旭屋本舗
ようこそいらっしゃいませ。
腐向けサイトですご理解のある方のみどうぞ。
始めての方はカテゴリー【What】をお読みください。
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朝からリタ達研究者達が使っている研究室に人だかりができていた。
ギルドメンバーより目覚めが遅かったルークは一番後で何事かと思いながら中の様子を眺めていたが、
中の様子が見えなかったので諦めて食堂へ行こうとした。
しかし、部屋の中央から聞こえる声でしぶしぶ中へと行くことになってしまった。
「お、おいリタ…冗談はやめろって…」
「冗談じゃないわよ。いいから大人しく実験台になりなさい!!!」
「断る。」
そう…声の主はリタと恋人であるユーリだ。
恋人が困っているところを見過ごすわけにはいかず
メンバー達の間をくぐりぬけて研究室へと入って行った。
過去×実験×三十路
「ってか、何で俺を実験台に選ぶんだ!!」
「アンタなら何処へ飛んでもしぶとく生きてそうだからよ!!」
「変な所へ飛ばす気満々じゃねぇか!!」
「実験に犠牲はつきものよ…大人しくしなさい!!」
「誰が大人しくするk…「おーい…ユーリ何してるんだ?」
リタとユーリの争いに入ってきたのは
メンバーの間をやっとの思いですり抜けてきたルークだ。
ユーリは助かったと言わんばかりにルークの傍へと駆け寄った…
こんなユーリの姿見たくても見れるものではない。
「あ、ちょっと逃げるな!!」
リタがユーリを捕まえようとするがルークの後に逃げてしまって捕まえることができない。
けど諦めがつかないリタはルークを挟んでユーリを捕まえようと追いかけるが
ユーリはルークを盾にリタと攻防を続ける。
訳が分からず巻き込まれたルークは可哀そうに思える…。
「お前らの喧嘩に人を巻き込むな!!
それより何の実験だよ…飛ばすとか飛ばさないとか…飛行実験?」
「そんな良いものじゃねぇよ…」
「これよ。コレ」
リタが取りだしたのはシンプルなバズーカー。
そこらの武器屋を探せばありそうなくらいシンプルだ。
いや、バズーカーが武器屋にふつうに置いてあるのも如何なものだが…
「何これ?サーカスでもするのか?」
「ふふふふ…聞いて驚きなさい。これは未来に行ける機械…
その名も「10年バズーカー」よ!!!」
どこかの青狸が道具を取りだした時に流れる効果音がどこからともなく鳴り響く。
よく見ればリタの後には何か機械が置いてある…多分そこから流れたのだろう。
「へー…未来…?ってことは未来の自分が見れるわけか?」
「それは無理ね。これは未来の自分と今の自分を強制的に入れ替えるから
未来の自分は見れないの。まぁもっとも未来の他の人とかは見れるけどね」
「なーんだ…つまんねぇの…でもすげぇの発明したんだな」
リタは頭がいい。
ルークの頭では思いつかないことをそのひらめきで作り上げてしまうから
少し尊敬する部分はある…ルークは素直にリタの発明に感動していたが
ルークの後に居たユーリが口をはさんできた。
「確かにすごい発明だが…動物実験とかとび越えていきなり人で実験するな!!」
「だって動物相手なら感想聞けないじゃない」
「そ、それは嫌だな…失敗したら…「失敗なんてするわけないじゃない!!!」
その自信はどこから来るんだ…とその場に居たメンバー全員が思った。
「でも、まぁ…念の為…火山だろうが森だろうが…何処に行っても生きていそうな
丈夫な人間を探してたら…ユーリが目の前に居たから実験台にしてあげようと…」
「誰も頼んでねぇよ」
確かにそうだ…
朝いきなり出会って「実験台になりなさい!!!」などと言われればルークですら嫌だ。
むしろ喜ぶ人間の方が少ない。
「あー…もう!!めんどくさいわね!!!ユーリ覚悟!!!」
ユーリの許可を貰ってから実験をしようとしていたらしいが…
我慢しきれずにユーリに向かってバズーカーの口を向けた。
「誰が覚悟するか!!」
流石にルークの後に居るとルークまで巻きこむ形になるのであわててルークから反対方向へと離れた。
「五月蠅い!!!覚悟!!!」
リタはバズーカーのスイッチを押すとバズーカーの発射口から何かが飛びだした。
「うわああああああああああああああ!!!!!!」
ユーリは反射的に防御の姿勢を取ったがいつまでたってもバズーカーから発射されたモノは当たらない。
おそるおそるリタを見てみるとユーリに向けられていた発射口とは反対の方から
何やら煙が出ている…恐らくそちらの方から弾が出たのだろう。
叫び主はきっとユーリと反対に居た人物…それは…
「る、ルーク!!!???大丈夫か!?」
「あー…慌ててたから発射口反対だったわ」
ルークの姿は煙でよく見えない…だが時間が経つにつれて煙が薄くなっていき人影を確認することができた。
ユーリは息をのんでその人影の傍へと近寄って行った。
「ん…んんっ…?」
目を開けると見慣れない天井。
まだ重い身体を起こして周りをみると見慣れない小屋の一室だった。
窓から見える風景も森の中に小屋があるとしか分からない。
ルークは自分の最後の記憶を必死になって巻き戻してみると、
最後の風景はリタの後姿。
何故かリタが持っていたバズーカーからルークの方へ弾が飛んで来て…
避ける暇もなく当たってしまった。
リタの説明によると10年バズーカーに当たったのならここは…
「10年後の世界…?え?何で10年後の俺が小屋に…?バンエルティア号は…?」
寝かされていたベッドを見るとダブルベッド。
二人で寝て丁度良いくらいの大きさのベッドで、結構上等なベッドだと質感でわかる。
ルークはもっと情報が知りたいと思いベッドから出ようとしたが、
その時ルークの居た部屋の扉が静かに開いた。
咄嗟に近くに置いてあった自分の剣を取り身構えたが、
入ってきた見覚えのある姿に警戒心は溶けていった。
「お、目が覚めたか…身体の方は大丈夫か?」
「え?あ…もしかして…ユーリ?」
「あぁ…そうだ。ようこそ10年後の世界へ…17歳のルーク…」
静かに笑う10年後のユーリはルークの知っているユーリとは少し違っている。
身長などはさほど変ってないが…雰囲気が大人の空気を漂わせる…
21歳にしては大人であるユーリだったが渋みが若干でている感じだ。
「え?何で俺のこと…?」
「おいおい…ここは未来だぞ?過去のことなんて知ってる。まぁ今日だったとは思わなかったけどな」
ユーリは部屋にあった椅子に座ると持ってきた物を机に置いた。
そこからは良い香りがする…食欲をそそられるがルークは聞きたいことがあったので
食欲を無理に押さえつけた。
「ユーリ…なんで10年後の俺はこんな小屋に居るんだ?ギルドは…?」
その質問にユーリは若干嫌な顔をしたが、
ゆっくりと口を動かしてルークの質問に答え始めた。
「未来のことなんて聞くなよ…お前がこんなみすぼらしい小屋にいる理由…
それはな…俺がお前を誘拐したんだよ…」
「え?」
ルークは固まってしまった。
ユーリは確かに誘拐経験はある…エステルの誘拐は無実だったとしても何故か納得してしまう。
しかし、ルークとユーリは恋人同士だ…誘拐などする必要はないはずだ。
ルークがその質問をしようとする前にユーリが答え始めた。
「付き合い始めたころは身分の違いなんて問題はなかった…
けど、この10年の間に変ったんだよ…やっぱり身分の差は埋めれなかった…
だから俺はお前を誘拐した…ずっとそばに置いておきたかったからな…それだけだ。」
「う、うそだろ…?」
「……………。」
「嘘だって言ってくれよ!!!」
「…………嘘だ。」
「別にユーリが俺を誘拐なんてしなくても俺は…!!!!………え?」
ルークが真剣になってユーリに訴えていると、何故かユーリが静かに笑いだした。
笑い方も自分の知っているユーリと似ているが少し違う…
「はははははっ…!!!!お前ほんと変らないなぁ…こんなウソに引っ掛かるなんてっ…」
「え?あ…へ?う、うそ…?」
ユーリの言葉に開いた口がふさがらない。
本気で信じて泣きそうになっていた自分に恥ずかしさがこみ上げてきた。
「誘拐なんて嘘だ。身分の違いも…まぁ無理矢理抑えつけてる。
お前と俺がここにいるのは単なる旅行だ…旅行。
最近ギルドの仕事が忙しくてゆっくりできなかったからな」
「じゃぁ…俺まだギルドに…」
「二人とも健在だ…むしろメンバーの中でも加入歴トップクラスだ」
その言葉でいろいろな不安が少し解消された。
10年経っても二人の関係は変らない…それが一番嬉しかった。
旅行という言葉を強く強調させるところが少し気になったがそのことは聞かなかった。
少し落ち着けたせいか急にルークのお腹の虫が騒ぎ始めた。
そのを聞いたユーリはまた笑いだし、ルークは顔を真っ赤にさせた。
「ははははははっ!!!!お前…マジで可愛いな…素直すぎる」
「う、五月蠅い!!!朝から何も食べてなかったんだからしょうがないだろ!!!」
「へいへい。そういうことにしてやるよ…ほら、これでも食え。」
ルークの前に差し出されたのは少し小さめのホットケーキ。
1枚は小さめだがそれが何枚も焼いてあり、甘い匂いが食欲をそそる。
「うわぁ…うまそう…」
「約束してたからな…食っていいぞ」
「え?約束…?」
「こっちの話だ。ほら、さっさと食え」
別の小皿にユーリ特性の生クリームなどが添えられた皿も一緒に渡され
ベッドの上ということに少し戸惑いが出たが、食欲に負けルークはホットケーキを食べ始めた。
「うまい…すっげー美味しい…」
「お前の分だ。全部食っていいぞ」
「やっりー!!!」
ルークは嬉しそうにホットケーキを食べる。
そんな姿をユーリは優しい表情で見つめる…そんなユーリと目が合い
ふと、気がついたことを口にした。
「そういえば…ユーリって今31s…「くだらねぇこと言ってたら取り上げるぞ」
ニコリと笑う笑顔が怖い。
年齢を重ねた分今のルークには恐怖にしか思えなかった。
慌てて大人しくホットケーキを食べていると手に生クリームがついてしまった。
「あ…やべ…」
手についた生クリームを舌でなめとっていると、ユーリが何故かルークの傍へと近づいてきた。
そして食べていたホットケーキを取り上げて机に置き、ルークの肩を掴みベッドへと押し倒した、。
「え?あ…ユーリ…?」
「悪い…幼いお前見てたら…ムラムラしてきた…別に相手は俺だし…浮気じゃねぇだろ?」
そう言いながらユーリはいつの間にかルークのベルトを取り外していた。
そしてルークの首筋を舐めると、ルークの身体には電撃が走り去った。
「はぇ!?ゆ、ユーリやめっ…!!!!浮気云々じゃなくて俺まだっ…!!!」
「ん?まだそこまでしてなかったのか…?じゃぁますます俺が手取り足とり腰取り調教しねぇとな…」
目の前にあったユーリの顔がどんどんとルークへと近づいてきた。
キスは何度もしている…けどユーリだけど自分の知っているユーリではない…
いろいろな感情が混ざってしまい言い返せないルークをいいことに
ユーリとの距離はどんどん近付いていく…
あと少し…あと数mm…というところでいきなりルークの身体から煙が出始めた。
「え?」
ルークが声を上げた瞬間…目の前は煙に囲まれ景色がガラリと変った。
「…ルーク…?」
「へ?あ…ユーリ?」
新しく視界に入ってきた世界は自分が見慣れた世界…
バンエルティア号の食堂だった…
「え?あ…俺戻ってきたんだ…助かったぁ~…」
ヘナヘナとその場で力を抜いたルークだったが、椅子に座っていたユーリが機嫌が悪い声で話しかけてきた
「おい…ルーク…お前その格好…」
ユーリに言われ自分の姿に目をやると外されたベルト…乱れた服…誰がみても
その行為を連想させる格好だった。
「あ、いや…これはそのっ…暑くて…」
慌てて服の乱れを治すがユーリにごまかしなど通用するはずもなく
冷たい視線でルークを睨みつけた。
「誰に襲われた…お前のことだ…また無防備に昼寝でもしてたのか…?」
「いや…その…あの…ユーリに…」
「あ?俺が何だって?」
「え?あ…そのぉ~…「あ、帰ってきたのねお帰り」
ユーリとルークの会話にリタが入ってきた。
リタが来たのでそれ以上問い詰めはしなかったが機嫌が悪い…あとできっと誘導尋問間違いなしだ。
「だいたい1時間ね…推測通り…未来どうだった?」
「え?あー…疲れた…いろいろと…」
「案外移動に体力使うのかしら?そこは改良しないと…」
「いや…そういう意味じゃなくて…」
リタの誤解を解こうとしたが、
机にホットケーキがあるのに気がついた。
「え?何でホットケーキ?」
「こっちに来たお前に作らされたんだよ…」
まだ機嫌が悪いのかユーリはそっぽを向いたままルークの質問に答える。
確かに襲われた相手はユーリだ…浮気ではないはずだが…何故か心が痛んでしまう
自分は悪くはない…はずだ…
「こっちに来た俺どうだった?」
「……………………お前…髪の毛伸ばさないか?」
「やだ、暑いし重いし…手入れがうぜー」
質問の答えになってないユーリの答えだったが、
ルークはまだ残っていた普通サイズのホットケーキを一口食べた。
「あ…うまい…けど、未来で食べた方がもうちょっとうまかったような…」
「あぁっ!?」
少し機嫌が直っていたユーリの目がその言葉でまた機嫌が悪くなった。
ルークはしまったと思いユーリに弁解を述べるが…すでにそれは遅かった。
それから数日間ルークだけ何故か3食ホットケーキが出され苦しむ日々が続いた。
ギルドメンバーより目覚めが遅かったルークは一番後で何事かと思いながら中の様子を眺めていたが、
中の様子が見えなかったので諦めて食堂へ行こうとした。
しかし、部屋の中央から聞こえる声でしぶしぶ中へと行くことになってしまった。
「お、おいリタ…冗談はやめろって…」
「冗談じゃないわよ。いいから大人しく実験台になりなさい!!!」
「断る。」
そう…声の主はリタと恋人であるユーリだ。
恋人が困っているところを見過ごすわけにはいかず
メンバー達の間をくぐりぬけて研究室へと入って行った。
過去×実験×三十路
「ってか、何で俺を実験台に選ぶんだ!!」
「アンタなら何処へ飛んでもしぶとく生きてそうだからよ!!」
「変な所へ飛ばす気満々じゃねぇか!!」
「実験に犠牲はつきものよ…大人しくしなさい!!」
「誰が大人しくするk…「おーい…ユーリ何してるんだ?」
リタとユーリの争いに入ってきたのは
メンバーの間をやっとの思いですり抜けてきたルークだ。
ユーリは助かったと言わんばかりにルークの傍へと駆け寄った…
こんなユーリの姿見たくても見れるものではない。
「あ、ちょっと逃げるな!!」
リタがユーリを捕まえようとするがルークの後に逃げてしまって捕まえることができない。
けど諦めがつかないリタはルークを挟んでユーリを捕まえようと追いかけるが
ユーリはルークを盾にリタと攻防を続ける。
訳が分からず巻き込まれたルークは可哀そうに思える…。
「お前らの喧嘩に人を巻き込むな!!
それより何の実験だよ…飛ばすとか飛ばさないとか…飛行実験?」
「そんな良いものじゃねぇよ…」
「これよ。コレ」
リタが取りだしたのはシンプルなバズーカー。
そこらの武器屋を探せばありそうなくらいシンプルだ。
いや、バズーカーが武器屋にふつうに置いてあるのも如何なものだが…
「何これ?サーカスでもするのか?」
「ふふふふ…聞いて驚きなさい。これは未来に行ける機械…
その名も「10年バズーカー」よ!!!」
どこかの青狸が道具を取りだした時に流れる効果音がどこからともなく鳴り響く。
よく見ればリタの後には何か機械が置いてある…多分そこから流れたのだろう。
「へー…未来…?ってことは未来の自分が見れるわけか?」
「それは無理ね。これは未来の自分と今の自分を強制的に入れ替えるから
未来の自分は見れないの。まぁもっとも未来の他の人とかは見れるけどね」
「なーんだ…つまんねぇの…でもすげぇの発明したんだな」
リタは頭がいい。
ルークの頭では思いつかないことをそのひらめきで作り上げてしまうから
少し尊敬する部分はある…ルークは素直にリタの発明に感動していたが
ルークの後に居たユーリが口をはさんできた。
「確かにすごい発明だが…動物実験とかとび越えていきなり人で実験するな!!」
「だって動物相手なら感想聞けないじゃない」
「そ、それは嫌だな…失敗したら…「失敗なんてするわけないじゃない!!!」
その自信はどこから来るんだ…とその場に居たメンバー全員が思った。
「でも、まぁ…念の為…火山だろうが森だろうが…何処に行っても生きていそうな
丈夫な人間を探してたら…ユーリが目の前に居たから実験台にしてあげようと…」
「誰も頼んでねぇよ」
確かにそうだ…
朝いきなり出会って「実験台になりなさい!!!」などと言われればルークですら嫌だ。
むしろ喜ぶ人間の方が少ない。
「あー…もう!!めんどくさいわね!!!ユーリ覚悟!!!」
ユーリの許可を貰ってから実験をしようとしていたらしいが…
我慢しきれずにユーリに向かってバズーカーの口を向けた。
「誰が覚悟するか!!」
流石にルークの後に居るとルークまで巻きこむ形になるのであわててルークから反対方向へと離れた。
「五月蠅い!!!覚悟!!!」
リタはバズーカーのスイッチを押すとバズーカーの発射口から何かが飛びだした。
「うわああああああああああああああ!!!!!!」
ユーリは反射的に防御の姿勢を取ったがいつまでたってもバズーカーから発射されたモノは当たらない。
おそるおそるリタを見てみるとユーリに向けられていた発射口とは反対の方から
何やら煙が出ている…恐らくそちらの方から弾が出たのだろう。
叫び主はきっとユーリと反対に居た人物…それは…
「る、ルーク!!!???大丈夫か!?」
「あー…慌ててたから発射口反対だったわ」
ルークの姿は煙でよく見えない…だが時間が経つにつれて煙が薄くなっていき人影を確認することができた。
ユーリは息をのんでその人影の傍へと近寄って行った。
「ん…んんっ…?」
目を開けると見慣れない天井。
まだ重い身体を起こして周りをみると見慣れない小屋の一室だった。
窓から見える風景も森の中に小屋があるとしか分からない。
ルークは自分の最後の記憶を必死になって巻き戻してみると、
最後の風景はリタの後姿。
何故かリタが持っていたバズーカーからルークの方へ弾が飛んで来て…
避ける暇もなく当たってしまった。
リタの説明によると10年バズーカーに当たったのならここは…
「10年後の世界…?え?何で10年後の俺が小屋に…?バンエルティア号は…?」
寝かされていたベッドを見るとダブルベッド。
二人で寝て丁度良いくらいの大きさのベッドで、結構上等なベッドだと質感でわかる。
ルークはもっと情報が知りたいと思いベッドから出ようとしたが、
その時ルークの居た部屋の扉が静かに開いた。
咄嗟に近くに置いてあった自分の剣を取り身構えたが、
入ってきた見覚えのある姿に警戒心は溶けていった。
「お、目が覚めたか…身体の方は大丈夫か?」
「え?あ…もしかして…ユーリ?」
「あぁ…そうだ。ようこそ10年後の世界へ…17歳のルーク…」
静かに笑う10年後のユーリはルークの知っているユーリとは少し違っている。
身長などはさほど変ってないが…雰囲気が大人の空気を漂わせる…
21歳にしては大人であるユーリだったが渋みが若干でている感じだ。
「え?何で俺のこと…?」
「おいおい…ここは未来だぞ?過去のことなんて知ってる。まぁ今日だったとは思わなかったけどな」
ユーリは部屋にあった椅子に座ると持ってきた物を机に置いた。
そこからは良い香りがする…食欲をそそられるがルークは聞きたいことがあったので
食欲を無理に押さえつけた。
「ユーリ…なんで10年後の俺はこんな小屋に居るんだ?ギルドは…?」
その質問にユーリは若干嫌な顔をしたが、
ゆっくりと口を動かしてルークの質問に答え始めた。
「未来のことなんて聞くなよ…お前がこんなみすぼらしい小屋にいる理由…
それはな…俺がお前を誘拐したんだよ…」
「え?」
ルークは固まってしまった。
ユーリは確かに誘拐経験はある…エステルの誘拐は無実だったとしても何故か納得してしまう。
しかし、ルークとユーリは恋人同士だ…誘拐などする必要はないはずだ。
ルークがその質問をしようとする前にユーリが答え始めた。
「付き合い始めたころは身分の違いなんて問題はなかった…
けど、この10年の間に変ったんだよ…やっぱり身分の差は埋めれなかった…
だから俺はお前を誘拐した…ずっとそばに置いておきたかったからな…それだけだ。」
「う、うそだろ…?」
「……………。」
「嘘だって言ってくれよ!!!」
「…………嘘だ。」
「別にユーリが俺を誘拐なんてしなくても俺は…!!!!………え?」
ルークが真剣になってユーリに訴えていると、何故かユーリが静かに笑いだした。
笑い方も自分の知っているユーリと似ているが少し違う…
「はははははっ…!!!!お前ほんと変らないなぁ…こんなウソに引っ掛かるなんてっ…」
「え?あ…へ?う、うそ…?」
ユーリの言葉に開いた口がふさがらない。
本気で信じて泣きそうになっていた自分に恥ずかしさがこみ上げてきた。
「誘拐なんて嘘だ。身分の違いも…まぁ無理矢理抑えつけてる。
お前と俺がここにいるのは単なる旅行だ…旅行。
最近ギルドの仕事が忙しくてゆっくりできなかったからな」
「じゃぁ…俺まだギルドに…」
「二人とも健在だ…むしろメンバーの中でも加入歴トップクラスだ」
その言葉でいろいろな不安が少し解消された。
10年経っても二人の関係は変らない…それが一番嬉しかった。
旅行という言葉を強く強調させるところが少し気になったがそのことは聞かなかった。
少し落ち着けたせいか急にルークのお腹の虫が騒ぎ始めた。
そのを聞いたユーリはまた笑いだし、ルークは顔を真っ赤にさせた。
「ははははははっ!!!!お前…マジで可愛いな…素直すぎる」
「う、五月蠅い!!!朝から何も食べてなかったんだからしょうがないだろ!!!」
「へいへい。そういうことにしてやるよ…ほら、これでも食え。」
ルークの前に差し出されたのは少し小さめのホットケーキ。
1枚は小さめだがそれが何枚も焼いてあり、甘い匂いが食欲をそそる。
「うわぁ…うまそう…」
「約束してたからな…食っていいぞ」
「え?約束…?」
「こっちの話だ。ほら、さっさと食え」
別の小皿にユーリ特性の生クリームなどが添えられた皿も一緒に渡され
ベッドの上ということに少し戸惑いが出たが、食欲に負けルークはホットケーキを食べ始めた。
「うまい…すっげー美味しい…」
「お前の分だ。全部食っていいぞ」
「やっりー!!!」
ルークは嬉しそうにホットケーキを食べる。
そんな姿をユーリは優しい表情で見つめる…そんなユーリと目が合い
ふと、気がついたことを口にした。
「そういえば…ユーリって今31s…「くだらねぇこと言ってたら取り上げるぞ」
ニコリと笑う笑顔が怖い。
年齢を重ねた分今のルークには恐怖にしか思えなかった。
慌てて大人しくホットケーキを食べていると手に生クリームがついてしまった。
「あ…やべ…」
手についた生クリームを舌でなめとっていると、ユーリが何故かルークの傍へと近づいてきた。
そして食べていたホットケーキを取り上げて机に置き、ルークの肩を掴みベッドへと押し倒した、。
「え?あ…ユーリ…?」
「悪い…幼いお前見てたら…ムラムラしてきた…別に相手は俺だし…浮気じゃねぇだろ?」
そう言いながらユーリはいつの間にかルークのベルトを取り外していた。
そしてルークの首筋を舐めると、ルークの身体には電撃が走り去った。
「はぇ!?ゆ、ユーリやめっ…!!!!浮気云々じゃなくて俺まだっ…!!!」
「ん?まだそこまでしてなかったのか…?じゃぁますます俺が手取り足とり腰取り調教しねぇとな…」
目の前にあったユーリの顔がどんどんとルークへと近づいてきた。
キスは何度もしている…けどユーリだけど自分の知っているユーリではない…
いろいろな感情が混ざってしまい言い返せないルークをいいことに
ユーリとの距離はどんどん近付いていく…
あと少し…あと数mm…というところでいきなりルークの身体から煙が出始めた。
「え?」
ルークが声を上げた瞬間…目の前は煙に囲まれ景色がガラリと変った。
「…ルーク…?」
「へ?あ…ユーリ?」
新しく視界に入ってきた世界は自分が見慣れた世界…
バンエルティア号の食堂だった…
「え?あ…俺戻ってきたんだ…助かったぁ~…」
ヘナヘナとその場で力を抜いたルークだったが、椅子に座っていたユーリが機嫌が悪い声で話しかけてきた
「おい…ルーク…お前その格好…」
ユーリに言われ自分の姿に目をやると外されたベルト…乱れた服…誰がみても
その行為を連想させる格好だった。
「あ、いや…これはそのっ…暑くて…」
慌てて服の乱れを治すがユーリにごまかしなど通用するはずもなく
冷たい視線でルークを睨みつけた。
「誰に襲われた…お前のことだ…また無防備に昼寝でもしてたのか…?」
「いや…その…あの…ユーリに…」
「あ?俺が何だって?」
「え?あ…そのぉ~…「あ、帰ってきたのねお帰り」
ユーリとルークの会話にリタが入ってきた。
リタが来たのでそれ以上問い詰めはしなかったが機嫌が悪い…あとできっと誘導尋問間違いなしだ。
「だいたい1時間ね…推測通り…未来どうだった?」
「え?あー…疲れた…いろいろと…」
「案外移動に体力使うのかしら?そこは改良しないと…」
「いや…そういう意味じゃなくて…」
リタの誤解を解こうとしたが、
机にホットケーキがあるのに気がついた。
「え?何でホットケーキ?」
「こっちに来たお前に作らされたんだよ…」
まだ機嫌が悪いのかユーリはそっぽを向いたままルークの質問に答える。
確かに襲われた相手はユーリだ…浮気ではないはずだが…何故か心が痛んでしまう
自分は悪くはない…はずだ…
「こっちに来た俺どうだった?」
「……………………お前…髪の毛伸ばさないか?」
「やだ、暑いし重いし…手入れがうぜー」
質問の答えになってないユーリの答えだったが、
ルークはまだ残っていた普通サイズのホットケーキを一口食べた。
「あ…うまい…けど、未来で食べた方がもうちょっとうまかったような…」
「あぁっ!?」
少し機嫌が直っていたユーリの目がその言葉でまた機嫌が悪くなった。
ルークはしまったと思いユーリに弁解を述べるが…すでにそれは遅かった。
それから数日間ルークだけ何故か3食ホットケーキが出され苦しむ日々が続いた。
「あー…マジだりぃ…うぜぇ…」
「髪をろくに乾かさずに寝るからよ…自業自得ね。」
ベッドの住人となっている俺にティアが冷たく見下ろした。
その顔は呆れている顔…まぁ、俺はティアにいつも呆れられているけどな。
ふと、いつも俺の傍にいるガイの姿がさっきから見えないのに気が付いた。
「……ガイは?」
「風邪を治す薬草を大佐から教えて貰って取りに行ったわ…
今日中に帰って来れるかわからないけど。」
ジェイドのやつ…どんな場所を教えたんだ…ジェイドが笑顔でガイに薬草が生えている
場所を教える姿が目に浮かぶ。
きっと簡単には取れない場所だ。
普段のガイなら冷静になって判断ができるだろうけど、
今のガイはきっと無理だ…だって俺が倒れてしまっているから。
別に薬草なんていい…ただ…今は…
「………傍にいろよな……」
「え?何か言った?」
「べ、べつに…」
声が小さくてティアに聞こえなかったようだ。
まぁ、別にティアでもいいんだけどな………話相手になってくれるのなら…けど…
「ルーク…大人しく寝てるのよ…でないと治るものも治らないから」
「……え?どっかいくのか?」
「………居て欲しいの?」
ティアの言葉に俺の心が少し驚いたように踊った。
素直に言えばいいのに…言えない…
いや、素直にってなんだ…そんなこと言うとか俺じゃない…俺はそんな弱くない…
そして素直になれない。
「な、なわけねぇだろうが!!!!ほら、うぜーからさっさと出て行けよ。寝れないだろ!!」
「……大人しく寝なさいね。」
そういうとティアはため息をついて部屋から出て行った。
俺はその背中を見つめながら布団に潜り込む。
風邪の時はいつもこうだった…誰かに居てほしい…けど、そんなの俺じゃない…
屋敷だったらガイがちょこちょこ様子を見に来ていたけど…そのガイも今は居ない。
「バガイ…少しは考えろよ…」
いや、ガイは俺の為に薬草を取りに行っている…けど俺はそんなことよりも…
いろいろと考えているうちにいつの間にか俺は眠っていた。
どれくらい眠ったのだろうか…目を覚ますと少し体調が良くなっていた。
けど、まだ外へ出れるほどではない…
ベッドの脇に誰か居たので顔を動かすとそこにはユーリが座っていた。
いつから居たのだろうか…ベッドの脇で椅子に座りながら眠っている…
女性達がユーリの顔を見て騒ぐ理由がわかる…初めて見るその寝顔は確かに美形だ。
俺なんかとは全く違う顔のつくりをしている…同じ人間なのだろうか?
じっとユーリの顔を見ているとユーリの瞳が動き目が合った。
「…よぅ、お坊ちゃん…なーに俺の顔なんて見てるんだ?」
「うっせー…何でお前が此処にいるんだよ…」
ユーリはすぐに答えを出そうとはしなかった。
ほんの少しだけ俺達の間に沈黙ができたが…ユーリが口を動かした為その沈黙は崩れた。
「聞こえたからだよ…」
「は?」
「お前が寂しい…傍に居て欲しいって…声が聞こえたからだよ」
「だ、誰もそんなこといってねぇし!!ばかじゃねぇのおまえ!!??」
熱のせいで熱い身体がますます熱くなる…何言い出すんだこいつは!!!
俺はムキになってユーリに文句を言いだすとユーリは何故かわらった。
「そんだけ元気ならもう大丈夫だな…」
「うっせー…さっさとこんな風邪治してやる…」
「そういえば…風邪早く治す方法知ってるか?」
こいつは俺を馬鹿にしているのか?
いくら屋敷育ちの俺でもそれぐらい知ってる…はずだ。
「薬を飲む…」
「いや…違うな…答えは…」
ユーリは両手で俺の頭を包み込むと俺の額に自分の額を当てた。
そんな至近距離でユーリの顔を見るのは初めてで…何故か俺の身体はあつくなる。
「他人に風邪を移すこと…」
「は、はぁ!!??」
何故だろう…ガイが額を当てて熱を測る時はこんなにドキドキしないのに…
今はすごく心臓が踊る…俺やっぱり病気かも…風邪なんかじゃなくて
もっと質の悪いやつ…
「ほら、俺に移せよ…俺はお前と違って丈夫だからな」
「だ、誰がお前なんかに…うつしてやるもんか…」
「そりゃ残念だな…お坊ちゃんから貰う風邪ならさぞ高級品かと思ったんだけどな…」
ユーリは少し残念な表情をして俺の額から離れた。
やっとユーリから離れられ心臓のドキドキは収まりつつあるけど…こんどは逆に寂しさが残る。
「……寝るから。出て行けよ…」
「別に俺が居ても寝れるだろ?」
ニヤニヤと笑うその顔が見ているだけで怒りがこみ上げてくる。
俺は布団を頭からかぶりユーリに背中を向けて寝る体制を取った。
けど、一つだけ疑問に思ったことがあるので、布団から顔を出してユーリに聞いた。
「俺の声…寂しいって声…聞こえたの本当かよ…」
「あ?あー…何となくだけどな…もしかしたら俺の中からの声だったかもな…」
「お前の…中…?お前中に誰かいるのか?」
「………さっさと寝ないと…魚食わせるぞ」
俺の嫌いな食べ物がシーフードと知ってからユーリは事あるごとに魚を食わせようとする。
ぜってー食べねぇからな!!!
俺はユーリを少し睨みつけてからまた布団の中へと潜りこんだ…
ティアが出ていった時はすぐに寝れたのに…ユーリが傍にいると思うと…何故か中々寝付けなかった…
数日後すっかり俺は元気になった。
けど、食堂でみかけたユーリは少し咳き込んでいる。
ティアからその後聞いた話だとユーリの部屋の前に風邪薬が置いてあったらしい…
俺には誰がそんなことをしたのかが検討がつかなかった。
どんな物好きだよ…ガイが折角取ってきた風邪薬をあんなやつに…
ぜってー俺じゃねぇからな!!!!そこんとこ間違えるんじゃねぇぞ!!!
……風邪は治ったけど俺…全く別の病気になってるんじゃねぇか…?
そんな気がしてならない今日この頃だった。
「髪をろくに乾かさずに寝るからよ…自業自得ね。」
ベッドの住人となっている俺にティアが冷たく見下ろした。
その顔は呆れている顔…まぁ、俺はティアにいつも呆れられているけどな。
ふと、いつも俺の傍にいるガイの姿がさっきから見えないのに気が付いた。
「……ガイは?」
「風邪を治す薬草を大佐から教えて貰って取りに行ったわ…
今日中に帰って来れるかわからないけど。」
ジェイドのやつ…どんな場所を教えたんだ…ジェイドが笑顔でガイに薬草が生えている
場所を教える姿が目に浮かぶ。
きっと簡単には取れない場所だ。
普段のガイなら冷静になって判断ができるだろうけど、
今のガイはきっと無理だ…だって俺が倒れてしまっているから。
別に薬草なんていい…ただ…今は…
「………傍にいろよな……」
「え?何か言った?」
「べ、べつに…」
声が小さくてティアに聞こえなかったようだ。
まぁ、別にティアでもいいんだけどな………話相手になってくれるのなら…けど…
「ルーク…大人しく寝てるのよ…でないと治るものも治らないから」
「……え?どっかいくのか?」
「………居て欲しいの?」
ティアの言葉に俺の心が少し驚いたように踊った。
素直に言えばいいのに…言えない…
いや、素直にってなんだ…そんなこと言うとか俺じゃない…俺はそんな弱くない…
そして素直になれない。
「な、なわけねぇだろうが!!!!ほら、うぜーからさっさと出て行けよ。寝れないだろ!!」
「……大人しく寝なさいね。」
そういうとティアはため息をついて部屋から出て行った。
俺はその背中を見つめながら布団に潜り込む。
風邪の時はいつもこうだった…誰かに居てほしい…けど、そんなの俺じゃない…
屋敷だったらガイがちょこちょこ様子を見に来ていたけど…そのガイも今は居ない。
「バガイ…少しは考えろよ…」
いや、ガイは俺の為に薬草を取りに行っている…けど俺はそんなことよりも…
いろいろと考えているうちにいつの間にか俺は眠っていた。
どれくらい眠ったのだろうか…目を覚ますと少し体調が良くなっていた。
けど、まだ外へ出れるほどではない…
ベッドの脇に誰か居たので顔を動かすとそこにはユーリが座っていた。
いつから居たのだろうか…ベッドの脇で椅子に座りながら眠っている…
女性達がユーリの顔を見て騒ぐ理由がわかる…初めて見るその寝顔は確かに美形だ。
俺なんかとは全く違う顔のつくりをしている…同じ人間なのだろうか?
じっとユーリの顔を見ているとユーリの瞳が動き目が合った。
「…よぅ、お坊ちゃん…なーに俺の顔なんて見てるんだ?」
「うっせー…何でお前が此処にいるんだよ…」
ユーリはすぐに答えを出そうとはしなかった。
ほんの少しだけ俺達の間に沈黙ができたが…ユーリが口を動かした為その沈黙は崩れた。
「聞こえたからだよ…」
「は?」
「お前が寂しい…傍に居て欲しいって…声が聞こえたからだよ」
「だ、誰もそんなこといってねぇし!!ばかじゃねぇのおまえ!!??」
熱のせいで熱い身体がますます熱くなる…何言い出すんだこいつは!!!
俺はムキになってユーリに文句を言いだすとユーリは何故かわらった。
「そんだけ元気ならもう大丈夫だな…」
「うっせー…さっさとこんな風邪治してやる…」
「そういえば…風邪早く治す方法知ってるか?」
こいつは俺を馬鹿にしているのか?
いくら屋敷育ちの俺でもそれぐらい知ってる…はずだ。
「薬を飲む…」
「いや…違うな…答えは…」
ユーリは両手で俺の頭を包み込むと俺の額に自分の額を当てた。
そんな至近距離でユーリの顔を見るのは初めてで…何故か俺の身体はあつくなる。
「他人に風邪を移すこと…」
「は、はぁ!!??」
何故だろう…ガイが額を当てて熱を測る時はこんなにドキドキしないのに…
今はすごく心臓が踊る…俺やっぱり病気かも…風邪なんかじゃなくて
もっと質の悪いやつ…
「ほら、俺に移せよ…俺はお前と違って丈夫だからな」
「だ、誰がお前なんかに…うつしてやるもんか…」
「そりゃ残念だな…お坊ちゃんから貰う風邪ならさぞ高級品かと思ったんだけどな…」
ユーリは少し残念な表情をして俺の額から離れた。
やっとユーリから離れられ心臓のドキドキは収まりつつあるけど…こんどは逆に寂しさが残る。
「……寝るから。出て行けよ…」
「別に俺が居ても寝れるだろ?」
ニヤニヤと笑うその顔が見ているだけで怒りがこみ上げてくる。
俺は布団を頭からかぶりユーリに背中を向けて寝る体制を取った。
けど、一つだけ疑問に思ったことがあるので、布団から顔を出してユーリに聞いた。
「俺の声…寂しいって声…聞こえたの本当かよ…」
「あ?あー…何となくだけどな…もしかしたら俺の中からの声だったかもな…」
「お前の…中…?お前中に誰かいるのか?」
「………さっさと寝ないと…魚食わせるぞ」
俺の嫌いな食べ物がシーフードと知ってからユーリは事あるごとに魚を食わせようとする。
ぜってー食べねぇからな!!!
俺はユーリを少し睨みつけてからまた布団の中へと潜りこんだ…
ティアが出ていった時はすぐに寝れたのに…ユーリが傍にいると思うと…何故か中々寝付けなかった…
数日後すっかり俺は元気になった。
けど、食堂でみかけたユーリは少し咳き込んでいる。
ティアからその後聞いた話だとユーリの部屋の前に風邪薬が置いてあったらしい…
俺には誰がそんなことをしたのかが検討がつかなかった。
どんな物好きだよ…ガイが折角取ってきた風邪薬をあんなやつに…
ぜってー俺じゃねぇからな!!!!そこんとこ間違えるんじゃねぇぞ!!!
……風邪は治ったけど俺…全く別の病気になってるんじゃねぇか…?
そんな気がしてならない今日この頃だった。
エステルは言う。
「彼はすっごく優しい人です…ただ不器用なだけで…」
ロイドは言う。
「優しくて…頼りになるよ。みんな気がついていないだけで」
ガイは言う。
「不器用なやつだけど…本当はいいやつなんだ。」
あいつの何処が?俺には全くわからねぇ…
俺の人を見る目が無いのだろうか…
いや、こんな意見を言うのはギルドの中でもごく一部だ。
ほとんどのメンバーは俺と同じ印象しかもっていない。
けど俺は知ることになる…人間は奥深いことを…。
絆創膏×印象×きっかけ
「いてっ…」
食堂で洗いものをしていると指から脳へ痛みという感覚が流れた。
右手を見ると皮膚が切れて血が流れ始めている、
洗っていた食器を見ると縁が少し欠けておりこれで切ってしまったのだろう。
一緒に洗いものをしていたリリーが慌てて声をかけてきた。
「ユーリさん大丈夫です?あっ…血が出てる…すぐにアニーさんのところへ行った方がいいですよ。」
「これくらい大丈夫だって。それに今回復できる人間ほぼクエストで出てて
医務室込んでるだろうから後でいくさ。」
ユーリはそのまま洗いものを再開する。
すこし洗剤でしみて痛いが、戦闘で受ける痛みに比べたら可愛いものだ。
「すみません…私が回復使えたらいいんですが…」
「気にするな」
少し悲しそうな表情を見せるリリーに対してユーリは少しだけ口元を上げる
するとリリーの頬は少し赤くなりユーリの顔を見ないように後を向いた。
「っへ、だっせーの。そんなので指なんて切るなよ。」
「おいおいルーク…」
声の主はまだ食堂に居たルーク、そして従者のガイだった。
「洗いものなんてしないお坊ちゃんにはこのつらーい痛みわかんねぇだろうな…
あ、しないじゃなくてできないだったか?」
「なんだとっ…俺だってなそんな洗いものくらい…」
ガイは「また始まった」と小さくつぶやいた。
もう最近はこの二人にとってこんなやりとりは日常茶飯事で、
最初は止めに入っていたギルドメンバー達も今やほとんど止めるものはいない。
居るとしたらガイとフレンくらいなものだった。
ユーリは挑発するような頬笑みを作りルークをからかいはじめた。
「ほー、じゃぁやってみろよ。」
「上等だ!!」
「こらこら、熱くなるんじゃない。」
今にもユーリに飛びかかろうとするルークをガイが必死に止め座らせるが
ルークの怒りは収まる様子を見せていない。
「だいたいお前が洗いものなんてしたらここの皿全部割れる。」
「確かに…」
「ガイまで何言い出すんだ!!!」
怒りの矛先はユーリから自分の味方であるガイへと移った。
ガイは笑いながら怒るルークを宥めるが一向に効果はないようだ。
「あー…悪かった悪かった。けどなルーク案外皿で手切ると痛いんだぞ。」
「そうなのか…っへ、けど俺には関係ないね。」
確かにルークは貴族だ。
ここのギルドに居る時は当番として食堂当番が回ってくるが
洗いものなどはガイがやってくれている。
国に戻れば貴族としての生活に戻るため皿洗いなど無縁の生活だ。
「まぁ、これで一つお利口になったな。よかったなぁー。」
「てめぇ…俺をからかってるのか?」
「お、ようやく自分が遊ばれてることに気がつく知識を身に付けたのか?
成長したなぁ…えらいえらい。」
ルークの中から何かが切れる音がした。
そして、怒りの眼でユーリを睨みつける。
「だあああああああああ!!お前ほんとうっぜーな!!!俺は部屋に戻る!!」
ルークはテーブルを強く叩き風のような速さで食堂を出て行った。
それを見たガイは慌ててルークを追いかけようとするが、
一度とまりユーリに頭を下げた。
「お、おいルーク…!!!はぁ…すまないな……気を悪くしないでくれ
って言うのは無理か…本当すまない。」
「俺も遊びすぎたな、悪かった。」
「でもルークってホント子供だよね」
ずっと黙ってみていたリリーが呆れたように会話に参加した。
その言葉に言い返す言葉などガイの中にはなく、
苦笑いだけをすると二人に手を振ってルークの後を追いかけた。
「さてと…あと少しで終わりか…」
「そのあとちゃんと医務室いってくださいね。」
「へいへい。」
洗いものが終わりリリーに言われた通り医務室へと足を向けるユーリの姿があった。
本当ならばこのくらいの傷医務室に行く必要性などないのだが、
あまりにもリリーに言われるので仕方なく医務室へと向かっている。
医務室の扉が見えたが、医務室の手前でユーリの足は自然と止まった。
何故なら医務室の手前でルークがえらそうに壁にもたれかかっていたからだ。
一度は止まったユーリの足だったが、ルークのことは気にしないことにして
医務室へとまた足を動かした…だが、
「おい…。」
ルークに呼び止められ再び足を止めることになった。
ユーリは少しめんどくさそうな表情をしてルークの方に顔を向ける。
「何だよ…何か用か?それともさっきの続きか…?ってうぉっ!!!!」
ユーリが言い終わる前にルークはユーリの顔面に拳を突き刺した。
顔面にぶつかるかと思いよけようとしたが、顔面直前で拳は止まった。
「おい…何のつもりだ?喧嘩なら買うぜ?」
「……………。」
「ん?何だって?」
普段大きい声のルークだったが、今は何を言ってるか全く聞こえないほど小さい声だ。
しかも何故か顔が真っ赤になっている。
「だからっ…手出せって!!!」
「え?あぁ…」
ルークに言われた通りに手を出すと、拳が開き何かがユーリの掌へと落ちた。
「何だこれ…?」
「…お前しらねぇの?チーグルって言ってライマ国の聖獣…」
「いや、柄のこと言ってるんじゃねぇ。」
そもそも他国であるユーリがライマ国の聖獣何てしってるはずがなかった。
エステルあたりなら知っているかもしれないがユーリは自分の国以外には興味がない。
「………絆創膏。」
ユーリの掌に落ちてきたのはチーグルといったライマ国の聖獣(かなりデフォルメされている)
の柄が入った絆創膏だった。
何故ルークが絆創膏を渡してきたのか未だ理解ができていないユーリはルークの顔を見る、
ルークの顔は相変わらず真っ赤だ…風邪でも引いているのではと思えるくらい。
「お前…さっき…怪我…」
「あっ…」
ユーリはさきほどの食堂での出来事を思い出した。
あまりにも可愛らしい絆創膏は多分ルークの持ち物ではない、
むしろルークの私物に絆創膏があるとは想像できなかった。
「これ…お前が?」
「ち、ちげぇよ!!!さっきのことティアに話したら、ティアが渡せってうるせぇから!!!
べ、別に俺からじゃねぇからな!!ティアからだからな!!そこんとこ勘違いするんじゃねぇぞ!!!」
「ほー…ティアからねぇ…ティアから貰ったの間違いじゃないか?」
「そ、そう…俺が前にティアから貰ったやつ…じゃねぇ!!!だから勘違いするなって言ってるだろうが!!
それだけだからな!!!お、俺昼寝するから…邪魔するんじゃねぇぞ!!!」
長い髪を靡かせてルークは自室へと戻る…いや逃げるように飛び込んで行った。
中からガイとティアの驚く声が聞こえる。
ユーリは絆創膏を見つめ少し微笑んだ。
「普通医務室の前で渡すか?もっと渡す場所あるだろうが…」
たまたまルーク達の部屋が医務室の前だったからだろうか?
いや、それでももっと渡せる場所はあったはずだが、これが彼なりの渡し方なのだろう…
「本当…おもしれぇやつだ…」
ユーリはそのまま医務室に入っていった。
そして、消毒だけしてもらい貰ったばかりの絆創膏を右手に貼り付けた。
「うわぁ…すごく可愛い絆創膏ですね。それどうしたんです?」
医務室から戻る途中クエストから戻ってきたエステル達に出くわした。
流石女の子といったところ…
エステルはユーリの右手に貼ってあった絆創膏に目を輝かせている。
「あぁ…これか?これはとある貴族のお坊ちゃんから直々に貰ったやつでなぁ…」
「だから俺からじゃねぇって言ってるだろうが!!!」
エステルに冗談交じりで絆創膏のことについて話していると
ユーリの後からルークの叫び声が聞こえた。
振り向いてみるとルークが顔を真っ赤にさせて立っている。
クエストカウンターを見るとガイがアンジュと話しているのでクエストを受けにきたのだろう。
「お前昼寝するんじゃなかったのか?」
「う、うっせぇー!!そんなことはどうでもいいんだよ!!
だからそれは俺からじゃなくて…!!!」
「俺一言でもこいつの名前言ったか?」
エステルに問いかけると素直に首を横に振った。
それを見たルークは少し驚いた顔をしたが、
またすぐに真っ赤になってユーリを睨みつけた。
「うっせーうっせー!!!お前なんてもうしらねぇ!!!
おい、ガイ…さっさとクエストいくぞ!!!」
大股でガイのところへと向かおうとしたが、
ルークの身体は素直に前へと進めなかった…
「ほー…クエスト行くのか…じゃぁ、俺も混ぜてもらおうかな」
「な、何でお前が!?」
「そんな気分なんだよ。」
「何だよそれ!!!」
ルークはユーリに大声でいろいろ文句を言っているが、
その間にアンジュにクエストを受理されてしまい結局一緒に行くことになってしまった。
「ったく…何でこんなやつと…」
「まぁまぁ、人数多い方が楽だろ?」
ガイに宥められるが納得していない様子のルークは頬を膨らませている。
そんな姿を見たユーリは気がつかれないように小さく笑った。
「あ、そうだ…ティアにさっきのお礼言っておいてくれよ。「ありがとうな」って」
「………気が向いたら言っておく。」
顔を真っ赤にさせユーリからそっぽを向く。
どうしたらこう毎回毎回顔を真っ赤にできるのか不思議で仕方がない。
「ん?ティアにって…何かあったのか?」
「ん?これは俺とお坊ちゃんの二人だけのひ・み・つ」
「きしょくわりぃこと言ってるんじゃねぇよ!!!ほら、さっさと行くぞ!!」
「へいへい。」
ユーリは軽い返事をしながらも楽しそうな表情でルークの後を追いかけた。
俺はこの時まだ気がついていなかった。
この貴族様にどんどんはまっていくことを…
いろんな表情をみせるこの貴族様に。
出会ったころの悪い印象なんてこのころからどんどん抜けていく。
数カ月後俺らはラザリスを助ける。
そして、ずっと胸の奥に閉まっていたアイツへの思いを伝えた。
身分の違い、環境の違いから伝えるつもりなんて無かった思いを…
最初はあいつの人生を狂わせるだけだと思っていた。
貴族として生活している方が何不住なく暮らしていける。
俺と居たってどんな暮らしが待っているか分からない…
けど、アイツは俺を選んだ。
選んでくれたからには俺もアイツに贈ろう。
絆創膏ではない…俺の気持ちを…
「彼はすっごく優しい人です…ただ不器用なだけで…」
ロイドは言う。
「優しくて…頼りになるよ。みんな気がついていないだけで」
ガイは言う。
「不器用なやつだけど…本当はいいやつなんだ。」
あいつの何処が?俺には全くわからねぇ…
俺の人を見る目が無いのだろうか…
いや、こんな意見を言うのはギルドの中でもごく一部だ。
ほとんどのメンバーは俺と同じ印象しかもっていない。
けど俺は知ることになる…人間は奥深いことを…。
絆創膏×印象×きっかけ
「いてっ…」
食堂で洗いものをしていると指から脳へ痛みという感覚が流れた。
右手を見ると皮膚が切れて血が流れ始めている、
洗っていた食器を見ると縁が少し欠けておりこれで切ってしまったのだろう。
一緒に洗いものをしていたリリーが慌てて声をかけてきた。
「ユーリさん大丈夫です?あっ…血が出てる…すぐにアニーさんのところへ行った方がいいですよ。」
「これくらい大丈夫だって。それに今回復できる人間ほぼクエストで出てて
医務室込んでるだろうから後でいくさ。」
ユーリはそのまま洗いものを再開する。
すこし洗剤でしみて痛いが、戦闘で受ける痛みに比べたら可愛いものだ。
「すみません…私が回復使えたらいいんですが…」
「気にするな」
少し悲しそうな表情を見せるリリーに対してユーリは少しだけ口元を上げる
するとリリーの頬は少し赤くなりユーリの顔を見ないように後を向いた。
「っへ、だっせーの。そんなので指なんて切るなよ。」
「おいおいルーク…」
声の主はまだ食堂に居たルーク、そして従者のガイだった。
「洗いものなんてしないお坊ちゃんにはこのつらーい痛みわかんねぇだろうな…
あ、しないじゃなくてできないだったか?」
「なんだとっ…俺だってなそんな洗いものくらい…」
ガイは「また始まった」と小さくつぶやいた。
もう最近はこの二人にとってこんなやりとりは日常茶飯事で、
最初は止めに入っていたギルドメンバー達も今やほとんど止めるものはいない。
居るとしたらガイとフレンくらいなものだった。
ユーリは挑発するような頬笑みを作りルークをからかいはじめた。
「ほー、じゃぁやってみろよ。」
「上等だ!!」
「こらこら、熱くなるんじゃない。」
今にもユーリに飛びかかろうとするルークをガイが必死に止め座らせるが
ルークの怒りは収まる様子を見せていない。
「だいたいお前が洗いものなんてしたらここの皿全部割れる。」
「確かに…」
「ガイまで何言い出すんだ!!!」
怒りの矛先はユーリから自分の味方であるガイへと移った。
ガイは笑いながら怒るルークを宥めるが一向に効果はないようだ。
「あー…悪かった悪かった。けどなルーク案外皿で手切ると痛いんだぞ。」
「そうなのか…っへ、けど俺には関係ないね。」
確かにルークは貴族だ。
ここのギルドに居る時は当番として食堂当番が回ってくるが
洗いものなどはガイがやってくれている。
国に戻れば貴族としての生活に戻るため皿洗いなど無縁の生活だ。
「まぁ、これで一つお利口になったな。よかったなぁー。」
「てめぇ…俺をからかってるのか?」
「お、ようやく自分が遊ばれてることに気がつく知識を身に付けたのか?
成長したなぁ…えらいえらい。」
ルークの中から何かが切れる音がした。
そして、怒りの眼でユーリを睨みつける。
「だあああああああああ!!お前ほんとうっぜーな!!!俺は部屋に戻る!!」
ルークはテーブルを強く叩き風のような速さで食堂を出て行った。
それを見たガイは慌ててルークを追いかけようとするが、
一度とまりユーリに頭を下げた。
「お、おいルーク…!!!はぁ…すまないな……気を悪くしないでくれ
って言うのは無理か…本当すまない。」
「俺も遊びすぎたな、悪かった。」
「でもルークってホント子供だよね」
ずっと黙ってみていたリリーが呆れたように会話に参加した。
その言葉に言い返す言葉などガイの中にはなく、
苦笑いだけをすると二人に手を振ってルークの後を追いかけた。
「さてと…あと少しで終わりか…」
「そのあとちゃんと医務室いってくださいね。」
「へいへい。」
洗いものが終わりリリーに言われた通り医務室へと足を向けるユーリの姿があった。
本当ならばこのくらいの傷医務室に行く必要性などないのだが、
あまりにもリリーに言われるので仕方なく医務室へと向かっている。
医務室の扉が見えたが、医務室の手前でユーリの足は自然と止まった。
何故なら医務室の手前でルークがえらそうに壁にもたれかかっていたからだ。
一度は止まったユーリの足だったが、ルークのことは気にしないことにして
医務室へとまた足を動かした…だが、
「おい…。」
ルークに呼び止められ再び足を止めることになった。
ユーリは少しめんどくさそうな表情をしてルークの方に顔を向ける。
「何だよ…何か用か?それともさっきの続きか…?ってうぉっ!!!!」
ユーリが言い終わる前にルークはユーリの顔面に拳を突き刺した。
顔面にぶつかるかと思いよけようとしたが、顔面直前で拳は止まった。
「おい…何のつもりだ?喧嘩なら買うぜ?」
「……………。」
「ん?何だって?」
普段大きい声のルークだったが、今は何を言ってるか全く聞こえないほど小さい声だ。
しかも何故か顔が真っ赤になっている。
「だからっ…手出せって!!!」
「え?あぁ…」
ルークに言われた通りに手を出すと、拳が開き何かがユーリの掌へと落ちた。
「何だこれ…?」
「…お前しらねぇの?チーグルって言ってライマ国の聖獣…」
「いや、柄のこと言ってるんじゃねぇ。」
そもそも他国であるユーリがライマ国の聖獣何てしってるはずがなかった。
エステルあたりなら知っているかもしれないがユーリは自分の国以外には興味がない。
「………絆創膏。」
ユーリの掌に落ちてきたのはチーグルといったライマ国の聖獣(かなりデフォルメされている)
の柄が入った絆創膏だった。
何故ルークが絆創膏を渡してきたのか未だ理解ができていないユーリはルークの顔を見る、
ルークの顔は相変わらず真っ赤だ…風邪でも引いているのではと思えるくらい。
「お前…さっき…怪我…」
「あっ…」
ユーリはさきほどの食堂での出来事を思い出した。
あまりにも可愛らしい絆創膏は多分ルークの持ち物ではない、
むしろルークの私物に絆創膏があるとは想像できなかった。
「これ…お前が?」
「ち、ちげぇよ!!!さっきのことティアに話したら、ティアが渡せってうるせぇから!!!
べ、別に俺からじゃねぇからな!!ティアからだからな!!そこんとこ勘違いするんじゃねぇぞ!!!」
「ほー…ティアからねぇ…ティアから貰ったの間違いじゃないか?」
「そ、そう…俺が前にティアから貰ったやつ…じゃねぇ!!!だから勘違いするなって言ってるだろうが!!
それだけだからな!!!お、俺昼寝するから…邪魔するんじゃねぇぞ!!!」
長い髪を靡かせてルークは自室へと戻る…いや逃げるように飛び込んで行った。
中からガイとティアの驚く声が聞こえる。
ユーリは絆創膏を見つめ少し微笑んだ。
「普通医務室の前で渡すか?もっと渡す場所あるだろうが…」
たまたまルーク達の部屋が医務室の前だったからだろうか?
いや、それでももっと渡せる場所はあったはずだが、これが彼なりの渡し方なのだろう…
「本当…おもしれぇやつだ…」
ユーリはそのまま医務室に入っていった。
そして、消毒だけしてもらい貰ったばかりの絆創膏を右手に貼り付けた。
「うわぁ…すごく可愛い絆創膏ですね。それどうしたんです?」
医務室から戻る途中クエストから戻ってきたエステル達に出くわした。
流石女の子といったところ…
エステルはユーリの右手に貼ってあった絆創膏に目を輝かせている。
「あぁ…これか?これはとある貴族のお坊ちゃんから直々に貰ったやつでなぁ…」
「だから俺からじゃねぇって言ってるだろうが!!!」
エステルに冗談交じりで絆創膏のことについて話していると
ユーリの後からルークの叫び声が聞こえた。
振り向いてみるとルークが顔を真っ赤にさせて立っている。
クエストカウンターを見るとガイがアンジュと話しているのでクエストを受けにきたのだろう。
「お前昼寝するんじゃなかったのか?」
「う、うっせぇー!!そんなことはどうでもいいんだよ!!
だからそれは俺からじゃなくて…!!!」
「俺一言でもこいつの名前言ったか?」
エステルに問いかけると素直に首を横に振った。
それを見たルークは少し驚いた顔をしたが、
またすぐに真っ赤になってユーリを睨みつけた。
「うっせーうっせー!!!お前なんてもうしらねぇ!!!
おい、ガイ…さっさとクエストいくぞ!!!」
大股でガイのところへと向かおうとしたが、
ルークの身体は素直に前へと進めなかった…
「ほー…クエスト行くのか…じゃぁ、俺も混ぜてもらおうかな」
「な、何でお前が!?」
「そんな気分なんだよ。」
「何だよそれ!!!」
ルークはユーリに大声でいろいろ文句を言っているが、
その間にアンジュにクエストを受理されてしまい結局一緒に行くことになってしまった。
「ったく…何でこんなやつと…」
「まぁまぁ、人数多い方が楽だろ?」
ガイに宥められるが納得していない様子のルークは頬を膨らませている。
そんな姿を見たユーリは気がつかれないように小さく笑った。
「あ、そうだ…ティアにさっきのお礼言っておいてくれよ。「ありがとうな」って」
「………気が向いたら言っておく。」
顔を真っ赤にさせユーリからそっぽを向く。
どうしたらこう毎回毎回顔を真っ赤にできるのか不思議で仕方がない。
「ん?ティアにって…何かあったのか?」
「ん?これは俺とお坊ちゃんの二人だけのひ・み・つ」
「きしょくわりぃこと言ってるんじゃねぇよ!!!ほら、さっさと行くぞ!!」
「へいへい。」
ユーリは軽い返事をしながらも楽しそうな表情でルークの後を追いかけた。
俺はこの時まだ気がついていなかった。
この貴族様にどんどんはまっていくことを…
いろんな表情をみせるこの貴族様に。
出会ったころの悪い印象なんてこのころからどんどん抜けていく。
数カ月後俺らはラザリスを助ける。
そして、ずっと胸の奥に閉まっていたアイツへの思いを伝えた。
身分の違い、環境の違いから伝えるつもりなんて無かった思いを…
最初はあいつの人生を狂わせるだけだと思っていた。
貴族として生活している方が何不住なく暮らしていける。
俺と居たってどんな暮らしが待っているか分からない…
けど、アイツは俺を選んだ。
選んでくれたからには俺もアイツに贈ろう。
絆創膏ではない…俺の気持ちを…
俺は依頼の途中で立ち寄った村で若い男女のカップルに目が止まった。
「あ、よしりんったら口にクリームついてるよぉ~。私が取ってあげる。」
「え?ミッチーったら優しいなぁ~。ありがと、ちゅっ♪」
付き合い始めたばかりのカップルなのだろうか、それとも新婚夫婦なのだろうか…
どちらにせよとても幸せそうなカップルだ。
その姿を横目でみながら俺より前を行く黒い狼…もとい俺の恋人に目をやる。
付き合い始めて日は浅いけど俺達だってあのカップルに負けないくらい…………
やばい、俺達付き合い始めてからあんな恋人の行為したことねぇ…。
二人で出かけたり…その恋人ならすることいろいろと…
「ど、どうしよう…」
何故かあのカップルに負けた気がしてムカついてきた…
ぺ、ペアルックのTシャツとかなんか羨ましくないんだからなっ!!!
俺だって…俺だってやれればでき……る……と思う…。
「おーい、雨降ってきたから走って戻るぞ…ルーク…聞いてるのかルーク?」
その時ユーリの言葉は届かず俺の身体は雨に打たれ少し冷たくなってしまった。
恋愛×相談×一騎討
「ってなわけで…どうしよう…。まず何をしたらいいんだろう…」
「難しい話だよな…」
「恋人って何をするんだ?」
「いや、ルーク…僕達に相談してくれるのは嬉しいけど…
相談相手間違えてないかい?」
ルークは目を何度も瞬きをさせ自分の周りにいる友人達を見まわした。
ここはバンエルティア号の食堂。
今ここに居るのは先ほどまで剣の手合わせを一緒にしていたメンバーである
クレス、ロイドそしてディセンダーのアレンである。
確かにクレスの言うようにあまり恋愛相談には適していないメンバーばかりだ。
ロイドは攻略王のくせに相手が自分のことを思っていても気がつかないタイプだし、
ディセンダーアレンにいたっては生まれて1年もたっていない…唯一会話ができるクレスだが…………
ミントとの関係を見ればあまり恋愛相談相手としてはお勧めできる相手ではない。
「大丈夫だって。俺達でお前の悩みちゃんと解決してやるからな!!」
「ろ、ロイド~…」
嬉しさのあまりルークはロイドに飛びつき友情を確かめ合うが、
ユーリがこの場に居たら「浮気だ」と言ってロイドが大変な目にあっていたかもしれない…。
「よーし、早速作戦会議だ!!」
「「おー」」
ロイドの掛け声にルークとアレンは利き腕を大きくあげた。
そんな様子にクレスはため息しかでない確かにクレスもルークの悩みを解決してあげたい…
前のルークならば自分達にこんな相談などけっしてしてこなかったからなおさらである。
けど、しかし…
いろいろな不安を抱えながらもクレスも作戦会議(?)に参加することにした。
作戦その1~デートに誘う~ロイド案
ルークの話を聞いていると付き合い始めてから二人っきりで出かけたことがないらしい。
依頼などでよく一緒にいる二人だったが、依頼の時はアレンを含めた3人または4人で出かけるので
ロイドとクレスもよく考えれば二人ででかけているところを見たことがなかった。
むしろ二人きりになれないのはどっかの甘えたで、寂しがり屋で、
空気なんて読むスキルを持たない世界を救った英雄のおかげ(?)だが…
「いいか?さりげなくだぞ…さりげなーく二人で出かけようっていうんだぞ」
「お、おぅ」
「ルーク、がんば!!」
「いや、恋人同士なんだからさりげなくしなくても…」
ボケ:ツッコミ=3:1な為クレスの必死のツッコミも3人には届いていない。
ユーリ相手ならツッコミになるルークだったが、他のメンバーといるとどうしてもボケ側に回ってしまう。
この時点ですでにクレスは部屋に戻りたい気持ちでいっぱいだが、
友人を見捨てることなどできずにこのスキだらけの作戦に付き合っている。
このルークの恋愛相談が終わるころに彼の胃に穴があいていないかがとても心配だ。
そんなクレスの様子に気がついていないルークはバンエルティア号内にいるユーリを探していると
丁度廊下で発見をしたのでルーク以外のメンバーは物陰に隠れ様子を見る。
ユーリにおそるおそる近づいていくルークだったが、めちゃくちゃ怪しい近づき方である…
緊張のあまり右手と右足、左手と左足と同時に出ている…
もちろんユーリはすぐにルークの存在に気がついたが、
そのルークの行動に少し驚きの表情を見せながらも優しそうな表情でルークに声をかけてきた。
「よぅ、ルーク。なーに楽しそうな顔してるんだ?」
「お、俺のどこが…楽しそうに見えるんだよ…」
「真っ赤になってる顔とか?」
ルークは慌てて自分の顔を両手で半分隠した。
物陰から様子を見ている3人からもルークの顔が赤いのがわかってしまう。
どれだけ顔に出やすい人なんですか。
顔を半分隠していたルークは気を取り直してユーリの目を見てデートに誘おうと口を動かそうとするが
まるで自分の口ではないかのように動かない…
「あ、あの…あのさ…ユーリ…えっと…その…」
「ん?どうした?」
ますます顔を赤くしながら口を動かすルークの姿が面白いのか
ユーリはとても楽しそうな表情を浮かべながらルークの言葉を待っている。
物陰から見ている3人は小さい声で「がんばれ」と応援している。
やっとの思いでユーリを誘う言葉が出たが……
「い、今から…お、俺とでーt…「おーい、ユーリ。」
ルークの声はユーリの後から来たフレンによって阻まれてしまった。
「ん?フレンどうした?」
「エステリーゼ様が手伝ってほしいことがあるって部屋で呼んでいるよ。」
「あぁ…わかった。悪いなルーク…またあとで話聞くからな。」
そう言うとユーリはルークの頭を優しく撫でるとエステルの待つ部屋へと走っていった。
残されたルークは唖然としている…多分ユーリにはルークの言葉は届いていない、
もし届いていたならきっとルークを優先しているからだ。
「ルーク様こんにちは…あ、あのどうかされましたか?」
「ふ、フレンなんて…」
「え?」
「フレンなんて大っきらいだあああああああああああああああ!!!!」
「えぇ!!!???ちょ、ルーク様!!!???」
ルークは泣きながらその場を走って逃げ、
大っきらいと言われてしまったフレンはその場から動くことができないでいた。
物陰から見ていた3人は深いため息しか出すことができなかった…
作戦その2~手を繋ぐ~クレス案
先ほどのルークを見ているとデートを誘うのも高レベルと感じたので
少しレベルを下げてみることにした。
何だかんだと言いながらクレスもいろいろと案を出してくれているようだ。
だが…
「よし、さっきみたいに行ってくる」
「いやいや、いきなり手を繋いでってあやしくないかい?」
「おう、がんばってこい!!」
「ふぁいとー」
「ちょ…君達人の話聞いてくれないか?」
クレスがどれだけまともな案を出しても行動する人間にいろいろと問題がある。
やはりミントあたりでも救援を呼ぶべきだったといまさらながら後悔しているがいまさら遅い。
本日2度目のユーリ探しをしていると、
丁度エステルの部屋から出てきているところを発見した。
ルークは意を決してユーリに向かう…
その姿は先ほどとは難易度が下がった為かぎこちなさも多少は抜けているが
普段の彼を知っている者からすれば怪しさは全く抜けていない。
しかし、いきなり廊下で手を繋いでくれとは…
まるでアイドルに出くわして嬉しさのあまり握手を求める女子高生ファンに見えてしまう。
変った動きをしながら自分に近づいてくるルークが視界に入ったユーリは
思わず吹き出して笑ってしまった。
ルークがすぐ顔や行動に出てしまうことは知っていたユーリだが、
あまりのルークの可愛らしい行動に笑いが止まらないでいる。
「ゆ、ユーリ何笑っているんだい?」
「いや…だって…あいつ…っく…やべぇ…笑い死にそう…っぷ…」
「ギルドに戻ってきたルークはとても素直で可愛らしいです。」
「そのルーク様にさっき大っきらいって言われた僕は一体…」
ルークの行動を見てエステルはほほえましく笑い、
フレンは先ほどのダメージがまだ残っているのかあたりに火の玉を飛ばしながら落ち込んでいる。
なんとか笑いを沈めたユーリは普段の2倍以上かかって自分の目の前にまでたどり着いた恋人の頭をまた優しく撫でる。
付き合い始めてからこの頭をなでる行動がとても多くなった気がする…
「よっ、さっきは悪かったな話の途中で…で?俺に用があるんだろ?何だ?」
「さ、さっきとは…違う話…で…」
「ん?さっきの話はもういいのか?」
優しい表情をしてルークの話を聞くユーリの姿にエステルは少し笑ってしまった。
彼との付き合いは長いがこんな表情を見せるユーリを見るのは初めてだったからだ。
ユーリと付き合うようになってルークはとても変った、
けどそれと同じくらいユーリもいろいろと変ったのだ…周りは気がついていないかもしれないけど
付き合いの長い友人達だけわかる変化…言葉には出せない変化だが確実にユーリが今まで持っていなかったものが芽生えたのだ。
だからエステルはルークにとても感謝している…
ユーリではないがエステルも必死になってユーリに何かを伝えたいと努力するルークの姿を見て口元が少し緩んでしまう。
「あ、あのさ…て…」
「て?てって何だ?」
「その…あの…えっと…手…っ!!!!」
「手って…あ、ユーリ右腕のところ怪我しているよ。」
「ん?どこだ?」
フレンに指摘され右腕を見ると少しかすり傷ができていた。
「あー…さっきから右腕が少し変な感じすると思ってたら…怪我してたのか…気がつかなかったな」
「え?あ…えぇ???」
思わぬ方向に話が進んでしまいルークはどうすればいいか迷い焦っている。
物陰に隠れていた3人は作戦失敗と判断し戻ってこいと小声で呼びかけているがルークには聞こえていない…。
「あ、すぐ手当しますね。」
エステルが回復魔法でユーリの怪我をすぐに治してすと笑顔でルークに話しかけてた。
「私達も気がついていませんでした。流石ルークです」
「あぁ…俺も気がついてなかった。ありがとうな。」
「へっ?え?いや…そのちがっ…あ…う、うん…」
好きな人にお礼を言われ嬉しいはずなのにルークの心の中はますます重くなる。
本当は違うことを伝えたかったのに伝えれず、
ユーリの顔をまともに見ることが今はできないでいた。
「あ、あのルーク様…さきほど僕のこと嫌いって言われた原因ですが…」
「お前…ルークに何かしたのか?いくらお前でも…」
「別に何もしていないよ!!ですよね…ルーク様…」
隣から殺気を出している友人の誤解を解いて貰おうとルークに話しかけたが、
ルークは鋭い目つきでフレンを睨みつけた。
その瞳には少し涙を浮かべている。
「ふ、フレンの…お邪魔虫いいいいいいいいいいいいいい!!!!」
「えぇ!!??ちょ、ルークさまああああああああああああああああ!!!!???」
それだけを言うとルークはまたその場から逃げだした。
物陰に隠れていた3人は慌てて姿を現してルークの後を追いかける。
「あ、ルークそっちは壁…!!!!」
クレスの言葉もむなしくルークは壁に激突してしまい、
痛そうに顔を抑えながらその場を離れていった。
「ルーク~…俺今ビショップだから回復できるから待てってば」
「あぁ~…また作戦失敗か…」
クレス、ロイドそしてアレンも急いでルークの後を追いかけてその場を去って行った。
残された3人は頭の上に「?」マークしか浮かんでいない。
「作戦って…何のことです?」
「さぁな…?何してるんだあいつら…っておーい、フレーン生きてるかぁ?」
フレンにはユーリの言葉は届いていないようで、またその場で固まって動けないでいた。
作戦その3~あだ名で呼ぶ~アレン案
「え?あだ名で呼ぶってどこが恋人の行為なんだい?」
友人同士であだ名で呼ぶ人だってこの世には多い為クレスにとっては全然恋人っぽいことではないと思っていたが
他のメンバー達はどうやら違っているようだ。
「た、確かに…愛称とかで呼ぶって恋人って感じだよな」
「あぁ…俺が今日見かけた馬鹿っぷるもあだ名で呼び合ってたし」
「でしょでしょ♪」
「そ、そういうものなのかな…?うん…言われてみれば僕もそんな気がしてきたよ」
このメンバーと長いこと居ると唯一常識人であるクレスの神経も麻痺してしまうのか
だんだん感覚が他のメンバーと同じようになってきた。
クレスさん戻ってきてください。ボケばっかりだとそれはそれで苦痛なんです。
「でもあだ名って何にすればいいんだ?」
ロイドに言われルークとクレスが頭を悩ませているとアレンが元気よく手を挙げた。
「はいはーい。ユーミンとかは?」
「「「それはダメだろ」」」
それだと某芸能人になるし、むしろ原型が「ユー」しか残っていないため
速攻で却下されました。
アレンは結構自信があったのか却下され少しふてくされた顔を見せる。
いろいろと無い知恵を出し合った結果「ユーリン」と呼んでみることになった。
本人の居ないところでむしろ無許可であだ名を決めるのもどうかと思いますが…。
作戦を始めようとした時、クレスが隣に居たルークの異変に気がついた。
「ルーク…顔赤いけど大丈夫かい?」
「え?あ…まだ緊張してるのかもな…大丈夫、大丈夫。」
笑顔でクレスを心配かけないように笑ったが、
実は少し先ほどから身体が熱かった…緊張して顔が赤くなるものではない。
けど、自分の我儘で付き合ってもらっているのだから自分のせいで終わらせるわけにはいかなかった。
早速本日3度目のユーリ探しを始めたルークだったが、
意外にもユーリはすぐに見つかった。
見つかった場所は自分達が作戦会議をしていたルークが使っている部屋、
正式にはルーク、ユーリ、フレン、アレン達が使っている部屋のすぐそばで見つけた。
もともとはルークとユーリは別の部屋だったが、
ライマ国のメンバーがギルドを脱退し
ルークだけが戻ってきた時に部屋割りを少し変えたので今はこの部屋割りだ。
「お、部屋に戻ってきてたのか…お前今日変だけど…大丈夫か?」
「あぁ…大丈夫…だよ…ゆ、ゆ…ユーリ…じゃなくて…えっとその…ゆーり………んんっ…」
ユーリンと言えたとかと思えばルークは目の前に居たユーリにもたれるように倒れた。
「え?あ、おい!!!どこが大丈夫なんだ!!しっかりしろっ!!!」
「ふぇ~…あ、熱い…もう、だめ…」
部屋に居たクレス、ロイドそしてアレンは慌てて部屋の外に飛び出してルークの様子を確かめた。
「さっきから顔が赤いと思えば…熱があるじゃないか…」
「えぇ…!?熱!?えっと…じゃぁ…タイダルうぇーb「うわぁっ!!!ちょっとそれはまったああああああ」
水属性の大魔法を無詠唱で唱えようとしていたアレンの口を
間一髪ロイドが押さえて詠唱を止めた。
こんなところを水浸しにしたらどんな理由であれアンジュからきついお仕置きを頂くのが目に見えていたからだ。
「と、とにかく部屋に運ぶぞ…って、お前ら…今日のこいつの行動しっかり説明してもらうからな…」
「「「は、はい…」」」
ユーリは倒れこんだルークを抱きかかえると部屋のベッドまでルークを運んだ。
重い瞳をあけると目の前に広がっているのは見覚えのある天井。
天井には毎日のように見るシミが点々とある…そうここはルークが使っている部屋と判断できる。
「あれ…?ここは…?」
「お、気がついたのか?」
愛おしい声がしたのでそちらに顔を向けると、
ユーリが読みかけていた本を閉じてベッドの脇にまで近寄ってきた。
「ゆ、ユーリ…あれ?俺…どうしたんだ?」
ベッドの脇に座ったユーリが優しくルークの頭をなでる。
普段ユーリとそれほど体温は変わらないはずなのにユーリの手がとても冷たくて気持ちがいい…。
「いきなり倒れたんだよ…普段つかわねぇ頭使うから…」
「…普段頭使わないと熱出るのか?あ、俺知ってる知恵熱って…やつ?」
「っふ…お前ほんと面白いな…嘘に決まってるだろ。だいたい知恵熱は子供だけが発熱するんだよ…
お前のはただの風邪。今日午前中に雨に打たれてちゃんと身体拭かなかったからだろ。」
「………………ちゃんと拭いた………多分。」
確かにいろいろと考え事をしていてちゃんと濡れた身体を拭かなかった気がした。
まさかの事態にルークは恥ずかしさのあまり布団を頭までかぶしたが、
ユーリによってはぎとられてしまった。
「お前、俺のことユーリンって呼ぶんじゃなかったのか?」
「あ、忘れてた…って何でお前知ってるんだ?」
「アレン達から全部聞いた。まぁそんなあだ名言ったらお前をめちゃくちゃにいじめてたかもな。」
黒い頬笑みでルークに笑いかけると
熱からくる寒さとは別の寒さがルークの身体を包み込んだ。
言わなくて正解だったようだ。
「たっく…くだらないことで悩むなよ…」
「く、くだらないことって言うな…これでも必死で…」
「へいへい。そりゃどーもすみませんでした。」
「んっ…」
ルークはユーリに対して言いたいことが山ほどあったがそれは言えなかった。
何故ならルークの口はユーリによってふさがれしまったのだから…
「キスだって…恋人のする行動じゃないか?」
「うっ…そうだけど…」
そういえば自分は何故悩んでいたのだろうか…
ルークの中で悩んでいた種はいつしかだんだんとどうでもよくなってきてしまった。
「なぁ…ユーリ…」
「ん?何だ?」
「もっと…キスして…」
「あぁ…いいぜ…」
甘えるようにキスをねだるとユーリは優しくルークにキスを落とす。
「これで満足か?」
「全然。もっと…」
「おいおい…仕方ねぇなぁ…」
しかし、1度では物足りないのか何度も何度も甘えるようにねだる。
もう何回キスしたかわからなくなってきてしまい、
ついにはユーリの方が顔を赤く染めてしまう。
「お前…病人のくせに…人を煽るんじゃねぇよ。」
「あおる…?俺煽ってなんか…んっ…」
さっきまでしてた軽いキスとは違うとても長いキス…
こんな長いキスなんてしたことがないルークは息継ぎの仕方が分からずだんだんと苦しくなってくる。
離れろとユーリの背中を叩くが一向に離れる気配がない。
やっと離したと思えば何故かユーリはルークに覆いかぶさるようにベッドの上に乗っかってきた。
「っは…く、苦しかった…え?ユーリ…何するんだ?」
「いつまでも子供向けの行為に満足できないやつには…少し大人の行為を教えてやろうかと」
「え?お、大人…????」
ユーリはルークが羽織っていた布団を少しどかせると一枚しかきていない黒色のシャツに手を当てる。
触られたところがなんだかとても冷たくて変な感触がする…
「思春期超えた男ならわかるだろ…男女の恋人がする最後の行為…」
少し考えていたルークだったが、一つ思い当たる行為があったのか顔を真っ赤にさせた。
「え?えぇ!?馬鹿…!!あれは異性がするもので俺達同性っ…!!!」
「何だ知らないのか?同性でもできるんだぞ」
「えぇ!!!???」
おめでとう。ルークは一歩大人にレベルアップをした。
嬉しい一歩なのか、悲しい一歩なのかはわからないが…
「ってなわけで…今日からお前も大人の仲間入りだな…煽ったお前が悪いんだぜ」
「ちょ、ユーリ…タイムタイム!!!俺まだそんな心の準備が…ユーリってばっ!!!」
ルークの首にキスを落としてくるユーリを必死に止めようとするが、
身体が思うように動かない…熱のせいなのだろうか、または自分の身体が本当は望んでいるからなのか…
今は必至にユーリを止めようとしていた時ノックの音が聞こえ部屋の扉が開いた。
「ユーリ、これ風邪薬…医務室からもらって………え?」
入ってきたのは同室メンバーであるフレンだった。
フレンは二人がベッドの上で重なっている姿を見てどのような行為が行われていようとしたか
すぐにわかったため顔を真っ赤にさせた…。
「フレン…お前…」
邪魔をされ親友のフレンを睨みつけ、
ユーリの下では見られた恥ずかしさのあまり風邪から来る熱より赤い顔をしたルークが
口を金魚のように動かして固まっている。
「え?あ…いや、その…ご、ごめん…あ、僕よ、用事を思い出したから失礼するよ。」
風邪薬を部屋に投げ入れフレンは一目散にその場から逃げたが、
フレンの声で我に戻ったルークは自分の上にいるユーリを睨みつけた。
「このっ…エローウェル!!!!!!!!!!!!!」
「っぅあ!!!いてぇ!!!!!」
その後クエストカウンターには右側に平手打ちをされたあとを付けたユーリが
フレンとの一騎打ち依頼を申し込む姿が目撃された。
「あ、よしりんったら口にクリームついてるよぉ~。私が取ってあげる。」
「え?ミッチーったら優しいなぁ~。ありがと、ちゅっ♪」
付き合い始めたばかりのカップルなのだろうか、それとも新婚夫婦なのだろうか…
どちらにせよとても幸せそうなカップルだ。
その姿を横目でみながら俺より前を行く黒い狼…もとい俺の恋人に目をやる。
付き合い始めて日は浅いけど俺達だってあのカップルに負けないくらい…………
やばい、俺達付き合い始めてからあんな恋人の行為したことねぇ…。
二人で出かけたり…その恋人ならすることいろいろと…
「ど、どうしよう…」
何故かあのカップルに負けた気がしてムカついてきた…
ぺ、ペアルックのTシャツとかなんか羨ましくないんだからなっ!!!
俺だって…俺だってやれればでき……る……と思う…。
「おーい、雨降ってきたから走って戻るぞ…ルーク…聞いてるのかルーク?」
その時ユーリの言葉は届かず俺の身体は雨に打たれ少し冷たくなってしまった。
恋愛×相談×一騎討
「ってなわけで…どうしよう…。まず何をしたらいいんだろう…」
「難しい話だよな…」
「恋人って何をするんだ?」
「いや、ルーク…僕達に相談してくれるのは嬉しいけど…
相談相手間違えてないかい?」
ルークは目を何度も瞬きをさせ自分の周りにいる友人達を見まわした。
ここはバンエルティア号の食堂。
今ここに居るのは先ほどまで剣の手合わせを一緒にしていたメンバーである
クレス、ロイドそしてディセンダーのアレンである。
確かにクレスの言うようにあまり恋愛相談には適していないメンバーばかりだ。
ロイドは攻略王のくせに相手が自分のことを思っていても気がつかないタイプだし、
ディセンダーアレンにいたっては生まれて1年もたっていない…唯一会話ができるクレスだが…………
ミントとの関係を見ればあまり恋愛相談相手としてはお勧めできる相手ではない。
「大丈夫だって。俺達でお前の悩みちゃんと解決してやるからな!!」
「ろ、ロイド~…」
嬉しさのあまりルークはロイドに飛びつき友情を確かめ合うが、
ユーリがこの場に居たら「浮気だ」と言ってロイドが大変な目にあっていたかもしれない…。
「よーし、早速作戦会議だ!!」
「「おー」」
ロイドの掛け声にルークとアレンは利き腕を大きくあげた。
そんな様子にクレスはため息しかでない確かにクレスもルークの悩みを解決してあげたい…
前のルークならば自分達にこんな相談などけっしてしてこなかったからなおさらである。
けど、しかし…
いろいろな不安を抱えながらもクレスも作戦会議(?)に参加することにした。
作戦その1~デートに誘う~ロイド案
ルークの話を聞いていると付き合い始めてから二人っきりで出かけたことがないらしい。
依頼などでよく一緒にいる二人だったが、依頼の時はアレンを含めた3人または4人で出かけるので
ロイドとクレスもよく考えれば二人ででかけているところを見たことがなかった。
むしろ二人きりになれないのはどっかの甘えたで、寂しがり屋で、
空気なんて読むスキルを持たない世界を救った英雄のおかげ(?)だが…
「いいか?さりげなくだぞ…さりげなーく二人で出かけようっていうんだぞ」
「お、おぅ」
「ルーク、がんば!!」
「いや、恋人同士なんだからさりげなくしなくても…」
ボケ:ツッコミ=3:1な為クレスの必死のツッコミも3人には届いていない。
ユーリ相手ならツッコミになるルークだったが、他のメンバーといるとどうしてもボケ側に回ってしまう。
この時点ですでにクレスは部屋に戻りたい気持ちでいっぱいだが、
友人を見捨てることなどできずにこのスキだらけの作戦に付き合っている。
このルークの恋愛相談が終わるころに彼の胃に穴があいていないかがとても心配だ。
そんなクレスの様子に気がついていないルークはバンエルティア号内にいるユーリを探していると
丁度廊下で発見をしたのでルーク以外のメンバーは物陰に隠れ様子を見る。
ユーリにおそるおそる近づいていくルークだったが、めちゃくちゃ怪しい近づき方である…
緊張のあまり右手と右足、左手と左足と同時に出ている…
もちろんユーリはすぐにルークの存在に気がついたが、
そのルークの行動に少し驚きの表情を見せながらも優しそうな表情でルークに声をかけてきた。
「よぅ、ルーク。なーに楽しそうな顔してるんだ?」
「お、俺のどこが…楽しそうに見えるんだよ…」
「真っ赤になってる顔とか?」
ルークは慌てて自分の顔を両手で半分隠した。
物陰から様子を見ている3人からもルークの顔が赤いのがわかってしまう。
どれだけ顔に出やすい人なんですか。
顔を半分隠していたルークは気を取り直してユーリの目を見てデートに誘おうと口を動かそうとするが
まるで自分の口ではないかのように動かない…
「あ、あの…あのさ…ユーリ…えっと…その…」
「ん?どうした?」
ますます顔を赤くしながら口を動かすルークの姿が面白いのか
ユーリはとても楽しそうな表情を浮かべながらルークの言葉を待っている。
物陰から見ている3人は小さい声で「がんばれ」と応援している。
やっとの思いでユーリを誘う言葉が出たが……
「い、今から…お、俺とでーt…「おーい、ユーリ。」
ルークの声はユーリの後から来たフレンによって阻まれてしまった。
「ん?フレンどうした?」
「エステリーゼ様が手伝ってほしいことがあるって部屋で呼んでいるよ。」
「あぁ…わかった。悪いなルーク…またあとで話聞くからな。」
そう言うとユーリはルークの頭を優しく撫でるとエステルの待つ部屋へと走っていった。
残されたルークは唖然としている…多分ユーリにはルークの言葉は届いていない、
もし届いていたならきっとルークを優先しているからだ。
「ルーク様こんにちは…あ、あのどうかされましたか?」
「ふ、フレンなんて…」
「え?」
「フレンなんて大っきらいだあああああああああああああああ!!!!」
「えぇ!!!???ちょ、ルーク様!!!???」
ルークは泣きながらその場を走って逃げ、
大っきらいと言われてしまったフレンはその場から動くことができないでいた。
物陰から見ていた3人は深いため息しか出すことができなかった…
作戦その2~手を繋ぐ~クレス案
先ほどのルークを見ているとデートを誘うのも高レベルと感じたので
少しレベルを下げてみることにした。
何だかんだと言いながらクレスもいろいろと案を出してくれているようだ。
だが…
「よし、さっきみたいに行ってくる」
「いやいや、いきなり手を繋いでってあやしくないかい?」
「おう、がんばってこい!!」
「ふぁいとー」
「ちょ…君達人の話聞いてくれないか?」
クレスがどれだけまともな案を出しても行動する人間にいろいろと問題がある。
やはりミントあたりでも救援を呼ぶべきだったといまさらながら後悔しているがいまさら遅い。
本日2度目のユーリ探しをしていると、
丁度エステルの部屋から出てきているところを発見した。
ルークは意を決してユーリに向かう…
その姿は先ほどとは難易度が下がった為かぎこちなさも多少は抜けているが
普段の彼を知っている者からすれば怪しさは全く抜けていない。
しかし、いきなり廊下で手を繋いでくれとは…
まるでアイドルに出くわして嬉しさのあまり握手を求める女子高生ファンに見えてしまう。
変った動きをしながら自分に近づいてくるルークが視界に入ったユーリは
思わず吹き出して笑ってしまった。
ルークがすぐ顔や行動に出てしまうことは知っていたユーリだが、
あまりのルークの可愛らしい行動に笑いが止まらないでいる。
「ゆ、ユーリ何笑っているんだい?」
「いや…だって…あいつ…っく…やべぇ…笑い死にそう…っぷ…」
「ギルドに戻ってきたルークはとても素直で可愛らしいです。」
「そのルーク様にさっき大っきらいって言われた僕は一体…」
ルークの行動を見てエステルはほほえましく笑い、
フレンは先ほどのダメージがまだ残っているのかあたりに火の玉を飛ばしながら落ち込んでいる。
なんとか笑いを沈めたユーリは普段の2倍以上かかって自分の目の前にまでたどり着いた恋人の頭をまた優しく撫でる。
付き合い始めてからこの頭をなでる行動がとても多くなった気がする…
「よっ、さっきは悪かったな話の途中で…で?俺に用があるんだろ?何だ?」
「さ、さっきとは…違う話…で…」
「ん?さっきの話はもういいのか?」
優しい表情をしてルークの話を聞くユーリの姿にエステルは少し笑ってしまった。
彼との付き合いは長いがこんな表情を見せるユーリを見るのは初めてだったからだ。
ユーリと付き合うようになってルークはとても変った、
けどそれと同じくらいユーリもいろいろと変ったのだ…周りは気がついていないかもしれないけど
付き合いの長い友人達だけわかる変化…言葉には出せない変化だが確実にユーリが今まで持っていなかったものが芽生えたのだ。
だからエステルはルークにとても感謝している…
ユーリではないがエステルも必死になってユーリに何かを伝えたいと努力するルークの姿を見て口元が少し緩んでしまう。
「あ、あのさ…て…」
「て?てって何だ?」
「その…あの…えっと…手…っ!!!!」
「手って…あ、ユーリ右腕のところ怪我しているよ。」
「ん?どこだ?」
フレンに指摘され右腕を見ると少しかすり傷ができていた。
「あー…さっきから右腕が少し変な感じすると思ってたら…怪我してたのか…気がつかなかったな」
「え?あ…えぇ???」
思わぬ方向に話が進んでしまいルークはどうすればいいか迷い焦っている。
物陰に隠れていた3人は作戦失敗と判断し戻ってこいと小声で呼びかけているがルークには聞こえていない…。
「あ、すぐ手当しますね。」
エステルが回復魔法でユーリの怪我をすぐに治してすと笑顔でルークに話しかけてた。
「私達も気がついていませんでした。流石ルークです」
「あぁ…俺も気がついてなかった。ありがとうな。」
「へっ?え?いや…そのちがっ…あ…う、うん…」
好きな人にお礼を言われ嬉しいはずなのにルークの心の中はますます重くなる。
本当は違うことを伝えたかったのに伝えれず、
ユーリの顔をまともに見ることが今はできないでいた。
「あ、あのルーク様…さきほど僕のこと嫌いって言われた原因ですが…」
「お前…ルークに何かしたのか?いくらお前でも…」
「別に何もしていないよ!!ですよね…ルーク様…」
隣から殺気を出している友人の誤解を解いて貰おうとルークに話しかけたが、
ルークは鋭い目つきでフレンを睨みつけた。
その瞳には少し涙を浮かべている。
「ふ、フレンの…お邪魔虫いいいいいいいいいいいいいい!!!!」
「えぇ!!??ちょ、ルークさまああああああああああああああああ!!!!???」
それだけを言うとルークはまたその場から逃げだした。
物陰に隠れていた3人は慌てて姿を現してルークの後を追いかける。
「あ、ルークそっちは壁…!!!!」
クレスの言葉もむなしくルークは壁に激突してしまい、
痛そうに顔を抑えながらその場を離れていった。
「ルーク~…俺今ビショップだから回復できるから待てってば」
「あぁ~…また作戦失敗か…」
クレス、ロイドそしてアレンも急いでルークの後を追いかけてその場を去って行った。
残された3人は頭の上に「?」マークしか浮かんでいない。
「作戦って…何のことです?」
「さぁな…?何してるんだあいつら…っておーい、フレーン生きてるかぁ?」
フレンにはユーリの言葉は届いていないようで、またその場で固まって動けないでいた。
作戦その3~あだ名で呼ぶ~アレン案
「え?あだ名で呼ぶってどこが恋人の行為なんだい?」
友人同士であだ名で呼ぶ人だってこの世には多い為クレスにとっては全然恋人っぽいことではないと思っていたが
他のメンバー達はどうやら違っているようだ。
「た、確かに…愛称とかで呼ぶって恋人って感じだよな」
「あぁ…俺が今日見かけた馬鹿っぷるもあだ名で呼び合ってたし」
「でしょでしょ♪」
「そ、そういうものなのかな…?うん…言われてみれば僕もそんな気がしてきたよ」
このメンバーと長いこと居ると唯一常識人であるクレスの神経も麻痺してしまうのか
だんだん感覚が他のメンバーと同じようになってきた。
クレスさん戻ってきてください。ボケばっかりだとそれはそれで苦痛なんです。
「でもあだ名って何にすればいいんだ?」
ロイドに言われルークとクレスが頭を悩ませているとアレンが元気よく手を挙げた。
「はいはーい。ユーミンとかは?」
「「「それはダメだろ」」」
それだと某芸能人になるし、むしろ原型が「ユー」しか残っていないため
速攻で却下されました。
アレンは結構自信があったのか却下され少しふてくされた顔を見せる。
いろいろと無い知恵を出し合った結果「ユーリン」と呼んでみることになった。
本人の居ないところでむしろ無許可であだ名を決めるのもどうかと思いますが…。
作戦を始めようとした時、クレスが隣に居たルークの異変に気がついた。
「ルーク…顔赤いけど大丈夫かい?」
「え?あ…まだ緊張してるのかもな…大丈夫、大丈夫。」
笑顔でクレスを心配かけないように笑ったが、
実は少し先ほどから身体が熱かった…緊張して顔が赤くなるものではない。
けど、自分の我儘で付き合ってもらっているのだから自分のせいで終わらせるわけにはいかなかった。
早速本日3度目のユーリ探しを始めたルークだったが、
意外にもユーリはすぐに見つかった。
見つかった場所は自分達が作戦会議をしていたルークが使っている部屋、
正式にはルーク、ユーリ、フレン、アレン達が使っている部屋のすぐそばで見つけた。
もともとはルークとユーリは別の部屋だったが、
ライマ国のメンバーがギルドを脱退し
ルークだけが戻ってきた時に部屋割りを少し変えたので今はこの部屋割りだ。
「お、部屋に戻ってきてたのか…お前今日変だけど…大丈夫か?」
「あぁ…大丈夫…だよ…ゆ、ゆ…ユーリ…じゃなくて…えっとその…ゆーり………んんっ…」
ユーリンと言えたとかと思えばルークは目の前に居たユーリにもたれるように倒れた。
「え?あ、おい!!!どこが大丈夫なんだ!!しっかりしろっ!!!」
「ふぇ~…あ、熱い…もう、だめ…」
部屋に居たクレス、ロイドそしてアレンは慌てて部屋の外に飛び出してルークの様子を確かめた。
「さっきから顔が赤いと思えば…熱があるじゃないか…」
「えぇ…!?熱!?えっと…じゃぁ…タイダルうぇーb「うわぁっ!!!ちょっとそれはまったああああああ」
水属性の大魔法を無詠唱で唱えようとしていたアレンの口を
間一髪ロイドが押さえて詠唱を止めた。
こんなところを水浸しにしたらどんな理由であれアンジュからきついお仕置きを頂くのが目に見えていたからだ。
「と、とにかく部屋に運ぶぞ…って、お前ら…今日のこいつの行動しっかり説明してもらうからな…」
「「「は、はい…」」」
ユーリは倒れこんだルークを抱きかかえると部屋のベッドまでルークを運んだ。
重い瞳をあけると目の前に広がっているのは見覚えのある天井。
天井には毎日のように見るシミが点々とある…そうここはルークが使っている部屋と判断できる。
「あれ…?ここは…?」
「お、気がついたのか?」
愛おしい声がしたのでそちらに顔を向けると、
ユーリが読みかけていた本を閉じてベッドの脇にまで近寄ってきた。
「ゆ、ユーリ…あれ?俺…どうしたんだ?」
ベッドの脇に座ったユーリが優しくルークの頭をなでる。
普段ユーリとそれほど体温は変わらないはずなのにユーリの手がとても冷たくて気持ちがいい…。
「いきなり倒れたんだよ…普段つかわねぇ頭使うから…」
「…普段頭使わないと熱出るのか?あ、俺知ってる知恵熱って…やつ?」
「っふ…お前ほんと面白いな…嘘に決まってるだろ。だいたい知恵熱は子供だけが発熱するんだよ…
お前のはただの風邪。今日午前中に雨に打たれてちゃんと身体拭かなかったからだろ。」
「………………ちゃんと拭いた………多分。」
確かにいろいろと考え事をしていてちゃんと濡れた身体を拭かなかった気がした。
まさかの事態にルークは恥ずかしさのあまり布団を頭までかぶしたが、
ユーリによってはぎとられてしまった。
「お前、俺のことユーリンって呼ぶんじゃなかったのか?」
「あ、忘れてた…って何でお前知ってるんだ?」
「アレン達から全部聞いた。まぁそんなあだ名言ったらお前をめちゃくちゃにいじめてたかもな。」
黒い頬笑みでルークに笑いかけると
熱からくる寒さとは別の寒さがルークの身体を包み込んだ。
言わなくて正解だったようだ。
「たっく…くだらないことで悩むなよ…」
「く、くだらないことって言うな…これでも必死で…」
「へいへい。そりゃどーもすみませんでした。」
「んっ…」
ルークはユーリに対して言いたいことが山ほどあったがそれは言えなかった。
何故ならルークの口はユーリによってふさがれしまったのだから…
「キスだって…恋人のする行動じゃないか?」
「うっ…そうだけど…」
そういえば自分は何故悩んでいたのだろうか…
ルークの中で悩んでいた種はいつしかだんだんとどうでもよくなってきてしまった。
「なぁ…ユーリ…」
「ん?何だ?」
「もっと…キスして…」
「あぁ…いいぜ…」
甘えるようにキスをねだるとユーリは優しくルークにキスを落とす。
「これで満足か?」
「全然。もっと…」
「おいおい…仕方ねぇなぁ…」
しかし、1度では物足りないのか何度も何度も甘えるようにねだる。
もう何回キスしたかわからなくなってきてしまい、
ついにはユーリの方が顔を赤く染めてしまう。
「お前…病人のくせに…人を煽るんじゃねぇよ。」
「あおる…?俺煽ってなんか…んっ…」
さっきまでしてた軽いキスとは違うとても長いキス…
こんな長いキスなんてしたことがないルークは息継ぎの仕方が分からずだんだんと苦しくなってくる。
離れろとユーリの背中を叩くが一向に離れる気配がない。
やっと離したと思えば何故かユーリはルークに覆いかぶさるようにベッドの上に乗っかってきた。
「っは…く、苦しかった…え?ユーリ…何するんだ?」
「いつまでも子供向けの行為に満足できないやつには…少し大人の行為を教えてやろうかと」
「え?お、大人…????」
ユーリはルークが羽織っていた布団を少しどかせると一枚しかきていない黒色のシャツに手を当てる。
触られたところがなんだかとても冷たくて変な感触がする…
「思春期超えた男ならわかるだろ…男女の恋人がする最後の行為…」
少し考えていたルークだったが、一つ思い当たる行為があったのか顔を真っ赤にさせた。
「え?えぇ!?馬鹿…!!あれは異性がするもので俺達同性っ…!!!」
「何だ知らないのか?同性でもできるんだぞ」
「えぇ!!!???」
おめでとう。ルークは一歩大人にレベルアップをした。
嬉しい一歩なのか、悲しい一歩なのかはわからないが…
「ってなわけで…今日からお前も大人の仲間入りだな…煽ったお前が悪いんだぜ」
「ちょ、ユーリ…タイムタイム!!!俺まだそんな心の準備が…ユーリってばっ!!!」
ルークの首にキスを落としてくるユーリを必死に止めようとするが、
身体が思うように動かない…熱のせいなのだろうか、または自分の身体が本当は望んでいるからなのか…
今は必至にユーリを止めようとしていた時ノックの音が聞こえ部屋の扉が開いた。
「ユーリ、これ風邪薬…医務室からもらって………え?」
入ってきたのは同室メンバーであるフレンだった。
フレンは二人がベッドの上で重なっている姿を見てどのような行為が行われていようとしたか
すぐにわかったため顔を真っ赤にさせた…。
「フレン…お前…」
邪魔をされ親友のフレンを睨みつけ、
ユーリの下では見られた恥ずかしさのあまり風邪から来る熱より赤い顔をしたルークが
口を金魚のように動かして固まっている。
「え?あ…いや、その…ご、ごめん…あ、僕よ、用事を思い出したから失礼するよ。」
風邪薬を部屋に投げ入れフレンは一目散にその場から逃げたが、
フレンの声で我に戻ったルークは自分の上にいるユーリを睨みつけた。
「このっ…エローウェル!!!!!!!!!!!!!」
「っぅあ!!!いてぇ!!!!!」
その後クエストカウンターには右側に平手打ちをされたあとを付けたユーリが
フレンとの一騎打ち依頼を申し込む姿が目撃された。
「だあー!!!もう、マジユーリのやつうぜぇ!!!」
怒りにまかせてギルド内にある自室の扉を開けたルークは
その勢いのままベッドへと飛び込んだ。
中にいたガイは毎度のことなので慣れているので
軽く笑いながらルークが寝転ぶベッドへと近づいてきた。
「今度はなんだ?また楽しみに取ってたデザートでも食われたか?」
「そんなんじゃねぇよ!!あー…もう、あいつの顔なんて見たくもねぇ!!!」
「おや、それは丁度よかったですね」
ジェイドがルーク達の部屋に入ってきたが、その顔は何故か笑顔…
この顔のジェイドは毎度よからぬことを考えている時の顔だとルークは知っている。
「な、何が丁度いいんだよ…」
おそるおそるジェイドに聞くと、笑顔でルークの質問に答えた。
「皇帝陛下より帰国命令が先ほどありました。ですので来週このギルドを脱退し
ライマ国へと帰ります。」
「え…?」
嬉しいはずなのに、何故か頭を鈍器で殴られたような気持ちになった…。
罪×素直×告白
明日は本国ライマ国へ帰る日。
ルーク達最後の夜ということもあって、ギルドの食堂で送別会が盛大に開かれた。
ティアとナタリアは仲良くなったエステル達と別れを惜しみ、
アッシュはティトレイなどからの一方的な友情の別れに付き合い、
ガイは今まで女性陣とあまり話していなかったせいか
ここぞとばかりに女性に囲まれ、
アニスは何だかんだ言って仲良くなったちびっこ達と笑い、
ヴァンは大人の付き合いをし、
ジェイドは相変わらずだがどこか寂しそうで…
皆それぞれ思い思いにギルドのメンバー達との最後の交流をしている。
そんな中ルークはただ一人暗い展望室でバンエルティア号から見える夜景を楽しんでいた。
そこへ誰かが展望台に上がってくる音がした。
ガイが心配して探しに来たのかと予想したがルークの予想は外れ、
展望台に上がってきたのはユーリだった。
「よう、お坊ちゃん。こんなところで何してるんだ?
アレンのやつが泣き顔で探しまくってたぜ。」
「もう少しだけ…ここにいたい…」
「…わかった。」
ユーリのことだから何かつっかかってくるかと思ったが、
今日のユーリは変だった…いや、ユーリの様子が変なのは
ルークの帰国が決まってからだ。
鈍感と周りからいつも言われるルークが気がつくのだから相当様子がおかしい。
「隣…いいか?」
「あぁ…」
ルークの隣に静かにユーリが座った。
何か話かけてくるかと思ったが特に何も話かけてはこなかった。
前だったら断りもなく隣に座ってきて口喧嘩をしたはずなのに…
出会ってからこの二人にはなかった沈黙が生まれる。
その沈黙を破ったのはルークの方だった。
「お前は…まだしばらくギルドにいるのか?」
「あぁ…エステルがまだ帰らないって言ってるからな…」
「そっか…」
そしてまた沈黙が生まれる。
自分達はこれほど会話が下手くそだったか?と疑問に思ってしまうくらいの沈黙だった。
次に居心地の悪い沈黙を破ったのはユーリだった。
「国に帰ったら…王位を継ぐのか?」
「さぁな…アッシュと俺どっちが継ぐのかまだ正式に決まってねぇし…
選ばれたら……………継ぐ……………」
「歯切れが悪いな。迷ってるのか?」
「………………………そろそろ…食堂に戻るか。」
ユーリの質問には答えずルークが立ちあがろうとした時、
ルークの腕をユーリが掴んで行くてを阻んだ。
「な、何だよ…」
ユーリの顔を見ると今までみたことのない真剣な表情でルークを見つめていた。
そんなユーリの姿に頬を少し赤く染めた…
ユーリが女性達から人気がある理由がなんとなくわかる。
「なぁ、ルーク…もし迷っているなら………………」
何かを言いかけたがユーリがその言葉を口に出さずに自分の心に押し込め、
それと同時に掴んでいたルークの腕も離した。
「悪い…何でもない…今のは忘れてくれ…」
「な、何だよそれ…最後まで言えよ」
「俺の我儘でお前の人生狂わせるわけにはいかないからな。」
「俺だっていっぱい我儘言ってるんだから言えよ」
ルークが拗ねた表情でユーリを睨みつけると
ユーリは少し困った顔をしながら笑った。
「お前のは本当の我儘じゃねぇよ…ただ人と関わり合いを持つために言ってるだけだ。」
「は?」
そんなこと言われるのは初めてだった。
周りからはいつも「お前は我儘だ」といわれていたのに…
やっぱりユーリの様子は変だ。
いつもならこんなこと言うはずないのに…
「王族って立場を考えて行動するのはいいが…たまには自分の気持ちに素直になれよ…」
そういうとユーリは展望台を降りた。
一人取り残されたルークは何が何だかわからなくなっていた…
「何なんだよ…ユーリの馬鹿…自分の気持ちって…俺は王族なんだから…そんなのできねぇよ…」
まさかギルド最後の夜にこんな悲しい気持ちになるとは思ってもいなかった。
ルーク達がギルドを脱退して数日が過ぎた。
ギルド内は少し寂しい雰囲気を漂っていたが、少しずつ元の空気に戻りつつあった。
約二名を除いては…
「ユーリまたケーキ焦がしたんだって?エステルが心配してたよ」
「アレンこそダンジョンでまた迷子になったんだろ?カノンノが心配してたぞ」
二人で顔を見合わせると同時にため息がでた。
二人が居るのはバンエルティア号の甲板。
風が気持ちよく吹いているが、今の二人にはそんな風も心に開いた傷を開かせる材料でしかなかった。
ルーク達が居なくなってずっと調子が戻らない二人とはユーリとディセンダーのアレンだった。
アレンはルークとまるで本当の兄弟のように仲が良かったから仕方がない。
ユーリも出会えば口喧嘩ばかりしていたが何だかんだで仲は良かった……かもしれない。
「なぁユーリ…ルークが王様になったら会えないのか?」
「王様と一般市民じゃ無理だな…」
「つまんねぇ…」
ずっとルークと一緒に居たせいか最近純粋無垢だったこのディセンダーの口調はだんだんルークに似てきた。
何も知らなかったから学習能力が高いのか…ただたんに影響を受けやすいだけなのかは定かではない。
「なぁ、ユーリ…」
「今度は何だよ…」
「前ユーリが言ってたけど…罪って一度犯すのも二度犯すのもたいして変わらないんだよな?」
「……………確かに」
どことなく死んでいたユーリの瞳が以前のように輝きを取り戻した。
「俺らしくもなかったな…やっぱり人生我儘に行くか。お前も行くか?」
「行く!!!」
二人はニヤリと笑い何か打ち合わせをするために甲板を後にした。
ここはライマ国にある豪華な屋敷の一室。
ルークはこの城に戻って来てから一歩も外へ出してはもらえなかった。
そう、それはギルドに入る前と同じ状況…
戻ればこの生活になると分かっていたが、心のどこかで違う希望を抱いていた。
こんな生活をしていたらギルドにいたころの生活がとても懐かしく思えてくる。
ギルドのメンバーは今頃どうしているのだろうか…
アンジュは相変わらず体重を気にしているのだろうか…
ロックスは相変わらず忙しそうなのだろうか…
アレンは相変わらずギルドの仕事に追われているのだろうか…
ユーリは………
ユーリのことを思い出すとあの日の夜のことを思い出す。
彼は自分に何を伝えたかったのだろうかと…
自分の気持ちに正直に生きたいと思う反面、王位を継ぐ可能性のある者としてそれはどうなのかと…
今までの自分ならば王位などどうでもよかっただろう。
だけど、あのギルドに関わってから少し自分の考えが変われるようになった気がする。
そんなことを考えながらルークの部屋から見える空を見上げていると、
部屋の扉をノックする音が聞こえた。
軽く返事をすると扉が開きそこには一人のメイドが立っていた。
「ルーク様。旦那様がお呼びです…至急来るようにとのことです。」
「あぁ…わかった。」
ついに来たか…とつぶやいた。
今日はアッシュとルークどちらが王位継承者になるか決める日だった。
ヴァンを交えて今日決定される予定だ。
呼ばれればすぐに父親の元へ行ける準備はできていたので、
すぐに自分の部屋を出てメイドの前を通りすぎた。
呼びに来たメイドはルークのすぐ後ろを付いてくる。
分厚い眼鏡をかけていたので顔はよく見えなかったが記憶が確かならば話をしたことがないメイドだ。
ルークが旅に出ている間にメイドもかなり入れ替わっていたので知らない顔がいるのは当たり前だった。
馴染みのメイドが少なくなるのはとても寂しい気分になってしまう…
父親が待つ大広間に着いたルークは扉をノックして部屋に入った。
部屋にはすでにアッシュ、ナタリア、ガイ、ヴァンそして父親が居た。
アッシュのそばには顔なじみではないメイドが一人立っていた。
多分こちらも自分達が旅に出ている間に入ったメイドなのだろう…。
着いてきたメイドに案内されてルークが席につくと父親の口が動いた。
「では…これより王位継承について話を始める。」
「はい。」
「……はい。」
ここでついに正式な王位継承が決まる。
もしルークが第一王位継承者になれなくとも王族して窮屈な生活があるのは変わりはない。
ギルドの居たころのように自由にはなれない…アドリビトムのように…
「ヴァン…この度の旅を通じてこの二人はどう思う?」
「はい。アッシュにはもともと王位継承者として素質や気品など取り揃えておりました。
旅をしてそれが磨かれております。しかし、ルークもなかなかのものです。
最初は王位継承者として失格でしたが、ギルドに入り多くの仲間と関わりを持ってからは変わりました。
アッシュにはない王位継承者としての何かを持っております。
私は二人でこの国を支えて行くべきではないかと…」
ヴァンにほめられたことで少し嬉しく思うルークだったが、
今は心から喜べる気分にはなれなかった…。
アッシュと二人で…そんなこと今の自分に可能なのだろうか…
「アッシュお前は今後どうしていきたい?」
「私は………」
アッシュはスラスラと自分の今後王族としてどうしていきたいかを父親に述べていった。
今のルークに今後のことなんて言える状況ではなかった…。
「ルーク…お前は今後どうしていきたい?」
「お…いや、私は………」
言葉に詰まった。
アッシュと同じように王族としてどうして行きたいかを述べるのが正しい
と頭ではわかっているが…自分の心にはどうしても捨てきれないものがあった。
どうすればいいかわからなくなって来てしまった…
その時どこからか声が聞こえた。
「自分の気持ちに素直になれよ…」
そう、その声の主はここに居るはずのない彼…ユーリの声だ。
ユーリが最後にルークにかけた言葉…
ここに居るはずのないユーリの声…幻聴だろうが無性に彼がそばに居てくれている気がした。
そんな気がするだけでとても心強い。
ルークは父親の目をしっかりとみつめゆっくりと口を開いた。
「私は……王位を継ぐ資格はありません。ですので私は王位継承を辞退します。」
「なっ…!!!」
「まぁ…ルーク…」
一番驚いたのはアッシュとナタリアだった。
ヴァンとガイは予想をしていたのかあまり驚いた表情は見せなかった。
「王族を捨ててどうするつもりだ?」
父親が静かにルークへ聞いた。
「ギルドに…アドリビトムに戻ります。まだ世界の混乱は終わっていません…
王になって民を守ることも大切ですが、もっと身近で守りたい…貴族として育った私だからこそ
できることがあると思うのです。」
「お前があのギルドに戻りたいと思うのは勝手だが…あのギルドの者たちがお前を歓迎するのか?
あまり熱心に仕事をしていなかったようだし、
我儘で傲慢な性格のお前なんて居なくなって安心してる人のが多いのではないのか?」
「そ、それは………」
確かに自分のギルド内での生活は我儘で傲慢なことだらけだった。
もしかしたらルークが居なくなって喜んでいるメンバーがほとんどかもしれない…
そんなところに戻っていいのか…?と不安が押し寄せてきた。
「戻って歓迎される保証もないところに戻りたいとはよく言ったものだな…それだからお前は…」
「そんなに保障がみたいなら見せてやるよ」
声の主はルークを迎えにきたメイドだった。
メイドはルークの真横にくるとかけていた分厚い眼鏡をはずし結っていた髪を下ろした。
その顔はルークにとって忘れたくても忘れられない顔だった。
「だれだお前は…」
「俺か?俺はアドリビトムのメンバー…ユーリ・ローウェルだ」
かっこよく名前を言って決めているが…きている服はメイド服…いまいち格好がつかない。
しかしよくお似合いです。
「え?ちょ…ユーリ…!!!何でここに!?」
「お前を誘拐しに来たんだよ。お前に伝えたいこともあったしな」
「え?」
「我が屋敷に不法侵入するとは…罪は重いぞ?」
バタバタバタと武器を持った兵士達が入口から入ってきて、周りを取り囲んだ。
本来ならばピンチのはずだが…何故かユーリは余裕の表情だった。
「別にいまさら罪の一つや二つ犯しても変わりはしないさ。」
「根性はあるようだな…流石一人でファブレ家に乗り込んできただけのことはある」
「だーれが一人で乗り込んだだって?こっちにはすっげーつよい味方がいるんだよ」
ユーリの瞳がアッシュの後に立っていたメイドの方に視線が動いた。
視線を感じたメイドは被っていたカツラを外した。
その姿はいつも自分の隣にいた英雄だった…。
「え…な…あ、アレン!?」
「えへへ…ユーリと一緒に来ちゃった」
まるでどこかの遊園地に遊びに来ましたというノリのディセンダーである。
「ようお前ら…このチビのことしってるか?こいつはこのルミナシアのディセンダーだ。
ディセンダーに勝てる腕のやつこの中にいるか?」
ユーリをとらえようとしていた兵士達がアレンの姿を見て後に下がりだした。
ディセンダーの話はこの世界では誰でもしっている話だから勝てるとは思う人など居なかった。
兵士達の代わりにユーリの前に出た者が居た…それはルークだった。
「ユーリ…お前馬鹿だろう!!!父上を敵に回したらライマ国を敵に回すようなもんだぞ…それなのに…」
「あたりだ。俺は馬鹿だよ…馬鹿だからこんなことするんだ…俺はなルーク…
お前の為ならライマ国くらい敵に回してもいいと思ってここに来たんだ。」
その言葉を聞いてルークの顔が真っ赤になった。
ルークを真っ赤にさせたユーリはそんなこと気にもしていないのか口をまた動かした。
「この前言えなかったことだが…ルーク、ギルドに戻ってこい。そして俺の相棒に…いや…
それだけじゃない…俺と付き合ってくれ。」
「えええぇっ!!!!???」
驚きのあまりルークはまるで金魚のように口をぱくぱくしたまま動かなくなった。
心配したアレンがファーストエイドをかけたがルークはもとに戻らなかった。
「ははははっ…もうこれはルークはギルドに戻るべきですな。
こんなにも愛されているのですから」
今までだまっていたヴァンが父親に話しかけた。
父親は渋い顔をしていたがため息をついて諦めた表情をした。
「そうだな…わかった…ルークよギルドに戻りなさい。
そして今度はしっかりとギルドの為に…民の為に働きなさい。わかったか?」
「え?は、はいっ!!!」
やっと硬直から解放されたルークは嬉しそうな顔を父親に見せた。
こんな嬉しそうな顔をする息子を見るのは久しぶりかもしれないと思った。
「一応誘拐ってことだからいろいろ変装道具持ってきたのになぁ…予告状とか…」
「お前は一体何しにきたんだ…」
アレンが何処からか取りだした衣装はまっ白いスーツにマントそしてシルクハットだった。
そんな格好で誘拐などしたら逆に目立つだろうと思ってしまうが本人はいたって本気だ。
アレンとルークが笑いながら話しているとユーリがルークのそばへと近づいてきた。
「で?俺への返事はどうなんだ?」
「え?あ……そんなの…決まってるだろ………よろしくな…相棒…だけじゃないか…」
少し照れながらもユーリに笑顔を見せた。
その笑顔を見たユーリはにやりと笑いルークの腰に腕を回し自分のそばへと引き寄せた。
怒りにまかせてギルド内にある自室の扉を開けたルークは
その勢いのままベッドへと飛び込んだ。
中にいたガイは毎度のことなので慣れているので
軽く笑いながらルークが寝転ぶベッドへと近づいてきた。
「今度はなんだ?また楽しみに取ってたデザートでも食われたか?」
「そんなんじゃねぇよ!!あー…もう、あいつの顔なんて見たくもねぇ!!!」
「おや、それは丁度よかったですね」
ジェイドがルーク達の部屋に入ってきたが、その顔は何故か笑顔…
この顔のジェイドは毎度よからぬことを考えている時の顔だとルークは知っている。
「な、何が丁度いいんだよ…」
おそるおそるジェイドに聞くと、笑顔でルークの質問に答えた。
「皇帝陛下より帰国命令が先ほどありました。ですので来週このギルドを脱退し
ライマ国へと帰ります。」
「え…?」
嬉しいはずなのに、何故か頭を鈍器で殴られたような気持ちになった…。
罪×素直×告白
明日は本国ライマ国へ帰る日。
ルーク達最後の夜ということもあって、ギルドの食堂で送別会が盛大に開かれた。
ティアとナタリアは仲良くなったエステル達と別れを惜しみ、
アッシュはティトレイなどからの一方的な友情の別れに付き合い、
ガイは今まで女性陣とあまり話していなかったせいか
ここぞとばかりに女性に囲まれ、
アニスは何だかんだ言って仲良くなったちびっこ達と笑い、
ヴァンは大人の付き合いをし、
ジェイドは相変わらずだがどこか寂しそうで…
皆それぞれ思い思いにギルドのメンバー達との最後の交流をしている。
そんな中ルークはただ一人暗い展望室でバンエルティア号から見える夜景を楽しんでいた。
そこへ誰かが展望台に上がってくる音がした。
ガイが心配して探しに来たのかと予想したがルークの予想は外れ、
展望台に上がってきたのはユーリだった。
「よう、お坊ちゃん。こんなところで何してるんだ?
アレンのやつが泣き顔で探しまくってたぜ。」
「もう少しだけ…ここにいたい…」
「…わかった。」
ユーリのことだから何かつっかかってくるかと思ったが、
今日のユーリは変だった…いや、ユーリの様子が変なのは
ルークの帰国が決まってからだ。
鈍感と周りからいつも言われるルークが気がつくのだから相当様子がおかしい。
「隣…いいか?」
「あぁ…」
ルークの隣に静かにユーリが座った。
何か話かけてくるかと思ったが特に何も話かけてはこなかった。
前だったら断りもなく隣に座ってきて口喧嘩をしたはずなのに…
出会ってからこの二人にはなかった沈黙が生まれる。
その沈黙を破ったのはルークの方だった。
「お前は…まだしばらくギルドにいるのか?」
「あぁ…エステルがまだ帰らないって言ってるからな…」
「そっか…」
そしてまた沈黙が生まれる。
自分達はこれほど会話が下手くそだったか?と疑問に思ってしまうくらいの沈黙だった。
次に居心地の悪い沈黙を破ったのはユーリだった。
「国に帰ったら…王位を継ぐのか?」
「さぁな…アッシュと俺どっちが継ぐのかまだ正式に決まってねぇし…
選ばれたら……………継ぐ……………」
「歯切れが悪いな。迷ってるのか?」
「………………………そろそろ…食堂に戻るか。」
ユーリの質問には答えずルークが立ちあがろうとした時、
ルークの腕をユーリが掴んで行くてを阻んだ。
「な、何だよ…」
ユーリの顔を見ると今までみたことのない真剣な表情でルークを見つめていた。
そんなユーリの姿に頬を少し赤く染めた…
ユーリが女性達から人気がある理由がなんとなくわかる。
「なぁ、ルーク…もし迷っているなら………………」
何かを言いかけたがユーリがその言葉を口に出さずに自分の心に押し込め、
それと同時に掴んでいたルークの腕も離した。
「悪い…何でもない…今のは忘れてくれ…」
「な、何だよそれ…最後まで言えよ」
「俺の我儘でお前の人生狂わせるわけにはいかないからな。」
「俺だっていっぱい我儘言ってるんだから言えよ」
ルークが拗ねた表情でユーリを睨みつけると
ユーリは少し困った顔をしながら笑った。
「お前のは本当の我儘じゃねぇよ…ただ人と関わり合いを持つために言ってるだけだ。」
「は?」
そんなこと言われるのは初めてだった。
周りからはいつも「お前は我儘だ」といわれていたのに…
やっぱりユーリの様子は変だ。
いつもならこんなこと言うはずないのに…
「王族って立場を考えて行動するのはいいが…たまには自分の気持ちに素直になれよ…」
そういうとユーリは展望台を降りた。
一人取り残されたルークは何が何だかわからなくなっていた…
「何なんだよ…ユーリの馬鹿…自分の気持ちって…俺は王族なんだから…そんなのできねぇよ…」
まさかギルド最後の夜にこんな悲しい気持ちになるとは思ってもいなかった。
ルーク達がギルドを脱退して数日が過ぎた。
ギルド内は少し寂しい雰囲気を漂っていたが、少しずつ元の空気に戻りつつあった。
約二名を除いては…
「ユーリまたケーキ焦がしたんだって?エステルが心配してたよ」
「アレンこそダンジョンでまた迷子になったんだろ?カノンノが心配してたぞ」
二人で顔を見合わせると同時にため息がでた。
二人が居るのはバンエルティア号の甲板。
風が気持ちよく吹いているが、今の二人にはそんな風も心に開いた傷を開かせる材料でしかなかった。
ルーク達が居なくなってずっと調子が戻らない二人とはユーリとディセンダーのアレンだった。
アレンはルークとまるで本当の兄弟のように仲が良かったから仕方がない。
ユーリも出会えば口喧嘩ばかりしていたが何だかんだで仲は良かった……かもしれない。
「なぁユーリ…ルークが王様になったら会えないのか?」
「王様と一般市民じゃ無理だな…」
「つまんねぇ…」
ずっとルークと一緒に居たせいか最近純粋無垢だったこのディセンダーの口調はだんだんルークに似てきた。
何も知らなかったから学習能力が高いのか…ただたんに影響を受けやすいだけなのかは定かではない。
「なぁ、ユーリ…」
「今度は何だよ…」
「前ユーリが言ってたけど…罪って一度犯すのも二度犯すのもたいして変わらないんだよな?」
「……………確かに」
どことなく死んでいたユーリの瞳が以前のように輝きを取り戻した。
「俺らしくもなかったな…やっぱり人生我儘に行くか。お前も行くか?」
「行く!!!」
二人はニヤリと笑い何か打ち合わせをするために甲板を後にした。
ここはライマ国にある豪華な屋敷の一室。
ルークはこの城に戻って来てから一歩も外へ出してはもらえなかった。
そう、それはギルドに入る前と同じ状況…
戻ればこの生活になると分かっていたが、心のどこかで違う希望を抱いていた。
こんな生活をしていたらギルドにいたころの生活がとても懐かしく思えてくる。
ギルドのメンバーは今頃どうしているのだろうか…
アンジュは相変わらず体重を気にしているのだろうか…
ロックスは相変わらず忙しそうなのだろうか…
アレンは相変わらずギルドの仕事に追われているのだろうか…
ユーリは………
ユーリのことを思い出すとあの日の夜のことを思い出す。
彼は自分に何を伝えたかったのだろうかと…
自分の気持ちに正直に生きたいと思う反面、王位を継ぐ可能性のある者としてそれはどうなのかと…
今までの自分ならば王位などどうでもよかっただろう。
だけど、あのギルドに関わってから少し自分の考えが変われるようになった気がする。
そんなことを考えながらルークの部屋から見える空を見上げていると、
部屋の扉をノックする音が聞こえた。
軽く返事をすると扉が開きそこには一人のメイドが立っていた。
「ルーク様。旦那様がお呼びです…至急来るようにとのことです。」
「あぁ…わかった。」
ついに来たか…とつぶやいた。
今日はアッシュとルークどちらが王位継承者になるか決める日だった。
ヴァンを交えて今日決定される予定だ。
呼ばれればすぐに父親の元へ行ける準備はできていたので、
すぐに自分の部屋を出てメイドの前を通りすぎた。
呼びに来たメイドはルークのすぐ後ろを付いてくる。
分厚い眼鏡をかけていたので顔はよく見えなかったが記憶が確かならば話をしたことがないメイドだ。
ルークが旅に出ている間にメイドもかなり入れ替わっていたので知らない顔がいるのは当たり前だった。
馴染みのメイドが少なくなるのはとても寂しい気分になってしまう…
父親が待つ大広間に着いたルークは扉をノックして部屋に入った。
部屋にはすでにアッシュ、ナタリア、ガイ、ヴァンそして父親が居た。
アッシュのそばには顔なじみではないメイドが一人立っていた。
多分こちらも自分達が旅に出ている間に入ったメイドなのだろう…。
着いてきたメイドに案内されてルークが席につくと父親の口が動いた。
「では…これより王位継承について話を始める。」
「はい。」
「……はい。」
ここでついに正式な王位継承が決まる。
もしルークが第一王位継承者になれなくとも王族して窮屈な生活があるのは変わりはない。
ギルドの居たころのように自由にはなれない…アドリビトムのように…
「ヴァン…この度の旅を通じてこの二人はどう思う?」
「はい。アッシュにはもともと王位継承者として素質や気品など取り揃えておりました。
旅をしてそれが磨かれております。しかし、ルークもなかなかのものです。
最初は王位継承者として失格でしたが、ギルドに入り多くの仲間と関わりを持ってからは変わりました。
アッシュにはない王位継承者としての何かを持っております。
私は二人でこの国を支えて行くべきではないかと…」
ヴァンにほめられたことで少し嬉しく思うルークだったが、
今は心から喜べる気分にはなれなかった…。
アッシュと二人で…そんなこと今の自分に可能なのだろうか…
「アッシュお前は今後どうしていきたい?」
「私は………」
アッシュはスラスラと自分の今後王族としてどうしていきたいかを父親に述べていった。
今のルークに今後のことなんて言える状況ではなかった…。
「ルーク…お前は今後どうしていきたい?」
「お…いや、私は………」
言葉に詰まった。
アッシュと同じように王族としてどうして行きたいかを述べるのが正しい
と頭ではわかっているが…自分の心にはどうしても捨てきれないものがあった。
どうすればいいかわからなくなって来てしまった…
その時どこからか声が聞こえた。
「自分の気持ちに素直になれよ…」
そう、その声の主はここに居るはずのない彼…ユーリの声だ。
ユーリが最後にルークにかけた言葉…
ここに居るはずのないユーリの声…幻聴だろうが無性に彼がそばに居てくれている気がした。
そんな気がするだけでとても心強い。
ルークは父親の目をしっかりとみつめゆっくりと口を開いた。
「私は……王位を継ぐ資格はありません。ですので私は王位継承を辞退します。」
「なっ…!!!」
「まぁ…ルーク…」
一番驚いたのはアッシュとナタリアだった。
ヴァンとガイは予想をしていたのかあまり驚いた表情は見せなかった。
「王族を捨ててどうするつもりだ?」
父親が静かにルークへ聞いた。
「ギルドに…アドリビトムに戻ります。まだ世界の混乱は終わっていません…
王になって民を守ることも大切ですが、もっと身近で守りたい…貴族として育った私だからこそ
できることがあると思うのです。」
「お前があのギルドに戻りたいと思うのは勝手だが…あのギルドの者たちがお前を歓迎するのか?
あまり熱心に仕事をしていなかったようだし、
我儘で傲慢な性格のお前なんて居なくなって安心してる人のが多いのではないのか?」
「そ、それは………」
確かに自分のギルド内での生活は我儘で傲慢なことだらけだった。
もしかしたらルークが居なくなって喜んでいるメンバーがほとんどかもしれない…
そんなところに戻っていいのか…?と不安が押し寄せてきた。
「戻って歓迎される保証もないところに戻りたいとはよく言ったものだな…それだからお前は…」
「そんなに保障がみたいなら見せてやるよ」
声の主はルークを迎えにきたメイドだった。
メイドはルークの真横にくるとかけていた分厚い眼鏡をはずし結っていた髪を下ろした。
その顔はルークにとって忘れたくても忘れられない顔だった。
「だれだお前は…」
「俺か?俺はアドリビトムのメンバー…ユーリ・ローウェルだ」
かっこよく名前を言って決めているが…きている服はメイド服…いまいち格好がつかない。
しかしよくお似合いです。
「え?ちょ…ユーリ…!!!何でここに!?」
「お前を誘拐しに来たんだよ。お前に伝えたいこともあったしな」
「え?」
「我が屋敷に不法侵入するとは…罪は重いぞ?」
バタバタバタと武器を持った兵士達が入口から入ってきて、周りを取り囲んだ。
本来ならばピンチのはずだが…何故かユーリは余裕の表情だった。
「別にいまさら罪の一つや二つ犯しても変わりはしないさ。」
「根性はあるようだな…流石一人でファブレ家に乗り込んできただけのことはある」
「だーれが一人で乗り込んだだって?こっちにはすっげーつよい味方がいるんだよ」
ユーリの瞳がアッシュの後に立っていたメイドの方に視線が動いた。
視線を感じたメイドは被っていたカツラを外した。
その姿はいつも自分の隣にいた英雄だった…。
「え…な…あ、アレン!?」
「えへへ…ユーリと一緒に来ちゃった」
まるでどこかの遊園地に遊びに来ましたというノリのディセンダーである。
「ようお前ら…このチビのことしってるか?こいつはこのルミナシアのディセンダーだ。
ディセンダーに勝てる腕のやつこの中にいるか?」
ユーリをとらえようとしていた兵士達がアレンの姿を見て後に下がりだした。
ディセンダーの話はこの世界では誰でもしっている話だから勝てるとは思う人など居なかった。
兵士達の代わりにユーリの前に出た者が居た…それはルークだった。
「ユーリ…お前馬鹿だろう!!!父上を敵に回したらライマ国を敵に回すようなもんだぞ…それなのに…」
「あたりだ。俺は馬鹿だよ…馬鹿だからこんなことするんだ…俺はなルーク…
お前の為ならライマ国くらい敵に回してもいいと思ってここに来たんだ。」
その言葉を聞いてルークの顔が真っ赤になった。
ルークを真っ赤にさせたユーリはそんなこと気にもしていないのか口をまた動かした。
「この前言えなかったことだが…ルーク、ギルドに戻ってこい。そして俺の相棒に…いや…
それだけじゃない…俺と付き合ってくれ。」
「えええぇっ!!!!???」
驚きのあまりルークはまるで金魚のように口をぱくぱくしたまま動かなくなった。
心配したアレンがファーストエイドをかけたがルークはもとに戻らなかった。
「ははははっ…もうこれはルークはギルドに戻るべきですな。
こんなにも愛されているのですから」
今までだまっていたヴァンが父親に話しかけた。
父親は渋い顔をしていたがため息をついて諦めた表情をした。
「そうだな…わかった…ルークよギルドに戻りなさい。
そして今度はしっかりとギルドの為に…民の為に働きなさい。わかったか?」
「え?は、はいっ!!!」
やっと硬直から解放されたルークは嬉しそうな顔を父親に見せた。
こんな嬉しそうな顔をする息子を見るのは久しぶりかもしれないと思った。
「一応誘拐ってことだからいろいろ変装道具持ってきたのになぁ…予告状とか…」
「お前は一体何しにきたんだ…」
アレンが何処からか取りだした衣装はまっ白いスーツにマントそしてシルクハットだった。
そんな格好で誘拐などしたら逆に目立つだろうと思ってしまうが本人はいたって本気だ。
アレンとルークが笑いながら話しているとユーリがルークのそばへと近づいてきた。
「で?俺への返事はどうなんだ?」
「え?あ……そんなの…決まってるだろ………よろしくな…相棒…だけじゃないか…」
少し照れながらもユーリに笑顔を見せた。
その笑顔を見たユーリはにやりと笑いルークの腰に腕を回し自分のそばへと引き寄せた。
それから数カ月後…
アドリビトムにはとても優秀な3人組のチームがあるとの噂がながれた。
彼らはどんな難易度の高い依頼も難なくこなすチームらしい…
だが…
「っておい誰だ寝ていたボスを起こしたのは!!!!」
「間違えて尻尾踏んじゃった」
「俺はただその様子を見ていただけだ」
「このあほディセンダー!!!そんなんで世界守れるのかよ!!!
ってかユーリお前も見てるならとめやがれ!!!」
「やっぱり髪長い方がルークらしいよ」
「全くだ…短いのもいいが長くないと髪の毛にキスできないだろ」
「うっせーぞこのエローウェル!!!短くてもところかまわずキスするだろうが!!
ってかぐだぐだ言ってないでにげろおおおおおおおおおおおお!!!」
「へいへい。」
「やっぱりルークといると楽しいね」
こんなやりとりを見ていると依頼者は不安になるが、
どんな依頼でも解決してしまうのでアドリビトムには彼らへの依頼が絶えなかった。
アドリビトムにはとても優秀な3人組のチームがあるとの噂がながれた。
彼らはどんな難易度の高い依頼も難なくこなすチームらしい…
だが…
「っておい誰だ寝ていたボスを起こしたのは!!!!」
「間違えて尻尾踏んじゃった」
「俺はただその様子を見ていただけだ」
「このあほディセンダー!!!そんなんで世界守れるのかよ!!!
ってかユーリお前も見てるならとめやがれ!!!」
「やっぱり髪長い方がルークらしいよ」
「全くだ…短いのもいいが長くないと髪の毛にキスできないだろ」
「うっせーぞこのエローウェル!!!短くてもところかまわずキスするだろうが!!
ってかぐだぐだ言ってないでにげろおおおおおおおおおおおお!!!」
「へいへい。」
「やっぱりルークといると楽しいね」
こんなやりとりを見ていると依頼者は不安になるが、
どんな依頼でも解決してしまうのでアドリビトムには彼らへの依頼が絶えなかった。
