旭屋本舗
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15000hit記念まりえ様リクエストです。
お持ち帰りなど自由です。
リクエスト
【白光騎士団、メイドたちに、愛されていて、キムラスカ王国のアイドルで、総受けで、
最終的にはアシュルク落ちの、イチャラブ】
お持ち帰りなど自由です。
リクエスト
【白光騎士団、メイドたちに、愛されていて、キムラスカ王国のアイドルで、総受けで、
最終的にはアシュルク落ちの、イチャラブ】
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ヴァンの計画を阻止し、ローレライを解放したルークとアッシュは一度はこの世界から消えたが、
ローレライの好意により二人ともまたこの世界に足を着いた。
そして二人を待っていたのは愛おしい仲間達と世界を変えるという大きな仕事だった…。
そんな大きな仕事を一つずつ終わらせていくアッシュはよく遠くの街にも
出かけている。昔みたいに短時間で行けないので家を開けるのもしばしばだった。
そんな忙しいアッシュが久しぶりに我が家に帰ってみるとメイドの一人が
慌てた様子で帰って来たばかりのアッシュに報告をした。
「アッシュ様ッ…!!ルーク様が…ルーク様がっ…!!」
「あいつが…どうかしたのか?」
メイドのただならぬ様子にめずらしく不安の色を見せたアッシュは
一目散にルークの部屋へと走って行った。
幸せの方程式
ルークの部屋に着いたアッシュは部屋の前で集まっている仲間達の様子に驚いた。
ティア、ナタリア、アニス、ガイそしてジェイドまで部屋の前で集まっている。
しかも皆それぞれ不安そうな顔をしている…いや、ジェイドだけは普段と変わらないが…
「おい…あの屑に何があった…」
「アッシュ!!お帰りなさいませ…それがルークの様子が最近変だとメイド達から報告がありまして…」
仲間達の周りをみればメイドや白光騎士団の騎士達、シェフ達まで集まっているよほどのことなのだろうと思い
近くに居たメイドに状況を聞いた。
「はい…ここ数日食事を残されることが多くて…体調がすぐれないのではと思っていましたら…
今日はアッシュ様がお帰りになるというのに腹痛で寝ているとおっしゃて…」
「ご主人様最近考え事が多かったですの…」
いつも傍にいるミュウが心配そうに部屋のドアを見上げている。
ルークに追い出されたのだろう…部屋に戻りたくてもこの部屋には合い鍵はない。
中に居る本人が鍵を解除して入れてくれないと入れなかった。
アッシュは考えたが今ルークの音素は安定していて消えるということはない…
もし何か変化があればジェイドに相談するはずだが、相談している様子は見当たらない。
ましてや先日二人で受けたジェイドの健康診断では二人とも問題はなかったはずだ。
「おい、ルーク…どうしたんだ?悩みなら俺たちに話せよ…ルーク!!」
親友であるガイがルークに呼びかけても返事は帰って来ない。
ガイがどうしようかと考えていると一人の白光騎士が不安そうな声で話しはじめた。
「き、昨日ルーク様が「ガイもアッシュもいなくて剣の稽古ができないから付き合ってくれと」言われたのですが…
まさかその時私の不慣れな剣を受け止めてお怪我でもされたのでしょうか…」
「それはないと思うなぁ~…」
「あの屑はそこまで屑じゃねぇ…」
「それとも私が作った食事が原因で腹痛を…」
「いいえ、私がお出しした紅茶がお口に合わなかったのかもしれないわ…」
メイドやシェフ達まで自分が行った行為が原因ではと思い次々に不安そうな声をあげた。
そんな声を聞きアッシュは深いため息をつきながらルークの部屋をノックしたが返事はない。
「おい…いい加減出てきたらどうだ…?何があったかしらねぇがガイ達…メイドや騎士団の連中にまで心配掛けやがって…
話があるなら話しやがれ…お…俺でよければ…聞いてやる…」
最後の方アッシュは顔を真っ赤にしながらできるだけやさしく声をかけたが全く反応がない。
アッシュは一度ため息をつくとポケットから鍵を取りだした。
「アッシュ…それは…?」
「この部屋のスペアの鍵だ…こんな時の為に無断で作っておいた」
「えぇ!?それっていいの?」
「…………いいんだよ」
少しだけアッシュは迷ったがドアの鍵を解除し中へと入っていった。
部屋の窓はカーテンで塞がれており、明かりもついていないので昼間なのに少しだけ暗かった。
部屋の主は真ん中に設置されているベッドの中に潜っておりドアが開いたことで
驚いたのか上半身をあげてアッシュと目を合わせた。
「え?えぇ!?何でドア開いてるんだよ…鍵かけたのに…」
「うっせー、細かいこときにするんじゃねぇ」
「いや、気にするだろ」
ガイのツッコミもスルーをしてアッシュはルークへと近づき、
近づいてくるアッシュの視線が怖くなりルークは目線をアッシュから反らす。
「おい…何塞ぎこんでやがる…理由を話しやがれ…」
「え?いや…その…あの…」
ルークは何故かなかなか言い出さない…
そんなルークをみて仲間達は次々に声を出した。
「ルーク…不安なことがあるなら私達に何でも話して、あなたがもう全てをしょいこむことないわ」
「おいルーク…親友に隠し事なんてそりゃないぜ」
「お困りのことがあるのでしたら私何でも力になりますわ」
「そんな不安そうなルークの姿イオン様が見たら悲しむからね」
「私の知恵でよければ…お貸ししますよ」
仲間達の言葉に目を潤ませたルークだったが下を向き全く話そうとはしない。
そんなルークに限界がきたアッシュは深呼吸をして精神を集中させると
ルークが頭を痛そうに押さえ始めた
「いてっ…!!!あ、アッシュ…!!やめろ何勝手に人の心覗きこむんだよ!!」
「うっせ、おめぇが話さないからだ!!」
二人だけの特別回路を使ってルークの心を読みとったアッシュは
目の色を変えた……その色は怒りだ。
「おい…てめぇ…」
「あ…いや…その…あの…」
「そんなくだらねぇことで悩むんじゃねええええええええええええ!!!紋牙鳴衝斬!!!!」
「うわああああああああああああ!!!!!」
アッシュの必殺奥義を食らったルークは部屋の角にまで吹っ飛んだ。
「えぇ!?最近太ったからダイエットをしてた!?」
「はい…」
アニスが屋敷中に聞こえるくらいの大声で声をあげ
仲間達は呆れた顔をしている…
「だ、ダイエットって食事制限からって聞いたから…食べる量を減らして…」
「あ、だから最近食事を残されていたのですね。では腹痛は…?」
「アッシュが今日帰ってくるのに体重が全然減ってなかったから…剣の稽古と腹筋を鍛えてたら…
筋肉痛になって…動けなくて…」
「動けなくなるくらいってどれだけしたんだお前は」
「あはははは…ごめん…」
流石のガイも頭を抱えて呆れた表情を隠し切れていない…
「まぁ、確かに先日の健康診断で体重は若干増えていましたが…1kgぐらい気にすることありませんよ」
「えぇ!?そうなのか…!?」
ショックを受けたルークはがっくりと肩を落とすが身体を動かすと筋肉痛が痛むのかベッドに横になった。
「いてててっ…皆ごめん…心配かけて…何か大事になってきたから言いだせなくて…」
「全く…心配して損したわ…」
ティアがため息をついていると何かを思いついたのかナタリアが手を叩いて明るい表情を見せた。
「そうですわ、皆折角集まったのですからお茶に致しません?美味しいケーキがありますのよ」
「さんせー!!ルークは罰としてケーキ抜き!!」
「えぇ!?」
「はははは…まぁルーク…今回はしょうがないさ」
「ガイ~…」
仲間達が部屋から出て行くとお茶の用意をしに集まっていたメイドや使用人たちも自分の仕事場へと戻っていった。
残されたアッシュとルークは無言の時間が流れた…
「アッシュ…心配かけてごめん…」
「全くだ…くだんねぇことで悩むんじゃねぇ…」
アッシュの相変わらずの口調に苦笑いをするルークは小さく恥ずかしそうに呟いた。
「俺…今すっげー幸せでさ…皆がいて…アッシュが傍にいてくれて…それで俺がちょっと太ったのって
幸せ太りってやつじゃねぇのかなって思って…アッシュに弛んでるって言われそうで…ごめん…」
子供のように悲しそうに凹むルークを見てアッシュはため息をついて部屋を出ようとするが
出る前に一度ルークの方に身体を向けた。
「おい…俺達は完全同位体だ…お前が太った理由はお前だけの責任じゃねぇから…」
「え?じゃぁアッシュも幸せ太り…?」
「な、なわけねぇだろうが!!!この屑が!!!!」
ルークの言葉に顔を真っ赤にさせたアッシュは大きな音を立ててドアを締めた。
アッシュの様子に幸せを感じたルークはまた太ってしまうなと思いながら
上着を着て皆がまつ食堂へと走っていった。
ローレライの好意により二人ともまたこの世界に足を着いた。
そして二人を待っていたのは愛おしい仲間達と世界を変えるという大きな仕事だった…。
そんな大きな仕事を一つずつ終わらせていくアッシュはよく遠くの街にも
出かけている。昔みたいに短時間で行けないので家を開けるのもしばしばだった。
そんな忙しいアッシュが久しぶりに我が家に帰ってみるとメイドの一人が
慌てた様子で帰って来たばかりのアッシュに報告をした。
「アッシュ様ッ…!!ルーク様が…ルーク様がっ…!!」
「あいつが…どうかしたのか?」
メイドのただならぬ様子にめずらしく不安の色を見せたアッシュは
一目散にルークの部屋へと走って行った。
幸せの方程式
ルークの部屋に着いたアッシュは部屋の前で集まっている仲間達の様子に驚いた。
ティア、ナタリア、アニス、ガイそしてジェイドまで部屋の前で集まっている。
しかも皆それぞれ不安そうな顔をしている…いや、ジェイドだけは普段と変わらないが…
「おい…あの屑に何があった…」
「アッシュ!!お帰りなさいませ…それがルークの様子が最近変だとメイド達から報告がありまして…」
仲間達の周りをみればメイドや白光騎士団の騎士達、シェフ達まで集まっているよほどのことなのだろうと思い
近くに居たメイドに状況を聞いた。
「はい…ここ数日食事を残されることが多くて…体調がすぐれないのではと思っていましたら…
今日はアッシュ様がお帰りになるというのに腹痛で寝ているとおっしゃて…」
「ご主人様最近考え事が多かったですの…」
いつも傍にいるミュウが心配そうに部屋のドアを見上げている。
ルークに追い出されたのだろう…部屋に戻りたくてもこの部屋には合い鍵はない。
中に居る本人が鍵を解除して入れてくれないと入れなかった。
アッシュは考えたが今ルークの音素は安定していて消えるということはない…
もし何か変化があればジェイドに相談するはずだが、相談している様子は見当たらない。
ましてや先日二人で受けたジェイドの健康診断では二人とも問題はなかったはずだ。
「おい、ルーク…どうしたんだ?悩みなら俺たちに話せよ…ルーク!!」
親友であるガイがルークに呼びかけても返事は帰って来ない。
ガイがどうしようかと考えていると一人の白光騎士が不安そうな声で話しはじめた。
「き、昨日ルーク様が「ガイもアッシュもいなくて剣の稽古ができないから付き合ってくれと」言われたのですが…
まさかその時私の不慣れな剣を受け止めてお怪我でもされたのでしょうか…」
「それはないと思うなぁ~…」
「あの屑はそこまで屑じゃねぇ…」
「それとも私が作った食事が原因で腹痛を…」
「いいえ、私がお出しした紅茶がお口に合わなかったのかもしれないわ…」
メイドやシェフ達まで自分が行った行為が原因ではと思い次々に不安そうな声をあげた。
そんな声を聞きアッシュは深いため息をつきながらルークの部屋をノックしたが返事はない。
「おい…いい加減出てきたらどうだ…?何があったかしらねぇがガイ達…メイドや騎士団の連中にまで心配掛けやがって…
話があるなら話しやがれ…お…俺でよければ…聞いてやる…」
最後の方アッシュは顔を真っ赤にしながらできるだけやさしく声をかけたが全く反応がない。
アッシュは一度ため息をつくとポケットから鍵を取りだした。
「アッシュ…それは…?」
「この部屋のスペアの鍵だ…こんな時の為に無断で作っておいた」
「えぇ!?それっていいの?」
「…………いいんだよ」
少しだけアッシュは迷ったがドアの鍵を解除し中へと入っていった。
部屋の窓はカーテンで塞がれており、明かりもついていないので昼間なのに少しだけ暗かった。
部屋の主は真ん中に設置されているベッドの中に潜っておりドアが開いたことで
驚いたのか上半身をあげてアッシュと目を合わせた。
「え?えぇ!?何でドア開いてるんだよ…鍵かけたのに…」
「うっせー、細かいこときにするんじゃねぇ」
「いや、気にするだろ」
ガイのツッコミもスルーをしてアッシュはルークへと近づき、
近づいてくるアッシュの視線が怖くなりルークは目線をアッシュから反らす。
「おい…何塞ぎこんでやがる…理由を話しやがれ…」
「え?いや…その…あの…」
ルークは何故かなかなか言い出さない…
そんなルークをみて仲間達は次々に声を出した。
「ルーク…不安なことがあるなら私達に何でも話して、あなたがもう全てをしょいこむことないわ」
「おいルーク…親友に隠し事なんてそりゃないぜ」
「お困りのことがあるのでしたら私何でも力になりますわ」
「そんな不安そうなルークの姿イオン様が見たら悲しむからね」
「私の知恵でよければ…お貸ししますよ」
仲間達の言葉に目を潤ませたルークだったが下を向き全く話そうとはしない。
そんなルークに限界がきたアッシュは深呼吸をして精神を集中させると
ルークが頭を痛そうに押さえ始めた
「いてっ…!!!あ、アッシュ…!!やめろ何勝手に人の心覗きこむんだよ!!」
「うっせ、おめぇが話さないからだ!!」
二人だけの特別回路を使ってルークの心を読みとったアッシュは
目の色を変えた……その色は怒りだ。
「おい…てめぇ…」
「あ…いや…その…あの…」
「そんなくだらねぇことで悩むんじゃねええええええええええええ!!!紋牙鳴衝斬!!!!」
「うわああああああああああああ!!!!!」
アッシュの必殺奥義を食らったルークは部屋の角にまで吹っ飛んだ。
「えぇ!?最近太ったからダイエットをしてた!?」
「はい…」
アニスが屋敷中に聞こえるくらいの大声で声をあげ
仲間達は呆れた顔をしている…
「だ、ダイエットって食事制限からって聞いたから…食べる量を減らして…」
「あ、だから最近食事を残されていたのですね。では腹痛は…?」
「アッシュが今日帰ってくるのに体重が全然減ってなかったから…剣の稽古と腹筋を鍛えてたら…
筋肉痛になって…動けなくて…」
「動けなくなるくらいってどれだけしたんだお前は」
「あはははは…ごめん…」
流石のガイも頭を抱えて呆れた表情を隠し切れていない…
「まぁ、確かに先日の健康診断で体重は若干増えていましたが…1kgぐらい気にすることありませんよ」
「えぇ!?そうなのか…!?」
ショックを受けたルークはがっくりと肩を落とすが身体を動かすと筋肉痛が痛むのかベッドに横になった。
「いてててっ…皆ごめん…心配かけて…何か大事になってきたから言いだせなくて…」
「全く…心配して損したわ…」
ティアがため息をついていると何かを思いついたのかナタリアが手を叩いて明るい表情を見せた。
「そうですわ、皆折角集まったのですからお茶に致しません?美味しいケーキがありますのよ」
「さんせー!!ルークは罰としてケーキ抜き!!」
「えぇ!?」
「はははは…まぁルーク…今回はしょうがないさ」
「ガイ~…」
仲間達が部屋から出て行くとお茶の用意をしに集まっていたメイドや使用人たちも自分の仕事場へと戻っていった。
残されたアッシュとルークは無言の時間が流れた…
「アッシュ…心配かけてごめん…」
「全くだ…くだんねぇことで悩むんじゃねぇ…」
アッシュの相変わらずの口調に苦笑いをするルークは小さく恥ずかしそうに呟いた。
「俺…今すっげー幸せでさ…皆がいて…アッシュが傍にいてくれて…それで俺がちょっと太ったのって
幸せ太りってやつじゃねぇのかなって思って…アッシュに弛んでるって言われそうで…ごめん…」
子供のように悲しそうに凹むルークを見てアッシュはため息をついて部屋を出ようとするが
出る前に一度ルークの方に身体を向けた。
「おい…俺達は完全同位体だ…お前が太った理由はお前だけの責任じゃねぇから…」
「え?じゃぁアッシュも幸せ太り…?」
「な、なわけねぇだろうが!!!この屑が!!!!」
ルークの言葉に顔を真っ赤にさせたアッシュは大きな音を立ててドアを締めた。
アッシュの様子に幸せを感じたルークはまた太ってしまうなと思いながら
上着を着て皆がまつ食堂へと走っていった。
「ガイのファーストキスって…相手誰?」
「さぁなぁ…よく覚えてないな…多分ルークお前だろ…よく覚えてないけど…」
「ふーん…」
The traveler of a dream
「はぁ~…眠い…何で俺が…」
灯を灯す譜業を片手に持ちまだ幼い金髪の少年が広い屋敷の廊下を歩いて行った。
目的地は屋敷の真中にある小さな鳥籠…
太陽が顔を出すにはまだまだ時間があり、真っ暗な世界で少年は歩き続けた…
恐怖がないわけではない、お化けなんかに自分の修行中である剣術が
効くとは思えないが仕事なのでいかなければいけない。
少年の名前はガイ・セシル…ファブレ公爵家で使用人をしている少年だ。
少年のメインの仕事は公爵様の子息であるルーク様のお世話。
そんなルーク様は出会った頃はそこらにいる貴族と変わらず
使用人を冷たい目線で睨みつけるような人物だったが、
誘拐をされてから事件のショックで記憶を失い…赤ん坊へと退化した。
言葉、歩き方…人間として生きるための術を全て置いてどこかへ忘れてきた。
本来ならばそんな赤ん坊同然の世話はもっと上のメイドなどがやるべきだと
ガイは日ごろから思っていたが…歳も近く、記憶をなくす前からルークの世話をしていたので
何かがきっかけで思いだすかもしれないという理由でガイが任命された。
……正確に言えば押しつけられたが正解かもしれない。
いろいろと不満はあったが、自分の目的…その為にルークの世話役は好都合だと思っていたが…
ガイは舐めていた…赤ん坊の世話がどれだけ大変かを。
必死にご飯を食べさせようとしても機嫌が悪ければ食べず、
どれだけ言葉を教えても理解不能な鳴き声しか声をあげず、
歩かせようとしても全く歩くことができず、
どれだけ必死に教えてもルークは全くできなかった…思い出さなかった…
その責任はすべて小さなガイに押しつけられた。
誰も助けてれず…責められ…小さなガイの心は限界に近かった。
唯一の理解者であるペール…陰ながらガイの手伝いをしてくれていたが、
彼は庭師…表立ってガイの手伝いができなかった。
今もガイがこのくらい廊下を歩く理由はルークだった…。
最近ルークが夜泣きをするらしい。
ガイとルークの部屋は少し距離が離れていたので気が付かなかったが、
見回りをしている騎士からの報告でそれを知った。
夜泣きをしているのならそれを止めさせるのが世話係の仕事。
それは解っているが、この夜泣きがまた曲者だった。
どれほどあやしても泣きやまず、ただ抱いて部屋を歩き回り泣き疲れるのを
ただ待つしかない…何時もは数時間で泣きやむが
昨日はそれが明け方まで続き今日ガイはほとんどねていなかった。
昨夜と同じ地獄が今日も続くのかと思うとガイの足取りはどんどん重くなる…。
もっとベテランのメイドとかにしてもらえればいいのに…恋も知らない少年にできるはずがない。
ガイはそう思っても誰かが変わってくれることはない。
中庭に続く廊下を歩いていると聞きなれた泣き声が聞こえてきた。
「はぁ…やっぱりか…」
ガイの足は一度止まるが、止まっていてもこの状況は変わらないので
重い足を一生懸命引っ張りルークの部屋まで歩いていった。
鍵を取り出しドアを開けると頭に響く泣き声がガイの頭に響く…
あぁ…この部屋案外防音効果あったのか…といらぬ考えが脳内を駆け巡った。
「ルーク様…何が不満なのですか…?」
呆れた声で泣き叫ぶルークに話しかける。
するとルークは一度だけ泣くのをやめてガイを見つめたが、
再び大声で泣き出し何が不満なのかガイには全く解らなかった。
まぁ、そもそも話すことができないルークに何が不満かを聞くのが無駄だったが…
ガイは大きなため息をつき、片手に持っていた譜業を床に置きルークの傍へと歩み寄って行く。
「ルーク様…ほら、抱っこしてあげますから泣くのは止めて大人しく寝てください。」
「ひっく…ひっく…うぅ…うわあぁん!!!ヴぁイぃ!!うわああああぁぁん!!!」
ガイが両手を差しだしてルークを抱っこしようとするが、一向に泣きやむ気配はない…
大きなため息をつきルークを抱っこするが…何故かますます泣きだし暴れ始めた。
「やあぁ!!やああああぁ!!!うわあああああああん!!!!」
「ちょ…暴れるなって…っう!!!!」
暴れるルーク手がガイの頬を殴り、反射的にガイはルークを落としてしまい
床に落とされた痛さからかますます泣きだした。
そんなルークの姿にガイが普段溜めていたものが一気に爆発した。
「何だよお前…人が折角世話してやってるのに…俺だって寝むくて…辛くて…
お前の父親のせいで俺の生活は…俺の家族は……もうお前なんてしらねぇ!!!勝手にしろ!!!」
そういうとガイは思いっきりドアを閉めて自分の部屋へと走った。
走っている時に思い出したのは姉の優しい笑顔…両親の笑う顔…屋敷で働いていた皆の嬉しい顔…
必死に走り自分の部屋に戻ると押さえていた涙が一気に溢れ出す…
どうして俺ばっかり…どうして…どうして…助けてよ…マリィ姉さん…
声を抑えて泣いていると同室のペールが起き出しガイの傍に優しく歩み寄る。
ペールはいつも優しかった…唯一ガイの味方だ。
「ガイラルディア様…どうなされましたか?今日はお早いお戻りですね…ルーク様は泣きやまれたのですか?」
「知らねぇ…あんなやつ…もうしらねぇ…」
殴られた頬が少しだけ腫れ何があったか想像がついたペールは優しくガイを抱きしめた。
「お辛いでしょう…ガイラルディア様はよく頑張っておられます…ですが…今はルーク様のところへお行きなさい…」
「何で…俺が…」
ペールならもう行かなくていいと言ってくれると思っていた…
だが、ペールから出た言葉は他の人と同じ言葉…ガイは自分の耳を疑った。
「ここで貴方がルーク様を放置なされば、貴方が今まで積み上げてきた信用が崩れてしまいます。
信頼は一度崩れると中々もとには戻りません…貴方の目的は何ですか?
お辛いのはわかりますが…どうか…どうか…お戻りください…」
「ペール…」
ペールに優しく撫でられるとガイは涙を拭き立ちあがった。
自分の目的…それは公爵への復讐…
それを思い出したガイは再び自分を取り戻した。
「すまない…ペール…行ってくるよ…ありがとうな…」
「いえ…この程度しかできない私をお許しください…」
深く頭を下げるとガイは苦笑いをしながら自室を出て再びルークの部屋へと歩いて行く…
こんどは先ほどとは違い灯はない…自分の心と同じ闇の中を
小さな星明りだけを頼りに歩いていく…
しかし、どれほどルークの部屋に近づいてもルークの泣き声が聞こえない。
さっきはこの辺りからでも微かに泣き声が聞こえたはず…
泣き疲れて寝たのか…?いや、今までの経験上それはない…
一番傍で世話をしている自分がそれは一番解っている…そんなことは絶対にない。
ルークの部屋までくると泣き声の変りに中から歌声が聞こえてきた。
今のルークは話すこともできない赤ん坊…だったら中に誰か居るとしか思えない。
奥方様かと思ったが…この歌声は男…成人男性に近い人物の声だ。
ガイは自分の剣を握りしめおそるおそるドアを開けて中を覗く。
そこには月明かりが反射して顔は見えないが…誰かがベッドの上に居るのが確認できた。
床を見ればさきほど自分が置いていった灯を灯す譜業が置いてあったので、
すばやくそれを取り不審人物の顔を確認するため明かりを付けた。
「そこに居るのは誰だ!!ここを誰の部屋だと思って…い…る…」
「うわっ!!びっくりした………もしかして…ガイか?あははは、可愛いな。」
明かりの先に居たのは見知らぬ男……出会ったことなどないはずだが…
どこかで会った感覚がガイの中をうごめいた。
ガイが驚いたのは自分の中で動いた感覚だけではない…その男の姿にも驚いた。
青年の髪は夕陽のような朱色…そして宝石のような碧…王家の人間だと一目でわかったが、
会ったことがない…どうみても青年は17歳程度…
今の王家に17歳くらいの青年など居なかったはずだ。
「お前…誰だ…何で俺の名前…」
「え?あ…うーん…それはナイショ…」
青年は無邪気な笑顔をガイに向けて膝に乗せた小さな塊を優しく撫でた。
よく見ると青年の膝に居るのはガイの主であるルークだ。
「ルーク!?お前…ルークに何をした!!」
「泣いていたから寝てるだけ…子守唄歌ったらすぐに寝たぜ」
「子守唄…?」
ガイが首を傾げていると青年は片手でこっちに来いと呼んだ。
しぶしぶガイは警戒心を出したまま青年の横に座ると
青年はガイの頭を優しく撫でた…さっきペールが撫でてくれたように優しく、愛おしく…。
「ごめんな…俺…我儘ばっかでお前に迷惑ばっかりかけて…」
「俺…お前と会うの初めてなんだけど…」
「………いいから黙って聞いてろつーの…」
頬を膨らませて拗ねる青年の姿を見て本当に自分より年上なのか怪しく思えてきた。
行動が幼い…まるで10歳前後にしか思えない…いや、それ以下か…?
「うぅ…ん?うぁい…?」
「あ…」
青年の膝で寝ていたルークが目を擦りながら起きてしまった。
ガイと目があったルークは先ほどのことを思い出したのか、ぐずぐずと泣き始めた。
また大泣きするのかとため息をついたが、青年が笑いながらルークを抱きしめると
ルークはきょとんとした顔をして青年を見つめた。
「あはははは…ごめんな、起こしたか?お前寂しいんだよな…夜目が覚めて一人ぼっちで…
だから泣いちゃうんだよな…生まれたばっかりだもんな…」
「何言ってるんだ?ルークはもう10歳だぞ…」
「うん…知ってる…独り言だよ…」
青年はルークの頭を撫でるとルークは嬉しそうに笑いだし青年に甘え始めた。
ルークがこんなに人に懐くことはめったにない…
ましてや初対面ならなおさらだ。
ガイにすら最初はなかなか懐かなかった…なのにこの青年は…
ガイの中で何かもやもやしたものが動いた…何だろうこれは…
「お前…何でルークの気持ち解るんだよ…そいつ人見知り激しいのに…」
「ん?そりゃ……俺だもん…自分のことくらい解るさ…なぁ?」
「にゃぁ~」
猫かよとガイは呟くが二人には聞こえてないようで仲良く笑っている…。
ガイ一人蚊帳の外な気持ちになった…
「さて…そろそろ寝ようか…」
「うー…?あぃ、あぃ、あぃ…」
「………何言ってるんだ?」
ルークが必死にガイの方を向いて何かを訴えている…
しかしガイにはルークが何を言っているのか理解ができない…。
「あははは、これはなガイって呼んでるんだぜ…『ガ』って発音が難しくて
『あ』になってるんだ…たまに上手く発音できて『ヴァ』になってるけど…」
「え…?俺を呼んで…?」
青年がルークをベッドに降ろすと必死にガイに手を伸ばしガイの傍へ行こうとするが、
身体が動かずぐずり始めた。
慌ててガイが抱き上げると嬉しそうに「あぃ、あぃ」と必死に呼んでいる。
青年の言う通りときどき「ヴァ」と言っている…
よくこの言葉を言っていたのを思い出した。
言葉を教えた時に面白半分で自分の名前を教えたのはつい先日だ…
その時からルークはずっとガイを呼んでいた。
けど、ガイはそれに気が付かず…手を差し伸べてあげれなかった…
この狭い鳥籠に閉じ込められている哀れな小鳥に…
「ルーク…ごめん…ごめんな…俺…自分のことばっかりで…」
「しょうがねーよ…ガイだってまだ子供なんだし…」
「あぃ、あぃ…ヴァイ…」
「………何言ってるんだ?」
自分を呼んでいることは解ったが…ガイに何をしてほしいのかは全く理解できず
ふと青年に視線を合わせると青年は笑いながら教えてくれた。
「一緒に寝ようだってさ…一人で寝るのは寂しいんだよ…」
「………わかった…これからはお前が寝るまで傍にいてやるよ…」
ルークの額に優しくキスをするとルークは嬉しそうに無邪気に笑い始めた。
そしてルークを抱えながら枕元に移動すると、
ルークは青年に手を伸ばし何かを訴え始めた。
「あうあ…あーぅ…うぅ~…」
「え?俺も一緒に寝るのか?しょうがねぇなぁ…」
どう見ても理解不能な言葉しかルークは言っていないのだが…
何故この青年には理解できるのだろうか…ガイは不思議でしかたがない。
そして、大人二人で余裕に寝れるルークのベッドにルークを真ん中に置いて
三人は横になったが…何が楽しいのかルークはきゃっきゃっと笑い中々寝ようとしない。
「ルーク…いい加減に寝ろ…」
「ははははは…手がかかってすみません…しょうがねーなぁ…」
青年が息を大きく吸い込むと先ほど聞こえた歌を歌い始めた。
お世辞にも上手いとは言えない歌だが…何故か落ち着く歌だった…
何の歌だろうか…ガイは聞いたことがない…いや…昔故郷でヴァンが唄っていた歌に似ている…気がする。
下手くそすぎて比べられないが…
最近寝不足だったせいかガイまでうとうとしていると
真ん中で寝ていたルークが気持ちよさそうに眠っていた。
ガイがどうやっても中々寝なかったルークが秒殺だった。
「何で…中々寝ないのにこいつ…」
「ははは…子守唄ってそんなもんだよ…ガイもやってみろよ…歌は何でもいいからさ…」
「ふーん…その歌なんて言うんだ…?」
「え?うーん…何だろ…仲間に…友達に教えてもらったからさ…」
苦笑いをしながら青年は答えた。
間近でみる青年の顔…やはりどこかで見たことのある顔だ…
いつも近くで…一番傍で見ている気がする…
「ほら…ガイも寝ろよ…疲れてるだろ…?」
「あぁ…うん…おやすみ…」
「おやすみ…ガイ…」
青年はガイの唇に小さくキスを落とすと、
何故かガイが飛び上がり顔を真っ赤にしながら青年を睨みつけた。
「お、お…お前何してっ…!!!!」
「え?おやすみのキスだよ…いつもしてるだろ?まぁいつもはお前からだけど…」
「ばかっ!!俺…俺…まだキスしたこと…」
「あ…ファーストキスだったか?あー…やっぱり俺だったのか…」
青年はあまり反省していないのか笑いながら答える。
ガイは顔を真っ赤にしたまま男同士ですることに信じられず、
布団に顔を埋めたままいつの間にか眠ってしまっていた。
夢に落ちる中で聞こえたのは青年の優しい声…
「俺…いつもお前に迷惑かけて…ほんと親友失格だよな…
けど、いつも傍に居てくれてありがとうな…愛してるよ…ガイ…」
愛してる…?お前が俺を…?
どうして…?初めて会うのに…どうして…どうして…?
ふと自分の頬を何かが叩く感触でガイは目を覚ました。
頬を叩く相手はもちろんルークだった…。
窓を見ればもう起きなければいけない時間…
何故自分がルークの部屋で寝ているのか思い出せなかったが…
ルークの夜泣きをあやしている最中に寝てしまったのだろう。
けど…誰かと一緒に居ていた気がする…
誰と?
この部屋に入れるのは特別に許された人以外居ないはず…
誰だろう…ガイは思い出せなかった。
考えをめぐらせていると歩けないはずのルークが
必死になってガイの傍へベッドを転がり来ていた。
「あぃ…あぃ…ヴァイ…う~…がい…!!」
「え?ルーク今…俺の名前…」
「あい…がい…あい…」
まだたどたどしい口調だが…だが、しっかりと聞こえた…自分の名前を…
ガイは嬉しくなってルークを強く抱きしめ
そして、昨日まで心に溜まっていたものがどこかへ消し去った。
「ルーク…ルーク…ありがとう…俺の名前…」
「う?うー…がい?」
「ん?どうした?っておい!!!」
ルークに呼ばれ抱きしめていた腕を離すと
いきなりルークはガイの唇にキスをした…いや、正確にはまだ眠いのか重い頭をふらふらさせて
ガイの唇にルークの唇が当たってしまっただけ…事故といえば事故だ。
「お前…俺まだキス…ってお前もか…ん?けど俺…前に誰かとキスした気がする…」
誰とキスをしたんだろう…思い出せない…
ガイはまだ完全に回っていない頭を動かして思い出そうとしたが、
思い出せなかった…
「ガイ…やっぱりお前のファーストキスの相手…俺だわ…」
「…当たり前だろ…俺の人生の中でお前以外にキスする相手いないって」
トゥエ レイ ズェ クロア リョ トゥエ ズェ
クロア リョ ズェ トゥエ リョ レイ ネゥ リョ ズェ
ヴァ レイ ズェ トゥエ ネゥ トゥエ リョ トゥエ クロア
リョ レイ クロア リョ ズェ レイ ヴァ ズェ レイ
ヴァ ネゥ ヴァ レイ ヴァ ネゥ ヴァ ズェ レイ
クロア リョ クロア ネゥ トゥエ レイ クロア リョ ズェ レイ ヴァ
レイ ヴァ ネゥ クロア トゥエ レイ レイ…
「さぁなぁ…よく覚えてないな…多分ルークお前だろ…よく覚えてないけど…」
「ふーん…」
The traveler of a dream
「はぁ~…眠い…何で俺が…」
灯を灯す譜業を片手に持ちまだ幼い金髪の少年が広い屋敷の廊下を歩いて行った。
目的地は屋敷の真中にある小さな鳥籠…
太陽が顔を出すにはまだまだ時間があり、真っ暗な世界で少年は歩き続けた…
恐怖がないわけではない、お化けなんかに自分の修行中である剣術が
効くとは思えないが仕事なのでいかなければいけない。
少年の名前はガイ・セシル…ファブレ公爵家で使用人をしている少年だ。
少年のメインの仕事は公爵様の子息であるルーク様のお世話。
そんなルーク様は出会った頃はそこらにいる貴族と変わらず
使用人を冷たい目線で睨みつけるような人物だったが、
誘拐をされてから事件のショックで記憶を失い…赤ん坊へと退化した。
言葉、歩き方…人間として生きるための術を全て置いてどこかへ忘れてきた。
本来ならばそんな赤ん坊同然の世話はもっと上のメイドなどがやるべきだと
ガイは日ごろから思っていたが…歳も近く、記憶をなくす前からルークの世話をしていたので
何かがきっかけで思いだすかもしれないという理由でガイが任命された。
……正確に言えば押しつけられたが正解かもしれない。
いろいろと不満はあったが、自分の目的…その為にルークの世話役は好都合だと思っていたが…
ガイは舐めていた…赤ん坊の世話がどれだけ大変かを。
必死にご飯を食べさせようとしても機嫌が悪ければ食べず、
どれだけ言葉を教えても理解不能な鳴き声しか声をあげず、
歩かせようとしても全く歩くことができず、
どれだけ必死に教えてもルークは全くできなかった…思い出さなかった…
その責任はすべて小さなガイに押しつけられた。
誰も助けてれず…責められ…小さなガイの心は限界に近かった。
唯一の理解者であるペール…陰ながらガイの手伝いをしてくれていたが、
彼は庭師…表立ってガイの手伝いができなかった。
今もガイがこのくらい廊下を歩く理由はルークだった…。
最近ルークが夜泣きをするらしい。
ガイとルークの部屋は少し距離が離れていたので気が付かなかったが、
見回りをしている騎士からの報告でそれを知った。
夜泣きをしているのならそれを止めさせるのが世話係の仕事。
それは解っているが、この夜泣きがまた曲者だった。
どれほどあやしても泣きやまず、ただ抱いて部屋を歩き回り泣き疲れるのを
ただ待つしかない…何時もは数時間で泣きやむが
昨日はそれが明け方まで続き今日ガイはほとんどねていなかった。
昨夜と同じ地獄が今日も続くのかと思うとガイの足取りはどんどん重くなる…。
もっとベテランのメイドとかにしてもらえればいいのに…恋も知らない少年にできるはずがない。
ガイはそう思っても誰かが変わってくれることはない。
中庭に続く廊下を歩いていると聞きなれた泣き声が聞こえてきた。
「はぁ…やっぱりか…」
ガイの足は一度止まるが、止まっていてもこの状況は変わらないので
重い足を一生懸命引っ張りルークの部屋まで歩いていった。
鍵を取り出しドアを開けると頭に響く泣き声がガイの頭に響く…
あぁ…この部屋案外防音効果あったのか…といらぬ考えが脳内を駆け巡った。
「ルーク様…何が不満なのですか…?」
呆れた声で泣き叫ぶルークに話しかける。
するとルークは一度だけ泣くのをやめてガイを見つめたが、
再び大声で泣き出し何が不満なのかガイには全く解らなかった。
まぁ、そもそも話すことができないルークに何が不満かを聞くのが無駄だったが…
ガイは大きなため息をつき、片手に持っていた譜業を床に置きルークの傍へと歩み寄って行く。
「ルーク様…ほら、抱っこしてあげますから泣くのは止めて大人しく寝てください。」
「ひっく…ひっく…うぅ…うわあぁん!!!ヴぁイぃ!!うわああああぁぁん!!!」
ガイが両手を差しだしてルークを抱っこしようとするが、一向に泣きやむ気配はない…
大きなため息をつきルークを抱っこするが…何故かますます泣きだし暴れ始めた。
「やあぁ!!やああああぁ!!!うわあああああああん!!!!」
「ちょ…暴れるなって…っう!!!!」
暴れるルーク手がガイの頬を殴り、反射的にガイはルークを落としてしまい
床に落とされた痛さからかますます泣きだした。
そんなルークの姿にガイが普段溜めていたものが一気に爆発した。
「何だよお前…人が折角世話してやってるのに…俺だって寝むくて…辛くて…
お前の父親のせいで俺の生活は…俺の家族は……もうお前なんてしらねぇ!!!勝手にしろ!!!」
そういうとガイは思いっきりドアを閉めて自分の部屋へと走った。
走っている時に思い出したのは姉の優しい笑顔…両親の笑う顔…屋敷で働いていた皆の嬉しい顔…
必死に走り自分の部屋に戻ると押さえていた涙が一気に溢れ出す…
どうして俺ばっかり…どうして…どうして…助けてよ…マリィ姉さん…
声を抑えて泣いていると同室のペールが起き出しガイの傍に優しく歩み寄る。
ペールはいつも優しかった…唯一ガイの味方だ。
「ガイラルディア様…どうなされましたか?今日はお早いお戻りですね…ルーク様は泣きやまれたのですか?」
「知らねぇ…あんなやつ…もうしらねぇ…」
殴られた頬が少しだけ腫れ何があったか想像がついたペールは優しくガイを抱きしめた。
「お辛いでしょう…ガイラルディア様はよく頑張っておられます…ですが…今はルーク様のところへお行きなさい…」
「何で…俺が…」
ペールならもう行かなくていいと言ってくれると思っていた…
だが、ペールから出た言葉は他の人と同じ言葉…ガイは自分の耳を疑った。
「ここで貴方がルーク様を放置なされば、貴方が今まで積み上げてきた信用が崩れてしまいます。
信頼は一度崩れると中々もとには戻りません…貴方の目的は何ですか?
お辛いのはわかりますが…どうか…どうか…お戻りください…」
「ペール…」
ペールに優しく撫でられるとガイは涙を拭き立ちあがった。
自分の目的…それは公爵への復讐…
それを思い出したガイは再び自分を取り戻した。
「すまない…ペール…行ってくるよ…ありがとうな…」
「いえ…この程度しかできない私をお許しください…」
深く頭を下げるとガイは苦笑いをしながら自室を出て再びルークの部屋へと歩いて行く…
こんどは先ほどとは違い灯はない…自分の心と同じ闇の中を
小さな星明りだけを頼りに歩いていく…
しかし、どれほどルークの部屋に近づいてもルークの泣き声が聞こえない。
さっきはこの辺りからでも微かに泣き声が聞こえたはず…
泣き疲れて寝たのか…?いや、今までの経験上それはない…
一番傍で世話をしている自分がそれは一番解っている…そんなことは絶対にない。
ルークの部屋までくると泣き声の変りに中から歌声が聞こえてきた。
今のルークは話すこともできない赤ん坊…だったら中に誰か居るとしか思えない。
奥方様かと思ったが…この歌声は男…成人男性に近い人物の声だ。
ガイは自分の剣を握りしめおそるおそるドアを開けて中を覗く。
そこには月明かりが反射して顔は見えないが…誰かがベッドの上に居るのが確認できた。
床を見ればさきほど自分が置いていった灯を灯す譜業が置いてあったので、
すばやくそれを取り不審人物の顔を確認するため明かりを付けた。
「そこに居るのは誰だ!!ここを誰の部屋だと思って…い…る…」
「うわっ!!びっくりした………もしかして…ガイか?あははは、可愛いな。」
明かりの先に居たのは見知らぬ男……出会ったことなどないはずだが…
どこかで会った感覚がガイの中をうごめいた。
ガイが驚いたのは自分の中で動いた感覚だけではない…その男の姿にも驚いた。
青年の髪は夕陽のような朱色…そして宝石のような碧…王家の人間だと一目でわかったが、
会ったことがない…どうみても青年は17歳程度…
今の王家に17歳くらいの青年など居なかったはずだ。
「お前…誰だ…何で俺の名前…」
「え?あ…うーん…それはナイショ…」
青年は無邪気な笑顔をガイに向けて膝に乗せた小さな塊を優しく撫でた。
よく見ると青年の膝に居るのはガイの主であるルークだ。
「ルーク!?お前…ルークに何をした!!」
「泣いていたから寝てるだけ…子守唄歌ったらすぐに寝たぜ」
「子守唄…?」
ガイが首を傾げていると青年は片手でこっちに来いと呼んだ。
しぶしぶガイは警戒心を出したまま青年の横に座ると
青年はガイの頭を優しく撫でた…さっきペールが撫でてくれたように優しく、愛おしく…。
「ごめんな…俺…我儘ばっかでお前に迷惑ばっかりかけて…」
「俺…お前と会うの初めてなんだけど…」
「………いいから黙って聞いてろつーの…」
頬を膨らませて拗ねる青年の姿を見て本当に自分より年上なのか怪しく思えてきた。
行動が幼い…まるで10歳前後にしか思えない…いや、それ以下か…?
「うぅ…ん?うぁい…?」
「あ…」
青年の膝で寝ていたルークが目を擦りながら起きてしまった。
ガイと目があったルークは先ほどのことを思い出したのか、ぐずぐずと泣き始めた。
また大泣きするのかとため息をついたが、青年が笑いながらルークを抱きしめると
ルークはきょとんとした顔をして青年を見つめた。
「あはははは…ごめんな、起こしたか?お前寂しいんだよな…夜目が覚めて一人ぼっちで…
だから泣いちゃうんだよな…生まれたばっかりだもんな…」
「何言ってるんだ?ルークはもう10歳だぞ…」
「うん…知ってる…独り言だよ…」
青年はルークの頭を撫でるとルークは嬉しそうに笑いだし青年に甘え始めた。
ルークがこんなに人に懐くことはめったにない…
ましてや初対面ならなおさらだ。
ガイにすら最初はなかなか懐かなかった…なのにこの青年は…
ガイの中で何かもやもやしたものが動いた…何だろうこれは…
「お前…何でルークの気持ち解るんだよ…そいつ人見知り激しいのに…」
「ん?そりゃ……俺だもん…自分のことくらい解るさ…なぁ?」
「にゃぁ~」
猫かよとガイは呟くが二人には聞こえてないようで仲良く笑っている…。
ガイ一人蚊帳の外な気持ちになった…
「さて…そろそろ寝ようか…」
「うー…?あぃ、あぃ、あぃ…」
「………何言ってるんだ?」
ルークが必死にガイの方を向いて何かを訴えている…
しかしガイにはルークが何を言っているのか理解ができない…。
「あははは、これはなガイって呼んでるんだぜ…『ガ』って発音が難しくて
『あ』になってるんだ…たまに上手く発音できて『ヴァ』になってるけど…」
「え…?俺を呼んで…?」
青年がルークをベッドに降ろすと必死にガイに手を伸ばしガイの傍へ行こうとするが、
身体が動かずぐずり始めた。
慌ててガイが抱き上げると嬉しそうに「あぃ、あぃ」と必死に呼んでいる。
青年の言う通りときどき「ヴァ」と言っている…
よくこの言葉を言っていたのを思い出した。
言葉を教えた時に面白半分で自分の名前を教えたのはつい先日だ…
その時からルークはずっとガイを呼んでいた。
けど、ガイはそれに気が付かず…手を差し伸べてあげれなかった…
この狭い鳥籠に閉じ込められている哀れな小鳥に…
「ルーク…ごめん…ごめんな…俺…自分のことばっかりで…」
「しょうがねーよ…ガイだってまだ子供なんだし…」
「あぃ、あぃ…ヴァイ…」
「………何言ってるんだ?」
自分を呼んでいることは解ったが…ガイに何をしてほしいのかは全く理解できず
ふと青年に視線を合わせると青年は笑いながら教えてくれた。
「一緒に寝ようだってさ…一人で寝るのは寂しいんだよ…」
「………わかった…これからはお前が寝るまで傍にいてやるよ…」
ルークの額に優しくキスをするとルークは嬉しそうに無邪気に笑い始めた。
そしてルークを抱えながら枕元に移動すると、
ルークは青年に手を伸ばし何かを訴え始めた。
「あうあ…あーぅ…うぅ~…」
「え?俺も一緒に寝るのか?しょうがねぇなぁ…」
どう見ても理解不能な言葉しかルークは言っていないのだが…
何故この青年には理解できるのだろうか…ガイは不思議でしかたがない。
そして、大人二人で余裕に寝れるルークのベッドにルークを真ん中に置いて
三人は横になったが…何が楽しいのかルークはきゃっきゃっと笑い中々寝ようとしない。
「ルーク…いい加減に寝ろ…」
「ははははは…手がかかってすみません…しょうがねーなぁ…」
青年が息を大きく吸い込むと先ほど聞こえた歌を歌い始めた。
お世辞にも上手いとは言えない歌だが…何故か落ち着く歌だった…
何の歌だろうか…ガイは聞いたことがない…いや…昔故郷でヴァンが唄っていた歌に似ている…気がする。
下手くそすぎて比べられないが…
最近寝不足だったせいかガイまでうとうとしていると
真ん中で寝ていたルークが気持ちよさそうに眠っていた。
ガイがどうやっても中々寝なかったルークが秒殺だった。
「何で…中々寝ないのにこいつ…」
「ははは…子守唄ってそんなもんだよ…ガイもやってみろよ…歌は何でもいいからさ…」
「ふーん…その歌なんて言うんだ…?」
「え?うーん…何だろ…仲間に…友達に教えてもらったからさ…」
苦笑いをしながら青年は答えた。
間近でみる青年の顔…やはりどこかで見たことのある顔だ…
いつも近くで…一番傍で見ている気がする…
「ほら…ガイも寝ろよ…疲れてるだろ…?」
「あぁ…うん…おやすみ…」
「おやすみ…ガイ…」
青年はガイの唇に小さくキスを落とすと、
何故かガイが飛び上がり顔を真っ赤にしながら青年を睨みつけた。
「お、お…お前何してっ…!!!!」
「え?おやすみのキスだよ…いつもしてるだろ?まぁいつもはお前からだけど…」
「ばかっ!!俺…俺…まだキスしたこと…」
「あ…ファーストキスだったか?あー…やっぱり俺だったのか…」
青年はあまり反省していないのか笑いながら答える。
ガイは顔を真っ赤にしたまま男同士ですることに信じられず、
布団に顔を埋めたままいつの間にか眠ってしまっていた。
夢に落ちる中で聞こえたのは青年の優しい声…
「俺…いつもお前に迷惑かけて…ほんと親友失格だよな…
けど、いつも傍に居てくれてありがとうな…愛してるよ…ガイ…」
愛してる…?お前が俺を…?
どうして…?初めて会うのに…どうして…どうして…?
ふと自分の頬を何かが叩く感触でガイは目を覚ました。
頬を叩く相手はもちろんルークだった…。
窓を見ればもう起きなければいけない時間…
何故自分がルークの部屋で寝ているのか思い出せなかったが…
ルークの夜泣きをあやしている最中に寝てしまったのだろう。
けど…誰かと一緒に居ていた気がする…
誰と?
この部屋に入れるのは特別に許された人以外居ないはず…
誰だろう…ガイは思い出せなかった。
考えをめぐらせていると歩けないはずのルークが
必死になってガイの傍へベッドを転がり来ていた。
「あぃ…あぃ…ヴァイ…う~…がい…!!」
「え?ルーク今…俺の名前…」
「あい…がい…あい…」
まだたどたどしい口調だが…だが、しっかりと聞こえた…自分の名前を…
ガイは嬉しくなってルークを強く抱きしめ
そして、昨日まで心に溜まっていたものがどこかへ消し去った。
「ルーク…ルーク…ありがとう…俺の名前…」
「う?うー…がい?」
「ん?どうした?っておい!!!」
ルークに呼ばれ抱きしめていた腕を離すと
いきなりルークはガイの唇にキスをした…いや、正確にはまだ眠いのか重い頭をふらふらさせて
ガイの唇にルークの唇が当たってしまっただけ…事故といえば事故だ。
「お前…俺まだキス…ってお前もか…ん?けど俺…前に誰かとキスした気がする…」
誰とキスをしたんだろう…思い出せない…
ガイはまだ完全に回っていない頭を動かして思い出そうとしたが、
思い出せなかった…
「ガイ…やっぱりお前のファーストキスの相手…俺だわ…」
「…当たり前だろ…俺の人生の中でお前以外にキスする相手いないって」
トゥエ レイ ズェ クロア リョ トゥエ ズェ
クロア リョ ズェ トゥエ リョ レイ ネゥ リョ ズェ
ヴァ レイ ズェ トゥエ ネゥ トゥエ リョ トゥエ クロア
リョ レイ クロア リョ ズェ レイ ヴァ ズェ レイ
ヴァ ネゥ ヴァ レイ ヴァ ネゥ ヴァ ズェ レイ
クロア リョ クロア ネゥ トゥエ レイ クロア リョ ズェ レイ ヴァ
レイ ヴァ ネゥ クロア トゥエ レイ レイ…
ツイブレネタ若干有なので注意。
日ごろからルークの幸せを願っているのですが…
ガイルートをして涙が止まらなくて…
ルーク…!!!
そんなのでもしも…ということでかいてみました。
つーか公式はガイルクを認めてるのか…?
日ごろからルークの幸せを願っているのですが…
ガイルートをして涙が止まらなくて…
ルーク…!!!
そんなのでもしも…ということでかいてみました。
つーか公式はガイルクを認めてるのか…?
エターナルソードの遺跡を目指す為一度街へ寄ったユーリ。
あまり目立たないように買いものをしているを街の一角で騒ぎが起きていることに
気が付いた…ユーリの性格上街中で起きた騒ぎをそのまま見過ごすことはできなかった。
「ったく…俺何かとりつかれてるんじゃねぇの?」
買ったばかりの荷物を片手にユーリは騒ぎの方へと足を向けた。
ルークを幸せにしたいと思った
群衆が群がるところをすり抜けて現場がよく見えるところまでくると、
騒ぎを起こしていたのは茶色の毛を持つ少年、ピンク色の少女そして赤毛の青年だった。
「お前の方がぶつかってきたんだろ!!謝れよ!!」
「はぁ?俺は悪くねーし、お前が謝れよ!!」
「ちょっとカイウス!!いい加減にしなさいよ!!」
話を流れから多分少年と青年がぶつかり両方が謝罪を求めていることが解った…
よくあるパターンの喧嘩だ…
こんな小さな喧嘩では自分のでる幕ではないと判断したユーリはその場を
後にしようとしたが、群衆の小声が耳に入りその足は止まった。
「おい…あの茶色の少年…獣人じゃねーか?」
「マジかよ…だったらマナの枯渇もあいつのせいじゃん…」
言いがかりにもほどがある…
マナが枯渇している原因は彼のせいではない…世界樹が異変を起こしているからだ。
けど人間は誰かのせいにしないと心が落ち着かない生き物…
災いをもたらすと噂される獣人は良い獲物なのだろう。
ユーリはそんなみにくい心にため息をつくが、
その小声話はどんどん広がりその場に居た街の人々の目が殺意に変っていくのがわかった。
「ねぇ…カイウス…」
「あぁ…逃げるぞルビア…」
二人は同時に視線を合わせると一目散にその場から逃げ出し、
それに合わせて街の人々も二人を追いかけてその場から走りだした。
「え?あ…ちょ…何だよお前!!逃げんじゃねーよ!!おいこら待ちやがれ!!」
赤毛の青年は人々が一斉に移動したことに驚き、
少し茫然としていたがすぐに我に返ると喧嘩をしていた少年を追いかける為に
その道を走りだそうとした。
だが、ユーリがその肩を掴んで青年の動きを止めた。
「ちょいまち。何でお前まで追いかけるんだ…獣人だからか?」
「はぁ?お前だれ?つーか獣人?そんなの関係ねーし、俺はただあいつに謝罪させたいだけだつーの」
「本当にそれだけか?」
「それ以外に理由なんてねーし。つーかあいつが獣人?なわけねーだろ。
獣人っていうのはな…二本足で歩く犬のことなんだぞ」
青年の言葉にユーリは呆気にとられた。
それは森に住む魔物だろ…それとも変身後の彼らのことを言っているのだろうか…
ユーリには青年の言葉が理解できなかった。
「そうだ…お前俺をあいつのところまで連れていけよ。暇だろ?後で報酬は好きなだけ払ってやるよ」
「はぁ?」
言い方からして貴族の息子なのだろうか…ユーリの苦手なタイプの人間と判断した。
これ以上関わらないように断って逃げようと思ったが青年はユーリの腕を掴み
少年達が逃げていった方へと足を向けていった。
「あ…おい…俺はまだ返事してねぇ…」
「いいからいいから。ほら行くぞ。黙って俺についてこい!!」
青年は腰に刺していた剣を抜きとり少年を追いかけて行った。
ここで黙って消えたらいいものの、ユーリにはそれができずため息を一つついて
青年の後を追いかけて行った。
街の人々を気絶させ、少年に追いつき少年達と対決し見事勝利したユーリと青年は
ようやく剣を納めることができた。
「だあぁー…もう手こずらせるんじゃねぇつーの!!」
「くそ…お前も俺が獣人だから追いかけて来たのか…いいさ、好きにしろ!!
けどな…ルビアには手出すんじゃねぞ!!」
「カイウス…」
カイウスと呼ばれた獣人の少年の服を掴みルビアは悲しそうな目でルークを睨みつけた。
そんな二人を余所に赤毛の青年は状況が飲み込めていないのか頭を掻いてため息をついた。
「はぁ?お前が獣人とかどうでもいいし。つーか俺にぶつかっただろ謝れ!!」
「え?そ、それだけの理由で追いかけてきたのかよ…」
「そうらしいぜ…たっく俺まで巻き込みやがっていい迷惑だ」
全く無関係だったユーリは大きなため息をつき赤毛の青年を横目で見た。
見事なその赤毛と碧の瞳…ユーリの記憶が正しければ彼の名は…
「アンタ…差別しないのかよ…俺獣人なのに…」
「はぁ?何で俺が差別なんてしなきゃいけねーんだよ。めんどくせぇ…」
めんどくさそうにカイウスに一言放つが少し青年の表情が歪んだ。
それを見逃すことのなかったカイウスとルビアは怪我をしているが
反撃をいつでも取れる体制に入った。
そんな彼らを余所に青年はユーリの方に顔を向けた。
「おい、お前」
「なんだよ。」
「差別ってなんだ?食いものか?」
「…………………はぁ!?」
流石のユーリも大声で呆れた声を出してしまった。
差別の意味を知らない人間なんて初めてみたからだ…
どこまで純粋なのか…いや、ただ超箱入り息子なのだろうか…
そもそも何故この話の流れで差別=食べ物と連想できるのか…
貴族の思考はわからないと改めてユーリは思った。
「差別つーのは……………とりあえず食いものじゃねぇ、あと悪いことだ。」
「ふーん…興味ねーからいいや」
ユーリはがっくりと肩を落とした。
この青年の教育係の顔を見てみたい…心からそう思った。
カイウスとルビアを見てもルークの発言に呆気に取られ戦闘意欲は無くなっていた。
「おい!!さっさと謝れよ!!」
「え?あ…俺が悪かった…ごめん」
「素直に最初からそう言えよな。あー…だりぃ、うぜぇ…」
やっと満足したのか嬉しそうな顔をすると肩を回して身体の疲れを取る行動をした。
笑う顔は幼い顔だが…知能は7歳児程度かもしれない。
「さてと…遺跡に向かって行くとするか」
「遺跡だと?」
そのキーワードにユーリの瞳は険しいものとなった。
遺跡の中にあるエターナルソード…彼もそれを狙っているのだろうと判断ができる。
一体何の目的で…
「遺跡に何の用なんだ?」
「あ?んー…まぁ…教えてやるか…遺跡の中に眠るエターナルソードを使ってだな…
マナの枯渇問題を解決できるんだぜ!!俺はその為に選ばれた英雄なんだ、すげーだろ!!」
まるで子供が自分の夢を語るように無邪気に語る。
青年の目的は他のエターナルソードを狙う人達とは理由が違うようだが…
狙っているのなら敵だ…ここで潰しておくのが一番いいだろうとユーリは考える。
「マナが枯渇し始めてからさ…俺の母上の体調が悪いんだ…それに国民のやつらも…
ペールだって花が綺麗に咲かなくなったって言ってるし…だから…俺がやろうって…
俺が選ばれたんだから…やらなくちゃって…そう思ってな…」
照れくさそうに笑う青年からは自分の欲望などは一切見えなかった…
ただ人を救いたい…それだけ…
この青年は他のエターナルソードを狙っているやつらとは違う…
そんなところにユーリは青年に興味を持った。
「それに世界を救えれば…父上も…俺を見てくれるかなって…アッシュばっかりじゃなくて…
できそこないの俺でも…たまには見てくれるかなって…」
今度は辛そうな表情をしながら呟くように語りだした。
そんな小さな願い…だけど彼に取ってはとても大きな願いなのだろう…
ユーリは無意識に青年の頭を撫でた。
「な、何してやがる!!子供扱いするんじゃねー!!」
「はははっ…悪い悪い。俺も遺跡目指してるんだ…お前がエターナルソードを使ったあと…
俺に渡してくれねぇか?その条件をのんでくれるなら一緒にいかないか?一人だと何かと都合悪いだろ?」
「はぁ…?まぁ…いいけど…俺の足はひっぱるなよ!!」
「へいへい」
楽しそうにユーリは笑うと少し照れくさそうにしている青年の顔をまじまじと見る。
青年はその視線に気が付くと顔を真っ赤にして歩き出した。
「おい…何処行くんだ?」
「遺跡だよい・せ・き。」
「そっち逆方向だぞ…遺跡はあっちだ」
青年が行こうとしている方向は遺跡とは逆方向…
本当に遺跡を目指しているのか不安になってきた。
「はぁ?あっちだと俺が来た方角じゃねーか。嘘つくなつーの」
「……お前遺跡の方角誰に教えてもらったんだ?」
真顔で答える青年にただの方向音痴なのかと思ったが、
そうではなさそうだ…だって自分が来た道を解っているのだから。
方向音痴は自分の来た道すらわからないものだ。
「ん?アッシュ。太陽の沈む方角にいけば遺跡につくって言ってたぜ。
だから太陽がある方角に向かって歩いてきたんだ。」
「ちなみに…お前が歩き出したのは何時頃だ?」
「今朝。」
ユーリは盛大にため息をついた。
太陽の沈む方角は西だ…朝に太陽のある方角を向いて歩いたのならそれは東に向いてあるいたことになる。
完全に真逆だ……天然なのか、純粋なのか…はたまたただの馬鹿なのか…選択が増えた。
「はははは…お前ホント面白いな…まぁ、俺が無事に連れて行ってやるよ…お前名前は?」
「ルーク。ルーク・フォン・ファブレだ」
「そうか…俺の名前はユーリ・ローウェル…よろしくな」
ユーリが手を差しだすと眉を寄せて嫌な顔をしたが、
しぶしぶ手を出して握手をした。
「あだ名がねーと不便だな…よし、お前真っ黒いし何か犯罪者っぽいから大罪人な」
「まて。俺のどこをどう見たら犯罪人なんだ。勝手に変なあだな付けるな」
あながち間違えていないところが怖いところだ。
ルークはユーリのことを知らないはずだ…
それなのにそんなあだ名を付けるのは…直観力なのだろうか…
苦笑いをしていたユーリはお返しとばかりルークのあだ名を考えた。
「じゃぁ、お前はお坊ちゃんだな」
「はぁ!?なんだよそれ!!意味わかんねーし!!!」
ルークはカンカンに怒りながら正しい遺跡の方角へと足を向けた。
その様子を笑いながら見ていたユーリはルークの後を追いかけて行った。
そして残されたカイウスとルビアは呆れた表情をして二人の背中を見守った。
「世の中…変った人間も多いんだな…」
「そうね…」
その頃。
正しい道を進んでいたら遺跡に着いて居たはずだったが、
道を間違えてしまって追いかけてきたガイの方が一人早く遺跡に辿り着いた。
「ルーーーーーーーーークーーーーーーーーー!!!!!!どこだああああああああああ!!!!
どこにいるんだあああああああああああ!!!ルーーーーーーークーーーーーーーー!!!」
「か、カイル…変な人が居る…」
「だ、大丈夫だよリアラ…俺が絶対に守るから…」
遺跡の角で怯える二人を余所にガイは必死にルークを探すが見つからなかった。
あまり目立たないように買いものをしているを街の一角で騒ぎが起きていることに
気が付いた…ユーリの性格上街中で起きた騒ぎをそのまま見過ごすことはできなかった。
「ったく…俺何かとりつかれてるんじゃねぇの?」
買ったばかりの荷物を片手にユーリは騒ぎの方へと足を向けた。
ルークを幸せにしたいと思った
群衆が群がるところをすり抜けて現場がよく見えるところまでくると、
騒ぎを起こしていたのは茶色の毛を持つ少年、ピンク色の少女そして赤毛の青年だった。
「お前の方がぶつかってきたんだろ!!謝れよ!!」
「はぁ?俺は悪くねーし、お前が謝れよ!!」
「ちょっとカイウス!!いい加減にしなさいよ!!」
話を流れから多分少年と青年がぶつかり両方が謝罪を求めていることが解った…
よくあるパターンの喧嘩だ…
こんな小さな喧嘩では自分のでる幕ではないと判断したユーリはその場を
後にしようとしたが、群衆の小声が耳に入りその足は止まった。
「おい…あの茶色の少年…獣人じゃねーか?」
「マジかよ…だったらマナの枯渇もあいつのせいじゃん…」
言いがかりにもほどがある…
マナが枯渇している原因は彼のせいではない…世界樹が異変を起こしているからだ。
けど人間は誰かのせいにしないと心が落ち着かない生き物…
災いをもたらすと噂される獣人は良い獲物なのだろう。
ユーリはそんなみにくい心にため息をつくが、
その小声話はどんどん広がりその場に居た街の人々の目が殺意に変っていくのがわかった。
「ねぇ…カイウス…」
「あぁ…逃げるぞルビア…」
二人は同時に視線を合わせると一目散にその場から逃げ出し、
それに合わせて街の人々も二人を追いかけてその場から走りだした。
「え?あ…ちょ…何だよお前!!逃げんじゃねーよ!!おいこら待ちやがれ!!」
赤毛の青年は人々が一斉に移動したことに驚き、
少し茫然としていたがすぐに我に返ると喧嘩をしていた少年を追いかける為に
その道を走りだそうとした。
だが、ユーリがその肩を掴んで青年の動きを止めた。
「ちょいまち。何でお前まで追いかけるんだ…獣人だからか?」
「はぁ?お前だれ?つーか獣人?そんなの関係ねーし、俺はただあいつに謝罪させたいだけだつーの」
「本当にそれだけか?」
「それ以外に理由なんてねーし。つーかあいつが獣人?なわけねーだろ。
獣人っていうのはな…二本足で歩く犬のことなんだぞ」
青年の言葉にユーリは呆気にとられた。
それは森に住む魔物だろ…それとも変身後の彼らのことを言っているのだろうか…
ユーリには青年の言葉が理解できなかった。
「そうだ…お前俺をあいつのところまで連れていけよ。暇だろ?後で報酬は好きなだけ払ってやるよ」
「はぁ?」
言い方からして貴族の息子なのだろうか…ユーリの苦手なタイプの人間と判断した。
これ以上関わらないように断って逃げようと思ったが青年はユーリの腕を掴み
少年達が逃げていった方へと足を向けていった。
「あ…おい…俺はまだ返事してねぇ…」
「いいからいいから。ほら行くぞ。黙って俺についてこい!!」
青年は腰に刺していた剣を抜きとり少年を追いかけて行った。
ここで黙って消えたらいいものの、ユーリにはそれができずため息を一つついて
青年の後を追いかけて行った。
街の人々を気絶させ、少年に追いつき少年達と対決し見事勝利したユーリと青年は
ようやく剣を納めることができた。
「だあぁー…もう手こずらせるんじゃねぇつーの!!」
「くそ…お前も俺が獣人だから追いかけて来たのか…いいさ、好きにしろ!!
けどな…ルビアには手出すんじゃねぞ!!」
「カイウス…」
カイウスと呼ばれた獣人の少年の服を掴みルビアは悲しそうな目でルークを睨みつけた。
そんな二人を余所に赤毛の青年は状況が飲み込めていないのか頭を掻いてため息をついた。
「はぁ?お前が獣人とかどうでもいいし。つーか俺にぶつかっただろ謝れ!!」
「え?そ、それだけの理由で追いかけてきたのかよ…」
「そうらしいぜ…たっく俺まで巻き込みやがっていい迷惑だ」
全く無関係だったユーリは大きなため息をつき赤毛の青年を横目で見た。
見事なその赤毛と碧の瞳…ユーリの記憶が正しければ彼の名は…
「アンタ…差別しないのかよ…俺獣人なのに…」
「はぁ?何で俺が差別なんてしなきゃいけねーんだよ。めんどくせぇ…」
めんどくさそうにカイウスに一言放つが少し青年の表情が歪んだ。
それを見逃すことのなかったカイウスとルビアは怪我をしているが
反撃をいつでも取れる体制に入った。
そんな彼らを余所に青年はユーリの方に顔を向けた。
「おい、お前」
「なんだよ。」
「差別ってなんだ?食いものか?」
「…………………はぁ!?」
流石のユーリも大声で呆れた声を出してしまった。
差別の意味を知らない人間なんて初めてみたからだ…
どこまで純粋なのか…いや、ただ超箱入り息子なのだろうか…
そもそも何故この話の流れで差別=食べ物と連想できるのか…
貴族の思考はわからないと改めてユーリは思った。
「差別つーのは……………とりあえず食いものじゃねぇ、あと悪いことだ。」
「ふーん…興味ねーからいいや」
ユーリはがっくりと肩を落とした。
この青年の教育係の顔を見てみたい…心からそう思った。
カイウスとルビアを見てもルークの発言に呆気に取られ戦闘意欲は無くなっていた。
「おい!!さっさと謝れよ!!」
「え?あ…俺が悪かった…ごめん」
「素直に最初からそう言えよな。あー…だりぃ、うぜぇ…」
やっと満足したのか嬉しそうな顔をすると肩を回して身体の疲れを取る行動をした。
笑う顔は幼い顔だが…知能は7歳児程度かもしれない。
「さてと…遺跡に向かって行くとするか」
「遺跡だと?」
そのキーワードにユーリの瞳は険しいものとなった。
遺跡の中にあるエターナルソード…彼もそれを狙っているのだろうと判断ができる。
一体何の目的で…
「遺跡に何の用なんだ?」
「あ?んー…まぁ…教えてやるか…遺跡の中に眠るエターナルソードを使ってだな…
マナの枯渇問題を解決できるんだぜ!!俺はその為に選ばれた英雄なんだ、すげーだろ!!」
まるで子供が自分の夢を語るように無邪気に語る。
青年の目的は他のエターナルソードを狙う人達とは理由が違うようだが…
狙っているのなら敵だ…ここで潰しておくのが一番いいだろうとユーリは考える。
「マナが枯渇し始めてからさ…俺の母上の体調が悪いんだ…それに国民のやつらも…
ペールだって花が綺麗に咲かなくなったって言ってるし…だから…俺がやろうって…
俺が選ばれたんだから…やらなくちゃって…そう思ってな…」
照れくさそうに笑う青年からは自分の欲望などは一切見えなかった…
ただ人を救いたい…それだけ…
この青年は他のエターナルソードを狙っているやつらとは違う…
そんなところにユーリは青年に興味を持った。
「それに世界を救えれば…父上も…俺を見てくれるかなって…アッシュばっかりじゃなくて…
できそこないの俺でも…たまには見てくれるかなって…」
今度は辛そうな表情をしながら呟くように語りだした。
そんな小さな願い…だけど彼に取ってはとても大きな願いなのだろう…
ユーリは無意識に青年の頭を撫でた。
「な、何してやがる!!子供扱いするんじゃねー!!」
「はははっ…悪い悪い。俺も遺跡目指してるんだ…お前がエターナルソードを使ったあと…
俺に渡してくれねぇか?その条件をのんでくれるなら一緒にいかないか?一人だと何かと都合悪いだろ?」
「はぁ…?まぁ…いいけど…俺の足はひっぱるなよ!!」
「へいへい」
楽しそうにユーリは笑うと少し照れくさそうにしている青年の顔をまじまじと見る。
青年はその視線に気が付くと顔を真っ赤にして歩き出した。
「おい…何処行くんだ?」
「遺跡だよい・せ・き。」
「そっち逆方向だぞ…遺跡はあっちだ」
青年が行こうとしている方向は遺跡とは逆方向…
本当に遺跡を目指しているのか不安になってきた。
「はぁ?あっちだと俺が来た方角じゃねーか。嘘つくなつーの」
「……お前遺跡の方角誰に教えてもらったんだ?」
真顔で答える青年にただの方向音痴なのかと思ったが、
そうではなさそうだ…だって自分が来た道を解っているのだから。
方向音痴は自分の来た道すらわからないものだ。
「ん?アッシュ。太陽の沈む方角にいけば遺跡につくって言ってたぜ。
だから太陽がある方角に向かって歩いてきたんだ。」
「ちなみに…お前が歩き出したのは何時頃だ?」
「今朝。」
ユーリは盛大にため息をついた。
太陽の沈む方角は西だ…朝に太陽のある方角を向いて歩いたのならそれは東に向いてあるいたことになる。
完全に真逆だ……天然なのか、純粋なのか…はたまたただの馬鹿なのか…選択が増えた。
「はははは…お前ホント面白いな…まぁ、俺が無事に連れて行ってやるよ…お前名前は?」
「ルーク。ルーク・フォン・ファブレだ」
「そうか…俺の名前はユーリ・ローウェル…よろしくな」
ユーリが手を差しだすと眉を寄せて嫌な顔をしたが、
しぶしぶ手を出して握手をした。
「あだ名がねーと不便だな…よし、お前真っ黒いし何か犯罪者っぽいから大罪人な」
「まて。俺のどこをどう見たら犯罪人なんだ。勝手に変なあだな付けるな」
あながち間違えていないところが怖いところだ。
ルークはユーリのことを知らないはずだ…
それなのにそんなあだ名を付けるのは…直観力なのだろうか…
苦笑いをしていたユーリはお返しとばかりルークのあだ名を考えた。
「じゃぁ、お前はお坊ちゃんだな」
「はぁ!?なんだよそれ!!意味わかんねーし!!!」
ルークはカンカンに怒りながら正しい遺跡の方角へと足を向けた。
その様子を笑いながら見ていたユーリはルークの後を追いかけて行った。
そして残されたカイウスとルビアは呆れた表情をして二人の背中を見守った。
「世の中…変った人間も多いんだな…」
「そうね…」
その頃。
正しい道を進んでいたら遺跡に着いて居たはずだったが、
道を間違えてしまって追いかけてきたガイの方が一人早く遺跡に辿り着いた。
「ルーーーーーーーーークーーーーーーーーー!!!!!!どこだああああああああああ!!!!
どこにいるんだあああああああああああ!!!ルーーーーーーークーーーーーーーー!!!」
「か、カイル…変な人が居る…」
「だ、大丈夫だよリアラ…俺が絶対に守るから…」
遺跡の角で怯える二人を余所にガイは必死にルークを探すが見つからなかった。
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目を開けると一番初めに映ったのは赤い塊。
その塊は規則正しく小さく揺れ幸せを感じることができる。
ガイはまだ眠っている愛おしいその赤を優しく抱きしめると
目に入ってきたのは彼の後ろ髪。
一緒に居るときたまに目に止まるがその後ろ髪はまるで
生きているようにすら感じられる…時もある。
興味本位で軽く触っていると小指が首筋に当たってしまった。
当たってしまった瞬間彼の身体は規則正しい動きから一変し、
一度だけ大きくゆれたが、またそのまま規則正しい動きへと戻っていった。
ガイは目の錯覚かと思いもう一度だけさっきと同じところを触ってみると、
やはり同じように身体が大きく揺れた。
「おいおい…まさか…」
さきほどは軽く触ってみただけだったので今度は首筋を撫でるように指で触ると、
それに合わせて身体が震えた…これは面白い、もとい可愛い。
もう一度やってみると先ほどと同じように身体は震えたが
規則正しい動きには戻らず別の動きを開始した。
「んんっ…がい…なに?なんか…変なかんじがする…」
「あ、わるい…起こしたか…」
悪戯がすぎたのか流石に寝ていたルーが起きてしまった。
しかし、まだしっかりと覚醒していないのか目が半分しか開いていない、
そしてまだ意識がおぼろげなルーの耳元でガイは言葉を発した。
「なぁ…お前…もしかして首筋弱い…?特に後ろ側…」
ガイの言葉に頭が回っていない為理解ができてなかったようだが、
だんだんと言葉の意味を理解すると同時にルーの顔は真っ赤に変化していった。
「な、なななななっ…なわけないだろっ!!!何言い出すんだ!!!」
顔を真っ赤にしてガイの腕の中から逃げ出そうとするが、
しっかりと抱きしめられているため逃げ出すことは不可能だった。
その行動でガイは質問の答えを得た。
幼馴染の三つ子…特にルーとクーは人に嘘をつくのが下手だ。
すぐに顔、行動に出てしまい始めて会った人間でもばれてしまうくらい下手だ。
それのせいでクーがユーリに絡まれている…あれはあれで幸せそうなので
ガイはその癖を治すようにクーに助言をするつもりはなかったが…
ちなみにこのルーの反応は確実嘘をついている時の反応だ。
ガイはその反応が可愛くて、愛おしくて顔が緩んでしまう。
「ふーん…じゃぁもう少し後ろ髪触ってていいか…?ふんわりしてて気持ちがいい。」
「……いいけど…首触るなよ…弱くないけど…」
「…努力する。」
ガイは再びルーの後ろ髪を触り始めた。
短いがふわりと柔らかく、まるで小動物を撫でているように可愛い…いや、ルーもガイにとっては似たようなものだが。
ふわふわと後ろ髪を触っているとまた小指が首筋に当たってしまった。
「ひゃぁっ…!!!が…がいっ~…!!!」
「あ…ごめん…って、お前朝からそんな声出すなよ…」
「ガイが悪いんだろっ…」
「なぁ、もうちょっと…触っていい?」
「ダメ!!ガイなんてもうしらねぇ!!」
ガイの腕の中から抜け出せなかったので、
少しでも抵抗をしようとガイに背を向けるが…ガイに一番守るべき首筋が無防備に晒しだされる格好だ。
本人はそれに気がついておらず小さく文句を言いながら傍にあったぬいぐるみを引き寄せて抱きしめた。
「なぁ…ルー…その格好だと首筋触り放題だぞ…」
「あ…」
身体の向きを変えようとしたがすでに遅く、
ガイはルーの首筋を指で撫でるように触った。
「ひゃぅっ…!!!あっ…やぁ…だめぇ…!!!」
そんなに弱いのかルーは触られている間ぬいぐるみを強く抱きしめて耐えている。
朝からそんな声など出されたら男として理性が持ちそうになかったので
そろそろやめようと思っていたが、
ルーの腕が伸びガイの腕を掴みそのままルーの身体の一部を触らせた。
触った部分は男だけの特別な反応…その場所が硬くなっている。
「あ…おい…ルー…」
「こんなのになったの…ガイのせいだからな…ちゃんと責任とれよ…」
涙目でルーの後にいるガイを睨みつけた。
本人は睨みつけているつもりらしいが…ガイにとっては可愛い反応だ。
「あぁ…わかった。ごめんな…。好きだよ、愛してる。」
ルーの身体を方向転換させ自分の方へと向けると、ガイは優しく唇にキスをした。
彼らの朝はまだ当分迎えることはないようだ。
その塊は規則正しく小さく揺れ幸せを感じることができる。
ガイはまだ眠っている愛おしいその赤を優しく抱きしめると
目に入ってきたのは彼の後ろ髪。
一緒に居るときたまに目に止まるがその後ろ髪はまるで
生きているようにすら感じられる…時もある。
興味本位で軽く触っていると小指が首筋に当たってしまった。
当たってしまった瞬間彼の身体は規則正しい動きから一変し、
一度だけ大きくゆれたが、またそのまま規則正しい動きへと戻っていった。
ガイは目の錯覚かと思いもう一度だけさっきと同じところを触ってみると、
やはり同じように身体が大きく揺れた。
「おいおい…まさか…」
さきほどは軽く触ってみただけだったので今度は首筋を撫でるように指で触ると、
それに合わせて身体が震えた…これは面白い、もとい可愛い。
もう一度やってみると先ほどと同じように身体は震えたが
規則正しい動きには戻らず別の動きを開始した。
「んんっ…がい…なに?なんか…変なかんじがする…」
「あ、わるい…起こしたか…」
悪戯がすぎたのか流石に寝ていたルーが起きてしまった。
しかし、まだしっかりと覚醒していないのか目が半分しか開いていない、
そしてまだ意識がおぼろげなルーの耳元でガイは言葉を発した。
「なぁ…お前…もしかして首筋弱い…?特に後ろ側…」
ガイの言葉に頭が回っていない為理解ができてなかったようだが、
だんだんと言葉の意味を理解すると同時にルーの顔は真っ赤に変化していった。
「な、なななななっ…なわけないだろっ!!!何言い出すんだ!!!」
顔を真っ赤にしてガイの腕の中から逃げ出そうとするが、
しっかりと抱きしめられているため逃げ出すことは不可能だった。
その行動でガイは質問の答えを得た。
幼馴染の三つ子…特にルーとクーは人に嘘をつくのが下手だ。
すぐに顔、行動に出てしまい始めて会った人間でもばれてしまうくらい下手だ。
それのせいでクーがユーリに絡まれている…あれはあれで幸せそうなので
ガイはその癖を治すようにクーに助言をするつもりはなかったが…
ちなみにこのルーの反応は確実嘘をついている時の反応だ。
ガイはその反応が可愛くて、愛おしくて顔が緩んでしまう。
「ふーん…じゃぁもう少し後ろ髪触ってていいか…?ふんわりしてて気持ちがいい。」
「……いいけど…首触るなよ…弱くないけど…」
「…努力する。」
ガイは再びルーの後ろ髪を触り始めた。
短いがふわりと柔らかく、まるで小動物を撫でているように可愛い…いや、ルーもガイにとっては似たようなものだが。
ふわふわと後ろ髪を触っているとまた小指が首筋に当たってしまった。
「ひゃぁっ…!!!が…がいっ~…!!!」
「あ…ごめん…って、お前朝からそんな声出すなよ…」
「ガイが悪いんだろっ…」
「なぁ、もうちょっと…触っていい?」
「ダメ!!ガイなんてもうしらねぇ!!」
ガイの腕の中から抜け出せなかったので、
少しでも抵抗をしようとガイに背を向けるが…ガイに一番守るべき首筋が無防備に晒しだされる格好だ。
本人はそれに気がついておらず小さく文句を言いながら傍にあったぬいぐるみを引き寄せて抱きしめた。
「なぁ…ルー…その格好だと首筋触り放題だぞ…」
「あ…」
身体の向きを変えようとしたがすでに遅く、
ガイはルーの首筋を指で撫でるように触った。
「ひゃぅっ…!!!あっ…やぁ…だめぇ…!!!」
そんなに弱いのかルーは触られている間ぬいぐるみを強く抱きしめて耐えている。
朝からそんな声など出されたら男として理性が持ちそうになかったので
そろそろやめようと思っていたが、
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「あ…おい…ルー…」
「こんなのになったの…ガイのせいだからな…ちゃんと責任とれよ…」
涙目でルーの後にいるガイを睨みつけた。
本人は睨みつけているつもりらしいが…ガイにとっては可愛い反応だ。
「あぁ…わかった。ごめんな…。好きだよ、愛してる。」
ルーの身体を方向転換させ自分の方へと向けると、ガイは優しく唇にキスをした。
彼らの朝はまだ当分迎えることはないようだ。
リタとハロルドの実験が失敗しバンエルティア号の中は朝から大騒ぎになった。
「お、俺が目の前に…!?え?何で俺コレットの姿なんだ!?」
「すごーい。私ロイドになってる…すごいね!!」
「く、くれあああああああああああああああ!!!」
「ヴェイグ…私の身体で私の名前を叫ばないで…」
「どうせ入れ替わるならもっと女らしいやつに…」
「ちょっとチェスター!!何なのその言い方!!私じゃ不満なの!?」
そう、ギルドのメンバーの女性と男性の中身が入れ換わり大変なことになっている。
しかし実験途中の白物だったので数時間後には少しずつ元に戻るメンバー達が現れ
最後に残ったのはルーク&ティア、ユーリ&エステルの四人だけとなった。
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「だあー、何で俺は元に中々もどらねーんだよ!!」
ティアの姿になってしまったルークは自室でベッドに転がり時間を潰していた。
最初は食堂などに居たがルークの雑な行動にティアが注意をし続けた為
鬱陶しくなり自室へと籠ってしまった。
クエストに行きたくてもティアは後衛、ルークは前衛…タイプが真逆な為
外にでることもできずただ部屋でじっと姿が戻るのを待つだけだった。
こんな生活はライマ国にいた時のようで苛立ちと不安がルークの心を占領し始めていた。
「何で俺は冷血女なんだよ…下はスースーしてさみーし…胸でかくて肩は凝るし最悪…」
女性になってしまった為ガイは近寄ることができない…
まさかこんな時にガイの女性恐怖症を不便に感じるとは思いもしなかった。
これからどうやって時間を潰そうか考えていると扉を叩く音がしてルークはぶっきらぼうに返事をした。
「あ、あの…ルーク…いらっしゃいます?」
「その声は…エステルか?入っていいぜ」
扉が開き入ってきたのは予想通りエステルだった。
入って来たエステルはきょろきょろと部屋を見まわしながら入ってきたので
ルークは不思議に思い上半身をベッドから起こし首を傾げた。
「エステル…?何探してるんだ?」
「あ…いえ…誰もいらっしゃらないのですね…」
「そーなんだよな…ガイは俺に近づけねーし…俺の姿をしたティアなんて見たくねーし…
ほんと暇…なーんかいい退屈しのぎはねーかなぁ…」
ルークがため息をついて困り果てているといつの間にかエステルがルークの横に来て
ベッドに座りニコニコと笑いながらルークを見ていた。
「ルーク…暇なのです?」
「あぁ…超暇マジで暇…何かおもしれーことねーかなぁ…」
「だったら…俺が遊んでやるよ」
「は?」
気が付けばルークの視線に入ってきたのは部屋の天井、そして自分を押し倒すエステルの姿。
ルークは訳がわからずきょとんとした顔をしたままエステルを見つめた。
「えっと…エステル…?いや…お前誰だ!?」
「お前…まだわかんねーの?エステルは誰と中身入れ替わったんだ?」
エステルの質問にルークは考え始めた。
確かエステルはユーリと中身が入れ替わっていたはず…ルークが自室に籠る前には
まだ二人とも元に戻っていないと聞いていた…となると答えは…
「お、お前大罪人か!?」
「アタリ。俺なら警戒心丸出しなのに…エステルなら隙だらけなんだな…」
にやりと笑う顔はエステルの姿なのにユーリの顔で、
普段とは真逆のエステルにルークの背中は何故か妙に冷たくなってきた。
「お、お前…俺をどうするつもりだ!!」
必死になってエステル…いや、ユーリを押し返そうとするが全く押し返せる様子はなく
ベッドに押しつけられたままだった。
「ん?お前の暇つぶしに遊んでやろうかと…無駄だぜ、エステルは前衛も行けるからな…
ティアとは違って力あるから俺の思うがままだ…」
「おまえ…エステルのイメージ壊すぞ」
先ほどティアに「私のイメージが壊れるから大人しくしてて!!」と注意をされたのを思い出し
無駄だとは思ったがユーリに同じ言葉を投げかけてみるが…
ユーリは小さく笑うだけでルークを解放する様子は見られなかった。
「安心しろ…エステルには裏のあだ名があってだな…」
「う、裏のあだ名?」
妙に嫌な予感がするのはルークの気のせいだろうか…気のせいであってほしい。
「そう…エステルの裏のあだ名は……………Sテルなんだよ」
「い、意味わかんねーーーーーーー!!!つーかはーーーーなーーーーーせーーーーーー!!!」
「観念しな…俺がしっかり遊んでやるからよ…」
ユーリの顔がどんどん近づいてきて、怖くなってきたルークは目を閉じてしまったが
その時、急に扉が開く音がしてルークを抑えつけていた力から急に解放され動きが自由になった。
ルークがおそるおそる目を開けてみると目の前にいたのはまっ白な服に朱い髪の毛…
そう、自分の姿…いやルークの姿になったティアだった。
「ユーリ!!いい加減にして!!ルークが怖がっているじゃない!!」
ティアに無理矢理引きはがされたユーリは渋い顔をしてティアを睨みつけた。
「俺はこのお坊ちゃんの暇つぶしに付き合ってただけだ」
「ウソ!!これに便乗してルークを丸めこもうとしてたでしょ!!そうはさせないんだから!!
ルーク大丈夫?変なことされなかった?」
「あぁ…大丈夫…」
自分の姿で話しかけてくるティアに少し違和感を感じたが、
何故か心が温かくなって行くのがわかった。
「っち…今日こそはと思ったんだけどな…」
残念そうに舌打ちをしながらユーリは諦めた。
それを見たティアはほっとした様子でルークの座るベッドの横に腰を掛けた。
「全く…油断も隙もないんだから…」
「え?あ…あの…そのティア…えっと…ん?」
急に目の前が真っ暗になったかと思うと
さっきまで自分の姿が視界に入っていたのにティアの姿が目に入ってきた。
「あら?元に戻ったみたいね」
「あ…うん…そうみてーだな…あ、あのさ…ティア…助けてくれて、ありがとうな…」
ルークか顔を真っ赤にさせながら小さな声でめずらしくお礼を言い、
その言葉にティアは驚いていたが優しく微笑み嬉しそうな顔をする。
「どういたしまして……(はぁ…照れてるルーク可愛い…)」
「ん?ティア何か言ったか?」
「え?な、何でもないわ!!」
小声で本音を言ってしまったティアは慌てて口を押さえ
ルークにばれていないことを確認するとほっと溜息をついた。
プライドの高いルークのことだ…可愛いと思われたことがばれたら確実に拗ねる。
拗ねられたら機嫌が直るまでに相当苦労するのは目に見えていた…。
「安心してルーク…私が絶対に守るから…」
「え?あ…あぁ…」
ルークの両手を握りしめルークを守ると近いを立てるティアに
圧倒されルークは少し押され気味だったが顔は少し嬉しそうな顔をしていた。
「おーーいちょっとまて」
「な、何だよ大罪人…」
それまで傍観していたユーリが我慢しきれずに口をはさんできた。
「ここはユーリ×ルークサイトだぞ…何俺以外の人間とらぶらぶちっくになっていやがるんだ!!」
「たまにはそれもいいんじゃないかいユーリ…」
今までこの場に居なかった人間の声が聞こえ
扉の方を向くとそこには怒りをあらわにしたフレンとユーリの姿をしたエステルが立っていた。
「ユーリ!!エステリーゼ様の姿で何をしているんだ!!」
「ユーリ、ひどいです!!Sテルって何ですか!!そんなあだ名いりません!!」
ユーリにどんどん近付くフレンに圧倒され数歩後ろに下がるユーリだったが、
ユーリにはまだ切り札があった。
「ま、まてフレン…俺は今エステルの身体で…ん?」
先ほどまでフレンの顔が見えていたはずなのに、
急にフレンの後姿が視界に入って首を傾けた。
「あれ?元に戻ったのか?」
「そうみたいだね…ゆーーーーーーーーーりーーーーーーーーー!!!!」
「げっ!!!」
フレンの怒りが爆発したのを感じたユーリは一目散にその場を逃げ出し、
そのあとをエステルとフレンがすごいスピードでユーリを追いかけていった。
「何なんだあいつ…」
「さぁ?ルーク…食堂にあなたのおやつ取ってあるから…一緒に食べましょ」
「あ…あぁ…」
よく状況が理解できていないルークだったが、
ティアに誘われ手を繋ぎながら食堂へと向かっていった。
「お、俺は納得いかねええええええええええええええええええええ!!!」
ユーリの叫びがその日はバンエルティア号に響き続けた。
「お、俺が目の前に…!?え?何で俺コレットの姿なんだ!?」
「すごーい。私ロイドになってる…すごいね!!」
「く、くれあああああああああああああああ!!!」
「ヴェイグ…私の身体で私の名前を叫ばないで…」
「どうせ入れ替わるならもっと女らしいやつに…」
「ちょっとチェスター!!何なのその言い方!!私じゃ不満なの!?」
そう、ギルドのメンバーの女性と男性の中身が入れ換わり大変なことになっている。
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「だあー、何で俺は元に中々もどらねーんだよ!!」
ティアの姿になってしまったルークは自室でベッドに転がり時間を潰していた。
最初は食堂などに居たがルークの雑な行動にティアが注意をし続けた為
鬱陶しくなり自室へと籠ってしまった。
クエストに行きたくてもティアは後衛、ルークは前衛…タイプが真逆な為
外にでることもできずただ部屋でじっと姿が戻るのを待つだけだった。
こんな生活はライマ国にいた時のようで苛立ちと不安がルークの心を占領し始めていた。
「何で俺は冷血女なんだよ…下はスースーしてさみーし…胸でかくて肩は凝るし最悪…」
女性になってしまった為ガイは近寄ることができない…
まさかこんな時にガイの女性恐怖症を不便に感じるとは思いもしなかった。
これからどうやって時間を潰そうか考えていると扉を叩く音がしてルークはぶっきらぼうに返事をした。
「あ、あの…ルーク…いらっしゃいます?」
「その声は…エステルか?入っていいぜ」
扉が開き入ってきたのは予想通りエステルだった。
入って来たエステルはきょろきょろと部屋を見まわしながら入ってきたので
ルークは不思議に思い上半身をベッドから起こし首を傾げた。
「エステル…?何探してるんだ?」
「あ…いえ…誰もいらっしゃらないのですね…」
「そーなんだよな…ガイは俺に近づけねーし…俺の姿をしたティアなんて見たくねーし…
ほんと暇…なーんかいい退屈しのぎはねーかなぁ…」
ルークがため息をついて困り果てているといつの間にかエステルがルークの横に来て
ベッドに座りニコニコと笑いながらルークを見ていた。
「ルーク…暇なのです?」
「あぁ…超暇マジで暇…何かおもしれーことねーかなぁ…」
「だったら…俺が遊んでやるよ」
「は?」
気が付けばルークの視線に入ってきたのは部屋の天井、そして自分を押し倒すエステルの姿。
ルークは訳がわからずきょとんとした顔をしたままエステルを見つめた。
「えっと…エステル…?いや…お前誰だ!?」
「お前…まだわかんねーの?エステルは誰と中身入れ替わったんだ?」
エステルの質問にルークは考え始めた。
確かエステルはユーリと中身が入れ替わっていたはず…ルークが自室に籠る前には
まだ二人とも元に戻っていないと聞いていた…となると答えは…
「お、お前大罪人か!?」
「アタリ。俺なら警戒心丸出しなのに…エステルなら隙だらけなんだな…」
にやりと笑う顔はエステルの姿なのにユーリの顔で、
普段とは真逆のエステルにルークの背中は何故か妙に冷たくなってきた。
「お、お前…俺をどうするつもりだ!!」
必死になってエステル…いや、ユーリを押し返そうとするが全く押し返せる様子はなく
ベッドに押しつけられたままだった。
「ん?お前の暇つぶしに遊んでやろうかと…無駄だぜ、エステルは前衛も行けるからな…
ティアとは違って力あるから俺の思うがままだ…」
「おまえ…エステルのイメージ壊すぞ」
先ほどティアに「私のイメージが壊れるから大人しくしてて!!」と注意をされたのを思い出し
無駄だとは思ったがユーリに同じ言葉を投げかけてみるが…
ユーリは小さく笑うだけでルークを解放する様子は見られなかった。
「安心しろ…エステルには裏のあだ名があってだな…」
「う、裏のあだ名?」
妙に嫌な予感がするのはルークの気のせいだろうか…気のせいであってほしい。
「そう…エステルの裏のあだ名は……………Sテルなんだよ」
「い、意味わかんねーーーーーーー!!!つーかはーーーーなーーーーーせーーーーーー!!!」
「観念しな…俺がしっかり遊んでやるからよ…」
ユーリの顔がどんどん近づいてきて、怖くなってきたルークは目を閉じてしまったが
その時、急に扉が開く音がしてルークを抑えつけていた力から急に解放され動きが自由になった。
ルークがおそるおそる目を開けてみると目の前にいたのはまっ白な服に朱い髪の毛…
そう、自分の姿…いやルークの姿になったティアだった。
「ユーリ!!いい加減にして!!ルークが怖がっているじゃない!!」
ティアに無理矢理引きはがされたユーリは渋い顔をしてティアを睨みつけた。
「俺はこのお坊ちゃんの暇つぶしに付き合ってただけだ」
「ウソ!!これに便乗してルークを丸めこもうとしてたでしょ!!そうはさせないんだから!!
ルーク大丈夫?変なことされなかった?」
「あぁ…大丈夫…」
自分の姿で話しかけてくるティアに少し違和感を感じたが、
何故か心が温かくなって行くのがわかった。
「っち…今日こそはと思ったんだけどな…」
残念そうに舌打ちをしながらユーリは諦めた。
それを見たティアはほっとした様子でルークの座るベッドの横に腰を掛けた。
「全く…油断も隙もないんだから…」
「え?あ…あの…そのティア…えっと…ん?」
急に目の前が真っ暗になったかと思うと
さっきまで自分の姿が視界に入っていたのにティアの姿が目に入ってきた。
「あら?元に戻ったみたいね」
「あ…うん…そうみてーだな…あ、あのさ…ティア…助けてくれて、ありがとうな…」
ルークか顔を真っ赤にさせながら小さな声でめずらしくお礼を言い、
その言葉にティアは驚いていたが優しく微笑み嬉しそうな顔をする。
「どういたしまして……(はぁ…照れてるルーク可愛い…)」
「ん?ティア何か言ったか?」
「え?な、何でもないわ!!」
小声で本音を言ってしまったティアは慌てて口を押さえ
ルークにばれていないことを確認するとほっと溜息をついた。
プライドの高いルークのことだ…可愛いと思われたことがばれたら確実に拗ねる。
拗ねられたら機嫌が直るまでに相当苦労するのは目に見えていた…。
「安心してルーク…私が絶対に守るから…」
「え?あ…あぁ…」
ルークの両手を握りしめルークを守ると近いを立てるティアに
圧倒されルークは少し押され気味だったが顔は少し嬉しそうな顔をしていた。
「おーーいちょっとまて」
「な、何だよ大罪人…」
それまで傍観していたユーリが我慢しきれずに口をはさんできた。
「ここはユーリ×ルークサイトだぞ…何俺以外の人間とらぶらぶちっくになっていやがるんだ!!」
「たまにはそれもいいんじゃないかいユーリ…」
今までこの場に居なかった人間の声が聞こえ
扉の方を向くとそこには怒りをあらわにしたフレンとユーリの姿をしたエステルが立っていた。
「ユーリ!!エステリーゼ様の姿で何をしているんだ!!」
「ユーリ、ひどいです!!Sテルって何ですか!!そんなあだ名いりません!!」
ユーリにどんどん近付くフレンに圧倒され数歩後ろに下がるユーリだったが、
ユーリにはまだ切り札があった。
「ま、まてフレン…俺は今エステルの身体で…ん?」
先ほどまでフレンの顔が見えていたはずなのに、
急にフレンの後姿が視界に入って首を傾けた。
「あれ?元に戻ったのか?」
「そうみたいだね…ゆーーーーーーーーーりーーーーーーーーー!!!!」
「げっ!!!」
フレンの怒りが爆発したのを感じたユーリは一目散にその場を逃げ出し、
そのあとをエステルとフレンがすごいスピードでユーリを追いかけていった。
「何なんだあいつ…」
「さぁ?ルーク…食堂にあなたのおやつ取ってあるから…一緒に食べましょ」
「あ…あぁ…」
よく状況が理解できていないルークだったが、
ティアに誘われ手を繋ぎながら食堂へと向かっていった。
「お、俺は納得いかねええええええええええええええええええええ!!!」
ユーリの叫びがその日はバンエルティア号に響き続けた。