旭屋本舗
ようこそいらっしゃいませ。
腐向けサイトですご理解のある方のみどうぞ。
始めての方はカテゴリー【What】をお読みください。
電車の窓から見える町は完全に漆黒の色に染まっている。
その色はまるで今の俺を映し出しているようだ。
俺の心が暗い理由それは
今日の練習試合は本当につまらないものだったからだ。
つまらないといっても実力は中の上くらい学校で、
他の生徒にとっては有意義な試合だったかもしれないが
俺にとってはつまらない試合だ。
面白い試合といえばセイント・ヴェスペリア学園の練習試合が
一番最初に頭によぎるが、あそことは二度と試合はしたくない。
めんどくせぇエロ王子…もとい黒狼が居るからだ。
あぁ…早く帰りたい…今にも雨が降りそうだ。
何時ごろに帰れるかと思い逆算していると
予想通り雨が降り出してきた…しかも大雨ときた。
ほんと今日は最悪な日だ。
雨
アッシュは家の最寄り駅で電車を降りたが雨で足止めを食らってしまう。
小雨なら走って帰っても問題はないが、
バケツをひっくりかえしたような大雨で勇気を持って走り出す心すら奪われる。
どれくらい待てば止むかは見当がつかないでいた。
家に電話をして迎えに来てもらうのが賢明だが、
きっと迎えに来るのは双子の兄と予測ができたので複雑な思いから電話をかけれないでいた。
雨が少し弱くなったところを走って帰ろうと決断した時
目の前から見たことのある…いや、毎日拝んでいる顔が近づいてきていた。
「あ、アッシュ見つけた。おーい、アッシュー!!!」
「あの屑がっ…でかい声で呼ぶんじゃねぇ!!!」
「アッシュの方が声でかいよ。」
しまったと思い周りを見るとみんなアッシュの方を見ていたが
アッシュに睨まれると皆顔を別の方向へと向けた。
アッシュの方へ傘を差し嬉しそうに近づいてきたのは双子の兄ルークだ。
帰宅時間など言っていなかったのに迎えに来たことにアッシュは少し驚いている。
「おい、何しに来たんだ」
「迎えにきたに決まってるだろ。アッシュ傘持ってなかったし」
ルークは緩んだ顔でアッシュに笑いかける。
その顔は双子とは思えないくらい違う笑顔…アッシュにはこんな笑顔は作れないとわかっている。
だから心を惹かれてしまうのだろうか…自分が持っていないものをもっている双子の兄に…
「ほら、早く帰ろうぜ。母上が心配して待ってるからさ。」
ルークは傘を差していない方の手でアッシュに手を差し伸べるが、
アッシュの眉間には皺が増えた。
それは手を差し伸べられたから増えたわけではない…ルークの格好を見て皺を増やしたのだ。
ルークの持ち物は差している傘、ポケットが少し膨らんでいるので多分携帯と家の鍵…
それ以外何も持っていない…アッシュは嫌な予感がしながらも口を動かした。
「おい…お前俺を迎えに来たんだよな?」
「そうだってさっきから言ってるじゃねぇか」
「じゃぁ、俺が差す傘はどこにある?」
「………え?あっ………忘れた」
普段の癖でまた怒鳴ってしまいそうになったが、ここは学校でも家でもない公共の場。
心からくる怒りを必死に抑えながらアッシュはルークを睨みつけた。
「ま、まぁ二人でこの傘使って帰ろうぜ。」
「そんな傘じゃ半分しかはいらないだろ…どうせ濡れるなら傘なんていらねぇ」
濡れて帰るのは決定事項なので走って帰ろうと自分の荷物を持ちなおした時、
ルークに腕を掴まれて無理矢理傘の中へと入れられてしまった。
「おいっ!!」
「いーじゃんいーじゃん。半分濡れないでも傘の意味あるって。ほら、帰ろう」
「っく…この屑が…」
ルークが家へと帰る道へ歩きだしてしまったので、アッシュも仕方がなく歩幅を合わせて帰ることにした。
半分しか傘に入れないので少しずつ身体が濡れていくのがわかる。
アッシュは自分が半分濡れていくのでルークの身体を見ると
ルークもアッシュと同じように少しずつ身体が濡れていっていた。
「おい…濡れてるからもっとこっちに入れ」
「え?それじゃぁアッシュが…」
「いいから…こっちにこい。俺のせいで風邪でも引かれたら後味が悪い。」
「あ…うん…。ありがとう…」
きっとこの迎えのせいでルークが風邪をひいたら、
ルーク命の某親友兼使用人が毎日食事にアッシュの嫌いなものを入れてくると予想できる。
今も学校などへ行く時二人で並んで行くことが多いが、
これほど近づいて並んで歩くのは久しぶりだとアッシュは感じた。
昔はよく御揃いの雨コートを着て幼稚園へ通ったのを思い出す。
いつから並ばなくなったのだろうか…それは多分アッシュが自分の心の中にあるルークへの思いに
気がついた時からだろう…
いろいろと思いにふけっていると近くに居るのに会話がない時間が続いていることに気がつく
なんとか話題を出そうと先ほどから少し疑問に思っていたことを持ちだした。
「何でお前俺の帰宅時間分かったんだ…俺が駅についた途端迎えに来ていたし…」
「あぁ…何となくもうすぐアッシュが帰ってくる気がしたんだ。
そうしたら雨が降り出してたし、アッシュ傘持ってないだろ?双子の感ってやつ?」
何故アッシュが傘を持っていないことを断言できるのかがわからない。
もしかしたら鞄に折りたたみを入れているかもしれないのに…そこもルークの言う
双子の感というものなのだろうか…
そこから他愛もない話が少しだけど続いていた。
周りは喫茶店やファーストフード店が並び少しお腹が減っていたが
二人の会話からはどこか寄ろうという話はでなかった。
そんな二人の会話を遮る音がルークのポケットから流れ始めた。
「おい…携帯が鳴ってるぞ…ずっと鳴っているから電話じゃないのか?」
「え?あ、本当だ。誰だろう?」
ルークの着信音は昔から変らない。
めんどうだからといってメールも電話も同じ曲を使っているが
使っている曲は初めて携帯を持ち始めたころからずっとかわらないでいた。
前に何故その曲なのかと聞いたところ
『俺達二人のことを歌ってるみたいな曲だから』と顔が赤くなってしまうような回答が帰ってきた。
おかげで街中でその曲が流れたり、ガラス玉をみたりすると自然と頭にルークの顔が浮かんでしまう
もうこれは一種の病気ではないかとアッシュは心配になっていた。
そんなルークの着信音はずっと鳴り続けている。
電話の相手はどれだけルークに急ぎの用事なのかと思っていたが
相手の名前を聞いた途端アッシュの額に皺が増えた。
「あ、ユーリから電話だ…何だろう?」
「なんだと…」
空いている手でルークから携帯を取り上げるとディスプレイに浮かぶ名前は
確かに「ユーリ」と浮かんでいる。
アッシュは少し辺りを伺ったがルークのが居る位置で顔を止め黒い笑顔で笑ったが
その笑顔はルークの方を向いているがルークに向けられたものではない。
アッシュは今も鳴り続けるルークの携帯の音を止め、ついでに電源も切り自分の鞄の中へと誘拐をした。
「え?ちょ、アッシュ何するんだよ!!!」
「うるせぇ…おい、少し走るぞ…」
アッシュは空いている手でルークの手と掴みそのまま全速力で走りだした。
「は?え?何で?ちょ、アッシュ?アッシュってばっ!!!」
ルークとアッシュは全身を濡らしながら夜の街を駆け抜け
家の前まで来るとやっとアッシュの足がとまった。
「ここまでくればもう安心か…」
「ぜぇ、はぁ…な、何が…安心なんだよ…」
「お前には関係ない…その前にお前…息切れすぎだ。運動不足なんじゃねぇのか?」
同じ距離を同じ速度で走ったにも関わらずアッシュは息を切らしていなかった。
その反対にルークはさきほどから息を切らしており少し苦しそうだが、
息を切らしていたルークだがすぐに元の息使いに戻ったあたり中々のものだ。
「うるせぇ…帰宅部に文句いうな。あーあー…折角迎えに来たのに全身濡れたじゃねぇか」
ルークとアッシュの身体全体が雨でぬれていた。
持っていた傘も走っていた為あまり役には立たなかった。
春から夏へ移り変わる時期の為ルークは薄着だ。
薄着の為雨でぬれた服はルークの身体のラインをはっきりと映し出す。
アッシュの中で何かが少しずつ熱くなっていくのがわかった…。
「うぅ…雨が苦い…やべっ…目に雨が入った…いてぇ…涙出てきた…」
「ほう…」
アッシュは何も言わず痛そうに目から出る涙を舌で舐め取り、
ルークはいきなりのアッシュの行動に驚いて顔を真っ赤にさせる。
「確かに…苦いな…いや、しょっぱいか?」
「ばかっ…何するんだ!!!ってかそれは雨じゃなくて俺の涙だ!!!」
「どっちも一緒だろ…ほら家に入るぞ」
そういうとアッシュは一人家へはいる為玄関の鍵を開け始めた。
「一緒じゃねぇよ!!人の話最後まで聞けっ!!!」
文句を言ってやろうとアッシュに食い付いたが、
扉を開けて出てきたガイに二人の姿を見られ怒られてしまった為アッシュに文句が言えなかった…。
玄関先でガイに怒られている時
アッシュは雨のあまり悪くないなと思っておりガイの話は全く耳に入っていなかった。
「あ、あれルークと…アッシュじゃないかい?」
「んぁ?」
練習試合の帰り道、雨が強く降ってきたので部員と一緒に入ったファーストフード店。
窓側に座っていたフレンが外を見ると見覚えのある赤毛二人を見つけたので
ポテトを食べていたユーリに声をかけた。
ユーリが外を見ると確かにルークとアッシュだった。
外は暗いし雨が降っていたのではっきりとはわからなかったが、
ユーリがルークを間違えるわけがなかった…アッシュは別として。
「あぁ…あれがアビス学園の主将アッシュさんか…」
フレンの隣に居た副主将のアスベルが後から窓の外を見る。
「アスベルはまだ顔合わせてなかったんだね」
「えぇ…ルークさんとは話しましたが…しかし、二人で同じ傘に入るって仲がいいんですね。」
いくら双子でも二人で同じ傘に入ることはほぼない…
ましてや男同士ならなおさらだ、二人のその帰り姿はまわりからはよほど仲がいいとわかる。
「へぇ…あの二人が喧嘩せずに帰るなんてめずらしいな…
まぁ、今日はこのまま二人で帰らせてやるか…」
少し寂しそうな瞳でルークとアッシュの姿を見るユーリ。
いつもならルークをからかいにアッシュとの間に入るが、
さすがにあんな仲がいい二人を見て割って入る気にはならないのだろう。
「うんうん。流石ユーリ…いくらルークのことを好きでも今日くらいは…」
「なーんてな…」
ユーリは食べていたポテトを食べ終わると鞄から携帯を取り出した。
目の前にいたアスベルとフレンは嫌な予感を肌で感じる。
「この俺がそんなお優しいことすると思ってるのかよ…」
さっきまで寂しそうだった瞳が面白いおもちゃを見つけた時の瞳に変化した。
そして慣れた手つきで携帯に登録されている人物に電話をかけ始めた。
フレンがルークの方を向くと同時にルークがポケットから携帯を取り出したのが確認できる。
「ゆ、ユーリ…まさかルークに…」
「ルークに大事な用があったのを思い出してな」
そういいながらユーリは黒い笑顔をフレンに向ける。
ユーリの性格はかなり大人な性格のはずだが、
たまに子供っぽい性格になるのがまだまだ自分達は未成年だと実感できる。
ルーク達の様子をみているといきなりアッシュがルークの携帯を取りあげて
周りを見渡しこちらに顔を向けて何やら黒い笑顔で笑いかけてきた。
あの顔はこっち側に気が付いている顔だ。
そして何やらルークの携帯を触って操作しはじめた。
「え?なっ…あいつ電話切りやがった!!!電源まで落としてやがる…」
「さ、流石アッシュ…容赦ないな…」
「アッシュさんは何でこっちに気がついたんだ…?」
「そこは魔王と王子間柄だからかな?」
「おい、フレン…あいつとの間柄とか…きもいこというなっ…!!!って、あっ!!!」
ユーリがアッシュを睨みつけていると
アッシュはルークの手を掴み夜の街へと走っていった。
その走りはどこか勝ち誇ったような走りだ。
今から追いかけてもきっと間に合わないだろう…そんな速さでもあった。
「あーあー…行ってしまたね。」
「はぁ…いいさ、明日デートするから。」
「約束してたのかい?」
「いや、してない。明日会いに行ってそのまま出かける」
フレンとアスベルは苦笑いしかでなかった。
けどどこか楽しそうなユーリにフレンは少し嬉しそうにユーリを見つめる。
大人しく今日は終わるはずだったが、次の一言で嵐が再び蘇った。
「まぁ、今日は魔王の勝ちってことだな」
アスベルのその一言にユーリの顔が険しくなった
「誰が、いつ、どこで、誰に負けただって?」
「え?あ、いや…そのっ…」
「アスベル…寮に帰ったら覚悟しておけよ…」
その後寮に戻ったアスベルがどうなったかは誰もしらない。
いや、フレンは知っているようだったがその話になると一目散に逃げてしまうので迷宮入りとなった。
その色はまるで今の俺を映し出しているようだ。
俺の心が暗い理由それは
今日の練習試合は本当につまらないものだったからだ。
つまらないといっても実力は中の上くらい学校で、
他の生徒にとっては有意義な試合だったかもしれないが
俺にとってはつまらない試合だ。
面白い試合といえばセイント・ヴェスペリア学園の練習試合が
一番最初に頭によぎるが、あそことは二度と試合はしたくない。
めんどくせぇエロ王子…もとい黒狼が居るからだ。
あぁ…早く帰りたい…今にも雨が降りそうだ。
何時ごろに帰れるかと思い逆算していると
予想通り雨が降り出してきた…しかも大雨ときた。
ほんと今日は最悪な日だ。
雨
アッシュは家の最寄り駅で電車を降りたが雨で足止めを食らってしまう。
小雨なら走って帰っても問題はないが、
バケツをひっくりかえしたような大雨で勇気を持って走り出す心すら奪われる。
どれくらい待てば止むかは見当がつかないでいた。
家に電話をして迎えに来てもらうのが賢明だが、
きっと迎えに来るのは双子の兄と予測ができたので複雑な思いから電話をかけれないでいた。
雨が少し弱くなったところを走って帰ろうと決断した時
目の前から見たことのある…いや、毎日拝んでいる顔が近づいてきていた。
「あ、アッシュ見つけた。おーい、アッシュー!!!」
「あの屑がっ…でかい声で呼ぶんじゃねぇ!!!」
「アッシュの方が声でかいよ。」
しまったと思い周りを見るとみんなアッシュの方を見ていたが
アッシュに睨まれると皆顔を別の方向へと向けた。
アッシュの方へ傘を差し嬉しそうに近づいてきたのは双子の兄ルークだ。
帰宅時間など言っていなかったのに迎えに来たことにアッシュは少し驚いている。
「おい、何しに来たんだ」
「迎えにきたに決まってるだろ。アッシュ傘持ってなかったし」
ルークは緩んだ顔でアッシュに笑いかける。
その顔は双子とは思えないくらい違う笑顔…アッシュにはこんな笑顔は作れないとわかっている。
だから心を惹かれてしまうのだろうか…自分が持っていないものをもっている双子の兄に…
「ほら、早く帰ろうぜ。母上が心配して待ってるからさ。」
ルークは傘を差していない方の手でアッシュに手を差し伸べるが、
アッシュの眉間には皺が増えた。
それは手を差し伸べられたから増えたわけではない…ルークの格好を見て皺を増やしたのだ。
ルークの持ち物は差している傘、ポケットが少し膨らんでいるので多分携帯と家の鍵…
それ以外何も持っていない…アッシュは嫌な予感がしながらも口を動かした。
「おい…お前俺を迎えに来たんだよな?」
「そうだってさっきから言ってるじゃねぇか」
「じゃぁ、俺が差す傘はどこにある?」
「………え?あっ………忘れた」
普段の癖でまた怒鳴ってしまいそうになったが、ここは学校でも家でもない公共の場。
心からくる怒りを必死に抑えながらアッシュはルークを睨みつけた。
「ま、まぁ二人でこの傘使って帰ろうぜ。」
「そんな傘じゃ半分しかはいらないだろ…どうせ濡れるなら傘なんていらねぇ」
濡れて帰るのは決定事項なので走って帰ろうと自分の荷物を持ちなおした時、
ルークに腕を掴まれて無理矢理傘の中へと入れられてしまった。
「おいっ!!」
「いーじゃんいーじゃん。半分濡れないでも傘の意味あるって。ほら、帰ろう」
「っく…この屑が…」
ルークが家へと帰る道へ歩きだしてしまったので、アッシュも仕方がなく歩幅を合わせて帰ることにした。
半分しか傘に入れないので少しずつ身体が濡れていくのがわかる。
アッシュは自分が半分濡れていくのでルークの身体を見ると
ルークもアッシュと同じように少しずつ身体が濡れていっていた。
「おい…濡れてるからもっとこっちに入れ」
「え?それじゃぁアッシュが…」
「いいから…こっちにこい。俺のせいで風邪でも引かれたら後味が悪い。」
「あ…うん…。ありがとう…」
きっとこの迎えのせいでルークが風邪をひいたら、
ルーク命の某親友兼使用人が毎日食事にアッシュの嫌いなものを入れてくると予想できる。
今も学校などへ行く時二人で並んで行くことが多いが、
これほど近づいて並んで歩くのは久しぶりだとアッシュは感じた。
昔はよく御揃いの雨コートを着て幼稚園へ通ったのを思い出す。
いつから並ばなくなったのだろうか…それは多分アッシュが自分の心の中にあるルークへの思いに
気がついた時からだろう…
いろいろと思いにふけっていると近くに居るのに会話がない時間が続いていることに気がつく
なんとか話題を出そうと先ほどから少し疑問に思っていたことを持ちだした。
「何でお前俺の帰宅時間分かったんだ…俺が駅についた途端迎えに来ていたし…」
「あぁ…何となくもうすぐアッシュが帰ってくる気がしたんだ。
そうしたら雨が降り出してたし、アッシュ傘持ってないだろ?双子の感ってやつ?」
何故アッシュが傘を持っていないことを断言できるのかがわからない。
もしかしたら鞄に折りたたみを入れているかもしれないのに…そこもルークの言う
双子の感というものなのだろうか…
そこから他愛もない話が少しだけど続いていた。
周りは喫茶店やファーストフード店が並び少しお腹が減っていたが
二人の会話からはどこか寄ろうという話はでなかった。
そんな二人の会話を遮る音がルークのポケットから流れ始めた。
「おい…携帯が鳴ってるぞ…ずっと鳴っているから電話じゃないのか?」
「え?あ、本当だ。誰だろう?」
ルークの着信音は昔から変らない。
めんどうだからといってメールも電話も同じ曲を使っているが
使っている曲は初めて携帯を持ち始めたころからずっとかわらないでいた。
前に何故その曲なのかと聞いたところ
『俺達二人のことを歌ってるみたいな曲だから』と顔が赤くなってしまうような回答が帰ってきた。
おかげで街中でその曲が流れたり、ガラス玉をみたりすると自然と頭にルークの顔が浮かんでしまう
もうこれは一種の病気ではないかとアッシュは心配になっていた。
そんなルークの着信音はずっと鳴り続けている。
電話の相手はどれだけルークに急ぎの用事なのかと思っていたが
相手の名前を聞いた途端アッシュの額に皺が増えた。
「あ、ユーリから電話だ…何だろう?」
「なんだと…」
空いている手でルークから携帯を取り上げるとディスプレイに浮かぶ名前は
確かに「ユーリ」と浮かんでいる。
アッシュは少し辺りを伺ったがルークのが居る位置で顔を止め黒い笑顔で笑ったが
その笑顔はルークの方を向いているがルークに向けられたものではない。
アッシュは今も鳴り続けるルークの携帯の音を止め、ついでに電源も切り自分の鞄の中へと誘拐をした。
「え?ちょ、アッシュ何するんだよ!!!」
「うるせぇ…おい、少し走るぞ…」
アッシュは空いている手でルークの手と掴みそのまま全速力で走りだした。
「は?え?何で?ちょ、アッシュ?アッシュってばっ!!!」
ルークとアッシュは全身を濡らしながら夜の街を駆け抜け
家の前まで来るとやっとアッシュの足がとまった。
「ここまでくればもう安心か…」
「ぜぇ、はぁ…な、何が…安心なんだよ…」
「お前には関係ない…その前にお前…息切れすぎだ。運動不足なんじゃねぇのか?」
同じ距離を同じ速度で走ったにも関わらずアッシュは息を切らしていなかった。
その反対にルークはさきほどから息を切らしており少し苦しそうだが、
息を切らしていたルークだがすぐに元の息使いに戻ったあたり中々のものだ。
「うるせぇ…帰宅部に文句いうな。あーあー…折角迎えに来たのに全身濡れたじゃねぇか」
ルークとアッシュの身体全体が雨でぬれていた。
持っていた傘も走っていた為あまり役には立たなかった。
春から夏へ移り変わる時期の為ルークは薄着だ。
薄着の為雨でぬれた服はルークの身体のラインをはっきりと映し出す。
アッシュの中で何かが少しずつ熱くなっていくのがわかった…。
「うぅ…雨が苦い…やべっ…目に雨が入った…いてぇ…涙出てきた…」
「ほう…」
アッシュは何も言わず痛そうに目から出る涙を舌で舐め取り、
ルークはいきなりのアッシュの行動に驚いて顔を真っ赤にさせる。
「確かに…苦いな…いや、しょっぱいか?」
「ばかっ…何するんだ!!!ってかそれは雨じゃなくて俺の涙だ!!!」
「どっちも一緒だろ…ほら家に入るぞ」
そういうとアッシュは一人家へはいる為玄関の鍵を開け始めた。
「一緒じゃねぇよ!!人の話最後まで聞けっ!!!」
文句を言ってやろうとアッシュに食い付いたが、
扉を開けて出てきたガイに二人の姿を見られ怒られてしまった為アッシュに文句が言えなかった…。
玄関先でガイに怒られている時
アッシュは雨のあまり悪くないなと思っておりガイの話は全く耳に入っていなかった。
「あ、あれルークと…アッシュじゃないかい?」
「んぁ?」
練習試合の帰り道、雨が強く降ってきたので部員と一緒に入ったファーストフード店。
窓側に座っていたフレンが外を見ると見覚えのある赤毛二人を見つけたので
ポテトを食べていたユーリに声をかけた。
ユーリが外を見ると確かにルークとアッシュだった。
外は暗いし雨が降っていたのではっきりとはわからなかったが、
ユーリがルークを間違えるわけがなかった…アッシュは別として。
「あぁ…あれがアビス学園の主将アッシュさんか…」
フレンの隣に居た副主将のアスベルが後から窓の外を見る。
「アスベルはまだ顔合わせてなかったんだね」
「えぇ…ルークさんとは話しましたが…しかし、二人で同じ傘に入るって仲がいいんですね。」
いくら双子でも二人で同じ傘に入ることはほぼない…
ましてや男同士ならなおさらだ、二人のその帰り姿はまわりからはよほど仲がいいとわかる。
「へぇ…あの二人が喧嘩せずに帰るなんてめずらしいな…
まぁ、今日はこのまま二人で帰らせてやるか…」
少し寂しそうな瞳でルークとアッシュの姿を見るユーリ。
いつもならルークをからかいにアッシュとの間に入るが、
さすがにあんな仲がいい二人を見て割って入る気にはならないのだろう。
「うんうん。流石ユーリ…いくらルークのことを好きでも今日くらいは…」
「なーんてな…」
ユーリは食べていたポテトを食べ終わると鞄から携帯を取り出した。
目の前にいたアスベルとフレンは嫌な予感を肌で感じる。
「この俺がそんなお優しいことすると思ってるのかよ…」
さっきまで寂しそうだった瞳が面白いおもちゃを見つけた時の瞳に変化した。
そして慣れた手つきで携帯に登録されている人物に電話をかけ始めた。
フレンがルークの方を向くと同時にルークがポケットから携帯を取り出したのが確認できる。
「ゆ、ユーリ…まさかルークに…」
「ルークに大事な用があったのを思い出してな」
そういいながらユーリは黒い笑顔をフレンに向ける。
ユーリの性格はかなり大人な性格のはずだが、
たまに子供っぽい性格になるのがまだまだ自分達は未成年だと実感できる。
ルーク達の様子をみているといきなりアッシュがルークの携帯を取りあげて
周りを見渡しこちらに顔を向けて何やら黒い笑顔で笑いかけてきた。
あの顔はこっち側に気が付いている顔だ。
そして何やらルークの携帯を触って操作しはじめた。
「え?なっ…あいつ電話切りやがった!!!電源まで落としてやがる…」
「さ、流石アッシュ…容赦ないな…」
「アッシュさんは何でこっちに気がついたんだ…?」
「そこは魔王と王子間柄だからかな?」
「おい、フレン…あいつとの間柄とか…きもいこというなっ…!!!って、あっ!!!」
ユーリがアッシュを睨みつけていると
アッシュはルークの手を掴み夜の街へと走っていった。
その走りはどこか勝ち誇ったような走りだ。
今から追いかけてもきっと間に合わないだろう…そんな速さでもあった。
「あーあー…行ってしまたね。」
「はぁ…いいさ、明日デートするから。」
「約束してたのかい?」
「いや、してない。明日会いに行ってそのまま出かける」
フレンとアスベルは苦笑いしかでなかった。
けどどこか楽しそうなユーリにフレンは少し嬉しそうにユーリを見つめる。
大人しく今日は終わるはずだったが、次の一言で嵐が再び蘇った。
「まぁ、今日は魔王の勝ちってことだな」
アスベルのその一言にユーリの顔が険しくなった
「誰が、いつ、どこで、誰に負けただって?」
「え?あ、いや…そのっ…」
「アスベル…寮に帰ったら覚悟しておけよ…」
その後寮に戻ったアスベルがどうなったかは誰もしらない。
いや、フレンは知っているようだったがその話になると一目散に逃げてしまうので迷宮入りとなった。
普段着の中でも少しお洒落なものを選びルークは少しうす暗くなった町へと出かける。
今日はユーリと夜桜を見る約束をした…いや、一方的に約束をさせられたが正しいかもしれない。
いきなりメールで『今度の金曜日夜桜見に行こう』という内容で始まり
半強制的に約束をさせられてしまった。
携帯の時計を見ると約束の時間まで1時間以上ある。
このまままっすぐ待ち合わせの場所まで行ったら1時間以上待たなければならない。
仕方がないのでどこかで時間を潰そうと考えていた時、
可愛らしい声でルークの名前を呼ぶ声が聞こえた。
あなたに微笑む。
「あ、ルークんだ!!」
「え?って、ぐぇ!!!」
後から自分の名前らしき言葉が聞こえたので振りかえってみると
いきなり小さな少女がルークのお腹に飛びついてきた。
少女の髪は長く、赤色…いや茶色といった変わった色をしている。
春先でまだ少し寒さが残る季節にも関わらず少女はノースリーブの服に
お腹を少し出した格好をしている。
瞳はオッドアイで赤と青の色が宝石のように輝いて見える。
「よかったー…知らない人ばっかりで怖かったの。けど、ルークんに会えてよかった」
少女の力はそんなに強くはなかったが、ルークも年頃の男の子である。
こんな可愛らしい少女にいきなり抱きつかれたらいろいろと問題が起きてしまうので
慌てて自分の身体から少女を引き離した。
「ちょっと待て。俺は君と知り合いみたいだけど…君誰?誰かと間違えてないか?」
少女はルークの言葉が理解できないのか不思議そうな顔をしている。
「え…?ルークん何言ってるの?私ココアだよ?ん?あれ?」
ココアと名乗った少女はルークの顔をじっと見つめる…
その距離はあと少ししたら唇が重なりそうなそんな距離…
ルークは顔を真っ赤にして後に後ずさりするが、少女はルークが離れるたび前へと歩くので距離は変わらない。
しかし、ルークの顔を見あきたのかココアはルークから離れたがその顔は少し寂しそうな表情を見せた。
「私の知ってるルークんに似てるけど違う…うぅ…ここ何処?みんなどこ…?」
「え?あ…ちょ…迷子かよ…あー…くそっ…」
時間を見ると約束の時間までには余裕はある。
しかし、ココアに構うと確実時間が費やされるのは何となく予想ガできたが、
悲しそうな表情をするココアの姿を見てこのまま放置してユーリのところへ行くのも嫌な気分が残る。
ルークは少し考えため息をつきココアの頭を優しく撫でた。
「しょうがないから一緒に家探してやるよ…お前どっちから来たんだ?」
「お前じゃない。ココア。」
「うっ…ココア何処から来たんだ?」
「目が覚めたら大きな樹の根元にいたの。どこかわからないから散策してたらここにきたの。
多分あの樹のところに行けば帰れると思う」
何で樹のところにいけば帰れるんだ…?と思ったがツッコミを入れるだけ無駄だと思い言わなかった。
もう少し歩くと人通りの多いところへ出れるのでそこへ出て地図を見ながら樹がありそうな場所を
探す方法が一番てっとりばやいと考えた。
「とりあえず行くか…」
「うん。何かルークんお洒落な格好だね?デート?」
「で、デートなんかじゃねぇ!!!勘違いするなよ!!!」
二人で歩いている最中ココアはルークにいろいろと質問をしてきた。
最初は丁寧に答えていたルークだったが、あまりにも質問攻めにだんだんと答えが適当になってくる。
そうこうしているうちに人通りの多いところへと出た。
ルークはこのあたりの地形が描かれている地図の看板を見ながらココアの言う樹の場所を探したが
よくよく考えてみれば都会でも樹なんていろいろなところに生えているので
探すのは一苦労であることに気がつく。
もう警察に任せようかと考えているとまた自分を呼ぶ声が聞こえた。
振りかえってあたりを見回すが人が多く誰が呼んだかがわからない…
「ルークんこっちこっち!!」
ココアの声が聞こえた。
先ほどもココアがルークを呼んだのだろうか…ココアの声にしては低かった気がする…
とりあえずココアの声がする方に足を向けると可愛らしい服が飾られているウィンドウの前にいた。
「何してるんだ?」
「ねぇねぇ。この服可愛いよね?カノンノとかにあいそう…」
カノンノとはきっと友達のことだろう…目をキラキラと輝かせて服を眺めている。
やっぱり女の子なのだなとルークは感じた。
「あ、あっちのも可愛い」
近くにあった別の洋服屋を見つけその店へと走りだしたのでルークは慌ててココアを追いかけた。
「おい、ココア。家探すんだろ?寄り道なんてしてないで行くぞ」
「あ、あそこのはイリアににあいそう」
「ココア!!ココアってば!!」
彼女の買い物につきあった男友達が翌日疲れ切った顔をして学校に登校してくる理由がわかった気がした。
ココアは可愛いと思った洋服をみつけると風のようにそこへ走り、
ルークは慌ててそれを追いかける。それの繰り返しだった。
どれくらいの時間がたったのだろうか…洋服屋のシャッターが降りた為ココアの足が止まった。
「ぜぇ…はぁ…お、お前足はやい…」
「あれ?ここ見たことある…歩いた記憶がある」
「マジか!?」
「うん。えっと…こっちから来たの」
「よし、行くか。」
やっとゴールが見え始めたと思い浮かれた気分で足を運んでいると子供が一人ルーク達の横を駆け抜けて行った。
「あ、危ないよ。前見て歩かないと怪我するってファラが言ってたよ。」
しかしココアの声は子供には聞こえていない…
何故ならその子供はボールを追いかけていたから…子供は左右を確認せず道路へと飛び出した。
いきなり子供が飛び出してきた為車がクラクションを鳴らした。
「危ない!!!」
ココアは走り出して車におびえ動けなくなっていた子供を抱え反対車線の道路へと飛びだした。
助かったと思って居たが、飛び出した場所が反対車線だった為今度は反対側から車が大きな音を鳴らして走ってきた。
「っや…だめぇ!!!」
反対側からいきなり車が来た為ココアはとっさに動けなかった。
抱えていた子供を守るように身体を小さくしたが、ココアと子供の身体がふわりと浮かび上がり人の温かさが感じられた
そしてその温かさに守られながら少し衝撃を受けた。
「いててて…ココア…お前こそあぶねぇだろうが…」
守ってくれた温かさはルークだった。
ルークはココアと子供を抱え車道から歩道へと転がるように飛び出して行ったのだった。
勢いよく飛び出した為着地に失敗し、折角来ていたお洒落な服がボロボロだ。
おまけにあちこち怪我をしてしまっている。
「いててて…あ、二人とも怪我ないか?」
「うん…大丈夫…ありがとう。」
子供も小さくうなずいた。
そこへ母親が泣きながら走って来て命の恩人であるルーク達にお礼を言って帰って行った。
「まぁ…無事でよかったか…いたっ…」
擦りむいた箇所がズキズキと痛み出す。
それを見たココアがポシェットから何かを取り出してルークの目の前に差しだした。
「何だこれ?レモン色のグミ?」
「レモングミ…食べたら元気になるの」
「ふーん…」
差し出されたグミを食べるとさっきまで痛かった傷が見る見るうちに治った。
「おぉ…すげぇ…どうなってるんだ?」
「さぁ?わかんない…あ、あそこ…あそこの中にある樹から来たの…」
ココアが指を差したのは公園だった。
確かに公園にならたくさん樹もある…ルークとココアは急いで公園の中へと入り目的の樹を探し始めた…
すぐにその樹は見つかった…何故ならその樹は他の樹とは全く違っていたのだから。
「こんな樹この公園にあったか?」
その樹はとても大きい樹で穴がところどころ開いているように見えたが
その穴をかばうようにピンク色をした樹が生えている…今までみたこともない樹だった。
「世界樹だ!!!これで帰れる!!」
ココアは嬉しそうにルークに笑いかけた。
「じゃぁ、私帰るねルークんいろいろありがとう…心配性のユーリんにもよろしくね」
「あぁ…って何でお前ユーリのことっ…」
ルークの質問の回答は聞くことができなかった…
強い風が吹きピンク色の葉が舞い散りあたりが見えなくなった。
風が収まったのであたりを見回すとさっきまであった世界樹と呼ばれた樹も無く、
ココアの姿も居なくなっていたからである。
「な、何だったんだ一体…」
とりあえずひと段落したので自分の家に帰ろうとしたが、
何故自分が今日こんな夜に出かけることにしたのかと疑問が浮かんだ。
しばらく考えルークの顔は青白くなっていく。
「や、やべぇ!!!ユーリのこと忘れてた!!!今何時だ!?」
慌ててポケットに入れていた携帯を見るが、
ココアを守った時の衝撃か携帯は見るも無残な姿となっていた。
ルークは公園にあった時計を見ると約束の時間より2時間以上もたっていた。
丁度待ち合わせ場所がこの近くだったためルークは慌てて待ち合わせ場所へとむかう。
もしかしたら怒って帰っているかもしれない…いや、多分帰っているだろう…
でもルークは待ち合わせ場所に行かないといけないと思った。
自分の人生の中で一番早く走れたかもしれない…
待ち合わせの場所に着いたがそこには誰の姿も見えなかった。
もしかしたらと淡い期待を寄せていたがそれはかなわなかったようだ。
ルークは息を切らせながらその場にしゃがみこんだ…
謝りたくても携帯が壊れていて電話ができない…
人助けなんてするんじゃなかった…あそこでココアを見捨てておけば…
いや、きっとルークのことだから見捨てようとしても見捨てることはできなかっただろう…
深い脱力感と披露を身体で感じていると頬が急に冷たくなった。
驚いて振り向くとそこには悪戯っ子のような顔をした青年が立っていた。
「うわぁっ!!!な、何だ!?って…ユーリ!?」
「よう、お疲れさん。ほら、これでも飲めよ…走って来たんだろ?」
渡されたのはスポーツ飲料…近くにある自動販売機で買ったものだろう…
ユーリは自分用として買った缶コーヒーを開けて飲み始めた。
「あ、あのユーリ…寒い中待たせてごめん…俺その…」
「大丈夫だって。俺もさっき来たところだからな。ほら、夜桜見に行くぞ」
「え?さっき…?あ、うん…」
さっきという言葉に疑問を持ちつつもユーリのあとを追いかける。
いつもなら隣を歩くのだが、今日は遅れて来た罪悪感からか少し後を歩く。
ルーク達の歩く道は桜が満開の道…
とても綺麗な道のはずなのに気分は浮かれない…
「なぁ…ユーリ…怒ってるのか?」
「いや?怒ってねぇけど?」
「めちゃくちゃ待たせたのにか?」
「だからまってねぇって…それより怪我…大丈夫か?ったく…見ているこっちがひやひやするぜ…」
振り向いたユーリの顔は少し困った表情をしており
その表情を見てルークの心は何故か重くなる。
「あぁ…怪我は大丈夫…って何でユーリが怪我のこと知ってるんだ?見てたって…?」
「俺はお前のことなら何でも知ってるぜ…ほら、そんな湿気た顔するな。桜の前なんだから笑えよ
特にお前みたいな美人さんはな。」
ルークの肩を抱き自分の胸へと抱きよせると優しい顔でルークに微笑みかけた。
そんな顔を見てルークの顔は紅くなる。
「え?あ…な、何で桜の前だと笑うんだよ…」
「ん?桜の花ことばは『優れた美人』『純潔』だが一部の桜は『あなたに微笑む』なんだぜ」
ユーリはルークの頬に優しくキスを落とす…
ルークはそんなユーリに小さく…優しく微笑んだ…
今日はユーリと夜桜を見る約束をした…いや、一方的に約束をさせられたが正しいかもしれない。
いきなりメールで『今度の金曜日夜桜見に行こう』という内容で始まり
半強制的に約束をさせられてしまった。
携帯の時計を見ると約束の時間まで1時間以上ある。
このまままっすぐ待ち合わせの場所まで行ったら1時間以上待たなければならない。
仕方がないのでどこかで時間を潰そうと考えていた時、
可愛らしい声でルークの名前を呼ぶ声が聞こえた。
あなたに微笑む。
「あ、ルークんだ!!」
「え?って、ぐぇ!!!」
後から自分の名前らしき言葉が聞こえたので振りかえってみると
いきなり小さな少女がルークのお腹に飛びついてきた。
少女の髪は長く、赤色…いや茶色といった変わった色をしている。
春先でまだ少し寒さが残る季節にも関わらず少女はノースリーブの服に
お腹を少し出した格好をしている。
瞳はオッドアイで赤と青の色が宝石のように輝いて見える。
「よかったー…知らない人ばっかりで怖かったの。けど、ルークんに会えてよかった」
少女の力はそんなに強くはなかったが、ルークも年頃の男の子である。
こんな可愛らしい少女にいきなり抱きつかれたらいろいろと問題が起きてしまうので
慌てて自分の身体から少女を引き離した。
「ちょっと待て。俺は君と知り合いみたいだけど…君誰?誰かと間違えてないか?」
少女はルークの言葉が理解できないのか不思議そうな顔をしている。
「え…?ルークん何言ってるの?私ココアだよ?ん?あれ?」
ココアと名乗った少女はルークの顔をじっと見つめる…
その距離はあと少ししたら唇が重なりそうなそんな距離…
ルークは顔を真っ赤にして後に後ずさりするが、少女はルークが離れるたび前へと歩くので距離は変わらない。
しかし、ルークの顔を見あきたのかココアはルークから離れたがその顔は少し寂しそうな表情を見せた。
「私の知ってるルークんに似てるけど違う…うぅ…ここ何処?みんなどこ…?」
「え?あ…ちょ…迷子かよ…あー…くそっ…」
時間を見ると約束の時間までには余裕はある。
しかし、ココアに構うと確実時間が費やされるのは何となく予想ガできたが、
悲しそうな表情をするココアの姿を見てこのまま放置してユーリのところへ行くのも嫌な気分が残る。
ルークは少し考えため息をつきココアの頭を優しく撫でた。
「しょうがないから一緒に家探してやるよ…お前どっちから来たんだ?」
「お前じゃない。ココア。」
「うっ…ココア何処から来たんだ?」
「目が覚めたら大きな樹の根元にいたの。どこかわからないから散策してたらここにきたの。
多分あの樹のところに行けば帰れると思う」
何で樹のところにいけば帰れるんだ…?と思ったがツッコミを入れるだけ無駄だと思い言わなかった。
もう少し歩くと人通りの多いところへ出れるのでそこへ出て地図を見ながら樹がありそうな場所を
探す方法が一番てっとりばやいと考えた。
「とりあえず行くか…」
「うん。何かルークんお洒落な格好だね?デート?」
「で、デートなんかじゃねぇ!!!勘違いするなよ!!!」
二人で歩いている最中ココアはルークにいろいろと質問をしてきた。
最初は丁寧に答えていたルークだったが、あまりにも質問攻めにだんだんと答えが適当になってくる。
そうこうしているうちに人通りの多いところへと出た。
ルークはこのあたりの地形が描かれている地図の看板を見ながらココアの言う樹の場所を探したが
よくよく考えてみれば都会でも樹なんていろいろなところに生えているので
探すのは一苦労であることに気がつく。
もう警察に任せようかと考えているとまた自分を呼ぶ声が聞こえた。
振りかえってあたりを見回すが人が多く誰が呼んだかがわからない…
「ルークんこっちこっち!!」
ココアの声が聞こえた。
先ほどもココアがルークを呼んだのだろうか…ココアの声にしては低かった気がする…
とりあえずココアの声がする方に足を向けると可愛らしい服が飾られているウィンドウの前にいた。
「何してるんだ?」
「ねぇねぇ。この服可愛いよね?カノンノとかにあいそう…」
カノンノとはきっと友達のことだろう…目をキラキラと輝かせて服を眺めている。
やっぱり女の子なのだなとルークは感じた。
「あ、あっちのも可愛い」
近くにあった別の洋服屋を見つけその店へと走りだしたのでルークは慌ててココアを追いかけた。
「おい、ココア。家探すんだろ?寄り道なんてしてないで行くぞ」
「あ、あそこのはイリアににあいそう」
「ココア!!ココアってば!!」
彼女の買い物につきあった男友達が翌日疲れ切った顔をして学校に登校してくる理由がわかった気がした。
ココアは可愛いと思った洋服をみつけると風のようにそこへ走り、
ルークは慌ててそれを追いかける。それの繰り返しだった。
どれくらいの時間がたったのだろうか…洋服屋のシャッターが降りた為ココアの足が止まった。
「ぜぇ…はぁ…お、お前足はやい…」
「あれ?ここ見たことある…歩いた記憶がある」
「マジか!?」
「うん。えっと…こっちから来たの」
「よし、行くか。」
やっとゴールが見え始めたと思い浮かれた気分で足を運んでいると子供が一人ルーク達の横を駆け抜けて行った。
「あ、危ないよ。前見て歩かないと怪我するってファラが言ってたよ。」
しかしココアの声は子供には聞こえていない…
何故ならその子供はボールを追いかけていたから…子供は左右を確認せず道路へと飛び出した。
いきなり子供が飛び出してきた為車がクラクションを鳴らした。
「危ない!!!」
ココアは走り出して車におびえ動けなくなっていた子供を抱え反対車線の道路へと飛びだした。
助かったと思って居たが、飛び出した場所が反対車線だった為今度は反対側から車が大きな音を鳴らして走ってきた。
「っや…だめぇ!!!」
反対側からいきなり車が来た為ココアはとっさに動けなかった。
抱えていた子供を守るように身体を小さくしたが、ココアと子供の身体がふわりと浮かび上がり人の温かさが感じられた
そしてその温かさに守られながら少し衝撃を受けた。
「いててて…ココア…お前こそあぶねぇだろうが…」
守ってくれた温かさはルークだった。
ルークはココアと子供を抱え車道から歩道へと転がるように飛び出して行ったのだった。
勢いよく飛び出した為着地に失敗し、折角来ていたお洒落な服がボロボロだ。
おまけにあちこち怪我をしてしまっている。
「いててて…あ、二人とも怪我ないか?」
「うん…大丈夫…ありがとう。」
子供も小さくうなずいた。
そこへ母親が泣きながら走って来て命の恩人であるルーク達にお礼を言って帰って行った。
「まぁ…無事でよかったか…いたっ…」
擦りむいた箇所がズキズキと痛み出す。
それを見たココアがポシェットから何かを取り出してルークの目の前に差しだした。
「何だこれ?レモン色のグミ?」
「レモングミ…食べたら元気になるの」
「ふーん…」
差し出されたグミを食べるとさっきまで痛かった傷が見る見るうちに治った。
「おぉ…すげぇ…どうなってるんだ?」
「さぁ?わかんない…あ、あそこ…あそこの中にある樹から来たの…」
ココアが指を差したのは公園だった。
確かに公園にならたくさん樹もある…ルークとココアは急いで公園の中へと入り目的の樹を探し始めた…
すぐにその樹は見つかった…何故ならその樹は他の樹とは全く違っていたのだから。
「こんな樹この公園にあったか?」
その樹はとても大きい樹で穴がところどころ開いているように見えたが
その穴をかばうようにピンク色をした樹が生えている…今までみたこともない樹だった。
「世界樹だ!!!これで帰れる!!」
ココアは嬉しそうにルークに笑いかけた。
「じゃぁ、私帰るねルークんいろいろありがとう…心配性のユーリんにもよろしくね」
「あぁ…って何でお前ユーリのことっ…」
ルークの質問の回答は聞くことができなかった…
強い風が吹きピンク色の葉が舞い散りあたりが見えなくなった。
風が収まったのであたりを見回すとさっきまであった世界樹と呼ばれた樹も無く、
ココアの姿も居なくなっていたからである。
「な、何だったんだ一体…」
とりあえずひと段落したので自分の家に帰ろうとしたが、
何故自分が今日こんな夜に出かけることにしたのかと疑問が浮かんだ。
しばらく考えルークの顔は青白くなっていく。
「や、やべぇ!!!ユーリのこと忘れてた!!!今何時だ!?」
慌ててポケットに入れていた携帯を見るが、
ココアを守った時の衝撃か携帯は見るも無残な姿となっていた。
ルークは公園にあった時計を見ると約束の時間より2時間以上もたっていた。
丁度待ち合わせ場所がこの近くだったためルークは慌てて待ち合わせ場所へとむかう。
もしかしたら怒って帰っているかもしれない…いや、多分帰っているだろう…
でもルークは待ち合わせ場所に行かないといけないと思った。
自分の人生の中で一番早く走れたかもしれない…
待ち合わせの場所に着いたがそこには誰の姿も見えなかった。
もしかしたらと淡い期待を寄せていたがそれはかなわなかったようだ。
ルークは息を切らせながらその場にしゃがみこんだ…
謝りたくても携帯が壊れていて電話ができない…
人助けなんてするんじゃなかった…あそこでココアを見捨てておけば…
いや、きっとルークのことだから見捨てようとしても見捨てることはできなかっただろう…
深い脱力感と披露を身体で感じていると頬が急に冷たくなった。
驚いて振り向くとそこには悪戯っ子のような顔をした青年が立っていた。
「うわぁっ!!!な、何だ!?って…ユーリ!?」
「よう、お疲れさん。ほら、これでも飲めよ…走って来たんだろ?」
渡されたのはスポーツ飲料…近くにある自動販売機で買ったものだろう…
ユーリは自分用として買った缶コーヒーを開けて飲み始めた。
「あ、あのユーリ…寒い中待たせてごめん…俺その…」
「大丈夫だって。俺もさっき来たところだからな。ほら、夜桜見に行くぞ」
「え?さっき…?あ、うん…」
さっきという言葉に疑問を持ちつつもユーリのあとを追いかける。
いつもなら隣を歩くのだが、今日は遅れて来た罪悪感からか少し後を歩く。
ルーク達の歩く道は桜が満開の道…
とても綺麗な道のはずなのに気分は浮かれない…
「なぁ…ユーリ…怒ってるのか?」
「いや?怒ってねぇけど?」
「めちゃくちゃ待たせたのにか?」
「だからまってねぇって…それより怪我…大丈夫か?ったく…見ているこっちがひやひやするぜ…」
振り向いたユーリの顔は少し困った表情をしており
その表情を見てルークの心は何故か重くなる。
「あぁ…怪我は大丈夫…って何でユーリが怪我のこと知ってるんだ?見てたって…?」
「俺はお前のことなら何でも知ってるぜ…ほら、そんな湿気た顔するな。桜の前なんだから笑えよ
特にお前みたいな美人さんはな。」
ルークの肩を抱き自分の胸へと抱きよせると優しい顔でルークに微笑みかけた。
そんな顔を見てルークの顔は紅くなる。
「え?あ…な、何で桜の前だと笑うんだよ…」
「ん?桜の花ことばは『優れた美人』『純潔』だが一部の桜は『あなたに微笑む』なんだぜ」
ユーリはルークの頬に優しくキスを落とす…
ルークはそんなユーリに小さく…優しく微笑んだ…
これは俺がまだ幼い頃の話。
俺の中にはもうないけれど、
俺達は大切な約束をした…
失くしたものは取り戻せない…
けどいつか取り戻したい…
大切な…大切な…約束…
『俺待ってるから…何日…何週間…何カ月…何年でも…お前のこと、
だって…俺達友達だから…』
『だったらずっと…これから守っていく…何日…何週間…何カ月…何年でも…お前のこと、
だって俺達は二人で一人なんだから…』
それぞれの約束。3~ルーク編~
今日はいつもとは違う俺が居る。
普段なら学校が終わるとまっすぐに家に帰るけれど今日は違う。
アッシュと一緒に近くの広場へ寄り道…
目的は広場ではなく隣に建っていた潰れた病院。
俺達はその潰れた病院の最後を見るために広場へと足を運んできた。
毎日部活があるアッシュが今日だけは休みを取って一緒に来てくれたけど、
部活を任せた副主将から電話が入り俺から少し離れたところでただいま電話中。
一人寂しく壊される前の病院を眺めていると近くのベンチに見慣れた漆黒の影を見つけた。
近づいていくと向こうも俺に気がついたらしく手を軽く上げて挨拶をしてくれた。
「よう、ルーク。こんなところで何してるんだ?」
「ユーリこそ何してるんだよ。お前部活は?」
「俺はまぁ…苦い思い出を思い出しにな…今日は学校の事情により部活は休みなんだよ」
わざわざ丁寧なご説明どうもありがとう…。
結構学校自体をサボるユーリだからどこまで本当かわからないけど、多分本当なんだと思う。
俺はユーリの隣に座ると丁度目の前に壊される病院があったのでそれを眺めた。
最後にこの病院を見たら…と思ったけれど何も起きない…自分の中から何かが変わる気配がしない…
俺は深いため息をつくとユーリが俺の頭を優しく撫でた。
「なーにため息なんて似合わないのついているんだ?」
「んー?あの病院を見たら何か思い出せるかなって思ったんだけど…無理みたいだな…」
「思い出す?」
俺は大きく伸びをして空を見上げた。
アッシュからはあまりこの話をしないように言われているけど…
ユーリになら話していい気がする…いや、話さないといけないきがする。
何となくそんな気がして俺は昔話を始めた。
「俺…幼い頃の記憶全部飛んじゃってさ…俺と同じくらいの子とすごく大切な約束したらしいんだけど…
思い出したくても思い出せなくて…丁度あの部屋に居たんだ。」
俺が指をさした場所は目の前にあった一つの病室の窓。
傍には大きな木があり緑が生い茂ってて窓はあまり見えない。
ふとユーリを見るとなんだかすごく驚いた顔をしている。
そして俺の方を真剣な眼差しで見るとゆっくりと口を開いた。
「なぁ…その話もっと詳しく聞かせてくれないか…」
「え?あ…いいけど…あの病院さ…俺の親戚が経営してて…院長が亡くなって継ぐ人が居ないから取り壊しになるんだ」
「お前の親戚ってには知らなかったけど…取り壊しになる理由は知ってる。」
「俺昔あそこに入院…いや、ある意味監禁状態になってたらしくてさ…病室の外にも出れないし
誰とも話することができなかったらしいんだ…」
自分の思い出なのにまるで他人から聞いたような言い方。
それは仕方がないこと…だってこの話は全部アッシュや両親から聞いた話なのだから…
「意図的な交通事故が原因で入院…応急的な手術は無事に終わった。次の大きな手術をする間だけあそこに居た。
その間に俺はその子と出会った…看護婦や親は全くその存在知らなかったけどアッシュだけ知ってた。
窓辺で毎日のように話をしてたんだってさ…楽しそうに…」
「……………窓辺で…。」
「で、元の生活に戻る為の手術をしたんだけど…その手術は失敗したんだ。」
「え?」
ユーリは本当に真剣な顔をして俺の話を聞いてくる…この話のどこに興味があるのだろうか…。
「え、えっと…手術が失敗して俺はずっと眠り続けたんだって…童話のお姫様のように…
その頃俺の家すっげーぎくしゃくしててさ…親も俺のこと見捨てるつもりだったっぽい…」
「自分の子供なのにか?」
俺は悲しかったけど首を縦に振った…だって事実なのだから…
「アッシュが居たから…だと思う。後継ぎに困ることないし…けどその時ナタリアとアッシュが助けてくれた…
あの時のナタリアすごかったらしいぜ…えっと何て言ったんだっけな…」
「『おじ様とおば様がルークを見捨てようとしても私とアッシュは見捨てません!!
だってルークは私達の大切な人のですから!!!』…だ。この屑いきなり居なくなるんじゃねぇ…」
俺の後ろからいきなり俺にそっくりな声…いや俺の声をめちゃくちゃ低くした声がしたので振り向くと
そこには眉間に皺を寄せたアッシュが怒りをあらわにして立っていた…。
「あ、アッシュ…ごめん…電話してたから声かけれなくてさ…」
「たっく…しかも何でこんなやつにその話してるんだ…」
「ユーリが聞きたいって言うから…」
「そーそー。俺が聞きたかったんだよ。しかし、ナタリアすごい行動派だったんだな…」
「今もだけどな…それで何か海外にいる有名な医者をわざわざ呼び寄せて俺の手術を受けさせたんだ…
手術は成功して普段の生活を取り戻せたけど…失敗した手術の後遺症かな…いろいろなものを失った…
その中の一つが手術を受ける前の記憶全部…今も思い出すことできないしな…」
「あと性格だな…手術を受けてからとは全くの別人みたいになった。」
アッシュは嫌みったらしくいうけど…そんなこと言われても手術を受ける前の自分が
どんな自分だったかわからない…何かすごく生意気だったらしいけど…
「ふ、ふーん…お前も大変だったんだな…で?その窓辺で話をした子供との約束…全く覚えてないのか?」
「あぁ…うん…顔も名前もわからなくてさ…アッシュも記憶なくす前の俺から名前聞いてなかったみたいだし…
けど、アッシュが知ってるぞ。えっと…何て言ったんだっけなぁ…」
思い出せないのでアッシュの顔を見るとため息をついて口を開いた。
「何度も言わせるな…確か…」
「『俺待ってるから…何日…何週間…何カ月…何年でも…お前のこと、だって…俺達友達だから…』とか?」
その言葉を言ったのはアッシュではなくユーリだった。
そしてユーリは少し悪戯な表情をして俺達二人を見た。
何故かアッシュがとても驚いた顔をしている…何故だろう…
「あー…それそれ。そんな感じ…って何でユーリが知ってるんだ?」
「ん?昔本か何かで読んだ内容のセリフだったんだが…そうか…こんな感じの内容か…」
何故かうんうんとすごく納得した顔をしている…たまにユーリは一人で解決していまうところがある
…変なやつだ。
「お前…その言葉…まさか…お前が…」
「さーて…何のことやら…」
何故か二人の間にあまりよろしくない空気が流れる…
今日はこの空気流れないと思ってたのに何でなんだよぉ~!!!!
「えっと…まぁ、俺はそいつに謝りたいんだ…ずっと待たせてたわけだし…
けど全く手がかりもないしさ…って…ずいぶん前のことだから待ってるわけないか…」
「いや…わからないぜ…表には出さないけど心の中でずっと待ってたかもしれないぞ…
もしかしたらもうすでに再会してるかもな…お前の近くに居るかもよ…」
ユーリは俺の長い髪の毛先に軽いキスをする…こいつは本当に俺の毛にキスをするのが好きなやつだ…
したいのなら毛じゃなくて…って何言ってるんだ俺!!!
ってかアッシュの前でこんなことしないでください…後から流れ出る黒いオーラがマジで怖いんです。
「そ、そう言えばアッシュもあの頃俺と約束したんだよな…
『ずっと…これから守っていく…何日…何週間…何カ月…何年でも…お前のこと』だっけ?」
「っは…そんなくだらねぇこと覚えてねぇな」
「何だそれ?パクリか?はははは…お前のそのブラコンの理由何となくわかった気がするぜ。」
「っち…うるせぇ…屑狼は黙ってろ!!おい…そろそろ帰るぞ」
アッシュは機嫌悪そうにベンチから離れたので俺は慌ててそのあとを追いかけた。
「ま、待てよアッシュ!!!」
「俺も帰るかな…」
ユーリは帰ると言いながら何故か俺達の後を付いてきた。
今のアッシュにユーリを近づかせると確実切れる…まるで水と油なんだよな…今の二人。
「何でお前まで付いてくるんだ!!」
「仕方がないだろ?ここからじゃ途中まで同じ道なんだから」
ユーリの家の位置を考えると確かに途中まで同じ道…
いやむしろここからの方角だと8割は同じ道だ…
え?ちょっとまって…俺この空気の悪い中を8割も居ないといけないわけ?
「まさかお前ら兄弟とそんな昔からご縁があったとは…」
「そんな縁今すぐに叩き切ってやろうか…?」
「何でアッシュとユーリが喧嘩するんだよ…俺とユーリが喧嘩するならまだしも…」
二人はすごく機嫌が悪そうにしている。
たまに口を開けばお互いの嫌み…もうやだよ…
ふと空を見るとさっきまで蒼かった空がいつの間にか夕焼け空になっていた。
昔は記憶がなくて辛い時もあったけど…今は何とも思わない。
知りたければアッシュに聞けばいい…ナタリアに聞けばいい…
けど…あの子のことだけはちゃんと思い出したい…いつか…きっと…
隣を歩いて居るユーリの横顔を見ると一瞬だけ何か思い出した…
それは木に登るあの子の顔…どうしてユーリを見たら思い出したのだろうか…
病院を見ても、思い出の木を見ても思い出せなかったのに…
「何俺の顔に見とれてるんだよお前は」
「み、見とれてなんてないっ!!何でお前そんな恥ずかしいこと軽く言えるんだ!!」
顔を真っ赤にしてユーリに反論するけどこれじゃあ逆効果…
知ってるんだけどそんな反応をしちゃう俺…
「見とれる要素なんてこいつにはねぇよ…」
「何だ?やろうってのかこの鶏頭が…」
「いいぞ…受けてやろうじゃないか…この変態狼…」
「お前ら何でそんなに仲悪いんだよ!!!」
「そりゃ…王子と魔王だしな」
「誰が魔王だ誰が…」
これは俺にはとめれないと思いまた空を見た。
さっきより夕焼け空が夜空に近くなっていて…まるで俺達3人みたいだなと思った。
それぞれの約束を胸に俺達の青春は過ぎていく…
幼い思い出を胸に過ぎて行く…
その約束は友情?兄弟愛?それとも淡い恋心なのか…
それは本人達にしかわからない…
約束を胸に俺達は大人になっていく…
大人になっても忘れてはいけない約束…そんな約束みんなにもあるよな?
なーんてなっ♪
END
俺の中にはもうないけれど、
俺達は大切な約束をした…
失くしたものは取り戻せない…
けどいつか取り戻したい…
大切な…大切な…約束…
『俺待ってるから…何日…何週間…何カ月…何年でも…お前のこと、
だって…俺達友達だから…』
『だったらずっと…これから守っていく…何日…何週間…何カ月…何年でも…お前のこと、
だって俺達は二人で一人なんだから…』
それぞれの約束。3~ルーク編~
今日はいつもとは違う俺が居る。
普段なら学校が終わるとまっすぐに家に帰るけれど今日は違う。
アッシュと一緒に近くの広場へ寄り道…
目的は広場ではなく隣に建っていた潰れた病院。
俺達はその潰れた病院の最後を見るために広場へと足を運んできた。
毎日部活があるアッシュが今日だけは休みを取って一緒に来てくれたけど、
部活を任せた副主将から電話が入り俺から少し離れたところでただいま電話中。
一人寂しく壊される前の病院を眺めていると近くのベンチに見慣れた漆黒の影を見つけた。
近づいていくと向こうも俺に気がついたらしく手を軽く上げて挨拶をしてくれた。
「よう、ルーク。こんなところで何してるんだ?」
「ユーリこそ何してるんだよ。お前部活は?」
「俺はまぁ…苦い思い出を思い出しにな…今日は学校の事情により部活は休みなんだよ」
わざわざ丁寧なご説明どうもありがとう…。
結構学校自体をサボるユーリだからどこまで本当かわからないけど、多分本当なんだと思う。
俺はユーリの隣に座ると丁度目の前に壊される病院があったのでそれを眺めた。
最後にこの病院を見たら…と思ったけれど何も起きない…自分の中から何かが変わる気配がしない…
俺は深いため息をつくとユーリが俺の頭を優しく撫でた。
「なーにため息なんて似合わないのついているんだ?」
「んー?あの病院を見たら何か思い出せるかなって思ったんだけど…無理みたいだな…」
「思い出す?」
俺は大きく伸びをして空を見上げた。
アッシュからはあまりこの話をしないように言われているけど…
ユーリになら話していい気がする…いや、話さないといけないきがする。
何となくそんな気がして俺は昔話を始めた。
「俺…幼い頃の記憶全部飛んじゃってさ…俺と同じくらいの子とすごく大切な約束したらしいんだけど…
思い出したくても思い出せなくて…丁度あの部屋に居たんだ。」
俺が指をさした場所は目の前にあった一つの病室の窓。
傍には大きな木があり緑が生い茂ってて窓はあまり見えない。
ふとユーリを見るとなんだかすごく驚いた顔をしている。
そして俺の方を真剣な眼差しで見るとゆっくりと口を開いた。
「なぁ…その話もっと詳しく聞かせてくれないか…」
「え?あ…いいけど…あの病院さ…俺の親戚が経営してて…院長が亡くなって継ぐ人が居ないから取り壊しになるんだ」
「お前の親戚ってには知らなかったけど…取り壊しになる理由は知ってる。」
「俺昔あそこに入院…いや、ある意味監禁状態になってたらしくてさ…病室の外にも出れないし
誰とも話することができなかったらしいんだ…」
自分の思い出なのにまるで他人から聞いたような言い方。
それは仕方がないこと…だってこの話は全部アッシュや両親から聞いた話なのだから…
「意図的な交通事故が原因で入院…応急的な手術は無事に終わった。次の大きな手術をする間だけあそこに居た。
その間に俺はその子と出会った…看護婦や親は全くその存在知らなかったけどアッシュだけ知ってた。
窓辺で毎日のように話をしてたんだってさ…楽しそうに…」
「……………窓辺で…。」
「で、元の生活に戻る為の手術をしたんだけど…その手術は失敗したんだ。」
「え?」
ユーリは本当に真剣な顔をして俺の話を聞いてくる…この話のどこに興味があるのだろうか…。
「え、えっと…手術が失敗して俺はずっと眠り続けたんだって…童話のお姫様のように…
その頃俺の家すっげーぎくしゃくしててさ…親も俺のこと見捨てるつもりだったっぽい…」
「自分の子供なのにか?」
俺は悲しかったけど首を縦に振った…だって事実なのだから…
「アッシュが居たから…だと思う。後継ぎに困ることないし…けどその時ナタリアとアッシュが助けてくれた…
あの時のナタリアすごかったらしいぜ…えっと何て言ったんだっけな…」
「『おじ様とおば様がルークを見捨てようとしても私とアッシュは見捨てません!!
だってルークは私達の大切な人のですから!!!』…だ。この屑いきなり居なくなるんじゃねぇ…」
俺の後ろからいきなり俺にそっくりな声…いや俺の声をめちゃくちゃ低くした声がしたので振り向くと
そこには眉間に皺を寄せたアッシュが怒りをあらわにして立っていた…。
「あ、アッシュ…ごめん…電話してたから声かけれなくてさ…」
「たっく…しかも何でこんなやつにその話してるんだ…」
「ユーリが聞きたいって言うから…」
「そーそー。俺が聞きたかったんだよ。しかし、ナタリアすごい行動派だったんだな…」
「今もだけどな…それで何か海外にいる有名な医者をわざわざ呼び寄せて俺の手術を受けさせたんだ…
手術は成功して普段の生活を取り戻せたけど…失敗した手術の後遺症かな…いろいろなものを失った…
その中の一つが手術を受ける前の記憶全部…今も思い出すことできないしな…」
「あと性格だな…手術を受けてからとは全くの別人みたいになった。」
アッシュは嫌みったらしくいうけど…そんなこと言われても手術を受ける前の自分が
どんな自分だったかわからない…何かすごく生意気だったらしいけど…
「ふ、ふーん…お前も大変だったんだな…で?その窓辺で話をした子供との約束…全く覚えてないのか?」
「あぁ…うん…顔も名前もわからなくてさ…アッシュも記憶なくす前の俺から名前聞いてなかったみたいだし…
けど、アッシュが知ってるぞ。えっと…何て言ったんだっけなぁ…」
思い出せないのでアッシュの顔を見るとため息をついて口を開いた。
「何度も言わせるな…確か…」
「『俺待ってるから…何日…何週間…何カ月…何年でも…お前のこと、だって…俺達友達だから…』とか?」
その言葉を言ったのはアッシュではなくユーリだった。
そしてユーリは少し悪戯な表情をして俺達二人を見た。
何故かアッシュがとても驚いた顔をしている…何故だろう…
「あー…それそれ。そんな感じ…って何でユーリが知ってるんだ?」
「ん?昔本か何かで読んだ内容のセリフだったんだが…そうか…こんな感じの内容か…」
何故かうんうんとすごく納得した顔をしている…たまにユーリは一人で解決していまうところがある
…変なやつだ。
「お前…その言葉…まさか…お前が…」
「さーて…何のことやら…」
何故か二人の間にあまりよろしくない空気が流れる…
今日はこの空気流れないと思ってたのに何でなんだよぉ~!!!!
「えっと…まぁ、俺はそいつに謝りたいんだ…ずっと待たせてたわけだし…
けど全く手がかりもないしさ…って…ずいぶん前のことだから待ってるわけないか…」
「いや…わからないぜ…表には出さないけど心の中でずっと待ってたかもしれないぞ…
もしかしたらもうすでに再会してるかもな…お前の近くに居るかもよ…」
ユーリは俺の長い髪の毛先に軽いキスをする…こいつは本当に俺の毛にキスをするのが好きなやつだ…
したいのなら毛じゃなくて…って何言ってるんだ俺!!!
ってかアッシュの前でこんなことしないでください…後から流れ出る黒いオーラがマジで怖いんです。
「そ、そう言えばアッシュもあの頃俺と約束したんだよな…
『ずっと…これから守っていく…何日…何週間…何カ月…何年でも…お前のこと』だっけ?」
「っは…そんなくだらねぇこと覚えてねぇな」
「何だそれ?パクリか?はははは…お前のそのブラコンの理由何となくわかった気がするぜ。」
「っち…うるせぇ…屑狼は黙ってろ!!おい…そろそろ帰るぞ」
アッシュは機嫌悪そうにベンチから離れたので俺は慌ててそのあとを追いかけた。
「ま、待てよアッシュ!!!」
「俺も帰るかな…」
ユーリは帰ると言いながら何故か俺達の後を付いてきた。
今のアッシュにユーリを近づかせると確実切れる…まるで水と油なんだよな…今の二人。
「何でお前まで付いてくるんだ!!」
「仕方がないだろ?ここからじゃ途中まで同じ道なんだから」
ユーリの家の位置を考えると確かに途中まで同じ道…
いやむしろここからの方角だと8割は同じ道だ…
え?ちょっとまって…俺この空気の悪い中を8割も居ないといけないわけ?
「まさかお前ら兄弟とそんな昔からご縁があったとは…」
「そんな縁今すぐに叩き切ってやろうか…?」
「何でアッシュとユーリが喧嘩するんだよ…俺とユーリが喧嘩するならまだしも…」
二人はすごく機嫌が悪そうにしている。
たまに口を開けばお互いの嫌み…もうやだよ…
ふと空を見るとさっきまで蒼かった空がいつの間にか夕焼け空になっていた。
昔は記憶がなくて辛い時もあったけど…今は何とも思わない。
知りたければアッシュに聞けばいい…ナタリアに聞けばいい…
けど…あの子のことだけはちゃんと思い出したい…いつか…きっと…
隣を歩いて居るユーリの横顔を見ると一瞬だけ何か思い出した…
それは木に登るあの子の顔…どうしてユーリを見たら思い出したのだろうか…
病院を見ても、思い出の木を見ても思い出せなかったのに…
「何俺の顔に見とれてるんだよお前は」
「み、見とれてなんてないっ!!何でお前そんな恥ずかしいこと軽く言えるんだ!!」
顔を真っ赤にしてユーリに反論するけどこれじゃあ逆効果…
知ってるんだけどそんな反応をしちゃう俺…
「見とれる要素なんてこいつにはねぇよ…」
「何だ?やろうってのかこの鶏頭が…」
「いいぞ…受けてやろうじゃないか…この変態狼…」
「お前ら何でそんなに仲悪いんだよ!!!」
「そりゃ…王子と魔王だしな」
「誰が魔王だ誰が…」
これは俺にはとめれないと思いまた空を見た。
さっきより夕焼け空が夜空に近くなっていて…まるで俺達3人みたいだなと思った。
それぞれの約束を胸に俺達の青春は過ぎていく…
幼い思い出を胸に過ぎて行く…
その約束は友情?兄弟愛?それとも淡い恋心なのか…
それは本人達にしかわからない…
約束を胸に俺達は大人になっていく…
大人になっても忘れてはいけない約束…そんな約束みんなにもあるよな?
なーんてなっ♪
END
これは俺がまだ幼い頃の話。
やっと本当の兄弟になれた気がする…
俺達は大切な約束をした…
ずっと、ずっと守っていく…
離れることはできないのだから…
大切な…大切な…兄弟…
『だったらずっと…これから守っていく…何日…何週間…何カ月…何年でも…お前のこと、
だって俺達は二人で一人なんだから…』
「ルーク…行くのか?あの病院に…」
「あぁ…最後に見ておきたいんだ…」
それぞれの約束。2~アッシュ編~
その日もいつもと変わらない俺が居た。
俺のこの生活は双子の兄が交通事故に会ったことから始まる。
その交通事故は大人達の身勝手な世界から起きたもので…
純粋な子供の世界は穢れた大人達の世界によって壊されかけた。
本当は俺が狙われたはずなのに…運転手が間違えてあいつを交通事故に巻き込んだ…
あいつが入院…いや、親戚が経営している病院に閉じ込めていた病室に俺は毎日通ったけど
あいつには会えなかった…
病室の前まで来るが罪悪感から扉をあけることができない日々が続く。
本当は俺が狙われていたはずなのに…俺が入院するはずだったのに…
どうしてあいつが…
病室の前まで来るとそんな思いが体中をめぐり動けなくなった。
そして諦めて帰る…そんな日が毎日続いた。
ところがある日あいつの部屋に行くと中から知らない声がした。
知らない声…そして聞き覚えのあるあいつの声…いや笑い声。
少し扉を開けて様子を見ると窓辺で知らない子供と楽しそうに話をしているあいつが居る。
俺と話をするときには見せたことない太陽のような笑顔で…
それが悔しくて、悔しくて…今日こそ会おうと思っていたのに…また会えなかった。
二人はいろんな話をしていた。
今日学校で起きたこと…友達のこと…幼馴染のこと…
そしてあいつも俺のことや、幼馴染であるナタリアのこと…他愛もない話をいろいろいている。
そんな日が数日続いた。
こっそり聞いていることに罪悪感を感じたが何を話しているのか気になってしまい
毎日二人の会話を聞いてしまっていた。
明日はあいつがまた手術をすることになっているあの日。
あいつが受ける手術はとても難しい手術で死んでしまうかもしれないそうだ…
けれど成功すればまた前みたいに学校に行ったり普通の生活ができる。
しばらくは会えなくなるので今日こそは話をしようと思っていた…
けどまた窓辺であいつと話をしていた。
また扉の前で立ちすぐんでいると中から今日は笑い声ではなく泣き声が聞こえたので
耳をすまして中の声を聞いた。
「違う…俺明日また手術だって…難しい手術で…もしかしたら…死んじゃうかもだって…」
「かも…だろ?大丈夫だって成功するよ。
手術して元気になったら…一緒に遊ぼうぜ。俺の幼馴染も紹介してやるよ」
「けど…いつここに戻って来れるかわからないし…君をずっと待たせるのは…」
「俺待ってるから…何日…何週間…何カ月…何年でも…お前のこと、
だって…俺達友達だから…」
どうして他人のあいつが待っていて、俺が待っていてやれないんだ…
たった一人の兄なのに…なぜかあの子供に無性に腹が立ってきた。
あいつが帰った後あいつは雨が降りそうな顔をして病室に居た。
俺は心を決めて病室へと入って行くとあいつは雷が落ちたような驚いた顔をして俺を迎えた。
頭には手術の跡を隠すために巻かれた包帯が痛々しく見える。
「あ、アッシュ…来てくれt…いや…何しに来たんだ…」
相変わらず俺や家族と話す時は冷たい雪のような顔をする…いや無理にしている。
このころの俺達の家はとてもぎくしゃくしていた。
こいつがこんな顔をするようになるのは仕方がない…
だって長男だからいろいろと重いものを担がないといけないから…
「見舞いに来てやったんだ…明日手術だし…しばらくまた会えなくなるし…」
「しばらくじゃなくて永遠になるかもしれないぞ…お前はそっちの方がいいんじゃねぇの?」
こんなことを言うくせに手は震えている…強がったって何もないのに…
「俺はそんなこと思っちゃいない。勘違いするんじゃねぇよ屑。」
「誰が屑だ。もうお前うぜぇーんだよ…さっさと帰れ。」
「こんな震えてるやつを誰が置いて帰れるか」
震えてる手をそっと握ってやると俺と同じ緑の瞳が丸くなった。
「ふ、震えてねぇよ…震えてなんか…」
ぽろぽろと大粒の雨が降り出した。
俺はその雨を小さな自分の手でそっと拭いてやるが止まることはない。
「大丈夫だ…成功する…退院したらまた外で…」
「い、いやだ…外に出たくない…」
「え?」
あいつはさっきよりも震えだした…それは死の恐怖だけではない…
もっとべつの何かで震えている。
「そ、外に出たら…また交通事故とかに会う…またみんなに心配かける…怖い…」
子供の純粋な世界はとても簡単に壊れてしまう…
大人達の身勝手でとても簡単に…
俺が思っていた以上にあいつの心の傷はとても深いものだった…。
あいつの手を強く握ってあいつの瞳を見て誓った。
「だったらずっと…これから守っていく…何日…何週間…何カ月…何年でも…お前のこと、
だって俺達は二人で一人なんだから…」
「アッシュ…ありがとう…」
あいつは初めて俺に太陽のような笑顔で笑いかけた…
その笑顔は俺の心に太陽の恵みをほんの少し与えてくれた
けどまたすぐに曇った表情に戻った。
「なぁ、アッシュ…頼みがあるんだ…」
「何だ?プリンでも食べたいのか?」
「ち、ちげぇよ…その…もし、俺に何かあったら…あいつに謝っておいてくれないか?
『約束守れなくてごめん』って…」
「お前…そんな縁起でもないこと…」
あいつは小さく…寂しそうに笑うとそれ以上何も言わなかった。
俺はそんなことを言うあいつを叱りつけてやりたかったが、言葉がでない…
あいつというのは多分窓辺で話をしていたやつのことだろう…
俺が盗み見してなくて知らなかったらどうするんだ…やっぱりどこか抜けている。
その日は俺達は初めて同じベッドで寝た。
兄弟なのに…今まで同じベッドで寝るなんて…当たり前のことのはずなのに…
それをしたことがなかった。
それほど家の中がぎくしゃくしていた。
目を開ければそこには同じ顔…もう一人の俺が居る。
これからはもう少し素直になってこいつと話をしよう…
少しずつだけど、二人の仲を直していこう…
これからはもっと二人で同じベッドで寝よう…
そう思っていたのに…
手術は失敗した。
あいつは命は取り留めたが話すことはできない…俺の姿を見ることもできない…
ただ童話のお姫様のようにただ眠り続けるだけの存在。
分厚いガラス越しから見えるあいつの姿は
いろんなコードがあいつの身体から張り巡らされていて
あいつの姿を見るのがとても辛かった…
あの交通事故以来俺とあいつの傍につくよういなったガイも一緒に来たけど
あいつの姿を見て泣きそうな顔をしている。
俺は本当は守りたくなかったあいつとの約束を守る為看護婦にあの窓辺で会話をしていた
俺と同じくらいの子供のことを聞いたが、誰も知らなかった。
あいつが手術してから数日後、それらしき子供があいつのことを聞きに来たらしい。
俺は仕方がないので自分の足であの子供を探すことにした。
けど俺は一つのことを思い出した。
「そいつの名前…聞いてなかった…」
NEXT
やっと本当の兄弟になれた気がする…
俺達は大切な約束をした…
ずっと、ずっと守っていく…
離れることはできないのだから…
大切な…大切な…兄弟…
『だったらずっと…これから守っていく…何日…何週間…何カ月…何年でも…お前のこと、
だって俺達は二人で一人なんだから…』
「ルーク…行くのか?あの病院に…」
「あぁ…最後に見ておきたいんだ…」
それぞれの約束。2~アッシュ編~
その日もいつもと変わらない俺が居た。
俺のこの生活は双子の兄が交通事故に会ったことから始まる。
その交通事故は大人達の身勝手な世界から起きたもので…
純粋な子供の世界は穢れた大人達の世界によって壊されかけた。
本当は俺が狙われたはずなのに…運転手が間違えてあいつを交通事故に巻き込んだ…
あいつが入院…いや、親戚が経営している病院に閉じ込めていた病室に俺は毎日通ったけど
あいつには会えなかった…
病室の前まで来るが罪悪感から扉をあけることができない日々が続く。
本当は俺が狙われていたはずなのに…俺が入院するはずだったのに…
どうしてあいつが…
病室の前まで来るとそんな思いが体中をめぐり動けなくなった。
そして諦めて帰る…そんな日が毎日続いた。
ところがある日あいつの部屋に行くと中から知らない声がした。
知らない声…そして聞き覚えのあるあいつの声…いや笑い声。
少し扉を開けて様子を見ると窓辺で知らない子供と楽しそうに話をしているあいつが居る。
俺と話をするときには見せたことない太陽のような笑顔で…
それが悔しくて、悔しくて…今日こそ会おうと思っていたのに…また会えなかった。
二人はいろんな話をしていた。
今日学校で起きたこと…友達のこと…幼馴染のこと…
そしてあいつも俺のことや、幼馴染であるナタリアのこと…他愛もない話をいろいろいている。
そんな日が数日続いた。
こっそり聞いていることに罪悪感を感じたが何を話しているのか気になってしまい
毎日二人の会話を聞いてしまっていた。
明日はあいつがまた手術をすることになっているあの日。
あいつが受ける手術はとても難しい手術で死んでしまうかもしれないそうだ…
けれど成功すればまた前みたいに学校に行ったり普通の生活ができる。
しばらくは会えなくなるので今日こそは話をしようと思っていた…
けどまた窓辺であいつと話をしていた。
また扉の前で立ちすぐんでいると中から今日は笑い声ではなく泣き声が聞こえたので
耳をすまして中の声を聞いた。
「違う…俺明日また手術だって…難しい手術で…もしかしたら…死んじゃうかもだって…」
「かも…だろ?大丈夫だって成功するよ。
手術して元気になったら…一緒に遊ぼうぜ。俺の幼馴染も紹介してやるよ」
「けど…いつここに戻って来れるかわからないし…君をずっと待たせるのは…」
「俺待ってるから…何日…何週間…何カ月…何年でも…お前のこと、
だって…俺達友達だから…」
どうして他人のあいつが待っていて、俺が待っていてやれないんだ…
たった一人の兄なのに…なぜかあの子供に無性に腹が立ってきた。
あいつが帰った後あいつは雨が降りそうな顔をして病室に居た。
俺は心を決めて病室へと入って行くとあいつは雷が落ちたような驚いた顔をして俺を迎えた。
頭には手術の跡を隠すために巻かれた包帯が痛々しく見える。
「あ、アッシュ…来てくれt…いや…何しに来たんだ…」
相変わらず俺や家族と話す時は冷たい雪のような顔をする…いや無理にしている。
このころの俺達の家はとてもぎくしゃくしていた。
こいつがこんな顔をするようになるのは仕方がない…
だって長男だからいろいろと重いものを担がないといけないから…
「見舞いに来てやったんだ…明日手術だし…しばらくまた会えなくなるし…」
「しばらくじゃなくて永遠になるかもしれないぞ…お前はそっちの方がいいんじゃねぇの?」
こんなことを言うくせに手は震えている…強がったって何もないのに…
「俺はそんなこと思っちゃいない。勘違いするんじゃねぇよ屑。」
「誰が屑だ。もうお前うぜぇーんだよ…さっさと帰れ。」
「こんな震えてるやつを誰が置いて帰れるか」
震えてる手をそっと握ってやると俺と同じ緑の瞳が丸くなった。
「ふ、震えてねぇよ…震えてなんか…」
ぽろぽろと大粒の雨が降り出した。
俺はその雨を小さな自分の手でそっと拭いてやるが止まることはない。
「大丈夫だ…成功する…退院したらまた外で…」
「い、いやだ…外に出たくない…」
「え?」
あいつはさっきよりも震えだした…それは死の恐怖だけではない…
もっとべつの何かで震えている。
「そ、外に出たら…また交通事故とかに会う…またみんなに心配かける…怖い…」
子供の純粋な世界はとても簡単に壊れてしまう…
大人達の身勝手でとても簡単に…
俺が思っていた以上にあいつの心の傷はとても深いものだった…。
あいつの手を強く握ってあいつの瞳を見て誓った。
「だったらずっと…これから守っていく…何日…何週間…何カ月…何年でも…お前のこと、
だって俺達は二人で一人なんだから…」
「アッシュ…ありがとう…」
あいつは初めて俺に太陽のような笑顔で笑いかけた…
その笑顔は俺の心に太陽の恵みをほんの少し与えてくれた
けどまたすぐに曇った表情に戻った。
「なぁ、アッシュ…頼みがあるんだ…」
「何だ?プリンでも食べたいのか?」
「ち、ちげぇよ…その…もし、俺に何かあったら…あいつに謝っておいてくれないか?
『約束守れなくてごめん』って…」
「お前…そんな縁起でもないこと…」
あいつは小さく…寂しそうに笑うとそれ以上何も言わなかった。
俺はそんなことを言うあいつを叱りつけてやりたかったが、言葉がでない…
あいつというのは多分窓辺で話をしていたやつのことだろう…
俺が盗み見してなくて知らなかったらどうするんだ…やっぱりどこか抜けている。
その日は俺達は初めて同じベッドで寝た。
兄弟なのに…今まで同じベッドで寝るなんて…当たり前のことのはずなのに…
それをしたことがなかった。
それほど家の中がぎくしゃくしていた。
目を開ければそこには同じ顔…もう一人の俺が居る。
これからはもう少し素直になってこいつと話をしよう…
少しずつだけど、二人の仲を直していこう…
これからはもっと二人で同じベッドで寝よう…
そう思っていたのに…
手術は失敗した。
あいつは命は取り留めたが話すことはできない…俺の姿を見ることもできない…
ただ童話のお姫様のようにただ眠り続けるだけの存在。
分厚いガラス越しから見えるあいつの姿は
いろんなコードがあいつの身体から張り巡らされていて
あいつの姿を見るのがとても辛かった…
あの交通事故以来俺とあいつの傍につくよういなったガイも一緒に来たけど
あいつの姿を見て泣きそうな顔をしている。
俺は本当は守りたくなかったあいつとの約束を守る為看護婦にあの窓辺で会話をしていた
俺と同じくらいの子供のことを聞いたが、誰も知らなかった。
あいつが手術してから数日後、それらしき子供があいつのことを聞きに来たらしい。
俺は仕方がないので自分の足であの子供を探すことにした。
けど俺は一つのことを思い出した。
「そいつの名前…聞いてなかった…」
NEXT
これは俺がまだ幼い頃の話。
たった数日間だけの友達…
俺達は大切な約束をした…
けどそれは守ることができなかった…
もう二度と会えないけど…
大切な…大切な…友達…
『俺待ってるから…何日…何週間…何カ月…何年でも…お前のこと、
だって…俺達友達だから…』
「ユーリ…君が昔よく通ってたあの病院…取り壊しになるそうだよ…」
「え?」
それぞれの約束。1~ユーリ編~
その日もいつもと変わらない日だった。
俺は毎日のようにフレン、エステルと学校から帰った後遊ぶ約束をしていた。
エステルは昨日父親に買って貰ったピンク色の帽子を被っていつもの広場に来た。
いつものように遊んでいると突然強い風が吹いて、
エステルの帽子が飛んで行った。
俺達は急いで飛んで行った帽子をおいかけると、
広場の隣に立っていた大きい病院の木に引っ掛かった。
俺は木登りが得意だったから帽子を取りに行った。
「ユーリ…危ないですよ…ユーリが怪我したら私…」
「そうだよユーリ…」
「折角買って貰った帽子諦めるのかよ。俺は大丈夫だって…ほら、気がちるから向こうで待っててくれ」
不安そうに見つめるエステルの顔を見たくなかった俺は
エステルとフレンを木が見えないところまで追いやった。
それからこっそりと病院の庭に忍び込み帽子が引っ掛かってる木に登り始めた。
案外登りやすい木だったのですぐに帽子のあるところまでたどり着いたが
もう少しで帽子が取れるところでまた風が吹いてしまい
すぐそばにあった病室の中に入ってしまった。
「くそ…なんで窓なんか開いてるんだよ…」
流石に病院に忍び込むわけもいかずどうすればいいか考えていると
病室の中から声がした。
「君…誰…?」
「え?」
病室にいたのは俺と同じくらいの子供だった。
丸い大きな緑色の瞳…性別ははっきりとはわからないけど…多分男…
頭には包帯が巻いてあり髪の色はわからなかった。
多分手術をした後なのか…その包帯が痛々しかった…
「君誰…?何しに来たの?サンタさん…じゃないよな?まだ12月じゃないし」
俺をサンタと間違えるなんて視力は大丈夫なのかと思った。
そんな髭とか白髪じゃないし。
「友達の帽子がその部屋に入って…中にないか?」
「あ、これ?」
あいつは病室の中に落ちてた帽子を拾い上げると俺に渡してくれた。
「はい、どうぞ。これ君の?」
「違う。友達のってさっき言ったぞ?」
「あれ?そうだっけ?」
そいつは太陽のような笑顔で笑った。
俺は何故か心の中が熱くなる…。
「お前ここで入院してるのか?」
「うーん…入院なのかなぁ?少し違う気がする…けどそんな感じ」
変わったやつだ…
俺は結構友達は多い方だったけどこんなやつは俺の周りに居ない。
もっと話がしたい…そう思った。
「なぁ、お前…」
名前を聞こうと声をかけたとき、俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。
広場を見るとエステルとフレンが心配そうに俺を呼んでいるのが見えた。
「あ、悪い。友達が待ってるから行くわ」
「あ…うん…ばいばい。」
太陽が雨雲で覆われた…そんな寂しそうな顔をあいつはした。
「あ、明日も来る…迷惑じゃなかったら…」
「え?いいの?嬉しい…俺話せる人ここには居ないから寂しくて…」
あいつは嬉しそうに笑ったけど、さっきみたいに太陽のようには笑わなかった。
俺は軽く挨拶をして木を降りてエステルとフレンが待っている広場へと戻った。
次の日から俺は学校から帰るとすぐにあいつのところへ行った。
俺が来る頃には必ず窓が開いていて俺が呼ぶとあいつはすぐに窓から顔を出した。
短い時間しか話ができなかったけれどすごく楽しい毎日。
そんな毎日の中で俺達はいろいろな話をした。
今日学校で起きたこと…友達のこと…家族のこと…
あいつのことも多く知ることができた。
交通事故で怪我をして手術をしたこと、
双子の弟がいるがこの病院に来てから一度も会っていないこと、
幼馴染の女の子のこと、
知れば知るほどあいつと俺の世界が違うことが分かる。
けど幼い俺達にはそんなの関係はない。
子供の世界はいつだって壁はないのだから…
俺はずっとこの毎日が続くと思っていた…
あいつと出会ってから数日が過ぎた日。
いつものようにあいつに会いに行くと何故か今日は雲がかかった顔をしている。
「どうした?お腹でも痛いのか?」
あいつは首をゆっくり横に振りゆっくりと口を開いた。
「俺…明日からしばらく会えなくなる…」
「え?何で?あ、退院するのか…おめでとう。」
退院してここで会えなくなるのは寂しいけれど、会おうと思えば会える。
そばにある広場やお互いの家などどこだって…
けどあいつは今にも雨が降りそうな顔で話をし始めた。
「違う…俺明日また手術だって…難しい手術で…もしかしたら…死んじゃうかもだって…」
あいつの瞳から雨が降り出した。
雨を拭いてやりたくても俺の小さい身体じゃ手が届かない、
俺はまだ幼くてその雨を止めてやれることができないでいた。
「かも…だろ?大丈夫だって成功するよ。
手術して元気になったら…一緒に遊ぼうぜ。俺の幼馴染も紹介してやるよ」
「けど…いつここに戻って来れるかわからないし…君をずっと待たせるのは…」
雨は降り続けた。
どれほどの大きな傘があればこの雨は止むのだろうか…
あの頃の俺にはそんな大きな傘を持つことはできない。
けど幼い俺でももてる傘をあいつに差しだした。
「俺待ってるから…何日…何週間…何カ月…何年でも…お前のこと、
だって…俺達友達だから…」
雨は止んだ。
そしてあいつは小さく「ありがとう…」と言った。
そして俺達はまた会うことを強く約束して短い別れを惜しんだ。
その時はほんの短い別れだと思っていたのに…
あいつと会えなくなってからあの病室の窓は開かなかった…。
何日経っても開くことはない。
俺は不安に思って病院にいる看護婦さんにあいつのことを聞いてみた。
すると看護婦さんはとても悲しそうな顔をして俺にこう告げた。
「…………あの子はもうここには戻ってこないのよ。」
幼い俺でも意味が分かった…分かりたくもなかった…。
病院から家に帰る時雨が降り出した。
傘を持っていなかった俺はずぶぬれになって家へと戻った。
こんな時こそ太陽が見たかったのに…見せてはくれない。
目を閉じたらすぐにでもあの太陽のような笑顔を思い出すことができるのに…
あいつはもう俺の傍には戻ってきてくれない…
初めてしる永遠の別れ…こんな感情を知るのはもっと先だと思っていたのに。
ふと俺は一つのことを思い出した。
「あいつの名前…聞いてなかった…」
NEXT
たった数日間だけの友達…
俺達は大切な約束をした…
けどそれは守ることができなかった…
もう二度と会えないけど…
大切な…大切な…友達…
『俺待ってるから…何日…何週間…何カ月…何年でも…お前のこと、
だって…俺達友達だから…』
「ユーリ…君が昔よく通ってたあの病院…取り壊しになるそうだよ…」
「え?」
それぞれの約束。1~ユーリ編~
その日もいつもと変わらない日だった。
俺は毎日のようにフレン、エステルと学校から帰った後遊ぶ約束をしていた。
エステルは昨日父親に買って貰ったピンク色の帽子を被っていつもの広場に来た。
いつものように遊んでいると突然強い風が吹いて、
エステルの帽子が飛んで行った。
俺達は急いで飛んで行った帽子をおいかけると、
広場の隣に立っていた大きい病院の木に引っ掛かった。
俺は木登りが得意だったから帽子を取りに行った。
「ユーリ…危ないですよ…ユーリが怪我したら私…」
「そうだよユーリ…」
「折角買って貰った帽子諦めるのかよ。俺は大丈夫だって…ほら、気がちるから向こうで待っててくれ」
不安そうに見つめるエステルの顔を見たくなかった俺は
エステルとフレンを木が見えないところまで追いやった。
それからこっそりと病院の庭に忍び込み帽子が引っ掛かってる木に登り始めた。
案外登りやすい木だったのですぐに帽子のあるところまでたどり着いたが
もう少しで帽子が取れるところでまた風が吹いてしまい
すぐそばにあった病室の中に入ってしまった。
「くそ…なんで窓なんか開いてるんだよ…」
流石に病院に忍び込むわけもいかずどうすればいいか考えていると
病室の中から声がした。
「君…誰…?」
「え?」
病室にいたのは俺と同じくらいの子供だった。
丸い大きな緑色の瞳…性別ははっきりとはわからないけど…多分男…
頭には包帯が巻いてあり髪の色はわからなかった。
多分手術をした後なのか…その包帯が痛々しかった…
「君誰…?何しに来たの?サンタさん…じゃないよな?まだ12月じゃないし」
俺をサンタと間違えるなんて視力は大丈夫なのかと思った。
そんな髭とか白髪じゃないし。
「友達の帽子がその部屋に入って…中にないか?」
「あ、これ?」
あいつは病室の中に落ちてた帽子を拾い上げると俺に渡してくれた。
「はい、どうぞ。これ君の?」
「違う。友達のってさっき言ったぞ?」
「あれ?そうだっけ?」
そいつは太陽のような笑顔で笑った。
俺は何故か心の中が熱くなる…。
「お前ここで入院してるのか?」
「うーん…入院なのかなぁ?少し違う気がする…けどそんな感じ」
変わったやつだ…
俺は結構友達は多い方だったけどこんなやつは俺の周りに居ない。
もっと話がしたい…そう思った。
「なぁ、お前…」
名前を聞こうと声をかけたとき、俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。
広場を見るとエステルとフレンが心配そうに俺を呼んでいるのが見えた。
「あ、悪い。友達が待ってるから行くわ」
「あ…うん…ばいばい。」
太陽が雨雲で覆われた…そんな寂しそうな顔をあいつはした。
「あ、明日も来る…迷惑じゃなかったら…」
「え?いいの?嬉しい…俺話せる人ここには居ないから寂しくて…」
あいつは嬉しそうに笑ったけど、さっきみたいに太陽のようには笑わなかった。
俺は軽く挨拶をして木を降りてエステルとフレンが待っている広場へと戻った。
次の日から俺は学校から帰るとすぐにあいつのところへ行った。
俺が来る頃には必ず窓が開いていて俺が呼ぶとあいつはすぐに窓から顔を出した。
短い時間しか話ができなかったけれどすごく楽しい毎日。
そんな毎日の中で俺達はいろいろな話をした。
今日学校で起きたこと…友達のこと…家族のこと…
あいつのことも多く知ることができた。
交通事故で怪我をして手術をしたこと、
双子の弟がいるがこの病院に来てから一度も会っていないこと、
幼馴染の女の子のこと、
知れば知るほどあいつと俺の世界が違うことが分かる。
けど幼い俺達にはそんなの関係はない。
子供の世界はいつだって壁はないのだから…
俺はずっとこの毎日が続くと思っていた…
あいつと出会ってから数日が過ぎた日。
いつものようにあいつに会いに行くと何故か今日は雲がかかった顔をしている。
「どうした?お腹でも痛いのか?」
あいつは首をゆっくり横に振りゆっくりと口を開いた。
「俺…明日からしばらく会えなくなる…」
「え?何で?あ、退院するのか…おめでとう。」
退院してここで会えなくなるのは寂しいけれど、会おうと思えば会える。
そばにある広場やお互いの家などどこだって…
けどあいつは今にも雨が降りそうな顔で話をし始めた。
「違う…俺明日また手術だって…難しい手術で…もしかしたら…死んじゃうかもだって…」
あいつの瞳から雨が降り出した。
雨を拭いてやりたくても俺の小さい身体じゃ手が届かない、
俺はまだ幼くてその雨を止めてやれることができないでいた。
「かも…だろ?大丈夫だって成功するよ。
手術して元気になったら…一緒に遊ぼうぜ。俺の幼馴染も紹介してやるよ」
「けど…いつここに戻って来れるかわからないし…君をずっと待たせるのは…」
雨は降り続けた。
どれほどの大きな傘があればこの雨は止むのだろうか…
あの頃の俺にはそんな大きな傘を持つことはできない。
けど幼い俺でももてる傘をあいつに差しだした。
「俺待ってるから…何日…何週間…何カ月…何年でも…お前のこと、
だって…俺達友達だから…」
雨は止んだ。
そしてあいつは小さく「ありがとう…」と言った。
そして俺達はまた会うことを強く約束して短い別れを惜しんだ。
その時はほんの短い別れだと思っていたのに…
あいつと会えなくなってからあの病室の窓は開かなかった…。
何日経っても開くことはない。
俺は不安に思って病院にいる看護婦さんにあいつのことを聞いてみた。
すると看護婦さんはとても悲しそうな顔をして俺にこう告げた。
「…………あの子はもうここには戻ってこないのよ。」
幼い俺でも意味が分かった…分かりたくもなかった…。
病院から家に帰る時雨が降り出した。
傘を持っていなかった俺はずぶぬれになって家へと戻った。
こんな時こそ太陽が見たかったのに…見せてはくれない。
目を閉じたらすぐにでもあの太陽のような笑顔を思い出すことができるのに…
あいつはもう俺の傍には戻ってきてくれない…
初めてしる永遠の別れ…こんな感情を知るのはもっと先だと思っていたのに。
ふと俺は一つのことを思い出した。
「あいつの名前…聞いてなかった…」
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