エターナルソードの遺跡を目指す為一度街へ寄ったユーリ。
あまり目立たないように買いものをしているを街の一角で騒ぎが起きていることに
気が付いた…ユーリの性格上街中で起きた騒ぎをそのまま見過ごすことはできなかった。
「ったく…俺何かとりつかれてるんじゃねぇの?」
買ったばかりの荷物を片手にユーリは騒ぎの方へと足を向けた。
ルークを幸せにしたいと思った
群衆が群がるところをすり抜けて現場がよく見えるところまでくると、
騒ぎを起こしていたのは茶色の毛を持つ少年、ピンク色の少女そして赤毛の青年だった。
「お前の方がぶつかってきたんだろ!!謝れよ!!」
「はぁ?俺は悪くねーし、お前が謝れよ!!」
「ちょっとカイウス!!いい加減にしなさいよ!!」
話を流れから多分少年と青年がぶつかり両方が謝罪を求めていることが解った…
よくあるパターンの喧嘩だ…
こんな小さな喧嘩では自分のでる幕ではないと判断したユーリはその場を
後にしようとしたが、群衆の小声が耳に入りその足は止まった。
「おい…あの茶色の少年…獣人じゃねーか?」
「マジかよ…だったらマナの枯渇もあいつのせいじゃん…」
言いがかりにもほどがある…
マナが枯渇している原因は彼のせいではない…世界樹が異変を起こしているからだ。
けど人間は誰かのせいにしないと心が落ち着かない生き物…
災いをもたらすと噂される獣人は良い獲物なのだろう。
ユーリはそんなみにくい心にため息をつくが、
その小声話はどんどん広がりその場に居た街の人々の目が殺意に変っていくのがわかった。
「ねぇ…カイウス…」
「あぁ…逃げるぞルビア…」
二人は同時に視線を合わせると一目散にその場から逃げ出し、
それに合わせて街の人々も二人を追いかけてその場から走りだした。
「え?あ…ちょ…何だよお前!!逃げんじゃねーよ!!おいこら待ちやがれ!!」
赤毛の青年は人々が一斉に移動したことに驚き、
少し茫然としていたがすぐに我に返ると喧嘩をしていた少年を追いかける為に
その道を走りだそうとした。
だが、ユーリがその肩を掴んで青年の動きを止めた。
「ちょいまち。何でお前まで追いかけるんだ…獣人だからか?」
「はぁ?お前だれ?つーか獣人?そんなの関係ねーし、俺はただあいつに謝罪させたいだけだつーの」
「本当にそれだけか?」
「それ以外に理由なんてねーし。つーかあいつが獣人?なわけねーだろ。
獣人っていうのはな…二本足で歩く犬のことなんだぞ」
青年の言葉にユーリは呆気にとられた。
それは森に住む魔物だろ…それとも変身後の彼らのことを言っているのだろうか…
ユーリには青年の言葉が理解できなかった。
「そうだ…お前俺をあいつのところまで連れていけよ。暇だろ?後で報酬は好きなだけ払ってやるよ」
「はぁ?」
言い方からして貴族の息子なのだろうか…ユーリの苦手なタイプの人間と判断した。
これ以上関わらないように断って逃げようと思ったが青年はユーリの腕を掴み
少年達が逃げていった方へと足を向けていった。
「あ…おい…俺はまだ返事してねぇ…」
「いいからいいから。ほら行くぞ。黙って俺についてこい!!」
青年は腰に刺していた剣を抜きとり少年を追いかけて行った。
ここで黙って消えたらいいものの、ユーリにはそれができずため息を一つついて
青年の後を追いかけて行った。
街の人々を気絶させ、少年に追いつき少年達と対決し見事勝利したユーリと青年は
ようやく剣を納めることができた。
「だあぁー…もう手こずらせるんじゃねぇつーの!!」
「くそ…お前も俺が獣人だから追いかけて来たのか…いいさ、好きにしろ!!
けどな…ルビアには手出すんじゃねぞ!!」
「カイウス…」
カイウスと呼ばれた獣人の少年の服を掴みルビアは悲しそうな目でルークを睨みつけた。
そんな二人を余所に赤毛の青年は状況が飲み込めていないのか頭を掻いてため息をついた。
「はぁ?お前が獣人とかどうでもいいし。つーか俺にぶつかっただろ謝れ!!」
「え?そ、それだけの理由で追いかけてきたのかよ…」
「そうらしいぜ…たっく俺まで巻き込みやがっていい迷惑だ」
全く無関係だったユーリは大きなため息をつき赤毛の青年を横目で見た。
見事なその赤毛と碧の瞳…ユーリの記憶が正しければ彼の名は…
「アンタ…差別しないのかよ…俺獣人なのに…」
「はぁ?何で俺が差別なんてしなきゃいけねーんだよ。めんどくせぇ…」
めんどくさそうにカイウスに一言放つが少し青年の表情が歪んだ。
それを見逃すことのなかったカイウスとルビアは怪我をしているが
反撃をいつでも取れる体制に入った。
そんな彼らを余所に青年はユーリの方に顔を向けた。
「おい、お前」
「なんだよ。」
「差別ってなんだ?食いものか?」
「…………………はぁ!?」
流石のユーリも大声で呆れた声を出してしまった。
差別の意味を知らない人間なんて初めてみたからだ…
どこまで純粋なのか…いや、ただ超箱入り息子なのだろうか…
そもそも何故この話の流れで差別=食べ物と連想できるのか…
貴族の思考はわからないと改めてユーリは思った。
「差別つーのは……………とりあえず食いものじゃねぇ、あと悪いことだ。」
「ふーん…興味ねーからいいや」
ユーリはがっくりと肩を落とした。
この青年の教育係の顔を見てみたい…心からそう思った。
カイウスとルビアを見てもルークの発言に呆気に取られ戦闘意欲は無くなっていた。
「おい!!さっさと謝れよ!!」
「え?あ…俺が悪かった…ごめん」
「素直に最初からそう言えよな。あー…だりぃ、うぜぇ…」
やっと満足したのか嬉しそうな顔をすると肩を回して身体の疲れを取る行動をした。
笑う顔は幼い顔だが…知能は7歳児程度かもしれない。
「さてと…遺跡に向かって行くとするか」
「遺跡だと?」
そのキーワードにユーリの瞳は険しいものとなった。
遺跡の中にあるエターナルソード…彼もそれを狙っているのだろうと判断ができる。
一体何の目的で…
「遺跡に何の用なんだ?」
「あ?んー…まぁ…教えてやるか…遺跡の中に眠るエターナルソードを使ってだな…
マナの枯渇問題を解決できるんだぜ!!俺はその為に選ばれた英雄なんだ、すげーだろ!!」
まるで子供が自分の夢を語るように無邪気に語る。
青年の目的は他のエターナルソードを狙う人達とは理由が違うようだが…
狙っているのなら敵だ…ここで潰しておくのが一番いいだろうとユーリは考える。
「マナが枯渇し始めてからさ…俺の母上の体調が悪いんだ…それに国民のやつらも…
ペールだって花が綺麗に咲かなくなったって言ってるし…だから…俺がやろうって…
俺が選ばれたんだから…やらなくちゃって…そう思ってな…」
照れくさそうに笑う青年からは自分の欲望などは一切見えなかった…
ただ人を救いたい…それだけ…
この青年は他のエターナルソードを狙っているやつらとは違う…
そんなところにユーリは青年に興味を持った。
「それに世界を救えれば…父上も…俺を見てくれるかなって…アッシュばっかりじゃなくて…
できそこないの俺でも…たまには見てくれるかなって…」
今度は辛そうな表情をしながら呟くように語りだした。
そんな小さな願い…だけど彼に取ってはとても大きな願いなのだろう…
ユーリは無意識に青年の頭を撫でた。
「な、何してやがる!!子供扱いするんじゃねー!!」
「はははっ…悪い悪い。俺も遺跡目指してるんだ…お前がエターナルソードを使ったあと…
俺に渡してくれねぇか?その条件をのんでくれるなら一緒にいかないか?一人だと何かと都合悪いだろ?」
「はぁ…?まぁ…いいけど…俺の足はひっぱるなよ!!」
「へいへい」
楽しそうにユーリは笑うと少し照れくさそうにしている青年の顔をまじまじと見る。
青年はその視線に気が付くと顔を真っ赤にして歩き出した。
「おい…何処行くんだ?」
「遺跡だよい・せ・き。」
「そっち逆方向だぞ…遺跡はあっちだ」
青年が行こうとしている方向は遺跡とは逆方向…
本当に遺跡を目指しているのか不安になってきた。
「はぁ?あっちだと俺が来た方角じゃねーか。嘘つくなつーの」
「……お前遺跡の方角誰に教えてもらったんだ?」
真顔で答える青年にただの方向音痴なのかと思ったが、
そうではなさそうだ…だって自分が来た道を解っているのだから。
方向音痴は自分の来た道すらわからないものだ。
「ん?アッシュ。太陽の沈む方角にいけば遺跡につくって言ってたぜ。
だから太陽がある方角に向かって歩いてきたんだ。」
「ちなみに…お前が歩き出したのは何時頃だ?」
「今朝。」
ユーリは盛大にため息をついた。
太陽の沈む方角は西だ…朝に太陽のある方角を向いて歩いたのならそれは東に向いてあるいたことになる。
完全に真逆だ……天然なのか、純粋なのか…はたまたただの馬鹿なのか…選択が増えた。
「はははは…お前ホント面白いな…まぁ、俺が無事に連れて行ってやるよ…お前名前は?」
「ルーク。ルーク・フォン・ファブレだ」
「そうか…俺の名前はユーリ・ローウェル…よろしくな」
ユーリが手を差しだすと眉を寄せて嫌な顔をしたが、
しぶしぶ手を出して握手をした。
「あだ名がねーと不便だな…よし、お前真っ黒いし何か犯罪者っぽいから大罪人な」
「まて。俺のどこをどう見たら犯罪人なんだ。勝手に変なあだな付けるな」
あながち間違えていないところが怖いところだ。
ルークはユーリのことを知らないはずだ…
それなのにそんなあだ名を付けるのは…直観力なのだろうか…
苦笑いをしていたユーリはお返しとばかりルークのあだ名を考えた。
「じゃぁ、お前はお坊ちゃんだな」
「はぁ!?なんだよそれ!!意味わかんねーし!!!」
ルークはカンカンに怒りながら正しい遺跡の方角へと足を向けた。
その様子を笑いながら見ていたユーリはルークの後を追いかけて行った。
そして残されたカイウスとルビアは呆れた表情をして二人の背中を見守った。
「世の中…変った人間も多いんだな…」
「そうね…」
その頃。
正しい道を進んでいたら遺跡に着いて居たはずだったが、
道を間違えてしまって追いかけてきたガイの方が一人早く遺跡に辿り着いた。
「ルーーーーーーーーークーーーーーーーーー!!!!!!どこだああああああああああ!!!!
どこにいるんだあああああああああああ!!!ルーーーーーーークーーーーーーーー!!!」
「か、カイル…変な人が居る…」
「だ、大丈夫だよリアラ…俺が絶対に守るから…」
遺跡の角で怯える二人を余所にガイは必死にルークを探すが見つからなかった。