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旭屋本舗
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「だあー!!!もう、マジユーリのやつうぜぇ!!!」
怒りにまかせてギルド内にある自室の扉を開けたルークは
その勢いのままベッドへと飛び込んだ。
中にいたガイは毎度のことなので慣れているので
軽く笑いながらルークが寝転ぶベッドへと近づいてきた。
「今度はなんだ?また楽しみに取ってたデザートでも食われたか?」
「そんなんじゃねぇよ!!あー…もう、あいつの顔なんて見たくもねぇ!!!」
「おや、それは丁度よかったですね」
ジェイドがルーク達の部屋に入ってきたが、その顔は何故か笑顔…
この顔のジェイドは毎度よからぬことを考えている時の顔だとルークは知っている。
「な、何が丁度いいんだよ…」
おそるおそるジェイドに聞くと、笑顔でルークの質問に答えた。
「皇帝陛下より帰国命令が先ほどありました。ですので来週このギルドを脱退し
 ライマ国へと帰ります。」
「え…?」
嬉しいはずなのに、何故か頭を鈍器で殴られたような気持ちになった…。





罪×素直×告白





明日は本国ライマ国へ帰る日。
ルーク達最後の夜ということもあって、ギルドの食堂で送別会が盛大に開かれた。
ティアとナタリアは仲良くなったエステル達と別れを惜しみ、
アッシュはティトレイなどからの一方的な友情の別れに付き合い、
ガイは今まで女性陣とあまり話していなかったせいか
ここぞとばかりに女性に囲まれ、
アニスは何だかんだ言って仲良くなったちびっこ達と笑い、
ヴァンは大人の付き合いをし、
ジェイドは相変わらずだがどこか寂しそうで…
皆それぞれ思い思いにギルドのメンバー達との最後の交流をしている。
そんな中ルークはただ一人暗い展望室でバンエルティア号から見える夜景を楽しんでいた。
そこへ誰かが展望台に上がってくる音がした。
ガイが心配して探しに来たのかと予想したがルークの予想は外れ、
展望台に上がってきたのはユーリだった。
「よう、お坊ちゃん。こんなところで何してるんだ?
 アレンのやつが泣き顔で探しまくってたぜ。」
「もう少しだけ…ここにいたい…」
「…わかった。」
ユーリのことだから何かつっかかってくるかと思ったが、
今日のユーリは変だった…いや、ユーリの様子が変なのは
ルークの帰国が決まってからだ。
鈍感と周りからいつも言われるルークが気がつくのだから相当様子がおかしい。
「隣…いいか?」
「あぁ…」
ルークの隣に静かにユーリが座った。
何か話かけてくるかと思ったが特に何も話かけてはこなかった。
前だったら断りもなく隣に座ってきて口喧嘩をしたはずなのに…
出会ってからこの二人にはなかった沈黙が生まれる。
その沈黙を破ったのはルークの方だった。
「お前は…まだしばらくギルドにいるのか?」
「あぁ…エステルがまだ帰らないって言ってるからな…」
「そっか…」
そしてまた沈黙が生まれる。
自分達はこれほど会話が下手くそだったか?と疑問に思ってしまうくらいの沈黙だった。
次に居心地の悪い沈黙を破ったのはユーリだった。
「国に帰ったら…王位を継ぐのか?」
「さぁな…アッシュと俺どっちが継ぐのかまだ正式に決まってねぇし…
 選ばれたら……………継ぐ……………」
「歯切れが悪いな。迷ってるのか?」
「………………………そろそろ…食堂に戻るか。」
ユーリの質問には答えずルークが立ちあがろうとした時、
ルークの腕をユーリが掴んで行くてを阻んだ。
「な、何だよ…」
ユーリの顔を見ると今までみたことのない真剣な表情でルークを見つめていた。
そんなユーリの姿に頬を少し赤く染めた…
ユーリが女性達から人気がある理由がなんとなくわかる。
「なぁ、ルーク…もし迷っているなら………………」
何かを言いかけたがユーリがその言葉を口に出さずに自分の心に押し込め、
それと同時に掴んでいたルークの腕も離した。
「悪い…何でもない…今のは忘れてくれ…」
「な、何だよそれ…最後まで言えよ」
「俺の我儘でお前の人生狂わせるわけにはいかないからな。」
「俺だっていっぱい我儘言ってるんだから言えよ」
ルークが拗ねた表情でユーリを睨みつけると
ユーリは少し困った顔をしながら笑った。
「お前のは本当の我儘じゃねぇよ…ただ人と関わり合いを持つために言ってるだけだ。」
「は?」
そんなこと言われるのは初めてだった。
周りからはいつも「お前は我儘だ」といわれていたのに…
やっぱりユーリの様子は変だ。
いつもならこんなこと言うはずないのに…
「王族って立場を考えて行動するのはいいが…たまには自分の気持ちに素直になれよ…」
そういうとユーリは展望台を降りた。
一人取り残されたルークは何が何だかわからなくなっていた…
「何なんだよ…ユーリの馬鹿…自分の気持ちって…俺は王族なんだから…そんなのできねぇよ…」
まさかギルド最後の夜にこんな悲しい気持ちになるとは思ってもいなかった。
ルーク達がギルドを脱退して数日が過ぎた。
ギルド内は少し寂しい雰囲気を漂っていたが、少しずつ元の空気に戻りつつあった。
約二名を除いては…
「ユーリまたケーキ焦がしたんだって?エステルが心配してたよ」
「アレンこそダンジョンでまた迷子になったんだろ?カノンノが心配してたぞ」
二人で顔を見合わせると同時にため息がでた。
二人が居るのはバンエルティア号の甲板。
風が気持ちよく吹いているが、今の二人にはそんな風も心に開いた傷を開かせる材料でしかなかった。
ルーク達が居なくなってずっと調子が戻らない二人とはユーリとディセンダーのアレンだった。
アレンはルークとまるで本当の兄弟のように仲が良かったから仕方がない。
ユーリも出会えば口喧嘩ばかりしていたが何だかんだで仲は良かった……かもしれない。
「なぁユーリ…ルークが王様になったら会えないのか?」
「王様と一般市民じゃ無理だな…」
「つまんねぇ…」
ずっとルークと一緒に居たせいか最近純粋無垢だったこのディセンダーの口調はだんだんルークに似てきた。
何も知らなかったから学習能力が高いのか…ただたんに影響を受けやすいだけなのかは定かではない。
「なぁ、ユーリ…」
「今度は何だよ…」
「前ユーリが言ってたけど…罪って一度犯すのも二度犯すのもたいして変わらないんだよな?」
「……………確かに」
どことなく死んでいたユーリの瞳が以前のように輝きを取り戻した。
「俺らしくもなかったな…やっぱり人生我儘に行くか。お前も行くか?」
「行く!!!」
二人はニヤリと笑い何か打ち合わせをするために甲板を後にした。



ここはライマ国にある豪華な屋敷の一室。
ルークはこの城に戻って来てから一歩も外へ出してはもらえなかった。
そう、それはギルドに入る前と同じ状況…
戻ればこの生活になると分かっていたが、心のどこかで違う希望を抱いていた。
こんな生活をしていたらギルドにいたころの生活がとても懐かしく思えてくる。
ギルドのメンバーは今頃どうしているのだろうか…
アンジュは相変わらず体重を気にしているのだろうか…
ロックスは相変わらず忙しそうなのだろうか…
アレンは相変わらずギルドの仕事に追われているのだろうか…
ユーリは………
ユーリのことを思い出すとあの日の夜のことを思い出す。
彼は自分に何を伝えたかったのだろうかと…
自分の気持ちに正直に生きたいと思う反面、王位を継ぐ可能性のある者としてそれはどうなのかと…
今までの自分ならば王位などどうでもよかっただろう。
だけど、あのギルドに関わってから少し自分の考えが変われるようになった気がする。
そんなことを考えながらルークの部屋から見える空を見上げていると、
部屋の扉をノックする音が聞こえた。
軽く返事をすると扉が開きそこには一人のメイドが立っていた。
「ルーク様。旦那様がお呼びです…至急来るようにとのことです。」
「あぁ…わかった。」
ついに来たか…とつぶやいた。
今日はアッシュとルークどちらが王位継承者になるか決める日だった。
ヴァンを交えて今日決定される予定だ。
呼ばれればすぐに父親の元へ行ける準備はできていたので、
すぐに自分の部屋を出てメイドの前を通りすぎた。
呼びに来たメイドはルークのすぐ後ろを付いてくる。
分厚い眼鏡をかけていたので顔はよく見えなかったが記憶が確かならば話をしたことがないメイドだ。
ルークが旅に出ている間にメイドもかなり入れ替わっていたので知らない顔がいるのは当たり前だった。
馴染みのメイドが少なくなるのはとても寂しい気分になってしまう…
父親が待つ大広間に着いたルークは扉をノックして部屋に入った。
部屋にはすでにアッシュ、ナタリア、ガイ、ヴァンそして父親が居た。
アッシュのそばには顔なじみではないメイドが一人立っていた。
多分こちらも自分達が旅に出ている間に入ったメイドなのだろう…。
着いてきたメイドに案内されてルークが席につくと父親の口が動いた。
「では…これより王位継承について話を始める。」
「はい。」
「……はい。」
ここでついに正式な王位継承が決まる。
もしルークが第一王位継承者になれなくとも王族して窮屈な生活があるのは変わりはない。
ギルドの居たころのように自由にはなれない…アドリビトムのように…
「ヴァン…この度の旅を通じてこの二人はどう思う?」
「はい。アッシュにはもともと王位継承者として素質や気品など取り揃えておりました。
 旅をしてそれが磨かれております。しかし、ルークもなかなかのものです。
 最初は王位継承者として失格でしたが、ギルドに入り多くの仲間と関わりを持ってからは変わりました。
 アッシュにはない王位継承者としての何かを持っております。
 私は二人でこの国を支えて行くべきではないかと…」
ヴァンにほめられたことで少し嬉しく思うルークだったが、
今は心から喜べる気分にはなれなかった…。
アッシュと二人で…そんなこと今の自分に可能なのだろうか…
「アッシュお前は今後どうしていきたい?」
「私は………」
アッシュはスラスラと自分の今後王族としてどうしていきたいかを父親に述べていった。
今のルークに今後のことなんて言える状況ではなかった…。
「ルーク…お前は今後どうしていきたい?」
「お…いや、私は………」
言葉に詰まった。
アッシュと同じように王族としてどうして行きたいかを述べるのが正しい
と頭ではわかっているが…自分の心にはどうしても捨てきれないものがあった。
どうすればいいかわからなくなって来てしまった…
その時どこからか声が聞こえた。
「自分の気持ちに素直になれよ…」
そう、その声の主はここに居るはずのない彼…ユーリの声だ。
ユーリが最後にルークにかけた言葉…
ここに居るはずのないユーリの声…幻聴だろうが無性に彼がそばに居てくれている気がした。
そんな気がするだけでとても心強い。
ルークは父親の目をしっかりとみつめゆっくりと口を開いた。
「私は……王位を継ぐ資格はありません。ですので私は王位継承を辞退します。」
「なっ…!!!」
「まぁ…ルーク…」
一番驚いたのはアッシュとナタリアだった。
ヴァンとガイは予想をしていたのかあまり驚いた表情は見せなかった。
「王族を捨ててどうするつもりだ?」
父親が静かにルークへ聞いた。
「ギルドに…アドリビトムに戻ります。まだ世界の混乱は終わっていません…
 王になって民を守ることも大切ですが、もっと身近で守りたい…貴族として育った私だからこそ
 できることがあると思うのです。」
「お前があのギルドに戻りたいと思うのは勝手だが…あのギルドの者たちがお前を歓迎するのか?
 あまり熱心に仕事をしていなかったようだし、
 我儘で傲慢な性格のお前なんて居なくなって安心してる人のが多いのではないのか?」
「そ、それは………」
確かに自分のギルド内での生活は我儘で傲慢なことだらけだった。
もしかしたらルークが居なくなって喜んでいるメンバーがほとんどかもしれない…
そんなところに戻っていいのか…?と不安が押し寄せてきた。
「戻って歓迎される保証もないところに戻りたいとはよく言ったものだな…それだからお前は…」
「そんなに保障がみたいなら見せてやるよ」
声の主はルークを迎えにきたメイドだった。
メイドはルークの真横にくるとかけていた分厚い眼鏡をはずし結っていた髪を下ろした。
その顔はルークにとって忘れたくても忘れられない顔だった。
「だれだお前は…」
「俺か?俺はアドリビトムのメンバー…ユーリ・ローウェルだ」
かっこよく名前を言って決めているが…きている服はメイド服…いまいち格好がつかない。
しかしよくお似合いです。
「え?ちょ…ユーリ…!!!何でここに!?」
「お前を誘拐しに来たんだよ。お前に伝えたいこともあったしな」
「え?」
「我が屋敷に不法侵入するとは…罪は重いぞ?」
バタバタバタと武器を持った兵士達が入口から入ってきて、周りを取り囲んだ。
本来ならばピンチのはずだが…何故かユーリは余裕の表情だった。
「別にいまさら罪の一つや二つ犯しても変わりはしないさ。」
「根性はあるようだな…流石一人でファブレ家に乗り込んできただけのことはある」
「だーれが一人で乗り込んだだって?こっちにはすっげーつよい味方がいるんだよ」
ユーリの瞳がアッシュの後に立っていたメイドの方に視線が動いた。
視線を感じたメイドは被っていたカツラを外した。
その姿はいつも自分の隣にいた英雄だった…。
「え…な…あ、アレン!?」
「えへへ…ユーリと一緒に来ちゃった」
まるでどこかの遊園地に遊びに来ましたというノリのディセンダーである。
「ようお前ら…このチビのことしってるか?こいつはこのルミナシアのディセンダーだ。
 ディセンダーに勝てる腕のやつこの中にいるか?」
ユーリをとらえようとしていた兵士達がアレンの姿を見て後に下がりだした。
ディセンダーの話はこの世界では誰でもしっている話だから勝てるとは思う人など居なかった。
兵士達の代わりにユーリの前に出た者が居た…それはルークだった。
「ユーリ…お前馬鹿だろう!!!父上を敵に回したらライマ国を敵に回すようなもんだぞ…それなのに…」
「あたりだ。俺は馬鹿だよ…馬鹿だからこんなことするんだ…俺はなルーク…
 お前の為ならライマ国くらい敵に回してもいいと思ってここに来たんだ。」
その言葉を聞いてルークの顔が真っ赤になった。
ルークを真っ赤にさせたユーリはそんなこと気にもしていないのか口をまた動かした。
「この前言えなかったことだが…ルーク、ギルドに戻ってこい。そして俺の相棒に…いや…
 それだけじゃない…俺と付き合ってくれ。」
「えええぇっ!!!!???」
驚きのあまりルークはまるで金魚のように口をぱくぱくしたまま動かなくなった。
心配したアレンがファーストエイドをかけたがルークはもとに戻らなかった。
「ははははっ…もうこれはルークはギルドに戻るべきですな。
 こんなにも愛されているのですから」
今までだまっていたヴァンが父親に話しかけた。
父親は渋い顔をしていたがため息をついて諦めた表情をした。
「そうだな…わかった…ルークよギルドに戻りなさい。
 そして今度はしっかりとギルドの為に…民の為に働きなさい。わかったか?」
「え?は、はいっ!!!」
やっと硬直から解放されたルークは嬉しそうな顔を父親に見せた。
こんな嬉しそうな顔をする息子を見るのは久しぶりかもしれないと思った。
「一応誘拐ってことだからいろいろ変装道具持ってきたのになぁ…予告状とか…」
「お前は一体何しにきたんだ…」
アレンが何処からか取りだした衣装はまっ白いスーツにマントそしてシルクハットだった。
そんな格好で誘拐などしたら逆に目立つだろうと思ってしまうが本人はいたって本気だ。
アレンとルークが笑いながら話しているとユーリがルークのそばへと近づいてきた。
「で?俺への返事はどうなんだ?」
「え?あ……そんなの…決まってるだろ………よろしくな…相棒…だけじゃないか…」
少し照れながらもユーリに笑顔を見せた。
その笑顔を見たユーリはにやりと笑いルークの腰に腕を回し自分のそばへと引き寄せた。



それから数カ月後…
アドリビトムにはとても優秀な3人組のチームがあるとの噂がながれた。
彼らはどんな難易度の高い依頼も難なくこなすチームらしい…
だが…
「っておい誰だ寝ていたボスを起こしたのは!!!!」
「間違えて尻尾踏んじゃった」
「俺はただその様子を見ていただけだ」
「このあほディセンダー!!!そんなんで世界守れるのかよ!!!
 ってかユーリお前も見てるならとめやがれ!!!」
「やっぱり髪長い方がルークらしいよ」
「全くだ…短いのもいいが長くないと髪の毛にキスできないだろ」
「うっせーぞこのエローウェル!!!短くてもところかまわずキスするだろうが!!
 ってかぐだぐだ言ってないでにげろおおおおおおおおおおおお!!!」
「へいへい。」
「やっぱりルークといると楽しいね」
こんなやりとりを見ていると依頼者は不安になるが、
どんな依頼でも解決してしまうのでアドリビトムには彼らへの依頼が絶えなかった。

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