはな…あのお坊ちゃんの先祖などのドクメントを調べあげ、そしてあいつのドクメント情報を合わせ
もし女だった場合のスリーサイズを何度も線密に計算し出されたスリーサイズだ…間違ってるはずがねぇ」
「だれもそんなところ心配していないから。むしろどうやってそのドクメントを調べ上げたのか詳しく聞かせてもらえないか!?」
「企業秘密だ」
「どこの企業ですか!?」
耐えることのできなかったロックスがついにツッコミを入れてしまう…
いや…ロックスじゃなくても今のユーリには誰でもツッコミを入れてしまうだろう…
カッコイイユーリさんはいずこに………かむばっく、かっこいいユーリさん。
「はぁ……ユーリ…いい加減にやめないか…?みんなに迷惑がかかってしまうよ…」
「断る。これは男の夢だ、ロマンだ…止めたいのなら力づくで止めてみな…」
「仕方がないね…」
「ちょ、ちょっとフレンさま!?」
フレンが愛用の剣を取り出し刃をユーリに向けるとユーリはにやりと笑い
傍にあった自分の愛刀を持ち戦闘態勢に入る。こんな食堂でこの2人が戦えば食堂は再起不能は間違いない…
アンジュでも呼んでこの二人の喧嘩を止めてもらおうかと思ったその時…食堂のドアが開き一人の人物が現れた。
「あ?フレンにロックス……それに…っげ…大罪人まで…お前ら何やってるんだ?」
「ルーク様!?何故こちらに?って…それは……」
いきなり登場したルークに表紙の抜けた声をフレンがあげるが、ルークの持っていたものに目を奪われてしまった…
ルークの持っていたものはピーチパイ…そう、クレアの作ったピーチパイだった。
「あ?あぁ…これか?何か今日のおやつってことで食堂で配ってたんだけどな…ここで食べるとうぜーから
部屋で食べようと思って俺が持って行ったらガイのやつが俺の分まで持ってきてやがって…1個余ったから返しにきたんだよ…
別に俺は悪くねぇのに…なんで俺が………」
文句をいいながらルークは持ってきたピーチパイを机の上に置いた。
そう、ユーリの分が足りなくなったのはルークが持って行ってしまったからだ…いや、ルークは今回悪くない…
たまたまガイが気を利かせてルークと自分の分を部屋へ持って行っただけだ。誰が悪いとかそういうのはない。
だがユーリにはそれは関係なかった。
「あー…………フレン。俺やっぱ今日ケーキ作るのやめるわ……ってか必要ねぇし…」
「ユーリ…!!やっと正気に戻ったんだね!!はぁ~…良かった…って必要ないって
クレアさんのピーチパイが食べれるからかい?」
ユーリは作っていた生クリームの入ったボールを手に取りにやりと笑った。
その笑顔は何かとてつもなく悪いことを考えている顔だ…
「………本物に生クリーム塗って食べたら…一石二鳥だろ?」
「なっ…………!!!!!」
フレンは本日何度めかは解らないがまたまた絶句した…この男は…本当に救いようがない…馬鹿だ。
そう心に感じたフレンだった。
「ん?何に生クリームを塗って食べるんだ?相変わらずこの大罪人は甘党だな……」
「る、ルーク様逃げてください!!!」
「へ?な、何でだ?ってうわぁっ!!!!」
フレンはルークを抱きかかえると一目散に食堂を飛び出してルークを安全な場所へと連れて行こうとしたが…
「あ…こら待ちやがれ!!フレンそいつをどこに連れていく気だ!!おいフレン!!!」
生クリームの入ったボールを持ったユーリがフレンを追いかけ
2人…いや3人の追いかけっこはアンジュが止めに入った夕方まで続き3人はしっかりとお仕置きを受ける羽目になった。
「ちょ…なんで俺まで…俺は悪くねえええええええええええええええええ!!!!」
今日はめずらしくディセンダーのアレン、フレン、ユーリそしてルークの4人で
クエストに出かけていた。
アレンがビショップなのでバランスが良いと言えばよいが、
このメンバーで出かけることはめったにない。
そんなめずらしいメンバーでのクエストだったが、思いのほか順調に進み
夕方にはバンエルティア号に帰宅していた。
けどその途中の街でアレンが珍しいものを見つけた。
「なぁ…ルーク…あれ何だ?」
「あぁ?あー…あれは……。」
お化け屋敷×恐怖×7
街にあったのは大きな出し物小屋。
看板には不気味な文字で【Haunted house】と書かれている。
「なぁ…何て読むんだ?」
生まれたばかりのディセンダーアレンは見たこともない異国の文字に興味深々だ。
隣に居た髪の長いルークの裾をひっぱり先ほどから質問攻めだ…いつものことだが…。
「あー…あれは…えっと…つまりだな……」
「直訳すると…お化け屋敷ですね」
ルークの斜め後ろに居たフレンがこっそりと助け舟を出す。
顔もガイにそっくりだが、最近はルークへの世話も似てきているようだ。
「そう!!お化け屋敷だ!!」
「お化け屋敷って何だ?」
「え?あー…あー…うーん…………フレン任せた。」
「他人任せかよ…流石お坊ちゃんだな…」
「うっせー!!大罪人が!!お前説明できるのかよ!!」
3人から少し離れたところで様子を見ていたユーリにルークがいつものように
怒りを表し喧嘩を始めた。この光景はバンエルティア号内ではいつもの風景だが、
普通の街中ではただの喧嘩にすぎないのでフレンが慌てて二人の間に入り喧嘩を止めた。
「まぁまぁ二人とも…お化け屋敷というのは人がお化けに変装して怖がらせるものですよ。
本来なら夏の風物詩ですが…ちょっと時期外れな気もしますね」
「へー…何か面白そうだな。」
「そうか?俺腹減ったしかえろうぜー」
お化け屋敷に興味が無くなったのかルークがその場から離れようとしたが、
ユーリの一言によってその足は止められた。
「お坊ちゃんは怖いからお化け屋敷に入りたくないんだな…」
「あぁ?何だと…誰が怖いんだ誰が!!」
また喧嘩を始めようとする二人を必死になってフレンが宥める。
クエストの時はこんな喧嘩などほぼなかったが…溜まっていたのかユーリがここぞとばかりに
ルークにちょっかいを掛け始める。ルークを構いたかったんですねユーリさん。
「怖くないのなら入ればいいだろ?二人で一緒に入るらしいし…証明してみせろよ。」
「いいぜ!!入ってやろうじゃねぇか!!」
ユーリがニヤリと笑った。
ルークの性格を解りきった上での誘い方…流石エローウェルさんです…
だが、それの上を行くのが天然という存在だった。
「そうときまれば一緒にはいるぞルー…「よし、フレン!!一緒に入るぞ!!!」
「「は?」」
ユーリがルークを誘おうとした瞬間ルークから名指しでフレンにご指名が入った。
予想外の出来事にユーリは顔をひきつらせている。
「をい…お坊ちゃんよ…何でフレンなんだ?話の流れ敵に俺と入るのが妥当だろ…」
「お前と入ったらイカサマして驚かせるかもしれねぇーじゃん。
いいか、アレン…ユーリがびびってねぇかしっかり見ておくんだぞ!!」
「りょーかい!!」
ユーリを見はっているようにアレンにしっかりと指示を出すルーク。
そんなルークの後ろ姿をユーリは眺めながら隣で苦笑いをしている幼馴染であるフレンを睨みつける。
「よーし…じゃぁフレン行くぞ!!」
「え?あ…ルーク様お待ちください!!」
フレンの腕を掴み意気揚々とお化け屋敷の中に入っていくルーク…そしてフレン。
そんな二人の背中を見守りながらユーリは深いため息を付く。
「ユーリ……日ごろの行いってやつ?」
「……アレン、お前何処でそんな言葉覚えた…」
お化け屋敷に入ると中は真っ暗で小さな光だけが足元を照らし道を示す。
中に入ってからずいぶん時間が経ったが、ルークとフレンはなかなか前へとすすめずにいた…
それもそのはずルークがフレンの後に隠れマントを引っ張りながら恐る恐る進んでいたのだから。
「ふ、フレン…ぜってー置いていくなよ…」
「大丈夫ですよルーク様…あ、あそこに脅かし役が隠れているようですね…気を付けてください。」
「お、おう……」
お化け屋敷で驚かされるところを先に教えるのもどうかと思うが…これもフレンの優しさなのだろう…
ユーリと組んでいたら確実にからかわれ遊ばれていた…それも見てみたかったが…
おずおずと前へ進んでいるとルークの後から人の気配が感じ取れた。
慌ててルークが首を後に振り向くと誰も居ない…気のせいかと思い少しずつ進んでいると
急に耳元に生温かい風があたった。
「ひゃあああああっ!!!!やだっ!!フレン!!何かでた!!!!!!
お、お化けっ…!!!お化け!!!!」
「ええぇ!?ルーク様大丈夫ですか…って…ルーク様…お化けではないですよ…」
「え?」
泣きそうになりながらフレンにしがみついていたルークは恐る恐る後を振り向くと
そこには笑いをこらえながら立っているユーリと少し寂しそうに頭の触角を垂らしたアレンが立ってた。
「耳元に…ッ息吹きかけただけなのにっ…あー…やっべ…お前最高だな…」
「ルーク…俺居たのに振り向いても気がついてくれねぇーんだもん…」
そう、最初に人の気配を感じ振り向いた正体はアレンだった。
しかしアレンの身長は154cm暗闇で視界が良くないこの場ではアレンの姿を視界に入れることができなかった。
そして次にルークの耳元に吹きかかった生温かい風はユーリの息。
ユーリが怖がっているルークの傍に近寄り息をそっと吹きかけたのだ…21歳の悪戯とは思えないほど低レベルだ。
「わ、わざと怖がってやったんだよ!!ってか何でお前らこんなところに居るんだ!!
俺らより後から入っただろ!?」
「お前らが入った5分後にな…けどお前らの歩くスピードが遅くて追いついたんだよ」
「え…」
「お化け屋敷って変ってるよなー…何か『わっ!!』とか言ってくるんだよー。
あれが今ブームなのか?」
しまった…とルークは心の中で呟いた。ある意味このペアは最強だった。
怖いもの知らずの21歳ユーリ、そして生まれたばかりで物知らず最強のディセンダー…
この二人ならこの程度のお化け屋敷散歩のような歩みで通りすぎることができる…
フレンではなくアレンをペアで選べばよかったのだ。
「まぁ、お坊ちゃんは怖がりってことが解ったし…さっさと出るか」
「こ、怖がってねぇ!!あれはわざと……ッつう!!!!」
ルークがいきなり頭を押さえ苦しみながら地面に座り込んだ。
その姿にユーリとフレンが慌ててルークへと駆け寄る。
「ルーク様大丈夫ですか!?」
「おい、しっかりしろ!!………いつもの頭痛か?」
「あぁ…そう見たいだ…けど………何かいつもと…違う気が…っく!!!」
ルークはまた頭を押さえ顔を下に向けて苦しみだした。
その姿にユーリとフレンは慌てるが、アレン一人が何かを見つけたらしくずっとそちらを向いていた。
「なぁ…ユーリあれなんだ?」
「あぁ?今それどころじゃ……………………なっ!?」
アレンが指を指した方に立っていたのは朱毛の青年。
髪は長く色はルークとアッシュを足したような赤をしている…どちらかと言うと朱に近い気もした。
そして青年の瞳は双子と同じ碧。
こんな珍しい組み合わせの人間はライマ国の王家を覗いてほぼいないはずだ…
しかも青年からは生というオーラが全く感じられない…何者かが全く見当がつかないでいた。
ユーリとフレンがルークを守るように剣に手を取るが、謎の青年が小さく笑ったので二人は戸惑いを見せる。
その笑顔はたまに笑うルークと同じ顔…ルークとはどのような関係か…謎は深まるばかり…
そんな青年を警戒していると青年の口がゆっくりと動いたが、声がユーリとフレンには全く届いていない。
しかし、アレンには聞き取れたようだ…首をうんうんと動かし聞いている。
「お、おい…アレン…何て言ってるんだ?」
「ん?『いつも我が半身を助けてくれ礼を言う』だってさ」
「は、半身って…あ…」
フレンがアレンの話を詳しく聞こうとした時、謎の青年は小さな光の粒となって姿を消してしまった。
「な、なぁ…フレン…もしかして今の………」
「あぁ……もしかしたら…本物の…」
「お化け?」
「っツ!!!!!!!????」
ユーリとフレンが声にならない声で驚いていると、頭痛のせいで座っていたルークが元気よく立った。
「いってー…何なんだよ…こんな時に頭痛なんて…あ?お前らどうかしたか?」
ルークは見ていなかったのか固まっている二人を見て首をかしげたが
二人は何も言わずルークの腕を掴みお化け屋敷を出た。
そしてそのままバンエルティア号に戻り食堂から大量の塩を持ちだしルークの頭にかけるユーリとフレンが居た。
あの後アレンにあの青年のことを聞いたが、本人もよく解っていないらしく…ただ一言。
「いつもルークの傍にいるって言ってた」
と、ユーリとフレンの背中を寒くさせる言葉しか出なかった。
クエストに出かけていた。
アレンがビショップなのでバランスが良いと言えばよいが、
このメンバーで出かけることはめったにない。
そんなめずらしいメンバーでのクエストだったが、思いのほか順調に進み
夕方にはバンエルティア号に帰宅していた。
けどその途中の街でアレンが珍しいものを見つけた。
「なぁ…ルーク…あれ何だ?」
「あぁ?あー…あれは……。」
お化け屋敷×恐怖×7
街にあったのは大きな出し物小屋。
看板には不気味な文字で【Haunted house】と書かれている。
「なぁ…何て読むんだ?」
生まれたばかりのディセンダーアレンは見たこともない異国の文字に興味深々だ。
隣に居た髪の長いルークの裾をひっぱり先ほどから質問攻めだ…いつものことだが…。
「あー…あれは…えっと…つまりだな……」
「直訳すると…お化け屋敷ですね」
ルークの斜め後ろに居たフレンがこっそりと助け舟を出す。
顔もガイにそっくりだが、最近はルークへの世話も似てきているようだ。
「そう!!お化け屋敷だ!!」
「お化け屋敷って何だ?」
「え?あー…あー…うーん…………フレン任せた。」
「他人任せかよ…流石お坊ちゃんだな…」
「うっせー!!大罪人が!!お前説明できるのかよ!!」
3人から少し離れたところで様子を見ていたユーリにルークがいつものように
怒りを表し喧嘩を始めた。この光景はバンエルティア号内ではいつもの風景だが、
普通の街中ではただの喧嘩にすぎないのでフレンが慌てて二人の間に入り喧嘩を止めた。
「まぁまぁ二人とも…お化け屋敷というのは人がお化けに変装して怖がらせるものですよ。
本来なら夏の風物詩ですが…ちょっと時期外れな気もしますね」
「へー…何か面白そうだな。」
「そうか?俺腹減ったしかえろうぜー」
お化け屋敷に興味が無くなったのかルークがその場から離れようとしたが、
ユーリの一言によってその足は止められた。
「お坊ちゃんは怖いからお化け屋敷に入りたくないんだな…」
「あぁ?何だと…誰が怖いんだ誰が!!」
また喧嘩を始めようとする二人を必死になってフレンが宥める。
クエストの時はこんな喧嘩などほぼなかったが…溜まっていたのかユーリがここぞとばかりに
ルークにちょっかいを掛け始める。ルークを構いたかったんですねユーリさん。
「怖くないのなら入ればいいだろ?二人で一緒に入るらしいし…証明してみせろよ。」
「いいぜ!!入ってやろうじゃねぇか!!」
ユーリがニヤリと笑った。
ルークの性格を解りきった上での誘い方…流石エローウェルさんです…
だが、それの上を行くのが天然という存在だった。
「そうときまれば一緒にはいるぞルー…「よし、フレン!!一緒に入るぞ!!!」
「「は?」」
ユーリがルークを誘おうとした瞬間ルークから名指しでフレンにご指名が入った。
予想外の出来事にユーリは顔をひきつらせている。
「をい…お坊ちゃんよ…何でフレンなんだ?話の流れ敵に俺と入るのが妥当だろ…」
「お前と入ったらイカサマして驚かせるかもしれねぇーじゃん。
いいか、アレン…ユーリがびびってねぇかしっかり見ておくんだぞ!!」
「りょーかい!!」
ユーリを見はっているようにアレンにしっかりと指示を出すルーク。
そんなルークの後ろ姿をユーリは眺めながら隣で苦笑いをしている幼馴染であるフレンを睨みつける。
「よーし…じゃぁフレン行くぞ!!」
「え?あ…ルーク様お待ちください!!」
フレンの腕を掴み意気揚々とお化け屋敷の中に入っていくルーク…そしてフレン。
そんな二人の背中を見守りながらユーリは深いため息を付く。
「ユーリ……日ごろの行いってやつ?」
「……アレン、お前何処でそんな言葉覚えた…」
お化け屋敷に入ると中は真っ暗で小さな光だけが足元を照らし道を示す。
中に入ってからずいぶん時間が経ったが、ルークとフレンはなかなか前へとすすめずにいた…
それもそのはずルークがフレンの後に隠れマントを引っ張りながら恐る恐る進んでいたのだから。
「ふ、フレン…ぜってー置いていくなよ…」
「大丈夫ですよルーク様…あ、あそこに脅かし役が隠れているようですね…気を付けてください。」
「お、おう……」
お化け屋敷で驚かされるところを先に教えるのもどうかと思うが…これもフレンの優しさなのだろう…
ユーリと組んでいたら確実にからかわれ遊ばれていた…それも見てみたかったが…
おずおずと前へ進んでいるとルークの後から人の気配が感じ取れた。
慌ててルークが首を後に振り向くと誰も居ない…気のせいかと思い少しずつ進んでいると
急に耳元に生温かい風があたった。
「ひゃあああああっ!!!!やだっ!!フレン!!何かでた!!!!!!
お、お化けっ…!!!お化け!!!!」
「ええぇ!?ルーク様大丈夫ですか…って…ルーク様…お化けではないですよ…」
「え?」
泣きそうになりながらフレンにしがみついていたルークは恐る恐る後を振り向くと
そこには笑いをこらえながら立っているユーリと少し寂しそうに頭の触角を垂らしたアレンが立ってた。
「耳元に…ッ息吹きかけただけなのにっ…あー…やっべ…お前最高だな…」
「ルーク…俺居たのに振り向いても気がついてくれねぇーんだもん…」
そう、最初に人の気配を感じ振り向いた正体はアレンだった。
しかしアレンの身長は154cm暗闇で視界が良くないこの場ではアレンの姿を視界に入れることができなかった。
そして次にルークの耳元に吹きかかった生温かい風はユーリの息。
ユーリが怖がっているルークの傍に近寄り息をそっと吹きかけたのだ…21歳の悪戯とは思えないほど低レベルだ。
「わ、わざと怖がってやったんだよ!!ってか何でお前らこんなところに居るんだ!!
俺らより後から入っただろ!?」
「お前らが入った5分後にな…けどお前らの歩くスピードが遅くて追いついたんだよ」
「え…」
「お化け屋敷って変ってるよなー…何か『わっ!!』とか言ってくるんだよー。
あれが今ブームなのか?」
しまった…とルークは心の中で呟いた。ある意味このペアは最強だった。
怖いもの知らずの21歳ユーリ、そして生まれたばかりで物知らず最強のディセンダー…
この二人ならこの程度のお化け屋敷散歩のような歩みで通りすぎることができる…
フレンではなくアレンをペアで選べばよかったのだ。
「まぁ、お坊ちゃんは怖がりってことが解ったし…さっさと出るか」
「こ、怖がってねぇ!!あれはわざと……ッつう!!!!」
ルークがいきなり頭を押さえ苦しみながら地面に座り込んだ。
その姿にユーリとフレンが慌ててルークへと駆け寄る。
「ルーク様大丈夫ですか!?」
「おい、しっかりしろ!!………いつもの頭痛か?」
「あぁ…そう見たいだ…けど………何かいつもと…違う気が…っく!!!」
ルークはまた頭を押さえ顔を下に向けて苦しみだした。
その姿にユーリとフレンは慌てるが、アレン一人が何かを見つけたらしくずっとそちらを向いていた。
「なぁ…ユーリあれなんだ?」
「あぁ?今それどころじゃ……………………なっ!?」
アレンが指を指した方に立っていたのは朱毛の青年。
髪は長く色はルークとアッシュを足したような赤をしている…どちらかと言うと朱に近い気もした。
そして青年の瞳は双子と同じ碧。
こんな珍しい組み合わせの人間はライマ国の王家を覗いてほぼいないはずだ…
しかも青年からは生というオーラが全く感じられない…何者かが全く見当がつかないでいた。
ユーリとフレンがルークを守るように剣に手を取るが、謎の青年が小さく笑ったので二人は戸惑いを見せる。
その笑顔はたまに笑うルークと同じ顔…ルークとはどのような関係か…謎は深まるばかり…
そんな青年を警戒していると青年の口がゆっくりと動いたが、声がユーリとフレンには全く届いていない。
しかし、アレンには聞き取れたようだ…首をうんうんと動かし聞いている。
「お、おい…アレン…何て言ってるんだ?」
「ん?『いつも我が半身を助けてくれ礼を言う』だってさ」
「は、半身って…あ…」
フレンがアレンの話を詳しく聞こうとした時、謎の青年は小さな光の粒となって姿を消してしまった。
「な、なぁ…フレン…もしかして今の………」
「あぁ……もしかしたら…本物の…」
「お化け?」
「っツ!!!!!!!????」
ユーリとフレンが声にならない声で驚いていると、頭痛のせいで座っていたルークが元気よく立った。
「いってー…何なんだよ…こんな時に頭痛なんて…あ?お前らどうかしたか?」
ルークは見ていなかったのか固まっている二人を見て首をかしげたが
二人は何も言わずルークの腕を掴みお化け屋敷を出た。
そしてそのままバンエルティア号に戻り食堂から大量の塩を持ちだしルークの頭にかけるユーリとフレンが居た。
あの後アレンにあの青年のことを聞いたが、本人もよく解っていないらしく…ただ一言。
「いつもルークの傍にいるって言ってた」
と、ユーリとフレンの背中を寒くさせる言葉しか出なかった。