旭屋本舗
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目を閉じれば鮮明に思い出せる夢。
手を伸ばしても届かない腕…
助けたいのに…助けることができない…
自分の無力さ…
あぁ…自分は【また】人を助けることができなかった…
落ちて行ってしまう人を助けることができなかった…
……また?
いや、俺は過去にそんな経験をした覚えがない。
ましてやまだ夢でみた経験をしていない。
けれど…昔…どこかで…似たような経験をした記憶がある…
前世の記憶か、または異世界の記憶か…
俺には解らない…こんな気持ちになる理由が…
俺は変えてみせる…絶対に助ける…その為にわざわざここまで来たんだ。
絶対に…未来を変えてみせるよ…
父上…
夜ト朝ノ唄【TFS05】
ユーリは遠慮がちに隊長室の扉を叩いた。
するとさきほどまで鳴っていた音は止まり、
変りに低い声で部屋の中へ呼ぶ声が聞こえる。
ゆっくりと扉を開けると中にはナイレンが椅子に座り、
一人寂しく晩酌を始めているところだったようで笑いながらユーリに声をかけた。
「どうしたユーリ?」
「ちょっと…眠れなくて…」
「……そうか、話くらいなら聞いてやるぞ…」
空いていた椅子に座りナイレンが入れてくれたぶどうジュースを少し飲むと、
ぶどう独特の甘さと苦さが口の中に広がった。
それはまるで今のユーリの心を表しているかのように…
ユーリは隊長に話したいことがあったはずなのに、中々口に出せなかった。
今回の騒動のことが大半だったが、先日研修として来た人物に対する思いもあった。
同性なのに気になる存在で…
別に同性だからという小さなことで悩むのは自分らしくない。
彼が傍にいてくれたらユーリはそれで良かった…
けど、彼の方がユーリの思いを知って迷惑ではないだろうか…
離れてしまうのではないか…
そんな不安が心の角にあった。
まだ若いユーリだからこれほど悩むのだろう…もう少し成長すれば…
こんなに悩まなかったかもしれない…。
ぶどうジュースを飲んでいると机の上にあった写真に目が止まり、
そこには小さな女の子と若い女性の姿が映し出されていた。
「あぁ…それは俺の子供と女房だ…二人とももうこの世には居ないけどな…」
「え?けど、ルークって騎士団に所属してる娘が居るって…」
ルークの名前を耳にした途端ナイレンの表情が真剣な顔になったが、
またすぐにいつもの少し抜けた顔にもどった。
「あいつは養子だ…あいつが10歳の頃…だったかな?
昔馴染みの友人…父親から預かったんだ…複雑な家庭内事情ってやつだ」
「何でアンタが…?」
ナイレンは考えるような仕草を見せた。
複雑な家庭内事情をどう解りやすく説明すればよいか…そう考えているのだろう。
「いろいろあってな…ルークのやつこのまま自分が家に居たら両親、弟、幼馴染達に迷惑がかかるって
思い込んで…家出したんだ…家出していた所を保護したのがたまたま俺だったわけだ。」
「……………。」
「まぁ、あの家に居てもルークにとって良くないって判断した両親は家庭内事情が収まるまで
ルークを俺のところに預けるってことにしたんだ…養子としてな…
あいつの実家は今は結構安定してきてるし、いつでも戻ってきて良い体勢なんだが…戻る気はないみたいだな」
ナイレンが何故ここまで詳しい話を聞かせてくれるかユーリにはわからなかった。
会ったこともないルーク・フェドロック…その話から聞く性格に
一人の人物と姿が重なって見える…その優しすぎる性格…が特に。
グラスに入っていたワインをナイレンがすべて飲み干すと、
真剣な表情でユーリに目を合わせた。
「ユーリ…頼みがあるんだが…」
「…何だよ。改まって…」
「あいつ…ルークのこと頼む…」
「は、はぁ?」
ナイレンの何時にない真剣な表情だけでも驚いていたのに、
その口から出た言葉に飲んでいたジュースをもう少しで吹き出しそうになった。
「な、何だよそれ…娘を嫁にやるような言い方するなよ…」
「お前なら…あいつを嫁にやってもいいと思ってる」
「……まじかよ…」
自分が悩みを話に来たのに…何時の間にこんな婚約話になっているのだろうか…
いつから話の腰が折れたのか…ユーリの頭は混乱し始めた。
そんなユーリを余所にナイレンは話を続ける。
「そんな会ったことないやつを……嫁になんて貰えねぇ…」
「あぁ、写真ならあるぞ。ほれこの赤毛のやつだ」
「をい…そういう問題じゃ…ね…ぇ…」
ナイレンから手渡された写真を見てユーリの動きが止まる。
その写真に写っている人物…
双子の先輩から聞いた通りの綺麗な赤毛…いや朱色の長い髪。
宝石のような輝く碧の瞳。
そしてその福与かな胸と細い腰…女性らしさを存分に出している。
双子の先輩達が騒ぐのも無理はない…
いや、それ以前にユーリは写真に映る人物の顔を確認すると小さくわらった。
「どうだ?いい女だろ?ちょっとお転婆がすぎるけどな…」
「確かに…いい女だな…嫁にするのがもったいないくらいだ…」
さっきまで悩んでいる表情しかみせていなかったユーリだが、
今は何時もの…いや、いつも以上に楽しいおもちゃを見つけた子供のような笑顔を見せるが、
裏では何故か黒いオーラが目に見える。
「………いや、それは…それぐらいの気持ちってことで…別に本気で…」
「お父様にも認められて俺達の結婚はもう壁なんてねぇな~」
「おい、人の話を聞けっ…」
この時ナイレンは人選ミスをしたと後悔した。
自分の愛する娘を任せるのならフレンにすればよかったと…
翌朝。
ナイレン隊のメンバーは湖にある古い城へと出発を開始した。
森の中ではエアルが異常な濃さを出しており、
早急に解決しないと街の結界が暴走してしまう恐れがあることを、
森の中で隊長から告げられたメンバー達。
ましてや魔導器も使えない…事前に言えと文句を言っているメンバー達を
ユーリ、フレンそしてルークが苦笑いをしながらその様子を眺めている。
「あんなおっさんに任せて大丈夫なのかねぇ…」
「ありゃぜってーわざと言わなかった目だ…いろいろあるんだろ…」
「その前にユーリ…今日はやけにルークにひっついていないかい?」
赤茶色の髪をしたルークの傍には漆黒の狼がずっとそばにいた。
前からよく吊るんでいた二人だったが、今日はやけに距離が近い…
正確に言えばルークが離れようとしてもユーリが絶対に離れようとしない。
「そうなんだよな…何か今日はやけに傍にいるつーのか…
なぁ、俺別に怪我は大丈夫だから少し離れろって…」
「隊長から直々の命令なんだよ…諦めろ」
「意味わかんねーし」
ユーリの言葉にルークがため息をつくとその姿にフレンが小さく笑う。
ずっと硬い表情だったフレンの笑顔を見るのは
隊員達に取って久しぶりの顔だった。
「そういえば…僕も隊長から直々に命令があってね…」
「なにっ…お前もルークの傍に居ろって命令か!?あのおっさん…二股かけやがって…」
前を歩く隊長を殺せるような睨みで睨みつけると、
その間にいた他のメンバー達に寒気が走る。
一番の標的であるナイレンは気がついているはずだが、あえて後を振り向こうとはしない。
「いや…全然違う命令で…」
「どんな命令だ?」
隊長命令で付けていた魔導器を外していたルークがフレンに問いかけると
何処から取り出したのかでかい黒い武器を片手で持ちルークに見せた。
「それが…黒くて変態な狼がルークに変なことをしようとしたら…これでガツン!!と叩くようにって命令で…
流石の狼もこの鍋で叩かれたら…軽傷じゃ済まないかと…」
そう、フレンが持っていた黒い武器は鍋…しかも頑丈な中華鍋だ。
フレンとルークはその命令の意図が解らず首をかしげる。
ナイレンが出した命令の意味がわかったユーリは苦笑いをしながらも
前を歩くナイレンを睨みつけるが、
その時ユーリの前から聞き覚えのあるメロディが聞こえてきた。
そのメロディを初めて聞いたのは森の中…そして昨夜も隊長の部屋の前で聞いたメロディ…
今回はちゃんとした唄ではない…鼻唄だ…
ユーリが慌てて歌っている人物の傍へ行くと
唄っていたのはヒスカとシャスティルだった。
「な、なぁ…その唄…何て言う唄なんだ?」
「え?さぁ?この前部屋で誰かが歌ってるのを聞いて覚えただけだし…
けど、この唄気持ちが温かくなるし、結構気に入ってるから…緊張をほぐす為に歌っただけよ」
確かにヒスカとシャスティルが唄っていた鼻唄はユーリが初めて聞いた
森の中での唄声とは全然違っている…もっと透き通るような唄声だった。
あの人物は何者なのか…ユーリはまだそれを知らなかった。
手を伸ばしても届かない腕…
助けたいのに…助けることができない…
自分の無力さ…
あぁ…自分は【また】人を助けることができなかった…
落ちて行ってしまう人を助けることができなかった…
……また?
いや、俺は過去にそんな経験をした覚えがない。
ましてやまだ夢でみた経験をしていない。
けれど…昔…どこかで…似たような経験をした記憶がある…
前世の記憶か、または異世界の記憶か…
俺には解らない…こんな気持ちになる理由が…
俺は変えてみせる…絶対に助ける…その為にわざわざここまで来たんだ。
絶対に…未来を変えてみせるよ…
父上…
夜ト朝ノ唄【TFS05】
ユーリは遠慮がちに隊長室の扉を叩いた。
するとさきほどまで鳴っていた音は止まり、
変りに低い声で部屋の中へ呼ぶ声が聞こえる。
ゆっくりと扉を開けると中にはナイレンが椅子に座り、
一人寂しく晩酌を始めているところだったようで笑いながらユーリに声をかけた。
「どうしたユーリ?」
「ちょっと…眠れなくて…」
「……そうか、話くらいなら聞いてやるぞ…」
空いていた椅子に座りナイレンが入れてくれたぶどうジュースを少し飲むと、
ぶどう独特の甘さと苦さが口の中に広がった。
それはまるで今のユーリの心を表しているかのように…
ユーリは隊長に話したいことがあったはずなのに、中々口に出せなかった。
今回の騒動のことが大半だったが、先日研修として来た人物に対する思いもあった。
同性なのに気になる存在で…
別に同性だからという小さなことで悩むのは自分らしくない。
彼が傍にいてくれたらユーリはそれで良かった…
けど、彼の方がユーリの思いを知って迷惑ではないだろうか…
離れてしまうのではないか…
そんな不安が心の角にあった。
まだ若いユーリだからこれほど悩むのだろう…もう少し成長すれば…
こんなに悩まなかったかもしれない…。
ぶどうジュースを飲んでいると机の上にあった写真に目が止まり、
そこには小さな女の子と若い女性の姿が映し出されていた。
「あぁ…それは俺の子供と女房だ…二人とももうこの世には居ないけどな…」
「え?けど、ルークって騎士団に所属してる娘が居るって…」
ルークの名前を耳にした途端ナイレンの表情が真剣な顔になったが、
またすぐにいつもの少し抜けた顔にもどった。
「あいつは養子だ…あいつが10歳の頃…だったかな?
昔馴染みの友人…父親から預かったんだ…複雑な家庭内事情ってやつだ」
「何でアンタが…?」
ナイレンは考えるような仕草を見せた。
複雑な家庭内事情をどう解りやすく説明すればよいか…そう考えているのだろう。
「いろいろあってな…ルークのやつこのまま自分が家に居たら両親、弟、幼馴染達に迷惑がかかるって
思い込んで…家出したんだ…家出していた所を保護したのがたまたま俺だったわけだ。」
「……………。」
「まぁ、あの家に居てもルークにとって良くないって判断した両親は家庭内事情が収まるまで
ルークを俺のところに預けるってことにしたんだ…養子としてな…
あいつの実家は今は結構安定してきてるし、いつでも戻ってきて良い体勢なんだが…戻る気はないみたいだな」
ナイレンが何故ここまで詳しい話を聞かせてくれるかユーリにはわからなかった。
会ったこともないルーク・フェドロック…その話から聞く性格に
一人の人物と姿が重なって見える…その優しすぎる性格…が特に。
グラスに入っていたワインをナイレンがすべて飲み干すと、
真剣な表情でユーリに目を合わせた。
「ユーリ…頼みがあるんだが…」
「…何だよ。改まって…」
「あいつ…ルークのこと頼む…」
「は、はぁ?」
ナイレンの何時にない真剣な表情だけでも驚いていたのに、
その口から出た言葉に飲んでいたジュースをもう少しで吹き出しそうになった。
「な、何だよそれ…娘を嫁にやるような言い方するなよ…」
「お前なら…あいつを嫁にやってもいいと思ってる」
「……まじかよ…」
自分が悩みを話に来たのに…何時の間にこんな婚約話になっているのだろうか…
いつから話の腰が折れたのか…ユーリの頭は混乱し始めた。
そんなユーリを余所にナイレンは話を続ける。
「そんな会ったことないやつを……嫁になんて貰えねぇ…」
「あぁ、写真ならあるぞ。ほれこの赤毛のやつだ」
「をい…そういう問題じゃ…ね…ぇ…」
ナイレンから手渡された写真を見てユーリの動きが止まる。
その写真に写っている人物…
双子の先輩から聞いた通りの綺麗な赤毛…いや朱色の長い髪。
宝石のような輝く碧の瞳。
そしてその福与かな胸と細い腰…女性らしさを存分に出している。
双子の先輩達が騒ぐのも無理はない…
いや、それ以前にユーリは写真に映る人物の顔を確認すると小さくわらった。
「どうだ?いい女だろ?ちょっとお転婆がすぎるけどな…」
「確かに…いい女だな…嫁にするのがもったいないくらいだ…」
さっきまで悩んでいる表情しかみせていなかったユーリだが、
今は何時もの…いや、いつも以上に楽しいおもちゃを見つけた子供のような笑顔を見せるが、
裏では何故か黒いオーラが目に見える。
「………いや、それは…それぐらいの気持ちってことで…別に本気で…」
「お父様にも認められて俺達の結婚はもう壁なんてねぇな~」
「おい、人の話を聞けっ…」
この時ナイレンは人選ミスをしたと後悔した。
自分の愛する娘を任せるのならフレンにすればよかったと…
翌朝。
ナイレン隊のメンバーは湖にある古い城へと出発を開始した。
森の中ではエアルが異常な濃さを出しており、
早急に解決しないと街の結界が暴走してしまう恐れがあることを、
森の中で隊長から告げられたメンバー達。
ましてや魔導器も使えない…事前に言えと文句を言っているメンバー達を
ユーリ、フレンそしてルークが苦笑いをしながらその様子を眺めている。
「あんなおっさんに任せて大丈夫なのかねぇ…」
「ありゃぜってーわざと言わなかった目だ…いろいろあるんだろ…」
「その前にユーリ…今日はやけにルークにひっついていないかい?」
赤茶色の髪をしたルークの傍には漆黒の狼がずっとそばにいた。
前からよく吊るんでいた二人だったが、今日はやけに距離が近い…
正確に言えばルークが離れようとしてもユーリが絶対に離れようとしない。
「そうなんだよな…何か今日はやけに傍にいるつーのか…
なぁ、俺別に怪我は大丈夫だから少し離れろって…」
「隊長から直々の命令なんだよ…諦めろ」
「意味わかんねーし」
ユーリの言葉にルークがため息をつくとその姿にフレンが小さく笑う。
ずっと硬い表情だったフレンの笑顔を見るのは
隊員達に取って久しぶりの顔だった。
「そういえば…僕も隊長から直々に命令があってね…」
「なにっ…お前もルークの傍に居ろって命令か!?あのおっさん…二股かけやがって…」
前を歩く隊長を殺せるような睨みで睨みつけると、
その間にいた他のメンバー達に寒気が走る。
一番の標的であるナイレンは気がついているはずだが、あえて後を振り向こうとはしない。
「いや…全然違う命令で…」
「どんな命令だ?」
隊長命令で付けていた魔導器を外していたルークがフレンに問いかけると
何処から取り出したのかでかい黒い武器を片手で持ちルークに見せた。
「それが…黒くて変態な狼がルークに変なことをしようとしたら…これでガツン!!と叩くようにって命令で…
流石の狼もこの鍋で叩かれたら…軽傷じゃ済まないかと…」
そう、フレンが持っていた黒い武器は鍋…しかも頑丈な中華鍋だ。
フレンとルークはその命令の意図が解らず首をかしげる。
ナイレンが出した命令の意味がわかったユーリは苦笑いをしながらも
前を歩くナイレンを睨みつけるが、
その時ユーリの前から聞き覚えのあるメロディが聞こえてきた。
そのメロディを初めて聞いたのは森の中…そして昨夜も隊長の部屋の前で聞いたメロディ…
今回はちゃんとした唄ではない…鼻唄だ…
ユーリが慌てて歌っている人物の傍へ行くと
唄っていたのはヒスカとシャスティルだった。
「な、なぁ…その唄…何て言う唄なんだ?」
「え?さぁ?この前部屋で誰かが歌ってるのを聞いて覚えただけだし…
けど、この唄気持ちが温かくなるし、結構気に入ってるから…緊張をほぐす為に歌っただけよ」
確かにヒスカとシャスティルが唄っていた鼻唄はユーリが初めて聞いた
森の中での唄声とは全然違っている…もっと透き通るような唄声だった。
あの人物は何者なのか…ユーリはまだそれを知らなかった。
遠くの方から子犬の泣き声が聞こえてきた…
何かを知らせようとして必死に鳴いている…
ルークの意識はその声につられどんどんと近くなり、重い瞳を開かせた。
周りを見渡せば自室ではなく軍用犬の小屋…
何故ここに居るのかわからず、
昨夜のことを必死に思い出しているとまた子犬の鳴き声が聞こえた。
「ラピード…?ラピードどうした!?」
ラピードの声を聞き思い出す…昨夜のことを。
魔物に取りこまれたラピードの父、ランバートのことを…
仲間達に襲いかかってきたランバートを止めたのはユーリであることを。
一緒に寝ていたはずのユーリの姿を探すが、辺りを見回しても見つからない。
時刻を見ようとして窓の外を見るが曇っているため太陽の位置で時刻がわからない…
とりあえずルークはラピードが吠えているところへ駆けだし、
そこにあった風景を見て唖然とした。
小屋の外では雨の中ユーリとフレンが馬乗りになって殴り合って喧嘩をしていた。
フレンは確か先日から帝都の方に援軍を頼みに出張していたはずだ…
戻るにしては予定より早すぎる。嫌な予感がルークの頭をよぎったが今はそれどころではない。
二人は確かに仲は良い方ではなかった…しかし、殴り合いの喧嘩をするほど
仲が悪いわけでもなかったはずだ…心のどこかでは認めている…そうルークは感じていた。
二人の間に何があったかわからないがこのまま殴り合いをさせるわけにもいかず、
ルークは犬小屋を飛び出しフレンの上になっていたユーリの腕に飛びついた。
「ユーリやめろっ!!喧嘩なんかしても意味ねーよ!!」
「うるせぇ!!お前は引っ込んでろ!!」
ルークに止めるなと叫んでいると、その隙を見てフレンがユーリの身体を蹴飛ばした。
蹴飛ばされたユーリは地面に尻もちをつき、ルークは無意識にユーリの手を離し飛ばされずに済む。
ユーリはフレンを睨みつけすぐに身体を起こしフレンへと殴りかかったので
ルークは慌てて今度はフレンとユーリの腕に飛びついた。
「二人ともやめろって!!」
飛びついたルークに二人同時に罵声が飛びだしルークが飛びついて止めようとした腕を
勢いよく払いのけた。
「離せって言ってるだろうがっ!!」
「ルーク、離せ!!!」
「うわっ!!!…っく…っあ!!!!」
二人同時に払われた腕はルークの身体を軽々と飛ばし、ルークの身体は壁にぶつかった。
ルークの悲痛な声に我を取り戻したフレンとユーリは慌ててルークの元へと駆け寄った。
「お、おい…ルークっ!!しっかりしろ!!」
「ルーク!!大丈夫かい!?ごめん…君は無関係なのに…」
壁に頭をぶつけた為意識が朦朧として居る中でルークは二人の手を掴み力のない瞳で睨みつける。
「仲間同士で喧嘩するなよ…あと…俺は無関係じゃねぇ…俺達は…な……かま……」
ルークの口はそこで止まってしまう。
ユーリとフレンは顔を真っ青にしながら何度もルークの名前を呼ぶが反応はない。
そこにラピードの声を聞きつけてやってきたヒスカとシャスティルによってルークは医務室へと運ばれた。
予言ノ唄【TFS04】
「お前ら…何回そこに立たされたら気がすむんだ…」
ユーリとフレンは騎士団内で殴り合いの喧嘩をした為
ナイレンの部屋にまた呼び出されてしまった。
怪我をしたルークはまだ医務室で寝て居るためここには居ない。
「とりあえず…風呂入ってこい…話はそれからだ」
「そんな悠長なこと言ってられるのかよ!!」
ユーリがナイレンに食い付くとフレンが辛い顔をしながらナイレンに報告をした。
「式典が終わってから…援軍を出すそうです…それまで現場を保持せよと…」
「はぁ!?」
「そうか…辛い役目をさせてしまったなフレン…悪かった…」
「いえ…」
帝都でかなり辛いことを言われたのか
普段のフレンらしさはどこにもなくただ落ち込んでしまっている。
フレンのことも気になったが、ユーリは別に気になっていることがあったので
重い口を動かしナイレンに問いかけた。
「なぁ…隊長…ルークは?」
「あぁ…あいつはあの程度でくたばる身体じゃないから安心しろ…
さっき顔見に行ったら【受け身を失敗した自分が悪いから二人を責めるな】って言われたばかりだ…」
「ルーク…あいつらしいな…」
ユーリにはルークがナイレンに向かってそんなことを言っている姿がすぐ目に浮かぶ。
ただこの数日間しか一緒にいないのに何故か安易にルークの行動などが思い浮かぶ…
まるで前世…いや、違う世界でもずっと一緒だったかのように…
ルークの様態を確認できユーリの肩の力が少し抜けると、
ナイレンが笑いながらユーリに話しかけた。
「そんなにあいつのことが気になるのか?……お前、惚れたのか?」
「ば、馬鹿いうんじゃねぇよ!!あいつは男だろ!?
俺は男にそんな趣味は…………ねぇ……よ……」
ナイレンに指摘され顔を真っ赤にさせ反論を述べたが、
後半になるにつれ言葉に自信が無くなっていくのがわかった。
「どうした?いつもの自信はどこにいったんだ?」
「うるせぇな…俺だってわかんねぇよ…俺がどうしたいとかなんて…あいつは男で俺も男で…
って、今はそんな話じゃねぇだろうが!!」
「ははははは…そうだったな、すまん。しかし若いってのはいいもんだねぇ…」
ナイレンの横にいた相談役のガリスタが一つ咳払いをし話を戻すように指示を出し、
それに気がついたナイレンは苦笑いをして話を戻す
「そうだな…明日朝から前から睨んでいた湖の遺跡調査に出る」
「本当か!?」
「待ってください!!本部の命令は現場を保持せよとの命令で…」
「俺達の使命はこの街を守ることだ…一刻の猶予もない。」
「………………。」
そこからフレンの父親の話や作戦の指示などを話されユーリとフレンは命令通り
風呂場へと向かったが、その間二人に会話らしい会話は全くなかった。
その夜ユーリは眠れなかった…
明日の作戦のこと、何よりルークの事が気がかりで寝付けない。
医務室から自室へ戻ったらしく心配だがこんな遅くに怪我人の部屋には行けなかった。
昨夜ルークと一緒に寝てその温かさがユーリの腕にしっかりと記憶されている…
複雑なため息をつきながら向かったのはナイレンの部屋。
こんなことを話できるのは隊長以外居ない。
もうすぐナイレンの部屋に着くというところで、
目的の部屋の前で二人の人物が話しているのを見つけた。
影からこっそりのぞいているとその人物はナイレンとルークであることがわかった。
ルークの頭にはまだ包帯が巻かれていてユーリの胸に重いものが圧し掛かる。
「頭の怪我…大丈夫か?ユーリが心配してたぞ。」
「あぁ…これくらい大丈夫…ユーリが…?明日の出発の時謝るよ…」
怪我をしているのにルークは明日の作戦に一緒に行くつもりのようだ…
ナイレンが止めてもルークは絶対についてくる…そんな気がした。
それを理解しているナイレンはため息を一つつくだけでそれ以上それについては何も言わなかった。
「お前…ユーリのことどう思ってるんだ?」
「………あいつは…そんな遠くない未来…世界を変える存在となるよ…」
ルークの言葉にユーリは自分の耳を疑った。
ただの一人の騎士団員に世界を変える力なんてあるはずがない…だが、
ルークの目に迷いはなかった…ただ本当にそれを解っているかのようだった。
「…それはお前がいつも言っている予言ってやつか?」
ナイレンはいつももっている煙管に右手につけてある銀色の魔導器で火を付け煙を吹かす。
しばらく黙ったままだったルークの口がゆっくりと動き言葉を発した。
「いや…これはただの感…いつもの予言じゃねぇよ……」
「だったら、お前が急に俺のところを訪ねてきたのは…何か悪い予言でも見たからか?」
「………それは…」
ルークの口が再び止まり何も話さなくなった。
ユーリには二人の会話が理解できなかった…予言というのは何なのか…
二人の関係がただの隊長と騎士団員には見えない…ユーリの頭はどんどん痛くなっていく。
「………そういえば、いつも付けてた金色の魔導器どうしたんだ?」
「あぁ…あれか…調子が悪くてな…新しいのを新調したんだ」
よく見ればナイレンがいつも腕に着けていたのは金色の魔導器だったはずだが、
今日は確かに銀色の魔導器を見に着けていた。
「ふーん…あれ結構狙ってたのにな…」
「いつかお前のところにいくさ…」
「え?まぁいいや…明日早いし俺寝るわ…おやすみ」
ルークとナイレンは手を振りおやすみのあいさつをするとナイレンは自室へと入り
ルークは自室へ続く廊下を歩きだした。
それはユーリが影で隠れていた方向だった為すれ違う時に見つかると思ったが、
ルークはユーリに気がつかずまっすぐ自室へと向かう。
すれ違う時にルークは小さな声で呟いていた。
「絶対に変えてやる…あんな予言俺が変えてやる…」
ユーリは何のことがわからずただぼんやりとルークの後ろ姿を見つめるしかなかった。
ルークの背中はユーリに比べとても小さい…
だが、その背中にはユーリが抱えているものよりも多くのものを抱えていることがわかった。
ユーリはルークのことが気になったが、当初の目的であるナイレンの部屋を訪ねることにし、
ナイレンの部屋をノックしようとしたが、中から聞き覚えのあるメロディが聞こえてきた。
それはここ数日いつも聞いているメロディ…
最初は誰かの唄声だったが、ここ数日はオルゴールのような機械音…
誰が鳴らしているのかわからなかったが…確かに今日は部屋の中から聞こえている。
ユーリは決心をしてナイレンの部屋を叩いた。
何かを知らせようとして必死に鳴いている…
ルークの意識はその声につられどんどんと近くなり、重い瞳を開かせた。
周りを見渡せば自室ではなく軍用犬の小屋…
何故ここに居るのかわからず、
昨夜のことを必死に思い出しているとまた子犬の鳴き声が聞こえた。
「ラピード…?ラピードどうした!?」
ラピードの声を聞き思い出す…昨夜のことを。
魔物に取りこまれたラピードの父、ランバートのことを…
仲間達に襲いかかってきたランバートを止めたのはユーリであることを。
一緒に寝ていたはずのユーリの姿を探すが、辺りを見回しても見つからない。
時刻を見ようとして窓の外を見るが曇っているため太陽の位置で時刻がわからない…
とりあえずルークはラピードが吠えているところへ駆けだし、
そこにあった風景を見て唖然とした。
小屋の外では雨の中ユーリとフレンが馬乗りになって殴り合って喧嘩をしていた。
フレンは確か先日から帝都の方に援軍を頼みに出張していたはずだ…
戻るにしては予定より早すぎる。嫌な予感がルークの頭をよぎったが今はそれどころではない。
二人は確かに仲は良い方ではなかった…しかし、殴り合いの喧嘩をするほど
仲が悪いわけでもなかったはずだ…心のどこかでは認めている…そうルークは感じていた。
二人の間に何があったかわからないがこのまま殴り合いをさせるわけにもいかず、
ルークは犬小屋を飛び出しフレンの上になっていたユーリの腕に飛びついた。
「ユーリやめろっ!!喧嘩なんかしても意味ねーよ!!」
「うるせぇ!!お前は引っ込んでろ!!」
ルークに止めるなと叫んでいると、その隙を見てフレンがユーリの身体を蹴飛ばした。
蹴飛ばされたユーリは地面に尻もちをつき、ルークは無意識にユーリの手を離し飛ばされずに済む。
ユーリはフレンを睨みつけすぐに身体を起こしフレンへと殴りかかったので
ルークは慌てて今度はフレンとユーリの腕に飛びついた。
「二人ともやめろって!!」
飛びついたルークに二人同時に罵声が飛びだしルークが飛びついて止めようとした腕を
勢いよく払いのけた。
「離せって言ってるだろうがっ!!」
「ルーク、離せ!!!」
「うわっ!!!…っく…っあ!!!!」
二人同時に払われた腕はルークの身体を軽々と飛ばし、ルークの身体は壁にぶつかった。
ルークの悲痛な声に我を取り戻したフレンとユーリは慌ててルークの元へと駆け寄った。
「お、おい…ルークっ!!しっかりしろ!!」
「ルーク!!大丈夫かい!?ごめん…君は無関係なのに…」
壁に頭をぶつけた為意識が朦朧として居る中でルークは二人の手を掴み力のない瞳で睨みつける。
「仲間同士で喧嘩するなよ…あと…俺は無関係じゃねぇ…俺達は…な……かま……」
ルークの口はそこで止まってしまう。
ユーリとフレンは顔を真っ青にしながら何度もルークの名前を呼ぶが反応はない。
そこにラピードの声を聞きつけてやってきたヒスカとシャスティルによってルークは医務室へと運ばれた。
予言ノ唄【TFS04】
「お前ら…何回そこに立たされたら気がすむんだ…」
ユーリとフレンは騎士団内で殴り合いの喧嘩をした為
ナイレンの部屋にまた呼び出されてしまった。
怪我をしたルークはまだ医務室で寝て居るためここには居ない。
「とりあえず…風呂入ってこい…話はそれからだ」
「そんな悠長なこと言ってられるのかよ!!」
ユーリがナイレンに食い付くとフレンが辛い顔をしながらナイレンに報告をした。
「式典が終わってから…援軍を出すそうです…それまで現場を保持せよと…」
「はぁ!?」
「そうか…辛い役目をさせてしまったなフレン…悪かった…」
「いえ…」
帝都でかなり辛いことを言われたのか
普段のフレンらしさはどこにもなくただ落ち込んでしまっている。
フレンのことも気になったが、ユーリは別に気になっていることがあったので
重い口を動かしナイレンに問いかけた。
「なぁ…隊長…ルークは?」
「あぁ…あいつはあの程度でくたばる身体じゃないから安心しろ…
さっき顔見に行ったら【受け身を失敗した自分が悪いから二人を責めるな】って言われたばかりだ…」
「ルーク…あいつらしいな…」
ユーリにはルークがナイレンに向かってそんなことを言っている姿がすぐ目に浮かぶ。
ただこの数日間しか一緒にいないのに何故か安易にルークの行動などが思い浮かぶ…
まるで前世…いや、違う世界でもずっと一緒だったかのように…
ルークの様態を確認できユーリの肩の力が少し抜けると、
ナイレンが笑いながらユーリに話しかけた。
「そんなにあいつのことが気になるのか?……お前、惚れたのか?」
「ば、馬鹿いうんじゃねぇよ!!あいつは男だろ!?
俺は男にそんな趣味は…………ねぇ……よ……」
ナイレンに指摘され顔を真っ赤にさせ反論を述べたが、
後半になるにつれ言葉に自信が無くなっていくのがわかった。
「どうした?いつもの自信はどこにいったんだ?」
「うるせぇな…俺だってわかんねぇよ…俺がどうしたいとかなんて…あいつは男で俺も男で…
って、今はそんな話じゃねぇだろうが!!」
「ははははは…そうだったな、すまん。しかし若いってのはいいもんだねぇ…」
ナイレンの横にいた相談役のガリスタが一つ咳払いをし話を戻すように指示を出し、
それに気がついたナイレンは苦笑いをして話を戻す
「そうだな…明日朝から前から睨んでいた湖の遺跡調査に出る」
「本当か!?」
「待ってください!!本部の命令は現場を保持せよとの命令で…」
「俺達の使命はこの街を守ることだ…一刻の猶予もない。」
「………………。」
そこからフレンの父親の話や作戦の指示などを話されユーリとフレンは命令通り
風呂場へと向かったが、その間二人に会話らしい会話は全くなかった。
その夜ユーリは眠れなかった…
明日の作戦のこと、何よりルークの事が気がかりで寝付けない。
医務室から自室へ戻ったらしく心配だがこんな遅くに怪我人の部屋には行けなかった。
昨夜ルークと一緒に寝てその温かさがユーリの腕にしっかりと記憶されている…
複雑なため息をつきながら向かったのはナイレンの部屋。
こんなことを話できるのは隊長以外居ない。
もうすぐナイレンの部屋に着くというところで、
目的の部屋の前で二人の人物が話しているのを見つけた。
影からこっそりのぞいているとその人物はナイレンとルークであることがわかった。
ルークの頭にはまだ包帯が巻かれていてユーリの胸に重いものが圧し掛かる。
「頭の怪我…大丈夫か?ユーリが心配してたぞ。」
「あぁ…これくらい大丈夫…ユーリが…?明日の出発の時謝るよ…」
怪我をしているのにルークは明日の作戦に一緒に行くつもりのようだ…
ナイレンが止めてもルークは絶対についてくる…そんな気がした。
それを理解しているナイレンはため息を一つつくだけでそれ以上それについては何も言わなかった。
「お前…ユーリのことどう思ってるんだ?」
「………あいつは…そんな遠くない未来…世界を変える存在となるよ…」
ルークの言葉にユーリは自分の耳を疑った。
ただの一人の騎士団員に世界を変える力なんてあるはずがない…だが、
ルークの目に迷いはなかった…ただ本当にそれを解っているかのようだった。
「…それはお前がいつも言っている予言ってやつか?」
ナイレンはいつももっている煙管に右手につけてある銀色の魔導器で火を付け煙を吹かす。
しばらく黙ったままだったルークの口がゆっくりと動き言葉を発した。
「いや…これはただの感…いつもの予言じゃねぇよ……」
「だったら、お前が急に俺のところを訪ねてきたのは…何か悪い予言でも見たからか?」
「………それは…」
ルークの口が再び止まり何も話さなくなった。
ユーリには二人の会話が理解できなかった…予言というのは何なのか…
二人の関係がただの隊長と騎士団員には見えない…ユーリの頭はどんどん痛くなっていく。
「………そういえば、いつも付けてた金色の魔導器どうしたんだ?」
「あぁ…あれか…調子が悪くてな…新しいのを新調したんだ」
よく見ればナイレンがいつも腕に着けていたのは金色の魔導器だったはずだが、
今日は確かに銀色の魔導器を見に着けていた。
「ふーん…あれ結構狙ってたのにな…」
「いつかお前のところにいくさ…」
「え?まぁいいや…明日早いし俺寝るわ…おやすみ」
ルークとナイレンは手を振りおやすみのあいさつをするとナイレンは自室へと入り
ルークは自室へ続く廊下を歩きだした。
それはユーリが影で隠れていた方向だった為すれ違う時に見つかると思ったが、
ルークはユーリに気がつかずまっすぐ自室へと向かう。
すれ違う時にルークは小さな声で呟いていた。
「絶対に変えてやる…あんな予言俺が変えてやる…」
ユーリは何のことがわからずただぼんやりとルークの後ろ姿を見つめるしかなかった。
ルークの背中はユーリに比べとても小さい…
だが、その背中にはユーリが抱えているものよりも多くのものを抱えていることがわかった。
ユーリはルークのことが気になったが、当初の目的であるナイレンの部屋を訪ねることにし、
ナイレンの部屋をノックしようとしたが、中から聞き覚えのあるメロディが聞こえてきた。
それはここ数日いつも聞いているメロディ…
最初は誰かの唄声だったが、ここ数日はオルゴールのような機械音…
誰が鳴らしているのかわからなかったが…確かに今日は部屋の中から聞こえている。
ユーリは決心をしてナイレンの部屋を叩いた。
「それじゃぁ、いってくる…あとのことは頼んだぞユルギス…」
「はっ。森は今かなり危険ですのでお気を付けて…シャスティルも無茶はしないでくれ」
「はーい」
まだ朝日が顔を出し始めた時刻、ナイレンとシャスティルは森へ調査へ向かうために
朝早くから出発の準備をしていた。
見送りにきたユルギスに声をかけ今から出発をしようとしたが、
建物の影に隠れてこちらをずっとみている存在に気がついた。
「おい、ルーク。そんなところに隠れていないで出てきたらどうだ?」
シャスティルとユルギスが振りかえると、見つかった為観念したのか
ルークが顔を赤くしながら出てくる。
「よく…わかったな…」
「伊達に隊長やってないんでね。で?何の用だ?朝飯の時間にはまだ早いだろ?」
ルークはどちらかというとぎりぎりまで寝ているタイプだ。
フレンのように早く起きて準備をする性格ではない…そのことはナイレンが一番よくしっている。
「これ…持っていけよ…」
「何だこれ?」
渡されたのは茶色い袋に入ったモノ。
手にとると結構な重さがあり、中身を検討することが難しかった。
「…………弁当」
ルークの言葉にナイレンの目は丸くなり驚いたが、
すぐにいつものように笑うと赤茶色の髪を激しく撫でた。
「普段料理なんてしねぇやつが…今日は夕方から雨でも降るんじゃないのか?」
「う、うっせー!!いらねぇのなら返せ!!」
ナイレンに渡した包み紙を奪い返そうとしたが、ヒラリと交わされ荷物の中へと入れてしまった。
「俺は貰ったものは返さない主義なんでね…それじゃぁ行ってくる。いくぞシャスティル」
そういうとナイレンは馬を動かし森へと向かって行った。
ユルギスがその姿を見送っていると、いつの間にかルークの姿が消えていた。
別レノ唄【TFS03】
今日の占いでは本日はラッキーデーのはずだった…
あまり占いなど信じていない方だったが、良い日だと言われ悪く思う人間は
そうそういない…
けどこの日からユルギスは占いなど一切信じられなくなる…
目の前に居る見たこともない魔物を目の当たりにしてラッキーデーとは言えないからだ。
今日は隊長であるナイレンも森へ調査にでかけ不在。
副隊長であるユルギスが全体指揮を取らなければいけない…
自分に指揮が取れるか不安に感じながらも魔物に襲われている馬車を助け
街の住人を避難させる指示をする。
優秀なメンバーが揃っている隊なのでスムーズに事が進む。
特によく動くのが昨日隊に来たばかりのルークだ。
手慣れた様子で迅速に人々を救助し安全な場所へと運ぶ…
ルーク一人でほとんどの仕事を片付けたようなものだ。
「いったい…彼は何なんだ…?」
ユルギスが不思議に思って見守っていると
街からまだ到着していなかったユーリとヒスカが到着した。
「な、何だあの魔物…!!!」
ユーリが驚くのも無理は無い。
赤い触手はまるで意思をもっているかのように動き、襲いかかる…
その周りには目の色を変えた狼の魔物達…
ユーリが剣に手を取ると大きな物音がした。
物音の正体は馬車が赤い触手に襲われ引きずられてしまった音…
乗っていた人々は無事に避難できているようだ。
それを確認したユーリは剣を再び手にし、
襲いかかってくる狼の魔物達を次々に切り倒すが、
避難したはずの女性から悲痛な訴えが聞こえてきた。
「あ、あの中にまだ娘が…」
「何だって!?って…!!!」
馬車の中に娘が居ると言われ馬車に目を向けると
そこには女の子が一人…そしていつの間にそこにまで移動したのか
ルークが女の子を守るように抱え魔物達に剣を向けていた。
「あ……」
「大丈夫…俺が守ってやるから…安心しろ…」
怖がる女の子を胸に抱きルークは優しい言葉で落ち着かせる…
しかし、女の子を助けようにも道は魔物達で塞がれてしまっている。
ルーク一人ならば切り抜けられるだろう…だが、女の子を片手で抱え
走りぬけるには無理があった…何か突破口でもあれば…
とルークが考えていると空から赤い触手に向けて剣のみが落ちてきて
そして、剣の持ち主も空から舞い降りルークの前へと姿を見せた。
「ばかっ!!一人で全部抱えこもうとするんじゃねぇよ!!」
「ゆ、ユーリ…ごめん…」
「……ほら、その子かせ…俺が連れて行くからお前は後から来る敵を頼む」
「わかった」
ルークは素直に女の子をユーリに渡し駆け抜ける体勢に入った。
ここで「いやだ」と言えば怒るつもりだったユーリだが、
素直な相手の反応に少し驚いてしまう。
「じゃぁ、行くぞ……今だっ!!」
ルークとユーリは魔物達の隙を見て走りだした。
一瞬だけひるんだ魔物達だったが、すぐに前を走るユーリに襲いかかるが、
ユーリは片手で軽々と切り倒していく。
後から襲いかかる魔物はルークが切り倒していくが赤い触手も一緒に襲いかかって来た為
ルークは一度足を止めた。
「ルーク!!何してるんだ!!」
「先に行け!!すぐに行くから…」
「……解った。」
仲間のいる地点まではもう目と鼻の先…
この距離なら女の子をそちらへ置いてルークを助けに行く方が早いと判断したので、
ユーリは再び走り出した。
走りだすと今度はユーリの上空を無数の矢が飛び後から襲ってきた魔物を倒していく…
矢を放ったのはこの街に滞在するギルドのメンバー…
そう、昨日大喧嘩をしたギルドのメンバー達だった。
巨大な身体を持ったギルドのボス、メルゾムが笑いながら登場した。
「よう…坊主…大丈夫か?」
「あぁ…助かったぜ…この子を頼む…」
ユーリは騎士団の仲間に女の子を預けるとすぐに走ってきた道を戻るが…
そこに居たはずの多くの魔物はすでに倒されていた…
残っているのは赤い触手の魔物と数匹の狼の魔物…
「全部ルークが倒したのかよ…すげぇ…」
ルークの後姿がまた森で見かけたアイツを思い浮かばせた…
似ているけど…特徴が違う…アイツとルークの関係が全く見えてこなかった。
ユーリがルークの後ろ姿に見とれていると数匹の狼がルークに襲いかかる。
「ルークっ!!!」
「ッチ…これでもくらいな…岩斬滅砕陣!!!!」
剣で大地に衝撃を与えると数多の岩石が飛び同時に襲ってきた魔物達を吹き飛ばす。
ユーリは慌ててルークに近づくがルークは何処も怪我をしていなかった。
「言っただろ?大勢の相手するときは立ちまわりなんだよ…」
「ははっ…お前余裕だな…心配して損したぜ…」
ルークの笑顔に吊られユーリも笑う。
そして二人同時に走り仲間のところへと戻った。
「ルーク!!無茶をするな!!」
「悪い…ユルギス…」
「はぁ…もういい…撤退するぞ…」
ユルギスの言葉にほとんどの団員が頷いたが、
ルークとユーリだけが首を横に振った。
「……それはできない相談だよな…」
「あぁ…あの赤いやつ…このままにしてられねぇよ…」
ユーリとルークは前線に立っているメルゾムの横に並んで立つ。
ユルギスが二人の名前を叫んでいるが二人の耳には全く届いていない…
「いいのか?二人とも…」
二人は何も答えずにただ剣を魔物に向ける…
それが二人の答えだ。
メルゾムは二人の答えを受け取り同じく身構えるが、
魔物達は森へと逃げ帰って行った。
そしてそのあとを2匹の軍用犬が追いかけて行った。
「お、おい…お前ら待てっ!!!………ランバート?」
ユーリと目が合ったのはナイレンの相棒犬であるランバートだ。
ランバートの目はユーリに何かを訴えているような目をしている…
そして、その鋭い瞳をユーリから森へ移すを仲間を追いかけるように走って行った。
「ランバート!!待てって!!おい!!!」
「ユーリ…行くぞ…ランバート達だけじゃ無理だ」
「…ルーク!!ったく…人の話を聞けよ…」
ランバートの走って行った道をルークをユーリは追いかけ、
そしてそのあとをギルドのメンバー、騎士団の仲間数名が追いかけて行った。
街へ戻ってきたユーリの顔は暗くて…苦しそうな表情をしている。
重い身体…重い剣をなんとかひっぱり騎士団の門の前まで到着し
重かった剣に目を移す…綺麗に拭きとったが罪を流すことはできない…
「くそっ!!」
ユーリは持っていた剣を地面に叩きつけ騎士団の門を開けると
そこには小さな子犬がちょこんとお座りをして待っていた。
「ラピード…」
ラピードはユーリに駆けよるとユーリが捨てた剣の匂いを嗅ぎ、
誰か大切な人を探すように辺りを見回し森の方を見つめた…
ユーリは知っている。
ラピードが誰を探しているのか…誰を待っているのかを…
そしてもうラピードの元へは戻ってこないことを…
お座りをして待っているラピードを抱きかかえると
ラピードの小さな背中に顔を近づけ小さな声で呟いた。
「ラピード…ごめん…俺…お前の父ちゃんを…」
その言葉をラピードが理解したかは解らないが、
優しくユーリの頬を舐める。
ユーリの瞳から何かが流れたが、それは降り出した雨なのかそれとも別の物なのか
はっきりとはわからない…。
ユーリがラピードを抱えているとすぐそばに誰かが居ることに気がついた。
見上げてみるとそこに居たのは赤茶色の人物…ルークだった。
「ユーリ…その…ごめん…」
「ルーク……何でお前が謝るんだ…?」
ルークは何も言わずにユーリに飛びつき
ユーリの胸に顔を埋め、背中に回した手はしっかりとユーリの服を掴んでいる。
両手でラピードを抱えていたユーリは抱き返すことができなかった。
「だって…俺がもっとしっかりしていたら…お前にあんなつらい役目押し付けなかったのに…
俺が森へ入らなかったら…お前の忠告聞いて戻っていたら…ごめん…ほんと…ごめん…
ラピードごめん…俺お前の父上を守ってやれなくて…助けてあげれなくて…ごめん…」」
ラピードを片手だけで持ちルークの顔を無理やり上げさせると
その顔はぐちゃぐちゃになっていて…普段とは全く違う表情だった。
「……俺が選んだ道だ…お前が謝る必要はねぇよ…お前は本当に優しいやつだな…」
瞳から流れた涙を片手で拭きとるとまたユーリの胸に顔を埋めた。
このままここにいると二人ともずぶぬれになってしまうので
ユーリはルークに優しく声をかけた。
「ほら、部屋戻るぞ…」
「やだ…戻りたくない…一人になりたくない…」
ルークの両手はユーリの服をますます強く掴む。
ユーリはため息をつき、ルークの頭を優しく撫でると
ラピードとルークを連れて騎士団の中へと入っていった。
ふと、目を開けると飛び込んできたのは赤茶色の色…
その色の持ち主はすやすやと気持ちよさそうに眠りに入っている。
その両手にはラピードを優しく、大切に抱えながら寝ていた。
ユーリはその姿に頬を緩ませると自分達の身体に毛布が掛かっていることに気がつき、
起き上がると目の前にいたのは朝から森へでかけていたナイレンだった。
「隊長……その…すみませんでした…」
咥えていた煙管を口から離し、ユーリの方を向くとナイレンは静かに口を動かした。
「謝ることはない…ランバートのことすまなかったな…辛いことを押しつけたな…」
「いや……俺は自分で選んだから…しょうがない…けどこいつが…」
ユーリが隣で寝ているルークに目を向けると、
ナイレンもそれにつられて目を向けた、
そしてユーリの言っている意味を理解したのか深いため息をついた。
「優しいやつだからな…そこがいつか命取りにならないか心配だ…
そろそろ部屋に戻れ…風邪ひくぞ。」
「……こいつを置いては戻れねぇし…今は戻りたくない。」
「……………解った、風邪ひくなよ」
ナイレンが立ちあがり犬小屋を出ようとした時、
小さな声がナイレンの耳へ届いた。
「………ゆ……り…どこ………?」
「ルーク…どうした?俺ならここにいるぞ…」
半分だけ開いた瞳がユーリを探し、
ユーリの姿をその瞳でとらえると嬉しそうな表情をしてまたその瞳を閉じる。
片手ではユーリの裾をしっかりと握りしめている。
「……驚いたな。そいつ中々人に懐かないやつなんだが……
お前になら……任しても大丈夫そうだな……」
「何のことだ?」
「いや…今はまだ早い…近いうちにゆっくり話そう…
しばらくそいつらの傍にいてやってくれ…さびしがるだろうからな…」
ナイレンの言う【そいつら】に目を向けると気持ちよさそうに夢の中へと落ちており、
その寝顔を見るとさっきまで冷たかった心がゆっくりと温かくなる。
「あ…そうだ…毛布さんきゅー。二日も続けて悪かったな」
「二日も…?俺が毛布をかけたのは今日が初めてだが?」
「え?じゃぁ…あのひよこ模様入りの毛布は誰の…?」
ユーリの言葉にナイレンは犯人が誰か解ったらしく
言葉にならない笑みを浮かべながら犬小屋を去って行った。
一人まだ犯人が解らず途方に暮れていたユーリは
再び夢へ落ちる為に横になり目を閉じた。
落ちて行く最中に何処からかまた聞き覚えのある音が聞こえてきた。
いや、今まで聞いた音は誰かの唄声だったが、
今日は機械の音…オルゴールのような音だった。
誰が鳴らしているのだろう…何て言う曲なのだろう…
いろいろなことを思いながらユーリは夢へと落ちていった。
「はっ。森は今かなり危険ですのでお気を付けて…シャスティルも無茶はしないでくれ」
「はーい」
まだ朝日が顔を出し始めた時刻、ナイレンとシャスティルは森へ調査へ向かうために
朝早くから出発の準備をしていた。
見送りにきたユルギスに声をかけ今から出発をしようとしたが、
建物の影に隠れてこちらをずっとみている存在に気がついた。
「おい、ルーク。そんなところに隠れていないで出てきたらどうだ?」
シャスティルとユルギスが振りかえると、見つかった為観念したのか
ルークが顔を赤くしながら出てくる。
「よく…わかったな…」
「伊達に隊長やってないんでね。で?何の用だ?朝飯の時間にはまだ早いだろ?」
ルークはどちらかというとぎりぎりまで寝ているタイプだ。
フレンのように早く起きて準備をする性格ではない…そのことはナイレンが一番よくしっている。
「これ…持っていけよ…」
「何だこれ?」
渡されたのは茶色い袋に入ったモノ。
手にとると結構な重さがあり、中身を検討することが難しかった。
「…………弁当」
ルークの言葉にナイレンの目は丸くなり驚いたが、
すぐにいつものように笑うと赤茶色の髪を激しく撫でた。
「普段料理なんてしねぇやつが…今日は夕方から雨でも降るんじゃないのか?」
「う、うっせー!!いらねぇのなら返せ!!」
ナイレンに渡した包み紙を奪い返そうとしたが、ヒラリと交わされ荷物の中へと入れてしまった。
「俺は貰ったものは返さない主義なんでね…それじゃぁ行ってくる。いくぞシャスティル」
そういうとナイレンは馬を動かし森へと向かって行った。
ユルギスがその姿を見送っていると、いつの間にかルークの姿が消えていた。
別レノ唄【TFS03】
今日の占いでは本日はラッキーデーのはずだった…
あまり占いなど信じていない方だったが、良い日だと言われ悪く思う人間は
そうそういない…
けどこの日からユルギスは占いなど一切信じられなくなる…
目の前に居る見たこともない魔物を目の当たりにしてラッキーデーとは言えないからだ。
今日は隊長であるナイレンも森へ調査にでかけ不在。
副隊長であるユルギスが全体指揮を取らなければいけない…
自分に指揮が取れるか不安に感じながらも魔物に襲われている馬車を助け
街の住人を避難させる指示をする。
優秀なメンバーが揃っている隊なのでスムーズに事が進む。
特によく動くのが昨日隊に来たばかりのルークだ。
手慣れた様子で迅速に人々を救助し安全な場所へと運ぶ…
ルーク一人でほとんどの仕事を片付けたようなものだ。
「いったい…彼は何なんだ…?」
ユルギスが不思議に思って見守っていると
街からまだ到着していなかったユーリとヒスカが到着した。
「な、何だあの魔物…!!!」
ユーリが驚くのも無理は無い。
赤い触手はまるで意思をもっているかのように動き、襲いかかる…
その周りには目の色を変えた狼の魔物達…
ユーリが剣に手を取ると大きな物音がした。
物音の正体は馬車が赤い触手に襲われ引きずられてしまった音…
乗っていた人々は無事に避難できているようだ。
それを確認したユーリは剣を再び手にし、
襲いかかってくる狼の魔物達を次々に切り倒すが、
避難したはずの女性から悲痛な訴えが聞こえてきた。
「あ、あの中にまだ娘が…」
「何だって!?って…!!!」
馬車の中に娘が居ると言われ馬車に目を向けると
そこには女の子が一人…そしていつの間にそこにまで移動したのか
ルークが女の子を守るように抱え魔物達に剣を向けていた。
「あ……」
「大丈夫…俺が守ってやるから…安心しろ…」
怖がる女の子を胸に抱きルークは優しい言葉で落ち着かせる…
しかし、女の子を助けようにも道は魔物達で塞がれてしまっている。
ルーク一人ならば切り抜けられるだろう…だが、女の子を片手で抱え
走りぬけるには無理があった…何か突破口でもあれば…
とルークが考えていると空から赤い触手に向けて剣のみが落ちてきて
そして、剣の持ち主も空から舞い降りルークの前へと姿を見せた。
「ばかっ!!一人で全部抱えこもうとするんじゃねぇよ!!」
「ゆ、ユーリ…ごめん…」
「……ほら、その子かせ…俺が連れて行くからお前は後から来る敵を頼む」
「わかった」
ルークは素直に女の子をユーリに渡し駆け抜ける体勢に入った。
ここで「いやだ」と言えば怒るつもりだったユーリだが、
素直な相手の反応に少し驚いてしまう。
「じゃぁ、行くぞ……今だっ!!」
ルークとユーリは魔物達の隙を見て走りだした。
一瞬だけひるんだ魔物達だったが、すぐに前を走るユーリに襲いかかるが、
ユーリは片手で軽々と切り倒していく。
後から襲いかかる魔物はルークが切り倒していくが赤い触手も一緒に襲いかかって来た為
ルークは一度足を止めた。
「ルーク!!何してるんだ!!」
「先に行け!!すぐに行くから…」
「……解った。」
仲間のいる地点まではもう目と鼻の先…
この距離なら女の子をそちらへ置いてルークを助けに行く方が早いと判断したので、
ユーリは再び走り出した。
走りだすと今度はユーリの上空を無数の矢が飛び後から襲ってきた魔物を倒していく…
矢を放ったのはこの街に滞在するギルドのメンバー…
そう、昨日大喧嘩をしたギルドのメンバー達だった。
巨大な身体を持ったギルドのボス、メルゾムが笑いながら登場した。
「よう…坊主…大丈夫か?」
「あぁ…助かったぜ…この子を頼む…」
ユーリは騎士団の仲間に女の子を預けるとすぐに走ってきた道を戻るが…
そこに居たはずの多くの魔物はすでに倒されていた…
残っているのは赤い触手の魔物と数匹の狼の魔物…
「全部ルークが倒したのかよ…すげぇ…」
ルークの後姿がまた森で見かけたアイツを思い浮かばせた…
似ているけど…特徴が違う…アイツとルークの関係が全く見えてこなかった。
ユーリがルークの後ろ姿に見とれていると数匹の狼がルークに襲いかかる。
「ルークっ!!!」
「ッチ…これでもくらいな…岩斬滅砕陣!!!!」
剣で大地に衝撃を与えると数多の岩石が飛び同時に襲ってきた魔物達を吹き飛ばす。
ユーリは慌ててルークに近づくがルークは何処も怪我をしていなかった。
「言っただろ?大勢の相手するときは立ちまわりなんだよ…」
「ははっ…お前余裕だな…心配して損したぜ…」
ルークの笑顔に吊られユーリも笑う。
そして二人同時に走り仲間のところへと戻った。
「ルーク!!無茶をするな!!」
「悪い…ユルギス…」
「はぁ…もういい…撤退するぞ…」
ユルギスの言葉にほとんどの団員が頷いたが、
ルークとユーリだけが首を横に振った。
「……それはできない相談だよな…」
「あぁ…あの赤いやつ…このままにしてられねぇよ…」
ユーリとルークは前線に立っているメルゾムの横に並んで立つ。
ユルギスが二人の名前を叫んでいるが二人の耳には全く届いていない…
「いいのか?二人とも…」
二人は何も答えずにただ剣を魔物に向ける…
それが二人の答えだ。
メルゾムは二人の答えを受け取り同じく身構えるが、
魔物達は森へと逃げ帰って行った。
そしてそのあとを2匹の軍用犬が追いかけて行った。
「お、おい…お前ら待てっ!!!………ランバート?」
ユーリと目が合ったのはナイレンの相棒犬であるランバートだ。
ランバートの目はユーリに何かを訴えているような目をしている…
そして、その鋭い瞳をユーリから森へ移すを仲間を追いかけるように走って行った。
「ランバート!!待てって!!おい!!!」
「ユーリ…行くぞ…ランバート達だけじゃ無理だ」
「…ルーク!!ったく…人の話を聞けよ…」
ランバートの走って行った道をルークをユーリは追いかけ、
そしてそのあとをギルドのメンバー、騎士団の仲間数名が追いかけて行った。
街へ戻ってきたユーリの顔は暗くて…苦しそうな表情をしている。
重い身体…重い剣をなんとかひっぱり騎士団の門の前まで到着し
重かった剣に目を移す…綺麗に拭きとったが罪を流すことはできない…
「くそっ!!」
ユーリは持っていた剣を地面に叩きつけ騎士団の門を開けると
そこには小さな子犬がちょこんとお座りをして待っていた。
「ラピード…」
ラピードはユーリに駆けよるとユーリが捨てた剣の匂いを嗅ぎ、
誰か大切な人を探すように辺りを見回し森の方を見つめた…
ユーリは知っている。
ラピードが誰を探しているのか…誰を待っているのかを…
そしてもうラピードの元へは戻ってこないことを…
お座りをして待っているラピードを抱きかかえると
ラピードの小さな背中に顔を近づけ小さな声で呟いた。
「ラピード…ごめん…俺…お前の父ちゃんを…」
その言葉をラピードが理解したかは解らないが、
優しくユーリの頬を舐める。
ユーリの瞳から何かが流れたが、それは降り出した雨なのかそれとも別の物なのか
はっきりとはわからない…。
ユーリがラピードを抱えているとすぐそばに誰かが居ることに気がついた。
見上げてみるとそこに居たのは赤茶色の人物…ルークだった。
「ユーリ…その…ごめん…」
「ルーク……何でお前が謝るんだ…?」
ルークは何も言わずにユーリに飛びつき
ユーリの胸に顔を埋め、背中に回した手はしっかりとユーリの服を掴んでいる。
両手でラピードを抱えていたユーリは抱き返すことができなかった。
「だって…俺がもっとしっかりしていたら…お前にあんなつらい役目押し付けなかったのに…
俺が森へ入らなかったら…お前の忠告聞いて戻っていたら…ごめん…ほんと…ごめん…
ラピードごめん…俺お前の父上を守ってやれなくて…助けてあげれなくて…ごめん…」」
ラピードを片手だけで持ちルークの顔を無理やり上げさせると
その顔はぐちゃぐちゃになっていて…普段とは全く違う表情だった。
「……俺が選んだ道だ…お前が謝る必要はねぇよ…お前は本当に優しいやつだな…」
瞳から流れた涙を片手で拭きとるとまたユーリの胸に顔を埋めた。
このままここにいると二人ともずぶぬれになってしまうので
ユーリはルークに優しく声をかけた。
「ほら、部屋戻るぞ…」
「やだ…戻りたくない…一人になりたくない…」
ルークの両手はユーリの服をますます強く掴む。
ユーリはため息をつき、ルークの頭を優しく撫でると
ラピードとルークを連れて騎士団の中へと入っていった。
ふと、目を開けると飛び込んできたのは赤茶色の色…
その色の持ち主はすやすやと気持ちよさそうに眠りに入っている。
その両手にはラピードを優しく、大切に抱えながら寝ていた。
ユーリはその姿に頬を緩ませると自分達の身体に毛布が掛かっていることに気がつき、
起き上がると目の前にいたのは朝から森へでかけていたナイレンだった。
「隊長……その…すみませんでした…」
咥えていた煙管を口から離し、ユーリの方を向くとナイレンは静かに口を動かした。
「謝ることはない…ランバートのことすまなかったな…辛いことを押しつけたな…」
「いや……俺は自分で選んだから…しょうがない…けどこいつが…」
ユーリが隣で寝ているルークに目を向けると、
ナイレンもそれにつられて目を向けた、
そしてユーリの言っている意味を理解したのか深いため息をついた。
「優しいやつだからな…そこがいつか命取りにならないか心配だ…
そろそろ部屋に戻れ…風邪ひくぞ。」
「……こいつを置いては戻れねぇし…今は戻りたくない。」
「……………解った、風邪ひくなよ」
ナイレンが立ちあがり犬小屋を出ようとした時、
小さな声がナイレンの耳へ届いた。
「………ゆ……り…どこ………?」
「ルーク…どうした?俺ならここにいるぞ…」
半分だけ開いた瞳がユーリを探し、
ユーリの姿をその瞳でとらえると嬉しそうな表情をしてまたその瞳を閉じる。
片手ではユーリの裾をしっかりと握りしめている。
「……驚いたな。そいつ中々人に懐かないやつなんだが……
お前になら……任しても大丈夫そうだな……」
「何のことだ?」
「いや…今はまだ早い…近いうちにゆっくり話そう…
しばらくそいつらの傍にいてやってくれ…さびしがるだろうからな…」
ナイレンの言う【そいつら】に目を向けると気持ちよさそうに夢の中へと落ちており、
その寝顔を見るとさっきまで冷たかった心がゆっくりと温かくなる。
「あ…そうだ…毛布さんきゅー。二日も続けて悪かったな」
「二日も…?俺が毛布をかけたのは今日が初めてだが?」
「え?じゃぁ…あのひよこ模様入りの毛布は誰の…?」
ユーリの言葉にナイレンは犯人が誰か解ったらしく
言葉にならない笑みを浮かべながら犬小屋を去って行った。
一人まだ犯人が解らず途方に暮れていたユーリは
再び夢へ落ちる為に横になり目を閉じた。
落ちて行く最中に何処からかまた聞き覚えのある音が聞こえてきた。
いや、今まで聞いた音は誰かの唄声だったが、
今日は機械の音…オルゴールのような音だった。
誰が鳴らしているのだろう…何て言う曲なのだろう…
いろいろなことを思いながらユーリは夢へと落ちていった。
ひゅるるるっ~………パーン……
小さな光が空高く飛び途中で大きく弾け飛んだ。
それは誰かが魔導器を使った証拠…こんな辺鄙は町で
魔導器を使える者は騎士団以外居ない。
「おいおい…ここの隊員どうなってるんだよ…」
「はははは…お前に似て元気いっぱいなやつらばっかりだよ。
しかし…お前その色…もうちょっとなんとかならなかったのか?」
「………うぜーし…黙ってろ…………ほら、さっさと行くぞ」
赤茶色の髪をした人物は騎士団の制服を見に纏いナイレンと共にシゾンタニアの街へと向かって行った。
運命ノ唄【TFS02】
「お前ら…なーにあぶねぇことやってるんだ…
固まってないでさっさと見回りに行け。」
「た、隊長っ…!!!!」
ユーリに見せろと急かされ魔導器を使ったシャスティルとヒスカだったが、
まさか隊長に見られていたとは思わず小さくなり反省をしていた。
ユーリが笑いながら二人を見ていると、
隊長の横に見慣れない人物が立っていることに気がつく。
長く赤茶色の髪に、やる気のない紅い瞳…一般騎士団の男性服を着ていることから同じ騎士団のメンバーだと
理解できたが、ユーリはその人物を一度も見たことがない。
いや…正確にいえば一度だけ見たことがある気がした…
昨日少しだけ見たあの人物に…しかし、特徴が全然違っている…
「なぁ…あれ誰?」
小さくなっていたヒスカにその人物を聞くが、
ヒスカも知らないらしく首を横に振った。
「隊長…あの…どちら様ですか?」
シャスティルが赤茶色の人物のことを隊長に聞くと、
隊長は隣にいた赤茶色の頭を激しく撫で始めた…撫でられた本人は迷惑そうな顔をしている。
「あぁ…こいつか?こいつは今日からしばらくうちで研修の為に配属された…
えっと……名前は……」
「ルーク…ルーク・フォン・ファブレだ…よろしくな。」
ルークと名乗った人物は小さく笑ったが、
またすぐにやる気のない瞳へと戻り、
ナイレンはルークの姿に複雑そうな顔を見せた…
「え?隊長私達そんな話聞いてませんけど!!」
「あぁ…わりぃ…忘れてた…」
「「はあぁっ!?」
ヒスカとシャスティルは色々とナイレンに文句を言い始めたが、
ナイレンは慣れているのか聞く耳を持たず…笑いながら4人の横を通り騎士団へと向かっていく。
「なぁ…ルーク…だっけか?アンタ…昨日森に居なかったか?」
ユーリの横を通り過ぎる時にルークに声をかけた。
かなり小柄なルークは必然的にユーリを見上げる形となり
そのやる気のない瞳でユーリを見つめた。
「いや…俺今ここに来たばっかりだし…
あんな大掛かりな魔物退治見てねぇ…」
「……そっか。悪い…人違いだ」
ルークは興味を失くしたのか紅い瞳を進行方向へと向けると
すたすたとナイレンの後を追いかけていった。
その後姿はやはり昨日見た人物とそっくりだったが……
昨日見た人は朱い髪に碧の瞳…ルークは赤茶色の髪に紅い瞳。
共通点が見当たらなかった。
「……人違いか。」
「人違いかもしれないけど…彼は嘘を一つ付いてるね」
「は?何で解るんだよ…」
「彼は今ここに着いたと言った…けど彼は昨日の大掛かりな魔物退治のことを知っている。
君が昨日会った人物と同一人物とは言えないけど…昨日あの森付近に居たことは確かだ。」
「なるほど…確かに…」
ユーリが遠く離れていくルークの後姿を見つめていると、
先輩2人に呼ばれてしまいそこで思考は一度終わりを告げた。
「いってぇ~!!!もう少し優しくできねぇのかよ!!」
「自業自得」
「お前…馬鹿だろ…そんな喧嘩くらい無傷で終われよ。だっせーつーの。」
ユーリとフレンはその日の夜酒場で喧嘩をした。
相手はギルドの人間…ユーリからちょっかいをかけ喧嘩になり、
フレンまで巻きこむ大ゲンカとなってしまった。
ユーリもフレンもそこそこ強い方だったが無傷ではなく、
指導係の先輩二人に傷を直して貰っていた。
フレンは魔導器、ユーリは消毒と差が歴然としていたが…。
その治療中にたまたま傍を通りかかったルークが呆れた表情をしてその様子を眺めていた。
「うるせぇ…あんな大人数ならしょうがねぇだろ…」
「大人数相手なら立ちまわりを考えろ、いいか例えば相手がこう…」
「あ~!!!もう、ちょっとストップストップ!!!」
いつの間にかルーク先生による大人数時の喧嘩の仕方講座が始まり
ヒスカが慌ててそれを止める…これいじょうユーリに問題を起こされたら大変だからだ。
「なんだよ…騎士団なら大人数相手の戦いとか普通にあるだろ?別にいいじゃん。」
「よくない!!それに今は必要ないでしょ!!あ~…!!もう、変なのばっかり入ってくるぅ!!!」
ヒスカが頭を抱えて唸っていると、
隣にいたシャスティルが慰めるように肩をたたいた。
「ヒスカ…落ち着いて…私達には希望があるじゃない…聖なる焔…ルーク様にもうすぐ会えるのよ」
「っは…そうだった…憧れのルークお姉さまに会えるんだった…」
「ルーク…おねえさま?」
「……………。」
ヒスカとシャスティルは目をキラキラと輝かせ夢の国へと意識を飛ばしていたが、
ユーリは何のことかわからず首をかしげて二人を見ている。
その横ではルークが複雑な表情を見せて意識を夢の国へ飛ばしている二人を見つめた。
「ルークお姉さまって…あの、聖なる焔のルーク様ですか?」
「そうよ!!流石フレンね!!どっかの誰かと違って理解力があるわぁ~」
「悪かったな理解力なくて…誰だよそいつ…」
ユーリの言葉にフレンと双子は驚いた顔を見せる。
多少冗談かと思ったが、ユーリの顔を見ると本当に知らないらしく…フレンは呆れてため息をついた。
「ユーリ…騎士団に入ったのだから有名な人くらいは知っておいた方がいい…ルーク様は…」
「フレン待って。私達が教えてあげる…ルーク様はね最年少で騎士団に入団。
そして先日行われた隊長昇任試験では最年少で合格し、歴代最高記録を叩きだしたのよ!!」
「ふーん……で?」
ユーリのいまいちな反応にヒスカはまた怒鳴りそうになったが、
シャスティルの語る声によりそれは止められてしまった。
「しかも、男性社会であるこの騎士団で唯一の女性騎士隊長…女性騎士には憧れの存在なのよ…
綺麗な長く朱い髪に、宝石のような碧の瞳…そしてナイスバディなお姿…憧れるぅ~…」
「へー…ふーん…」
ユーリは本当に興味がないようでやる気のない相槌を返す…
3人は目をキラキラと輝かせ、残り2人は呆れた表情を見せる…
この場面だけでかなりの温度差がみられた。
「ルーク様にお会いできるって…もしかして、お二人の同期とかですか?」
「そんなわけないじゃん!!もうすぐここにくるのよ!!このシゾンタニアに!!」
「えぇ!!??ルーク様は確か帝都勤務ですよね?何故こんなところまで…?」
何が嬉しいのかユーリには全く理解ができなかった…
ユーリはさっさと部屋に戻る用意を始めたが、
隣にいたルークがその紅い瞳でで3人を難しい顔をしながら見つめていることに気がついた。
ふと、ユーリは気がついた…こいつもルークだよな…と。
「あれ?フレンは知らないの?ルーク様のフルネームはルーク・フェドロック…ナイレン隊長の娘さんなのよ」
「えぇ!!!???」
この話にはユーリも興味が沸いた。
あのゴリラのような隊長の娘となると…やっぱりゴリラのような娘なのだろうかと想像する。
しかし、2人曰くスタイルは良いそうなので…父親には似ることはなかったのだろうか…
それはそれで幸せなのかもしれない。
「先日の隊長昇格試験の報告に休みを取ってシゾンタニアまで来るらしいのよ!!
あ~…お姉さま…早くお会いしたい…」
「なぁ…そのルークお姉さまって…こいつのことじゃねぇの?」
話に入れなかったユーリが隣に居た人物を指指し会話に参加する。
ユーリが指さした人物…それは今日から入ってきたルーク・フォン・ファブレだ。
指を差されたルークは驚いた表情を見せ何故か口をぱくぱくと動かしている、
そして瞳を輝かせていた3人はげんなりとテンションを下げてしまっていた。
「あんたねぇ…人の話聞いてた?ルークお姉さまは女よ…お・ん・な!!」
「え?こいつ女だろ?」
ユーリの発言にその場に居た4人は言葉を失った。
発言をしたユーリのみが首をかしげ何か間違えたことを言ったのかと不思議そうな顔をしている。
「あんた…ルークはどう見ても男でしょお・と・こ!!!それに髪とか目の色が違うじゃない!!」
「え?あ…お前男だったのか…悪い…間違えてた…」
「いや…あの…えっと…別に謝らなくても…」
ルークが何かを言いかけていたが、
隊長が怒って待っていると別団員が教えに来てくれた為、ルークの言葉は聞くことができなかった。
隊長に呼び出された後フレンの小言を聞くのが嫌になったユーリは
ラピード達が寝る犬小屋で一夜を明かそうと向かうが、
誰も居ないはずの犬小屋から光が漏れていることに気がついた。
相手に気がつかれないように犬小屋に入り相手を確認すると
赤茶色の髪の毛でルークが中に居るかすぐにわかった。
ルークは優しそうな声でラピードに餌をやりながら撫でている。
「お前は良い子だなぁ…父上は優しそうでいいな…俺ももっと素直に甘えれたらいいのに…」
「だったら、素直に甘えたらいいんじゃねぇの?」
「だ、誰!?」
ユーリの気配に気が付いていなかったルークは慌てて声のする方に振り向き、
声の主を確認するとほっとした表情を見せた。
「何だ…ユーリか…何しに来たんだよ…」
「ん?フレンとちょっと喧嘩してな…ここで寝ようと…」
「馬鹿だな…お前…」
「うるせー」
何の断りもなくルークの隣に座り、ラピードが美味しそうに餌を食べている姿を見つめていたが、
気になって隣にいたルークの顔を盗み見る。
近くで見ないとわからないが長いまつげに大きな瞳…ラピードを見つめる顔はまだ幼さが残っている。
どう考えても女にしか本能的には思わないが…みんなルークは男だと言い張る。
ユーリの視線に気がついたのかルークは照れながらユーリを睨みつけた。
その瞳は今朝みたやる気のない表情ではない…まるで別人のように生き生きとした表情だった。
「な、何だよ…人の顔じっとみて…」
「いや…やっぱり美人だよなぁ…って」
「お前に言われたくねぇし…」
「ははは…たしかにそうだな…俺もよく間違えられる…さっきは悪かったな性別間違えて。」
ルークは困った表情を見せながらも小さくうなずいた。
その姿が何だか可愛らしく思えユーリは優しく頭を撫でる…。
「その…お前も会いたいか?ルーク・フェドロックに…」
「ん?あー…まぁ別に…ここに来て会うくらいなら別にいいけどな…」
「それくらいのがいいよ…期待しない方がいい…聖なる焔って表では言われてるけど…
裏では鮮血のルークって呼ばれてる…」
「鮮血の…?」
さっき3人から聞いた話とはまた別の話だった。
その言葉があの3人から出てこなかったということはあの3人が知らないことなのだろう…。
「あぁ…戦場で戦った姿が…まるで血を全身に浴びたような姿だって…
朱い髪がまるで血の様だって…」
ルークのことではないはずなのに、ルークはまるで自分のことのように語る。
先ほどまで丸く輝いていた碧色の瞳からどんどん輝きが失われて行く…
ユーリは何としてでもその光が失われるのを止めたくて、ルークに手を伸ばし、
自分の胸へと引き込んだ。
「ばか…お前がそんな辛そうな顔するんじゃねぇ…他人が何て言おうとそいつはそいつだ…
二つ名なんて気にするな…本当のそいつを知らないやつが勝手につけた言葉だ。
お前が辛そうな顔する必要なんてねぇ…」
ルークの身体をしっかりと抱きしめてルークの耳元で優しく語りかける…
強く抱きしめるが壊さないように…優しく…温かく抱きしめる…
「ユーリ…」
ユーリに抱きしめられて生き場を失った手は弱い力でユーリの制服の端を掴む。
それがまた可愛らしく…愛おしい…
「その…ありがとう…」
「どういたしまして。お前は笑ってる方がいいぜ…やる気のない顔や辛い顔なんて似合わないからな…」
ユーリは優しくルークの頬にキスを落とす。
最初はきょとんとしていたルークだったが、キスをされたと解ったのか
だんだんと顔が真っ赤になりユーリから慌てて離れた。
「こ、この天然タラシが!!お前なんてここで寝て風邪ひいちまえ!!」
と大声で言うと風のように宿舎へと逃げ帰ってしまった。
一人取り残されたユーリは少し寂しそうな顔をするとラピード達が眠る藁の一部を借りて横になる。
横になったユーリだったが、中々寝付けることができず色々と考えてしまう。
主に思うのはルークのこと…
ルークの碧色の瞳…どこかで見たような気がした。
あんな綺麗な碧…一度どこかで出会っていたら忘れることなんてできないはずだ…
けど、ユーリは中々思いだせない…碧色の瞳を持ちそうな知り合いを片っ端から思い浮かべていたが、
ふとある矛盾点に気がついた。
「………あいつ、さっきヒスカ達と居たときは…瞳紅色じゃなかったか…?碧色って…見間違えたのか?」
また横になるとルークのことについていろいろと考え始める。
確か、初めてであった時は紅い色だった…
ヒスカ達と似たような紅い色だけど、少し違っていて…
その時は女と思っていて…けど実は………
そこでユーリの思考は止まり、再び身体を起こすが今度は顔を真っ青にしている。
「あ、あいつ…男なんだよな…俺男に何キスしてるんだ…え?あれ?
俺ってもしかしてそっち系だったのか…?いやいや…違う違うぞ…」
自分の真実に気が付いてしまったユーリは中々眠ることができず
やっと眠れたのは夜中をかなり過ぎた時間。
そして、眠りに落ちて行く途中でどこかで聞いた唄が聞こえてきた…。
ラピードに噛まれて起こされたユーリは自分の身体に毛布が掛かっていることに気がついた。
昨夜は何も持たずこの犬小屋に来たはずだった…
「フレン…いやいや違うな…なら…隊長か?」
ナイレンなら毛布くらいかけてくれるだろうと思い使っていた毛布を畳んでいると、
毛布の角に小さなアップリケを見つけた。
「……ひよこ?隊長…ひよこ好きなのか?」
ナイレンの意外な姿を知ってしまったユーリは苦笑いをしながら朝食を取る為に食堂へと足を向けた。
小さな光が空高く飛び途中で大きく弾け飛んだ。
それは誰かが魔導器を使った証拠…こんな辺鄙は町で
魔導器を使える者は騎士団以外居ない。
「おいおい…ここの隊員どうなってるんだよ…」
「はははは…お前に似て元気いっぱいなやつらばっかりだよ。
しかし…お前その色…もうちょっとなんとかならなかったのか?」
「………うぜーし…黙ってろ…………ほら、さっさと行くぞ」
赤茶色の髪をした人物は騎士団の制服を見に纏いナイレンと共にシゾンタニアの街へと向かって行った。
運命ノ唄【TFS02】
「お前ら…なーにあぶねぇことやってるんだ…
固まってないでさっさと見回りに行け。」
「た、隊長っ…!!!!」
ユーリに見せろと急かされ魔導器を使ったシャスティルとヒスカだったが、
まさか隊長に見られていたとは思わず小さくなり反省をしていた。
ユーリが笑いながら二人を見ていると、
隊長の横に見慣れない人物が立っていることに気がつく。
長く赤茶色の髪に、やる気のない紅い瞳…一般騎士団の男性服を着ていることから同じ騎士団のメンバーだと
理解できたが、ユーリはその人物を一度も見たことがない。
いや…正確にいえば一度だけ見たことがある気がした…
昨日少しだけ見たあの人物に…しかし、特徴が全然違っている…
「なぁ…あれ誰?」
小さくなっていたヒスカにその人物を聞くが、
ヒスカも知らないらしく首を横に振った。
「隊長…あの…どちら様ですか?」
シャスティルが赤茶色の人物のことを隊長に聞くと、
隊長は隣にいた赤茶色の頭を激しく撫で始めた…撫でられた本人は迷惑そうな顔をしている。
「あぁ…こいつか?こいつは今日からしばらくうちで研修の為に配属された…
えっと……名前は……」
「ルーク…ルーク・フォン・ファブレだ…よろしくな。」
ルークと名乗った人物は小さく笑ったが、
またすぐにやる気のない瞳へと戻り、
ナイレンはルークの姿に複雑そうな顔を見せた…
「え?隊長私達そんな話聞いてませんけど!!」
「あぁ…わりぃ…忘れてた…」
「「はあぁっ!?」
ヒスカとシャスティルは色々とナイレンに文句を言い始めたが、
ナイレンは慣れているのか聞く耳を持たず…笑いながら4人の横を通り騎士団へと向かっていく。
「なぁ…ルーク…だっけか?アンタ…昨日森に居なかったか?」
ユーリの横を通り過ぎる時にルークに声をかけた。
かなり小柄なルークは必然的にユーリを見上げる形となり
そのやる気のない瞳でユーリを見つめた。
「いや…俺今ここに来たばっかりだし…
あんな大掛かりな魔物退治見てねぇ…」
「……そっか。悪い…人違いだ」
ルークは興味を失くしたのか紅い瞳を進行方向へと向けると
すたすたとナイレンの後を追いかけていった。
その後姿はやはり昨日見た人物とそっくりだったが……
昨日見た人は朱い髪に碧の瞳…ルークは赤茶色の髪に紅い瞳。
共通点が見当たらなかった。
「……人違いか。」
「人違いかもしれないけど…彼は嘘を一つ付いてるね」
「は?何で解るんだよ…」
「彼は今ここに着いたと言った…けど彼は昨日の大掛かりな魔物退治のことを知っている。
君が昨日会った人物と同一人物とは言えないけど…昨日あの森付近に居たことは確かだ。」
「なるほど…確かに…」
ユーリが遠く離れていくルークの後姿を見つめていると、
先輩2人に呼ばれてしまいそこで思考は一度終わりを告げた。
「いってぇ~!!!もう少し優しくできねぇのかよ!!」
「自業自得」
「お前…馬鹿だろ…そんな喧嘩くらい無傷で終われよ。だっせーつーの。」
ユーリとフレンはその日の夜酒場で喧嘩をした。
相手はギルドの人間…ユーリからちょっかいをかけ喧嘩になり、
フレンまで巻きこむ大ゲンカとなってしまった。
ユーリもフレンもそこそこ強い方だったが無傷ではなく、
指導係の先輩二人に傷を直して貰っていた。
フレンは魔導器、ユーリは消毒と差が歴然としていたが…。
その治療中にたまたま傍を通りかかったルークが呆れた表情をしてその様子を眺めていた。
「うるせぇ…あんな大人数ならしょうがねぇだろ…」
「大人数相手なら立ちまわりを考えろ、いいか例えば相手がこう…」
「あ~!!!もう、ちょっとストップストップ!!!」
いつの間にかルーク先生による大人数時の喧嘩の仕方講座が始まり
ヒスカが慌ててそれを止める…これいじょうユーリに問題を起こされたら大変だからだ。
「なんだよ…騎士団なら大人数相手の戦いとか普通にあるだろ?別にいいじゃん。」
「よくない!!それに今は必要ないでしょ!!あ~…!!もう、変なのばっかり入ってくるぅ!!!」
ヒスカが頭を抱えて唸っていると、
隣にいたシャスティルが慰めるように肩をたたいた。
「ヒスカ…落ち着いて…私達には希望があるじゃない…聖なる焔…ルーク様にもうすぐ会えるのよ」
「っは…そうだった…憧れのルークお姉さまに会えるんだった…」
「ルーク…おねえさま?」
「……………。」
ヒスカとシャスティルは目をキラキラと輝かせ夢の国へと意識を飛ばしていたが、
ユーリは何のことかわからず首をかしげて二人を見ている。
その横ではルークが複雑な表情を見せて意識を夢の国へ飛ばしている二人を見つめた。
「ルークお姉さまって…あの、聖なる焔のルーク様ですか?」
「そうよ!!流石フレンね!!どっかの誰かと違って理解力があるわぁ~」
「悪かったな理解力なくて…誰だよそいつ…」
ユーリの言葉にフレンと双子は驚いた顔を見せる。
多少冗談かと思ったが、ユーリの顔を見ると本当に知らないらしく…フレンは呆れてため息をついた。
「ユーリ…騎士団に入ったのだから有名な人くらいは知っておいた方がいい…ルーク様は…」
「フレン待って。私達が教えてあげる…ルーク様はね最年少で騎士団に入団。
そして先日行われた隊長昇任試験では最年少で合格し、歴代最高記録を叩きだしたのよ!!」
「ふーん……で?」
ユーリのいまいちな反応にヒスカはまた怒鳴りそうになったが、
シャスティルの語る声によりそれは止められてしまった。
「しかも、男性社会であるこの騎士団で唯一の女性騎士隊長…女性騎士には憧れの存在なのよ…
綺麗な長く朱い髪に、宝石のような碧の瞳…そしてナイスバディなお姿…憧れるぅ~…」
「へー…ふーん…」
ユーリは本当に興味がないようでやる気のない相槌を返す…
3人は目をキラキラと輝かせ、残り2人は呆れた表情を見せる…
この場面だけでかなりの温度差がみられた。
「ルーク様にお会いできるって…もしかして、お二人の同期とかですか?」
「そんなわけないじゃん!!もうすぐここにくるのよ!!このシゾンタニアに!!」
「えぇ!!??ルーク様は確か帝都勤務ですよね?何故こんなところまで…?」
何が嬉しいのかユーリには全く理解ができなかった…
ユーリはさっさと部屋に戻る用意を始めたが、
隣にいたルークがその紅い瞳でで3人を難しい顔をしながら見つめていることに気がついた。
ふと、ユーリは気がついた…こいつもルークだよな…と。
「あれ?フレンは知らないの?ルーク様のフルネームはルーク・フェドロック…ナイレン隊長の娘さんなのよ」
「えぇ!!!???」
この話にはユーリも興味が沸いた。
あのゴリラのような隊長の娘となると…やっぱりゴリラのような娘なのだろうかと想像する。
しかし、2人曰くスタイルは良いそうなので…父親には似ることはなかったのだろうか…
それはそれで幸せなのかもしれない。
「先日の隊長昇格試験の報告に休みを取ってシゾンタニアまで来るらしいのよ!!
あ~…お姉さま…早くお会いしたい…」
「なぁ…そのルークお姉さまって…こいつのことじゃねぇの?」
話に入れなかったユーリが隣に居た人物を指指し会話に参加する。
ユーリが指さした人物…それは今日から入ってきたルーク・フォン・ファブレだ。
指を差されたルークは驚いた表情を見せ何故か口をぱくぱくと動かしている、
そして瞳を輝かせていた3人はげんなりとテンションを下げてしまっていた。
「あんたねぇ…人の話聞いてた?ルークお姉さまは女よ…お・ん・な!!」
「え?こいつ女だろ?」
ユーリの発言にその場に居た4人は言葉を失った。
発言をしたユーリのみが首をかしげ何か間違えたことを言ったのかと不思議そうな顔をしている。
「あんた…ルークはどう見ても男でしょお・と・こ!!!それに髪とか目の色が違うじゃない!!」
「え?あ…お前男だったのか…悪い…間違えてた…」
「いや…あの…えっと…別に謝らなくても…」
ルークが何かを言いかけていたが、
隊長が怒って待っていると別団員が教えに来てくれた為、ルークの言葉は聞くことができなかった。
隊長に呼び出された後フレンの小言を聞くのが嫌になったユーリは
ラピード達が寝る犬小屋で一夜を明かそうと向かうが、
誰も居ないはずの犬小屋から光が漏れていることに気がついた。
相手に気がつかれないように犬小屋に入り相手を確認すると
赤茶色の髪の毛でルークが中に居るかすぐにわかった。
ルークは優しそうな声でラピードに餌をやりながら撫でている。
「お前は良い子だなぁ…父上は優しそうでいいな…俺ももっと素直に甘えれたらいいのに…」
「だったら、素直に甘えたらいいんじゃねぇの?」
「だ、誰!?」
ユーリの気配に気が付いていなかったルークは慌てて声のする方に振り向き、
声の主を確認するとほっとした表情を見せた。
「何だ…ユーリか…何しに来たんだよ…」
「ん?フレンとちょっと喧嘩してな…ここで寝ようと…」
「馬鹿だな…お前…」
「うるせー」
何の断りもなくルークの隣に座り、ラピードが美味しそうに餌を食べている姿を見つめていたが、
気になって隣にいたルークの顔を盗み見る。
近くで見ないとわからないが長いまつげに大きな瞳…ラピードを見つめる顔はまだ幼さが残っている。
どう考えても女にしか本能的には思わないが…みんなルークは男だと言い張る。
ユーリの視線に気がついたのかルークは照れながらユーリを睨みつけた。
その瞳は今朝みたやる気のない表情ではない…まるで別人のように生き生きとした表情だった。
「な、何だよ…人の顔じっとみて…」
「いや…やっぱり美人だよなぁ…って」
「お前に言われたくねぇし…」
「ははは…たしかにそうだな…俺もよく間違えられる…さっきは悪かったな性別間違えて。」
ルークは困った表情を見せながらも小さくうなずいた。
その姿が何だか可愛らしく思えユーリは優しく頭を撫でる…。
「その…お前も会いたいか?ルーク・フェドロックに…」
「ん?あー…まぁ別に…ここに来て会うくらいなら別にいいけどな…」
「それくらいのがいいよ…期待しない方がいい…聖なる焔って表では言われてるけど…
裏では鮮血のルークって呼ばれてる…」
「鮮血の…?」
さっき3人から聞いた話とはまた別の話だった。
その言葉があの3人から出てこなかったということはあの3人が知らないことなのだろう…。
「あぁ…戦場で戦った姿が…まるで血を全身に浴びたような姿だって…
朱い髪がまるで血の様だって…」
ルークのことではないはずなのに、ルークはまるで自分のことのように語る。
先ほどまで丸く輝いていた碧色の瞳からどんどん輝きが失われて行く…
ユーリは何としてでもその光が失われるのを止めたくて、ルークに手を伸ばし、
自分の胸へと引き込んだ。
「ばか…お前がそんな辛そうな顔するんじゃねぇ…他人が何て言おうとそいつはそいつだ…
二つ名なんて気にするな…本当のそいつを知らないやつが勝手につけた言葉だ。
お前が辛そうな顔する必要なんてねぇ…」
ルークの身体をしっかりと抱きしめてルークの耳元で優しく語りかける…
強く抱きしめるが壊さないように…優しく…温かく抱きしめる…
「ユーリ…」
ユーリに抱きしめられて生き場を失った手は弱い力でユーリの制服の端を掴む。
それがまた可愛らしく…愛おしい…
「その…ありがとう…」
「どういたしまして。お前は笑ってる方がいいぜ…やる気のない顔や辛い顔なんて似合わないからな…」
ユーリは優しくルークの頬にキスを落とす。
最初はきょとんとしていたルークだったが、キスをされたと解ったのか
だんだんと顔が真っ赤になりユーリから慌てて離れた。
「こ、この天然タラシが!!お前なんてここで寝て風邪ひいちまえ!!」
と大声で言うと風のように宿舎へと逃げ帰ってしまった。
一人取り残されたユーリは少し寂しそうな顔をするとラピード達が眠る藁の一部を借りて横になる。
横になったユーリだったが、中々寝付けることができず色々と考えてしまう。
主に思うのはルークのこと…
ルークの碧色の瞳…どこかで見たような気がした。
あんな綺麗な碧…一度どこかで出会っていたら忘れることなんてできないはずだ…
けど、ユーリは中々思いだせない…碧色の瞳を持ちそうな知り合いを片っ端から思い浮かべていたが、
ふとある矛盾点に気がついた。
「………あいつ、さっきヒスカ達と居たときは…瞳紅色じゃなかったか…?碧色って…見間違えたのか?」
また横になるとルークのことについていろいろと考え始める。
確か、初めてであった時は紅い色だった…
ヒスカ達と似たような紅い色だけど、少し違っていて…
その時は女と思っていて…けど実は………
そこでユーリの思考は止まり、再び身体を起こすが今度は顔を真っ青にしている。
「あ、あいつ…男なんだよな…俺男に何キスしてるんだ…え?あれ?
俺ってもしかしてそっち系だったのか…?いやいや…違う違うぞ…」
自分の真実に気が付いてしまったユーリは中々眠ることができず
やっと眠れたのは夜中をかなり過ぎた時間。
そして、眠りに落ちて行く途中でどこかで聞いた唄が聞こえてきた…。
ラピードに噛まれて起こされたユーリは自分の身体に毛布が掛かっていることに気がついた。
昨夜は何も持たずこの犬小屋に来たはずだった…
「フレン…いやいや違うな…なら…隊長か?」
ナイレンなら毛布くらいかけてくれるだろうと思い使っていた毛布を畳んでいると、
毛布の角に小さなアップリケを見つけた。
「……ひよこ?隊長…ひよこ好きなのか?」
ナイレンの意外な姿を知ってしまったユーリは苦笑いをしながら朝食を取る為に食堂へと足を向けた。
朱く長い髪を降ろし一人の少女が謁見の間でひざを着き一人の男性に挨拶を交わした。
「この度の昇格試験では歴代最高得点で合格したそうだな…流石だな。」
「…はい。お褒め頂きありがとうございます。」
「ふむ…」
銀髪の男性は何か考えるような仕草を見せると
朱き少女にまた目を移し口を動かした。
「褒美として何か一つ願いを聞こう…何が望みだ?」
少女は驚いた表情を見せると小さく笑いながらも答える。
「閣下…ありがとうございます。私の願いは……………。」
ハジマリノ唄【TFS01:ユリルク子】
暗い闇を纏う森…
いつもならば静かな森だったが、今日はその静かさは無かった。
「ちょっとユーリ!!作戦通りに動きなさいよ!!」
「うるせー…ちゃんと進んでるだろ!!」
後からユーリを追いかけるように走るヒスカが
怒りながらユーリを止めようとするが、ユーリの足は止まる気配を見せない。
しかし、後を振り返れば凶暴化した魔物達…
止まることもできず作戦に支障が出ない程度に走る速さを上げて行くしかない。
前を行くユーリは後から来るヒスカをどんどん引き離し、
一番乗りで集合場所に辿り着いた…が。
「な、何なんだ…この魔物の山…いや、死んでるのか?」
ユーリが目にした光景は魔物の山…正確にいえば魔物の亡骸が大量に転がっており、
その亡骸の中央には一人の人間が後を向いて立っている。
長く揺れる朱い髪…白い上着に背中には悪魔のようなマークが付いている。
左手に持っている剣にはべったりと紅い液体がついており、その液体は腕にまで飛んでいる。
「だ、誰なんだあいつは…」
チームのメンバーではない…あんなやつ見たことがないからだ。
今日は大掛かりな魔物退治の為に森へは一般市民は立ち入り禁止になっているはずだ。
いや…こんな夜更けに一人で危険な森に入る人間の方がめずらしい…
味方なのか…敵なのか…今の情報だけでは判断ができなかった。
「お、おい…お前…何モンだ!!!」
ユーリは剣を握り直し叫んだ。
ようやくユーリの存在に気がついたのか、
後向きに立っていたので見えなかった顔が少しだけ見えた。
月明かりで顔はよく見えなかったが…碧色の瞳が不気味に輝いている。
その雰囲気から味方とは判断できない…ユーリは戦闘態勢に入ろうとしたが、
後から自分を呼ぶ声が近づいてきていることに気がついた。
「ユーリ!!まちなさーい!!!」
「ばかっ!!来るんじゃねぇ!!くそ…あいつが何モンかわかんねぇのに来るなよ…」
追いかけてくるヒスカに向かって注意を呼び掛けるが、
ヒスカの声はどんどん近付いてくる…止まりたくても後ろに魔物が居るので止まれないのだろう。
ユーリは再び謎の人物に剣を向けるが…相手は小さく笑った。
そして持っていた剣を腰に戻すとその人物は何も言わずどこかへと走り去って行った。
「な、何なんだ…あいつは…」
ユーリが茫然とその人物が立ち去った方角を見ていると、
ヒスカが後から追いついてきた…魔物と一緒に。
「ちょっとユーリ!!置いていかないでよ!!」
「え?あ…悪い…ってすっげー数連れてくるなよ!!!」
ヒスカの後から付いて来た魔物を一匹ずつ倒していると、
他のメンバー達も集まり出した…その中には幼馴染フレンの姿もあった。
「おっせーよ」
「フン…」
愛想のない返事を返してくるが、いつものことだ…特に気にはしなかった。
フレンと二人で襲いかかってくる魔物を倒していくが、
さきほど見た人物はこの倍の数の魔物を一人で倒していた…
どれだけ強いのか…興味が沸いてくる。
「ユーリ!!フレン!!戻れ!!」
仲間の呼び掛けに反応してユーリとフレンはすぐに仲間の元へと駆け抜けていく。
「フォースシールド!!!!」
間一髪ヒスカが発動させた魔導器のバリア内に入ると、
バリアの外側に居た魔物達は次々と姿を消していき後には静かな森だけが残った。
ヒスカがバリアを解除させると後から別の声が聞こえたきた。
「ユーリ!!フレン!!初仕事にしちゃぁ…上出来だ!!!」
声の主はこの騎士団隊を率いるナイレン隊長だった。
隊長の一言に作戦が終わったことを理解したユーリは
無事に初任務を終え胸を少し降ろしていたユーリにフレンの怒鳴り声が届いた。
「何で作戦通りに行動しないんだ!!」
「うまくいったんだからいいじゃねぇか!!」
幼馴染の喧嘩は止まることを知らない。
二人は次々に言葉の喧嘩を始めるが、ナイレンからの拳骨により喧嘩は一時的に止まった。
「えぇ~い!!うるせー!!さっさと後始末に行きやがれ!!!」
「っく…お前のせいで怒られたじゃねぇか…」
「君のせいだろ!!」
止まることのない二人の喧嘩にため息しかでないナイレンだったが、
フレンと口喧嘩をしていたユーリの足が止まりナイレンの元へ戻ってきた。
「ん?どうしたユーリ?」
「なぁ…この作戦に俺達以外の人間が関わってるとかねぇよな?」
「………何言ってるんだお前?」
ナイレンの表情からして嘘をついていないと判断したユーリは
少し考えながらも隊長に報告するのは義務だと思いさきほど出会った人物のことを伝えた。
「俺がここに着いた時…騎士団の人間以外のやつが居たんだ…
長くて朱い髪に…白い上着…あ、変なマークがついていたな…」
「………朱い髪…おい…そいつの目の色は何色だった?」
「え?あぁ……碧色だったけど…」
「………碧色…」
ナイレンの頭に該当者が居るのか難しい…いや複雑な表情を見せた。
「隊長…知ってるやつなのか?」
「え?あー…まー…似たような知り合いが居るが…作戦には関わってない
ずいぶん気になってるようだが…惚れたのか?」
「後ろ姿で性別わかんねぇのに惚れるかよ…ただ、めちゃくちゃ強かったから…気になっただけ…
魔導器発動直前にここから離れてたけど…あいつ無事かな…」
「お前が強いと思えるくらいのウデなら大丈夫だろ。
ほれ、片付けに行った行った。」
まだ納得をしてなかったユーリだったが、隊長からの指示には逆らえず…しぶしぶフレン達の待つ片付けに向かうが
その時どこからともなく歌が聞こえてきた。
『トゥエ レイ ズェ クロア リョ トゥエ ズェ
クロア リョ ズェ トゥエ リョ レイ ネゥ リョ ズェ
ヴァ レイ ズェ トゥエ ネゥ トゥエ リョ トゥエ クロア
リョ レイ クロア リョ ズェ レイ ヴァ ズェ レイ
ヴァ ネゥ ヴァ レイ ヴァ ネゥ ヴァ ズェ レイ
クロア リョ クロア ネゥ トゥエ レイ クロア リョ ズェ レイ ヴァ
レイ ヴァ ネゥ クロア トゥエ レイ レイ…』
とても透明感のある歌声…
傷などは回復する効果はないが…疲れた心が癒されていく気がした。
「……あいつが歌ってるのか?」
また会えるかわからないが、また再び出会いたいと強く思った。
いや、きっとまた近いうちに会える…そんな気がした。
「この度の昇格試験では歴代最高得点で合格したそうだな…流石だな。」
「…はい。お褒め頂きありがとうございます。」
「ふむ…」
銀髪の男性は何か考えるような仕草を見せると
朱き少女にまた目を移し口を動かした。
「褒美として何か一つ願いを聞こう…何が望みだ?」
少女は驚いた表情を見せると小さく笑いながらも答える。
「閣下…ありがとうございます。私の願いは……………。」
ハジマリノ唄【TFS01:ユリルク子】
暗い闇を纏う森…
いつもならば静かな森だったが、今日はその静かさは無かった。
「ちょっとユーリ!!作戦通りに動きなさいよ!!」
「うるせー…ちゃんと進んでるだろ!!」
後からユーリを追いかけるように走るヒスカが
怒りながらユーリを止めようとするが、ユーリの足は止まる気配を見せない。
しかし、後を振り返れば凶暴化した魔物達…
止まることもできず作戦に支障が出ない程度に走る速さを上げて行くしかない。
前を行くユーリは後から来るヒスカをどんどん引き離し、
一番乗りで集合場所に辿り着いた…が。
「な、何なんだ…この魔物の山…いや、死んでるのか?」
ユーリが目にした光景は魔物の山…正確にいえば魔物の亡骸が大量に転がっており、
その亡骸の中央には一人の人間が後を向いて立っている。
長く揺れる朱い髪…白い上着に背中には悪魔のようなマークが付いている。
左手に持っている剣にはべったりと紅い液体がついており、その液体は腕にまで飛んでいる。
「だ、誰なんだあいつは…」
チームのメンバーではない…あんなやつ見たことがないからだ。
今日は大掛かりな魔物退治の為に森へは一般市民は立ち入り禁止になっているはずだ。
いや…こんな夜更けに一人で危険な森に入る人間の方がめずらしい…
味方なのか…敵なのか…今の情報だけでは判断ができなかった。
「お、おい…お前…何モンだ!!!」
ユーリは剣を握り直し叫んだ。
ようやくユーリの存在に気がついたのか、
後向きに立っていたので見えなかった顔が少しだけ見えた。
月明かりで顔はよく見えなかったが…碧色の瞳が不気味に輝いている。
その雰囲気から味方とは判断できない…ユーリは戦闘態勢に入ろうとしたが、
後から自分を呼ぶ声が近づいてきていることに気がついた。
「ユーリ!!まちなさーい!!!」
「ばかっ!!来るんじゃねぇ!!くそ…あいつが何モンかわかんねぇのに来るなよ…」
追いかけてくるヒスカに向かって注意を呼び掛けるが、
ヒスカの声はどんどん近付いてくる…止まりたくても後ろに魔物が居るので止まれないのだろう。
ユーリは再び謎の人物に剣を向けるが…相手は小さく笑った。
そして持っていた剣を腰に戻すとその人物は何も言わずどこかへと走り去って行った。
「な、何なんだ…あいつは…」
ユーリが茫然とその人物が立ち去った方角を見ていると、
ヒスカが後から追いついてきた…魔物と一緒に。
「ちょっとユーリ!!置いていかないでよ!!」
「え?あ…悪い…ってすっげー数連れてくるなよ!!!」
ヒスカの後から付いて来た魔物を一匹ずつ倒していると、
他のメンバー達も集まり出した…その中には幼馴染フレンの姿もあった。
「おっせーよ」
「フン…」
愛想のない返事を返してくるが、いつものことだ…特に気にはしなかった。
フレンと二人で襲いかかってくる魔物を倒していくが、
さきほど見た人物はこの倍の数の魔物を一人で倒していた…
どれだけ強いのか…興味が沸いてくる。
「ユーリ!!フレン!!戻れ!!」
仲間の呼び掛けに反応してユーリとフレンはすぐに仲間の元へと駆け抜けていく。
「フォースシールド!!!!」
間一髪ヒスカが発動させた魔導器のバリア内に入ると、
バリアの外側に居た魔物達は次々と姿を消していき後には静かな森だけが残った。
ヒスカがバリアを解除させると後から別の声が聞こえたきた。
「ユーリ!!フレン!!初仕事にしちゃぁ…上出来だ!!!」
声の主はこの騎士団隊を率いるナイレン隊長だった。
隊長の一言に作戦が終わったことを理解したユーリは
無事に初任務を終え胸を少し降ろしていたユーリにフレンの怒鳴り声が届いた。
「何で作戦通りに行動しないんだ!!」
「うまくいったんだからいいじゃねぇか!!」
幼馴染の喧嘩は止まることを知らない。
二人は次々に言葉の喧嘩を始めるが、ナイレンからの拳骨により喧嘩は一時的に止まった。
「えぇ~い!!うるせー!!さっさと後始末に行きやがれ!!!」
「っく…お前のせいで怒られたじゃねぇか…」
「君のせいだろ!!」
止まることのない二人の喧嘩にため息しかでないナイレンだったが、
フレンと口喧嘩をしていたユーリの足が止まりナイレンの元へ戻ってきた。
「ん?どうしたユーリ?」
「なぁ…この作戦に俺達以外の人間が関わってるとかねぇよな?」
「………何言ってるんだお前?」
ナイレンの表情からして嘘をついていないと判断したユーリは
少し考えながらも隊長に報告するのは義務だと思いさきほど出会った人物のことを伝えた。
「俺がここに着いた時…騎士団の人間以外のやつが居たんだ…
長くて朱い髪に…白い上着…あ、変なマークがついていたな…」
「………朱い髪…おい…そいつの目の色は何色だった?」
「え?あぁ……碧色だったけど…」
「………碧色…」
ナイレンの頭に該当者が居るのか難しい…いや複雑な表情を見せた。
「隊長…知ってるやつなのか?」
「え?あー…まー…似たような知り合いが居るが…作戦には関わってない
ずいぶん気になってるようだが…惚れたのか?」
「後ろ姿で性別わかんねぇのに惚れるかよ…ただ、めちゃくちゃ強かったから…気になっただけ…
魔導器発動直前にここから離れてたけど…あいつ無事かな…」
「お前が強いと思えるくらいのウデなら大丈夫だろ。
ほれ、片付けに行った行った。」
まだ納得をしてなかったユーリだったが、隊長からの指示には逆らえず…しぶしぶフレン達の待つ片付けに向かうが
その時どこからともなく歌が聞こえてきた。
『トゥエ レイ ズェ クロア リョ トゥエ ズェ
クロア リョ ズェ トゥエ リョ レイ ネゥ リョ ズェ
ヴァ レイ ズェ トゥエ ネゥ トゥエ リョ トゥエ クロア
リョ レイ クロア リョ ズェ レイ ヴァ ズェ レイ
ヴァ ネゥ ヴァ レイ ヴァ ネゥ ヴァ ズェ レイ
クロア リョ クロア ネゥ トゥエ レイ クロア リョ ズェ レイ ヴァ
レイ ヴァ ネゥ クロア トゥエ レイ レイ…』
とても透明感のある歌声…
傷などは回復する効果はないが…疲れた心が癒されていく気がした。
「……あいつが歌ってるのか?」
また会えるかわからないが、また再び出会いたいと強く思った。
いや、きっとまた近いうちに会える…そんな気がした。
