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落ちて行く人



落ちて行く動物



落ちて行く建物



落ちて行く大地



落ちた先にはまた別の広がる大地



俺は多くの人をこの手で…



コロシテシマッタ…



苦しい…クルシイ…



タスケテ…助けて…



誰か…ダレカ…



ヨゴレタ紅カラタスケテ…





「っは…はぁ…はぁ…ゆ、夢…?何て…悪夢だ…」
悪夢にうなされて目が覚めた。
今何時なのだろうか…汗で身体が気持ち悪い…
まだ夢の中なのだろうか…
ここは…自分が使っている部屋…
どうやら現実の世界に戻ってきたようだ。
けれど、ガイの姿を探しても何処にも見当たらない。
今何時何だろう…
時計を探そうと手を伸ばした時、異変に気がついた…
自分の手に付いていたのは、
そう…真っ赤な……… 。





【赤×黒】




真っ赤に燃える長い髪を風にたなびかせ、
バンエルティア号の甲板に一人佇むルークの姿があった。
いつもはこの場所にいるはずの氷の精霊の姿も何故か見当たらない。
甲板にはただ一人だけ…一人でいると心が悲しくなるような場所だったが、
今のルークにとってはそれは好都合だった。
ここ数日悪夢にうなされあまりよく眠れていない。
自分が多くの人々の命を奪ってしまう夢…
そして、仲間達と旅をする夢…
最後に来るのは何かを解放し、
自分が生きる意味を知って消えていく夢…
ただの夢と思えばそれでいいが、
何故かとても現実的で…自分が本当に体験したような実感がわいてしまう。
王家第一継承者のルークが今までそんな経験などしたことがないのは分かり切っているはずなのに
何故か無性に気になってしまう。
気になって…気になって…眠れない…無償に泣いてしまう。
こんなみっともない姿をギルドのメンバーに見られるのは嫌なので、
甲板にでて涙が止まるのを待つのが日課になっていた。
今日もまた涙が止まるのを待っていると、強い風が吹きルークの髪をなびかせた。
「今日は風が強いな…そんな天候なのか?」
船内の方からチャットが放送で何かを言っているのが聞こえたが、
今のルークにその声は届かなかった。
ルークに今届くのは
空に浮かぶバンエルティア号から見えるどこまでも続く大地…
そして、世界樹…。
夢ではこの大地を自分が壊してしまう…
何故自分はそんなことを夢の中でしてしまったのだろうか…
考えてもわからない…わかりたくもない…
考えれば考えるほど涙が止まらなくなってくる。
いろいろと考えているとまた涙が止まらなくなってきてしまった。
仕方がないので手で涙を拭いていると、後ろから人の気配がした。
「おい、お坊ちゃん…何でこんなところにいるんだ。」
顔だけ振り向くとそこには漆黒の青年…ユーリがいた。
今は人に会いたくなのに…泣いている姿なんてみせたくないのに…
「な、何だよ…何か用か?用がないならあっちいけ…」
泣いているのがばれないようにルークはユーリに向けた顔を
ユーリから逆の方に顔をむけた。
顔は見えないがユーリがため息をつくのが音でわかった。
「はぁ…何を拗ねているんだ?いいから船内に戻れ」
「やだ…お前うぜぇーんだよ…あっちいけ…」
「はいはい、俺がうざいのはわかったからとにかく船内に…」
ユーリはルークを無理に船内へと連れていこうと肩を掴むが、
ルークが反射的にその手を強く払いのけそしてユーリを睨みつけた。
「いてっ…お前何す…お前…泣いてるのか?」
「五月蠅い!!俺が泣こうが何処にいようが勝手だろ!!いちいちかまうn…」
ユーリを怒鳴りつけている時、バンエルティア号がゆらりと大きく揺れた。
甲板の一番端にいたルークはその揺れで身体が大きく揺れバランスを崩し、
自分の甲板から身体が外へ落ちて行くのが身体で感じた。
ゆっくりと落ちて行く身体…
自分が壊してしまった大地もこんな風に落ちていくのかと思っていた時。
ルークの身体は途中で落ちるのをやめた。
甲板を見るとユーリが必死になってルークの腕をひっぱり、
甲板から落ちそうになっているルークの身体を止めていた。
「っく…世話かけさせるんじゃ…ねぇ!!!」
ルークの身体を強くひっぱり落ちかけた身体を甲板へと戻した。
その反動でルークはユーリの腕の中へもぐりこむ体制になってしまった。
「ったく…チャットが放送で言ってたの聞こえなかったのか?
 風が強くて危ないから甲板には出ないでくださいって放送…
 放送鳴ってるのに甲板にずっといるお前の姿見て
 あわてて走ってきてやったんだからな」
「放送…?俺そんなのしらねぇ…」
よく思い出してみればチャットの放送が聞こえていたが、まったくルークの耳には届いていなかった。
「………放送…聞こえてなかった…わるい…それと…あ、ありがとう…」
ユーリは目を丸くして自分の腕の中にいるルークを見た。
あのギルドで一番素直じゃないルークが素直にお礼を言ったのだから、
ユーリが驚くのも無理はなかった。
「で?何で泣いていたんだ?お前最近ちゃんと寝れてないだろ?
 ガイが心配してたぞ」
「夢で…うなされて…寝れない…」
素直すぎるルークを拝める日が来るとは思っていなかったユーリは
もしやこれは夢ではないかと思い、自分の頬を引っ張った。
だが、痛かったのでこれは夢ではないことが確認できた。
「どんな夢だ?」
「…言いたくない。」
「言いたくないのなら言わなくていいさ」
優しくルークを抱きかかえるように肩に手を置くと、ルークの身体が一瞬だけ震えた。
「俺…汚れてて…真っ赤に汚れてて…けど落ちなくて…」
ルークの表情は前髪が邪魔してよく見えなかったが、
声で相当ルークが追い詰められていることがわかる。
ため息をついたユーリはルークの頬に優しくキスをし耳元で優しく声をかけた。
「真っ赤に汚れているなら…俺も一緒に汚れてやるよ…知ってるか?
 赤と黒は混ぜても黒にしかならないんだぜ?」
その言葉でルークの身体がまた震えた。
震えながらユーリの背中に手を回すと強く…強く抱きつき、そして静かに泣き始めた。
ルークの頭を優しくなでながら、ユーリは空を見上げた。
見上げた空は何処までも澄んだ蒼い色が続いている。
早く自分の腕の中で泣いている青年の心がこの空のように澄んだ心に戻ってくれることを願いながら…









「ローレライを解放する…」
ローレライの剣と宝珠でローレライを解放すると
エルドランドが崩れ始めた…
ここで自分の短い人生が終わるのだと悟った。
この旅でやっと自分の生きる意味を見つけた。
レプリカである自分の生きる意味を…
目を閉じて浮かぶのは…旅をした仲間達、同じ顔の青年、父上母上…旅でであった人達、
そして…



漆黒の青年…



名前も知らない…会ったことはないはずなのに…
なぜか無性に愛おしく思えるその姿。
何故彼の姿が目に浮かぶのかはわからない。
ただ…ひとつだけ思うのは…





もしも、生まれ変わったら…漆黒の青年と……………。
そう願いながらルークの身体は消えていった。

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