旭屋本舗
ようこそいらっしゃいませ。
腐向けサイトですご理解のある方のみどうぞ。
始めての方はカテゴリー【What】をお読みください。
この世界にはテイルズと呼ばれるコンピューターの意識集合体が
人間と一緒に共存している。
テイルズと呼ばれる者達にもシリーズがあり、
特にアビスシリーズと呼ばれる者達は唄を歌うのが得意だ。
そんなアビスシリーズの開発者はジェイド・カーティスと呼ばれる
いろいろと性格に難がある眼鏡野郎だ。
何故か俺はそいつと昔から縁があり、
明日高校の卒業式を迎えるその日…そいつが家に訪ねてきた。
『お帰りなさい~3月~』
「いやぁ~…あなたのその学生服も今日で見おさめなのですねぇ…」
「明日の卒業式もこれを着る。その前にてめぇ…鍵かけてる部屋にどうやって入った…」
「あんなの私の頭脳にかかれば鍵とはいいませんよ。」
黒い頬笑みでリビングの椅子に悠々と座っているジェイドがアッシュに笑いかけた。
アッシュは高校生だが今は訳があり高級マンションで一人暮らしをしている。
両親が安全の為にと選んだ高性能のセキュリティーロックもジェイドにかかれば
鍵がかかっていないのと同じのようだ。
普通に考えて不法侵入で訴えれるが、訴えたところで無罪にされてしまうのが
目に見えていたのでアッシュはそれ以上何も言わなかった。
「で?今日は何の用だ…用がないならとっとと帰りやがれ。」
「相変わらずつれないですねぇ…ルークとは大違いですね。」
ジェイドの口からでた人物の名前を耳にした途端アッシュの眉間に皺が増えジェイドを睨みつけた。
「あいつの名前を口にするんじゃねぇ…窓から放りだすぞ。」
ここは高層マンションの上階…ここから放り出されればいくらジェイドでも
助かる見込みはない…………はずだ。
「おやおや…まだ引きずっているのですね。そんな貴方に高校卒業祝いと大学入学祝いです。」
ジェイドが鞄から出したのは両手で抱えれるくらい大きなカプセルと分厚い説明書だった。
カプセルの中には小さな光が輝いて外に出るのを今か今かと待っている…。
「それは…テイルズの種か…?」
「コンピューターに弱いアッシュでも流石にわかりましたか。
そうです、テイルズ…しかもアビスシリーズの最新版ですよ。まぁ、まだ試作段階の物ですが…」
「で?これを俺にどうしろと…?」
「だから卒業祝いと入学祝いのプレゼントです。どうぞ。」
プレゼントと言ってるがきっと市販される前にデータを取る実験の間違いだとアッシュは感じる。
この男が自分の利益なしに人にプレゼントをあげるとは想像もできないからだ。
「いらねぇ…」
「おやおや、人の好意をそんな風に返すものではありませんよ。ルークなら素直に受け取るでしょうねぇ」
「だから…!!!あいつの名前を言うんじゃねぇ!!!」
また眉間に皺を増やしジェイドを睨みつけるが、ジェイドは変わらず笑顔で笑っている。
普通の人ならばアッシュの怒り顔を見ただけで震えあがってしまうが…
昔からの知り合いで慣れたのか、はたまたジェイドが普通の人ではないから無害なのかは定かではない。
「おっと…もうこんな時間ですか…でわ、私はこれで帰りますね。定期的にデータよろしくお願いしますね。」
「待て…!!!これ持って帰れっ…!!!」
アッシュが掴みかかってジェイドをとらえようとしたが、
ジェイドは風のようにアッシュをかわして玄関から逃走した。
30代後半とは思えない動きである。
アッシュは深いため息をつき手元にあるカプセルを見た。
カプセルの中にある光の粒はふわふわと浮いており自分の誕生を心待ちにしているように見える。
このまま放置すればこの光の粒は消えてしまう…
ジェイドの掌に踊らされているような感じはしたが、この光の粒には何も罪はない…
仕方がないのでアッシュは自分のパソコンにカプセルを接続させ、テイルズを作成するために説明書を読み始めた。
テイルズはまずパソコンに繋ぎ、自分の好みの姿にカスタマイズすることができる。
初心者用としてネットで身体のパーツが売られており、
上級者は自分がデザインしたパーツを組み合わせてオリジナルを作っている。
アッシュは初心者なのでネットで売られているパーツで作ろうかと思っていたが、
説明書を読むとこれは試作品の為市販されているパーツを組み合わせることはできないらしい…
残る選択肢は自分でデザインをして作らなければならないが初心者であるアッシュにできる技術ではない。
テイルズマニアであるガイを呼びだそうかと思ったが、
何故かジェイドに負けた気がするのでその選択肢は消し去った。
パーツの作り方が乗っているサイトを見て回ったが専門用語が数多く飛び交っていて意味が理解できない。
ふと、パソコンの横に置いてある写真が目に止まる。
写真の中には自分にそっくりな短髪の青年…顔は似ているのに自分には作れない笑顔をしている。
「……この屑兄貴が…何笑ってやがる…」
彼はアッシュの双子の兄…ルークだ。
ルークは丁度1年前…アッシュが高校2年の時交通事故で亡くなった…
ハンドル操作を誤りアッシュに車が激突しそうになっていたところをルークが庇って…亡くなった。
ルークが亡くなってからアッシュは家を出た。
彼との思いでの詰まった家に居ると気がくるってしまいそうだったからだ…
両親もそれを理解してくれたのか反対はしなかった。
目を閉じれば鮮明に思い出すことができる彼との思い出…
家族で旅行に行った思い出。
幼馴染であるナタリアの演劇を一緒に見に行った思い出。
クリスマスに一緒にツリーを見に行った思い出。
そして…高校入学の時に交わした約束。
『俺達3人一緒に同じ大学行こうぜ。』
しかし、その約束は守られることはできなかった…
アッシュとナタリアは同じ大学に行く…けどルークは…
目を閉じてルークとの思い出を思い出しているうちにアッシュはいつの間にか眠ってしまっていた。
誰も居ない部屋…外は暗くなり電気をつけていなかったアッシュの家は暗闇に覆われている。
そんな暗闇の中でカプセルの中にる光の粒は輝いている。
その光はどんどんと強まり…小さい粒だった光は一つの大きな光となった。
そしてその光は形を変え、人間の姿へと変化していった…。
『アッシュ…アッシュ…。』
何処からか聞こえてくる懐かしい声。
あぁ…そうだこの声はルークの声…もう二度と聞くことができない声。
声と一緒に誰かが頬を叩く感触が伝わってくる。
目を開けるとそこには…小さな髪の長い赤毛の青年がアッシュの頬を叩いていた。
「…!!。♪♪♪」
「え?な、な…なっ…ルーク!!!!???」
アッシュの目の前に居たのは死んだはずのルークの姿をした小人。
違うとすれば身体の大きさ…そして髪の長さだった。
「てめぇ…誰だっ…何でルークの姿してやがる…って…お前もしかして…」
アッシュはパソコンにつながれたカプセルを見ると
目が覚める前まであったはずの光と粒が無い。
しかも何故か勝手に蓋があいている。
「お前…テイルズなのか…?俺はまだパーツとか組み合わせてないのに何で…」
「…?。」
まだ生まれたてで話すことができないのか一言も話してこない。
話さない変りにいろいろな表情に変化している…ルークのように…。
時計を見ると起床しないと卒業式に間に合わない時間だった。
どれだけ自分は寝ていたのかと後悔しながらも慌てて朝食を作り始めた。
両手の掌に収まるくらいの大きさであるテイルズはアッシュの肩に乗り楽しそうにアッシュが朝食の準備をする姿を見ている。
その姿すらルークを思い出してしまいアッシュは胸が苦しくなる。
朝食ができたので早速食べようとするが、テイルズは興味深々で焼き立てのパンを眺めている。
説明書を読むと人間と同じ食べ物を食べることができるそうなので、
アッシュはパンを食べやすい大きさにちぎってテイルズに渡した。
パンを渡されたテイルズは最初はわかっていないようだったが、
アッシュがパンを食べる姿を見て食べ物だと学習したのか同じようにパンを食べ始めた。
朝食を食べ終わり片付けをすませると出かけるのに丁度いい時間になっていた。
指定鞄に適当に荷物を詰め込み玄関で靴を履いていると
テイルズが一緒に付いて行くと言っているように肩に乗ってきた。
アッシュは一瞬連れて行こうとしたが、今日は大事な卒業式…連れて行くわけにはいかなかった。
「お前は今日は留守番だ…適当に昼寝でもしてろ」
肩に乗ってきたテイルズを絨毯の上に降ろすと一緒に連れて行って貰えないと理解したのか
今にも泣きそうな顔をしている。
その顔に心が揺らいだがアッシュは心を鬼にして告げた。
「今日はダメだ…明日からならしばらく一緒にいてやれるが…今日は留守番だ。いいか分かったか?」
「!!!!!!!!!!。」
何かを言いたいようだが言葉を覚えてない為機械音みたいな音しか出ておらず何を言っているかわからない。
しかも泣きだしてしまった…。
「っく…行ってくる…」
罪悪感が残っていたがアッシュは玄関の扉を閉めた。
聞こえるはずがないのにテイルズの泣き声が耳に届いてくる気がする。
こんな気持ちになったのは久しぶりな気がする…あの小さな小人がルークと同じ顔をしているからだろうか…
帰ったらあのテイルズを連れてジェイドのところへ怒鳴りに行こうと決めた。
「卒業生…アッシュ・フォン・ファブレ。」
「はい。」
卒業式が始まった。
アッシュは自分の卒業証書を貰うと自分の席より後にある空席をに目を移した。
次々に卒業生の名前が呼ばれ、呼ばれた卒業生は卒業証書を貰っていく…
そして最後の卒業生の名前が呼ばれた。
「ルーク・フォン・ファブレ。」
呼ばれた卒業生は返事をしなかった。
担当の先生はそれをわかっていたので特に何も言わずにマイクから離れた。
本当なら一緒に卒業していたはずなのに…
卒業式が終わり教室で担任から代理としてルークの卒業証書を受け取り
そのまま家へ帰ろうとした時幼馴染の少女に呼びとめられた。
「アッシュ…もう帰ってしまいますの?みんなと少し話でもされたらいかが?」
「いや…そんな気分にはなれない…」
「そう…ですの…」
本当は居るはずだったルークの姿を追いかけてしまうのだろう…
ナタリアはルークが亡くなってアッシュが一番苦しんでいることを知っていた。
「卒業式の唄…私感動しましたわ…流石ティアの唄ですわね。」
「そうだな…」
クラス全員で亡くなったルークに届くように選んだ唄。
それは今人気のテイルズ、ティア・グランツの唄だった。
ルークがティアの唄をとても好きだったから選ばれた…
ティアのマスターであるヴァンもそのことを聞きとても嬉しいとこの前会ったときに話していた。
ヴァンはアッシュとルークの幼いころ家庭教師をしており今でも時々会う。
ルークが亡くなってからは会う機会が減ってしまっているが…。
「おーい、アッシュ。」
後から呼ばれたので振りかえってみるとそこにはスーツに身を固めた実家の使用人であるガイが立っていた。
「ガイ…来るなと言ったじゃねぇか。」
「そんなこと言われて来ないやつなんているか。旦那様と奥様も来てたけど先に帰ったぜ。」
多分アッシュに気を使って声をかけずに帰ったのだろう…まだ傷の癒えていないアッシュの為に。
「ほら、アッシュ帰るんだろ?車で来てるから送ってやるよ。」
「あぁ…わかった。じゃぁ、ナタリア…次は入学式か?」
「えぇ…そうですわね。またメールしますわ。」
寂しそうに笑うナタリアに小さく手を振りガイの乗ってきた車に乗り込んだ。
何故か助手席には大きな荷物があった。
「おい、ガイ…。何だこの荷物は…」
「ん?あぁ…今日からお前の世話係として一緒に暮らすから。旦那様と奥様の命令で」
「なっ…!!!何勝手なことしやがる!!!」
「全く連絡してこないお前が悪いんだろ?」
家を出る時に定期的に連絡をすると約束をしたがアッシュは守れていない。
連絡をしようとするとルークのことを思い出し電話をかけることができないからだ。
何度も注意されたが治る気配がなかったので心配性の両親は最終手段としてガイを向わせたのだろう。
「そういえばお前。ジェイドの旦那からテイルズ貰ったんだって?」
「何で知ってるんだ…」
「本人から聞いた。多分お前一人じゃ作れないから手伝ってやれってな。」
「あの野郎…」
悪い笑顔で笑っているジェイドの顔がはっきりと思い浮かべれる。
だが、アッシュに取っては良いことでもある。
何故ならテイルズの知識などほとんどないアッシュ一人ではあの小人を育てることなど難しいからだ。
起動プログラムも設定していないのに動き出したあの小人…
試作品なのでバグかもしれないがガイに見せたら何かわかるかもしれない。
きっと今頃泣き疲れてベッドの上で寝ているあの小さなテイルズの姿が目に浮かんだ。
そうこうしているうちに車はアッシュが暮らすマンションの駐車場へと着いた。
ガイは大きな荷物を一緒に運び出しているので本気でここに住むつもりなのだろう。
玄関の扉をあけると絨毯の上には小さな赤毛の小人が眠っていた。
朝絨毯の上に置いてから一歩も動いていないのだろう…。
「ったく…屑が…」
「お邪魔しま…って、る、ルーク!?じゃないな…テイルズか…これってまさか…」
「あの屑眼鏡から貰ったテイルズだ」
「へー…お前ちゃんとプログラムとか全部できたんだな…ん?何かこいつ様子おかしくないか?」
ガイに言われてよくみれば小さく震えているように見える。
まだ泣いているのだろうと思いテイルズの身体を触ったがアッシュは反射的にその手をひっこめた。
「熱っ…!!!」
ガイが慌ててテイルズの身体を触り様子を調べると慌てて絨毯ごとテイルズを持ちあげた。
「お、おい…ガイ…?」
「熱暴走してる…!!!このままじゃこいつ死ぬぞ!!!」
「え?…し、死ぬ…?」
何故か死んだルークの姿が目の前に現れた。
彼の最後を見たのもアッシュだった…
最後も彼はいつもの笑顔をアッシュに向けて眠るようにアッシュの手から離れていった。
「ガイ…どうにかならないのか!!」
「旦那なら…治せるかもしれない…かなり手遅れに近いが…一応連れて行こう。」
「あ、あぁ…」
二人は急いで地下の駐車場へ戻りジェイドの居る研究所へと車を走らせた。
研究所に着いた二人はジェイドに説明をすると応急処置としてテイルズが最初に入っていた
カプセルと同じような容器に入れ冷却作業を始めてくれた。
が、かなり熱暴走が進行しており助かるかはわからないらしい…。
「貴方っては人は…生まれたての子を放置するなんて…無責任にもほどがありますよ。」
「…………す、すまない…」
「まぁまぁ、旦那…今日は卒業式で連れて行こうにも連れていけなかったんだから…」
「困って私のところに預けてくると思ってたのですがねぇ…」
アッシュは何も言い返せなかった。
言い返すよりもまた自分のせいで人を失ってしまうのかと思うと怖くて仕方がない。
ジェイドが言うにはアッシュが家を出たあとずっと泣いており、
そのせいで熱暴走をしてしまったのだろう…とう見方だ。
やはり無理にでも連れていくべきだった…意地を張らずにガイやジェイドに相談すればよかった…
と心から反省している。
「…朝になっても様態が変わらないようでしたら…諦めてください。」
ジェイドの言葉でアッシュの脳内にはまたルークの最後が浮かんだ。
笑顔で自分の手から離れて行ったルーク…
また自分はルークを手離してしまうのだろうか…
ジェイドは仕事があると言い部屋を出て行き、ガイも近くのコンビニで晩御飯を買ってくると言って出て行った。
部屋には二人きり…様子を見るためカプセルに近づくが様態は変わらない…。
「すまない…俺のせいで…頼むから…死なないでくれ…もう、俺の前から消えないでくれ…」
ルークが死んだ時に自分からはもう涙など出ないと思っていたくらい泣いたのに…
アッシュの目からは涙が流れ始めた。
「ずっと…そばにいてくれ…お前のいない世界なんていらない…二度と手を離さないから…ルーク…」
いきなりカプセルの中にいたテイルズの身体が光だした。
その光は何故かとても温かく…優しくて、懐かしい光だった。
光が収まりアッシュがテイルズの様子を見るとさっきまで真っ赤な顔をしていた顔が
徐々に元の色に戻ってきている。
元の色にまで戻るとその小さな瞳が開き、あたりをきょろきょろと伺いアッシュの姿を見つけると
嬉しそうにアッシュにとびかかろうとしたが、カプセルのガラスに阻まれ飛びつくことができない。
アッシュに触れないことを理解したのかまた泣きそうな表情をみせたので、
慌てて装置の電源を切りカプセルの蓋をあけ外に出してやるとそのままアッシュの顔に飛びついた。
「なっ…てめぇ…さっきまで死にそうになってたのにめちゃくちゃ元気じゃねぇかっ!!!」
「♪♪♪」
テイルズは嬉しそうにアッシュの頬と自分の小さな頬を擦らせる。
その姿を見てアッシュは優しそうな顔をして指でその小さな頭を優しく撫でた。
アッシュは小さなテイルズを研究室のパソコンに接続し、まだつけていなかった名前を登録した。
『Luke…ルーク…登録しました。』
パソコンから機械的な女性の声で登録した名前の確認をした。
アッシュはパソコンの接続を切り、ルークと名付けたテイルズを優しく両手で持ち上げ自分の肩へと移動させた。
「やっぱり…その姿じゃこの名前以外ねぇな…」
すりすりと自分の頬にじゃれてくる小さなルークをみて久しぶりに温かい気持ちを思い出した。
小さなルークはアッシュの髪をひっぱりアッシュを自分の方へと向けると笑顔で口を動かした。
「……あ…あ…っしゅ…。あっしゅ…。」
「お、お前…俺の名前教えてもないのに…どうして…」
ルークはそれ以外まだ話せないのかアッシュの名前を何度も呼ぶ。
まるで忘れてないよ…自分はここにいるよと訴えているかのように…
何度も自分の名前を呼ばれ顔を真っ赤にさせた。
このテイルズにはいろいろと不思議なことがあるが
とりあえず今はこの帰ってきた小さなルークを心から迎えようと思った。
「………お帰り…ルーク。」
「………♪。」
人間と一緒に共存している。
テイルズと呼ばれる者達にもシリーズがあり、
特にアビスシリーズと呼ばれる者達は唄を歌うのが得意だ。
そんなアビスシリーズの開発者はジェイド・カーティスと呼ばれる
いろいろと性格に難がある眼鏡野郎だ。
何故か俺はそいつと昔から縁があり、
明日高校の卒業式を迎えるその日…そいつが家に訪ねてきた。
『お帰りなさい~3月~』
「いやぁ~…あなたのその学生服も今日で見おさめなのですねぇ…」
「明日の卒業式もこれを着る。その前にてめぇ…鍵かけてる部屋にどうやって入った…」
「あんなの私の頭脳にかかれば鍵とはいいませんよ。」
黒い頬笑みでリビングの椅子に悠々と座っているジェイドがアッシュに笑いかけた。
アッシュは高校生だが今は訳があり高級マンションで一人暮らしをしている。
両親が安全の為にと選んだ高性能のセキュリティーロックもジェイドにかかれば
鍵がかかっていないのと同じのようだ。
普通に考えて不法侵入で訴えれるが、訴えたところで無罪にされてしまうのが
目に見えていたのでアッシュはそれ以上何も言わなかった。
「で?今日は何の用だ…用がないならとっとと帰りやがれ。」
「相変わらずつれないですねぇ…ルークとは大違いですね。」
ジェイドの口からでた人物の名前を耳にした途端アッシュの眉間に皺が増えジェイドを睨みつけた。
「あいつの名前を口にするんじゃねぇ…窓から放りだすぞ。」
ここは高層マンションの上階…ここから放り出されればいくらジェイドでも
助かる見込みはない…………はずだ。
「おやおや…まだ引きずっているのですね。そんな貴方に高校卒業祝いと大学入学祝いです。」
ジェイドが鞄から出したのは両手で抱えれるくらい大きなカプセルと分厚い説明書だった。
カプセルの中には小さな光が輝いて外に出るのを今か今かと待っている…。
「それは…テイルズの種か…?」
「コンピューターに弱いアッシュでも流石にわかりましたか。
そうです、テイルズ…しかもアビスシリーズの最新版ですよ。まぁ、まだ試作段階の物ですが…」
「で?これを俺にどうしろと…?」
「だから卒業祝いと入学祝いのプレゼントです。どうぞ。」
プレゼントと言ってるがきっと市販される前にデータを取る実験の間違いだとアッシュは感じる。
この男が自分の利益なしに人にプレゼントをあげるとは想像もできないからだ。
「いらねぇ…」
「おやおや、人の好意をそんな風に返すものではありませんよ。ルークなら素直に受け取るでしょうねぇ」
「だから…!!!あいつの名前を言うんじゃねぇ!!!」
また眉間に皺を増やしジェイドを睨みつけるが、ジェイドは変わらず笑顔で笑っている。
普通の人ならばアッシュの怒り顔を見ただけで震えあがってしまうが…
昔からの知り合いで慣れたのか、はたまたジェイドが普通の人ではないから無害なのかは定かではない。
「おっと…もうこんな時間ですか…でわ、私はこれで帰りますね。定期的にデータよろしくお願いしますね。」
「待て…!!!これ持って帰れっ…!!!」
アッシュが掴みかかってジェイドをとらえようとしたが、
ジェイドは風のようにアッシュをかわして玄関から逃走した。
30代後半とは思えない動きである。
アッシュは深いため息をつき手元にあるカプセルを見た。
カプセルの中にある光の粒はふわふわと浮いており自分の誕生を心待ちにしているように見える。
このまま放置すればこの光の粒は消えてしまう…
ジェイドの掌に踊らされているような感じはしたが、この光の粒には何も罪はない…
仕方がないのでアッシュは自分のパソコンにカプセルを接続させ、テイルズを作成するために説明書を読み始めた。
テイルズはまずパソコンに繋ぎ、自分の好みの姿にカスタマイズすることができる。
初心者用としてネットで身体のパーツが売られており、
上級者は自分がデザインしたパーツを組み合わせてオリジナルを作っている。
アッシュは初心者なのでネットで売られているパーツで作ろうかと思っていたが、
説明書を読むとこれは試作品の為市販されているパーツを組み合わせることはできないらしい…
残る選択肢は自分でデザインをして作らなければならないが初心者であるアッシュにできる技術ではない。
テイルズマニアであるガイを呼びだそうかと思ったが、
何故かジェイドに負けた気がするのでその選択肢は消し去った。
パーツの作り方が乗っているサイトを見て回ったが専門用語が数多く飛び交っていて意味が理解できない。
ふと、パソコンの横に置いてある写真が目に止まる。
写真の中には自分にそっくりな短髪の青年…顔は似ているのに自分には作れない笑顔をしている。
「……この屑兄貴が…何笑ってやがる…」
彼はアッシュの双子の兄…ルークだ。
ルークは丁度1年前…アッシュが高校2年の時交通事故で亡くなった…
ハンドル操作を誤りアッシュに車が激突しそうになっていたところをルークが庇って…亡くなった。
ルークが亡くなってからアッシュは家を出た。
彼との思いでの詰まった家に居ると気がくるってしまいそうだったからだ…
両親もそれを理解してくれたのか反対はしなかった。
目を閉じれば鮮明に思い出すことができる彼との思い出…
家族で旅行に行った思い出。
幼馴染であるナタリアの演劇を一緒に見に行った思い出。
クリスマスに一緒にツリーを見に行った思い出。
そして…高校入学の時に交わした約束。
『俺達3人一緒に同じ大学行こうぜ。』
しかし、その約束は守られることはできなかった…
アッシュとナタリアは同じ大学に行く…けどルークは…
目を閉じてルークとの思い出を思い出しているうちにアッシュはいつの間にか眠ってしまっていた。
誰も居ない部屋…外は暗くなり電気をつけていなかったアッシュの家は暗闇に覆われている。
そんな暗闇の中でカプセルの中にる光の粒は輝いている。
その光はどんどんと強まり…小さい粒だった光は一つの大きな光となった。
そしてその光は形を変え、人間の姿へと変化していった…。
『アッシュ…アッシュ…。』
何処からか聞こえてくる懐かしい声。
あぁ…そうだこの声はルークの声…もう二度と聞くことができない声。
声と一緒に誰かが頬を叩く感触が伝わってくる。
目を開けるとそこには…小さな髪の長い赤毛の青年がアッシュの頬を叩いていた。
「…!!。♪♪♪」
「え?な、な…なっ…ルーク!!!!???」
アッシュの目の前に居たのは死んだはずのルークの姿をした小人。
違うとすれば身体の大きさ…そして髪の長さだった。
「てめぇ…誰だっ…何でルークの姿してやがる…って…お前もしかして…」
アッシュはパソコンにつながれたカプセルを見ると
目が覚める前まであったはずの光と粒が無い。
しかも何故か勝手に蓋があいている。
「お前…テイルズなのか…?俺はまだパーツとか組み合わせてないのに何で…」
「…?。」
まだ生まれたてで話すことができないのか一言も話してこない。
話さない変りにいろいろな表情に変化している…ルークのように…。
時計を見ると起床しないと卒業式に間に合わない時間だった。
どれだけ自分は寝ていたのかと後悔しながらも慌てて朝食を作り始めた。
両手の掌に収まるくらいの大きさであるテイルズはアッシュの肩に乗り楽しそうにアッシュが朝食の準備をする姿を見ている。
その姿すらルークを思い出してしまいアッシュは胸が苦しくなる。
朝食ができたので早速食べようとするが、テイルズは興味深々で焼き立てのパンを眺めている。
説明書を読むと人間と同じ食べ物を食べることができるそうなので、
アッシュはパンを食べやすい大きさにちぎってテイルズに渡した。
パンを渡されたテイルズは最初はわかっていないようだったが、
アッシュがパンを食べる姿を見て食べ物だと学習したのか同じようにパンを食べ始めた。
朝食を食べ終わり片付けをすませると出かけるのに丁度いい時間になっていた。
指定鞄に適当に荷物を詰め込み玄関で靴を履いていると
テイルズが一緒に付いて行くと言っているように肩に乗ってきた。
アッシュは一瞬連れて行こうとしたが、今日は大事な卒業式…連れて行くわけにはいかなかった。
「お前は今日は留守番だ…適当に昼寝でもしてろ」
肩に乗ってきたテイルズを絨毯の上に降ろすと一緒に連れて行って貰えないと理解したのか
今にも泣きそうな顔をしている。
その顔に心が揺らいだがアッシュは心を鬼にして告げた。
「今日はダメだ…明日からならしばらく一緒にいてやれるが…今日は留守番だ。いいか分かったか?」
「!!!!!!!!!!。」
何かを言いたいようだが言葉を覚えてない為機械音みたいな音しか出ておらず何を言っているかわからない。
しかも泣きだしてしまった…。
「っく…行ってくる…」
罪悪感が残っていたがアッシュは玄関の扉を閉めた。
聞こえるはずがないのにテイルズの泣き声が耳に届いてくる気がする。
こんな気持ちになったのは久しぶりな気がする…あの小さな小人がルークと同じ顔をしているからだろうか…
帰ったらあのテイルズを連れてジェイドのところへ怒鳴りに行こうと決めた。
「卒業生…アッシュ・フォン・ファブレ。」
「はい。」
卒業式が始まった。
アッシュは自分の卒業証書を貰うと自分の席より後にある空席をに目を移した。
次々に卒業生の名前が呼ばれ、呼ばれた卒業生は卒業証書を貰っていく…
そして最後の卒業生の名前が呼ばれた。
「ルーク・フォン・ファブレ。」
呼ばれた卒業生は返事をしなかった。
担当の先生はそれをわかっていたので特に何も言わずにマイクから離れた。
本当なら一緒に卒業していたはずなのに…
卒業式が終わり教室で担任から代理としてルークの卒業証書を受け取り
そのまま家へ帰ろうとした時幼馴染の少女に呼びとめられた。
「アッシュ…もう帰ってしまいますの?みんなと少し話でもされたらいかが?」
「いや…そんな気分にはなれない…」
「そう…ですの…」
本当は居るはずだったルークの姿を追いかけてしまうのだろう…
ナタリアはルークが亡くなってアッシュが一番苦しんでいることを知っていた。
「卒業式の唄…私感動しましたわ…流石ティアの唄ですわね。」
「そうだな…」
クラス全員で亡くなったルークに届くように選んだ唄。
それは今人気のテイルズ、ティア・グランツの唄だった。
ルークがティアの唄をとても好きだったから選ばれた…
ティアのマスターであるヴァンもそのことを聞きとても嬉しいとこの前会ったときに話していた。
ヴァンはアッシュとルークの幼いころ家庭教師をしており今でも時々会う。
ルークが亡くなってからは会う機会が減ってしまっているが…。
「おーい、アッシュ。」
後から呼ばれたので振りかえってみるとそこにはスーツに身を固めた実家の使用人であるガイが立っていた。
「ガイ…来るなと言ったじゃねぇか。」
「そんなこと言われて来ないやつなんているか。旦那様と奥様も来てたけど先に帰ったぜ。」
多分アッシュに気を使って声をかけずに帰ったのだろう…まだ傷の癒えていないアッシュの為に。
「ほら、アッシュ帰るんだろ?車で来てるから送ってやるよ。」
「あぁ…わかった。じゃぁ、ナタリア…次は入学式か?」
「えぇ…そうですわね。またメールしますわ。」
寂しそうに笑うナタリアに小さく手を振りガイの乗ってきた車に乗り込んだ。
何故か助手席には大きな荷物があった。
「おい、ガイ…。何だこの荷物は…」
「ん?あぁ…今日からお前の世話係として一緒に暮らすから。旦那様と奥様の命令で」
「なっ…!!!何勝手なことしやがる!!!」
「全く連絡してこないお前が悪いんだろ?」
家を出る時に定期的に連絡をすると約束をしたがアッシュは守れていない。
連絡をしようとするとルークのことを思い出し電話をかけることができないからだ。
何度も注意されたが治る気配がなかったので心配性の両親は最終手段としてガイを向わせたのだろう。
「そういえばお前。ジェイドの旦那からテイルズ貰ったんだって?」
「何で知ってるんだ…」
「本人から聞いた。多分お前一人じゃ作れないから手伝ってやれってな。」
「あの野郎…」
悪い笑顔で笑っているジェイドの顔がはっきりと思い浮かべれる。
だが、アッシュに取っては良いことでもある。
何故ならテイルズの知識などほとんどないアッシュ一人ではあの小人を育てることなど難しいからだ。
起動プログラムも設定していないのに動き出したあの小人…
試作品なのでバグかもしれないがガイに見せたら何かわかるかもしれない。
きっと今頃泣き疲れてベッドの上で寝ているあの小さなテイルズの姿が目に浮かんだ。
そうこうしているうちに車はアッシュが暮らすマンションの駐車場へと着いた。
ガイは大きな荷物を一緒に運び出しているので本気でここに住むつもりなのだろう。
玄関の扉をあけると絨毯の上には小さな赤毛の小人が眠っていた。
朝絨毯の上に置いてから一歩も動いていないのだろう…。
「ったく…屑が…」
「お邪魔しま…って、る、ルーク!?じゃないな…テイルズか…これってまさか…」
「あの屑眼鏡から貰ったテイルズだ」
「へー…お前ちゃんとプログラムとか全部できたんだな…ん?何かこいつ様子おかしくないか?」
ガイに言われてよくみれば小さく震えているように見える。
まだ泣いているのだろうと思いテイルズの身体を触ったがアッシュは反射的にその手をひっこめた。
「熱っ…!!!」
ガイが慌ててテイルズの身体を触り様子を調べると慌てて絨毯ごとテイルズを持ちあげた。
「お、おい…ガイ…?」
「熱暴走してる…!!!このままじゃこいつ死ぬぞ!!!」
「え?…し、死ぬ…?」
何故か死んだルークの姿が目の前に現れた。
彼の最後を見たのもアッシュだった…
最後も彼はいつもの笑顔をアッシュに向けて眠るようにアッシュの手から離れていった。
「ガイ…どうにかならないのか!!」
「旦那なら…治せるかもしれない…かなり手遅れに近いが…一応連れて行こう。」
「あ、あぁ…」
二人は急いで地下の駐車場へ戻りジェイドの居る研究所へと車を走らせた。
研究所に着いた二人はジェイドに説明をすると応急処置としてテイルズが最初に入っていた
カプセルと同じような容器に入れ冷却作業を始めてくれた。
が、かなり熱暴走が進行しており助かるかはわからないらしい…。
「貴方っては人は…生まれたての子を放置するなんて…無責任にもほどがありますよ。」
「…………す、すまない…」
「まぁまぁ、旦那…今日は卒業式で連れて行こうにも連れていけなかったんだから…」
「困って私のところに預けてくると思ってたのですがねぇ…」
アッシュは何も言い返せなかった。
言い返すよりもまた自分のせいで人を失ってしまうのかと思うと怖くて仕方がない。
ジェイドが言うにはアッシュが家を出たあとずっと泣いており、
そのせいで熱暴走をしてしまったのだろう…とう見方だ。
やはり無理にでも連れていくべきだった…意地を張らずにガイやジェイドに相談すればよかった…
と心から反省している。
「…朝になっても様態が変わらないようでしたら…諦めてください。」
ジェイドの言葉でアッシュの脳内にはまたルークの最後が浮かんだ。
笑顔で自分の手から離れて行ったルーク…
また自分はルークを手離してしまうのだろうか…
ジェイドは仕事があると言い部屋を出て行き、ガイも近くのコンビニで晩御飯を買ってくると言って出て行った。
部屋には二人きり…様子を見るためカプセルに近づくが様態は変わらない…。
「すまない…俺のせいで…頼むから…死なないでくれ…もう、俺の前から消えないでくれ…」
ルークが死んだ時に自分からはもう涙など出ないと思っていたくらい泣いたのに…
アッシュの目からは涙が流れ始めた。
「ずっと…そばにいてくれ…お前のいない世界なんていらない…二度と手を離さないから…ルーク…」
いきなりカプセルの中にいたテイルズの身体が光だした。
その光は何故かとても温かく…優しくて、懐かしい光だった。
光が収まりアッシュがテイルズの様子を見るとさっきまで真っ赤な顔をしていた顔が
徐々に元の色に戻ってきている。
元の色にまで戻るとその小さな瞳が開き、あたりをきょろきょろと伺いアッシュの姿を見つけると
嬉しそうにアッシュにとびかかろうとしたが、カプセルのガラスに阻まれ飛びつくことができない。
アッシュに触れないことを理解したのかまた泣きそうな表情をみせたので、
慌てて装置の電源を切りカプセルの蓋をあけ外に出してやるとそのままアッシュの顔に飛びついた。
「なっ…てめぇ…さっきまで死にそうになってたのにめちゃくちゃ元気じゃねぇかっ!!!」
「♪♪♪」
テイルズは嬉しそうにアッシュの頬と自分の小さな頬を擦らせる。
その姿を見てアッシュは優しそうな顔をして指でその小さな頭を優しく撫でた。
アッシュは小さなテイルズを研究室のパソコンに接続し、まだつけていなかった名前を登録した。
『Luke…ルーク…登録しました。』
パソコンから機械的な女性の声で登録した名前の確認をした。
アッシュはパソコンの接続を切り、ルークと名付けたテイルズを優しく両手で持ち上げ自分の肩へと移動させた。
「やっぱり…その姿じゃこの名前以外ねぇな…」
すりすりと自分の頬にじゃれてくる小さなルークをみて久しぶりに温かい気持ちを思い出した。
小さなルークはアッシュの髪をひっぱりアッシュを自分の方へと向けると笑顔で口を動かした。
「……あ…あ…っしゅ…。あっしゅ…。」
「お、お前…俺の名前教えてもないのに…どうして…」
ルークはそれ以外まだ話せないのかアッシュの名前を何度も呼ぶ。
まるで忘れてないよ…自分はここにいるよと訴えているかのように…
何度も自分の名前を呼ばれ顔を真っ赤にさせた。
このテイルズにはいろいろと不思議なことがあるが
とりあえず今はこの帰ってきた小さなルークを心から迎えようと思った。
「………お帰り…ルーク。」
「………♪。」
「だあー!!!もう、マジユーリのやつうぜぇ!!!」
怒りにまかせてギルド内にある自室の扉を開けたルークは
その勢いのままベッドへと飛び込んだ。
中にいたガイは毎度のことなので慣れているので
軽く笑いながらルークが寝転ぶベッドへと近づいてきた。
「今度はなんだ?また楽しみに取ってたデザートでも食われたか?」
「そんなんじゃねぇよ!!あー…もう、あいつの顔なんて見たくもねぇ!!!」
「おや、それは丁度よかったですね」
ジェイドがルーク達の部屋に入ってきたが、その顔は何故か笑顔…
この顔のジェイドは毎度よからぬことを考えている時の顔だとルークは知っている。
「な、何が丁度いいんだよ…」
おそるおそるジェイドに聞くと、笑顔でルークの質問に答えた。
「皇帝陛下より帰国命令が先ほどありました。ですので来週このギルドを脱退し
ライマ国へと帰ります。」
「え…?」
嬉しいはずなのに、何故か頭を鈍器で殴られたような気持ちになった…。
罪×素直×告白
明日は本国ライマ国へ帰る日。
ルーク達最後の夜ということもあって、ギルドの食堂で送別会が盛大に開かれた。
ティアとナタリアは仲良くなったエステル達と別れを惜しみ、
アッシュはティトレイなどからの一方的な友情の別れに付き合い、
ガイは今まで女性陣とあまり話していなかったせいか
ここぞとばかりに女性に囲まれ、
アニスは何だかんだ言って仲良くなったちびっこ達と笑い、
ヴァンは大人の付き合いをし、
ジェイドは相変わらずだがどこか寂しそうで…
皆それぞれ思い思いにギルドのメンバー達との最後の交流をしている。
そんな中ルークはただ一人暗い展望室でバンエルティア号から見える夜景を楽しんでいた。
そこへ誰かが展望台に上がってくる音がした。
ガイが心配して探しに来たのかと予想したがルークの予想は外れ、
展望台に上がってきたのはユーリだった。
「よう、お坊ちゃん。こんなところで何してるんだ?
アレンのやつが泣き顔で探しまくってたぜ。」
「もう少しだけ…ここにいたい…」
「…わかった。」
ユーリのことだから何かつっかかってくるかと思ったが、
今日のユーリは変だった…いや、ユーリの様子が変なのは
ルークの帰国が決まってからだ。
鈍感と周りからいつも言われるルークが気がつくのだから相当様子がおかしい。
「隣…いいか?」
「あぁ…」
ルークの隣に静かにユーリが座った。
何か話かけてくるかと思ったが特に何も話かけてはこなかった。
前だったら断りもなく隣に座ってきて口喧嘩をしたはずなのに…
出会ってからこの二人にはなかった沈黙が生まれる。
その沈黙を破ったのはルークの方だった。
「お前は…まだしばらくギルドにいるのか?」
「あぁ…エステルがまだ帰らないって言ってるからな…」
「そっか…」
そしてまた沈黙が生まれる。
自分達はこれほど会話が下手くそだったか?と疑問に思ってしまうくらいの沈黙だった。
次に居心地の悪い沈黙を破ったのはユーリだった。
「国に帰ったら…王位を継ぐのか?」
「さぁな…アッシュと俺どっちが継ぐのかまだ正式に決まってねぇし…
選ばれたら……………継ぐ……………」
「歯切れが悪いな。迷ってるのか?」
「………………………そろそろ…食堂に戻るか。」
ユーリの質問には答えずルークが立ちあがろうとした時、
ルークの腕をユーリが掴んで行くてを阻んだ。
「な、何だよ…」
ユーリの顔を見ると今までみたことのない真剣な表情でルークを見つめていた。
そんなユーリの姿に頬を少し赤く染めた…
ユーリが女性達から人気がある理由がなんとなくわかる。
「なぁ、ルーク…もし迷っているなら………………」
何かを言いかけたがユーリがその言葉を口に出さずに自分の心に押し込め、
それと同時に掴んでいたルークの腕も離した。
「悪い…何でもない…今のは忘れてくれ…」
「な、何だよそれ…最後まで言えよ」
「俺の我儘でお前の人生狂わせるわけにはいかないからな。」
「俺だっていっぱい我儘言ってるんだから言えよ」
ルークが拗ねた表情でユーリを睨みつけると
ユーリは少し困った顔をしながら笑った。
「お前のは本当の我儘じゃねぇよ…ただ人と関わり合いを持つために言ってるだけだ。」
「は?」
そんなこと言われるのは初めてだった。
周りからはいつも「お前は我儘だ」といわれていたのに…
やっぱりユーリの様子は変だ。
いつもならこんなこと言うはずないのに…
「王族って立場を考えて行動するのはいいが…たまには自分の気持ちに素直になれよ…」
そういうとユーリは展望台を降りた。
一人取り残されたルークは何が何だかわからなくなっていた…
「何なんだよ…ユーリの馬鹿…自分の気持ちって…俺は王族なんだから…そんなのできねぇよ…」
まさかギルド最後の夜にこんな悲しい気持ちになるとは思ってもいなかった。
ルーク達がギルドを脱退して数日が過ぎた。
ギルド内は少し寂しい雰囲気を漂っていたが、少しずつ元の空気に戻りつつあった。
約二名を除いては…
「ユーリまたケーキ焦がしたんだって?エステルが心配してたよ」
「アレンこそダンジョンでまた迷子になったんだろ?カノンノが心配してたぞ」
二人で顔を見合わせると同時にため息がでた。
二人が居るのはバンエルティア号の甲板。
風が気持ちよく吹いているが、今の二人にはそんな風も心に開いた傷を開かせる材料でしかなかった。
ルーク達が居なくなってずっと調子が戻らない二人とはユーリとディセンダーのアレンだった。
アレンはルークとまるで本当の兄弟のように仲が良かったから仕方がない。
ユーリも出会えば口喧嘩ばかりしていたが何だかんだで仲は良かった……かもしれない。
「なぁユーリ…ルークが王様になったら会えないのか?」
「王様と一般市民じゃ無理だな…」
「つまんねぇ…」
ずっとルークと一緒に居たせいか最近純粋無垢だったこのディセンダーの口調はだんだんルークに似てきた。
何も知らなかったから学習能力が高いのか…ただたんに影響を受けやすいだけなのかは定かではない。
「なぁ、ユーリ…」
「今度は何だよ…」
「前ユーリが言ってたけど…罪って一度犯すのも二度犯すのもたいして変わらないんだよな?」
「……………確かに」
どことなく死んでいたユーリの瞳が以前のように輝きを取り戻した。
「俺らしくもなかったな…やっぱり人生我儘に行くか。お前も行くか?」
「行く!!!」
二人はニヤリと笑い何か打ち合わせをするために甲板を後にした。
ここはライマ国にある豪華な屋敷の一室。
ルークはこの城に戻って来てから一歩も外へ出してはもらえなかった。
そう、それはギルドに入る前と同じ状況…
戻ればこの生活になると分かっていたが、心のどこかで違う希望を抱いていた。
こんな生活をしていたらギルドにいたころの生活がとても懐かしく思えてくる。
ギルドのメンバーは今頃どうしているのだろうか…
アンジュは相変わらず体重を気にしているのだろうか…
ロックスは相変わらず忙しそうなのだろうか…
アレンは相変わらずギルドの仕事に追われているのだろうか…
ユーリは………
ユーリのことを思い出すとあの日の夜のことを思い出す。
彼は自分に何を伝えたかったのだろうかと…
自分の気持ちに正直に生きたいと思う反面、王位を継ぐ可能性のある者としてそれはどうなのかと…
今までの自分ならば王位などどうでもよかっただろう。
だけど、あのギルドに関わってから少し自分の考えが変われるようになった気がする。
そんなことを考えながらルークの部屋から見える空を見上げていると、
部屋の扉をノックする音が聞こえた。
軽く返事をすると扉が開きそこには一人のメイドが立っていた。
「ルーク様。旦那様がお呼びです…至急来るようにとのことです。」
「あぁ…わかった。」
ついに来たか…とつぶやいた。
今日はアッシュとルークどちらが王位継承者になるか決める日だった。
ヴァンを交えて今日決定される予定だ。
呼ばれればすぐに父親の元へ行ける準備はできていたので、
すぐに自分の部屋を出てメイドの前を通りすぎた。
呼びに来たメイドはルークのすぐ後ろを付いてくる。
分厚い眼鏡をかけていたので顔はよく見えなかったが記憶が確かならば話をしたことがないメイドだ。
ルークが旅に出ている間にメイドもかなり入れ替わっていたので知らない顔がいるのは当たり前だった。
馴染みのメイドが少なくなるのはとても寂しい気分になってしまう…
父親が待つ大広間に着いたルークは扉をノックして部屋に入った。
部屋にはすでにアッシュ、ナタリア、ガイ、ヴァンそして父親が居た。
アッシュのそばには顔なじみではないメイドが一人立っていた。
多分こちらも自分達が旅に出ている間に入ったメイドなのだろう…。
着いてきたメイドに案内されてルークが席につくと父親の口が動いた。
「では…これより王位継承について話を始める。」
「はい。」
「……はい。」
ここでついに正式な王位継承が決まる。
もしルークが第一王位継承者になれなくとも王族して窮屈な生活があるのは変わりはない。
ギルドの居たころのように自由にはなれない…アドリビトムのように…
「ヴァン…この度の旅を通じてこの二人はどう思う?」
「はい。アッシュにはもともと王位継承者として素質や気品など取り揃えておりました。
旅をしてそれが磨かれております。しかし、ルークもなかなかのものです。
最初は王位継承者として失格でしたが、ギルドに入り多くの仲間と関わりを持ってからは変わりました。
アッシュにはない王位継承者としての何かを持っております。
私は二人でこの国を支えて行くべきではないかと…」
ヴァンにほめられたことで少し嬉しく思うルークだったが、
今は心から喜べる気分にはなれなかった…。
アッシュと二人で…そんなこと今の自分に可能なのだろうか…
「アッシュお前は今後どうしていきたい?」
「私は………」
アッシュはスラスラと自分の今後王族としてどうしていきたいかを父親に述べていった。
今のルークに今後のことなんて言える状況ではなかった…。
「ルーク…お前は今後どうしていきたい?」
「お…いや、私は………」
言葉に詰まった。
アッシュと同じように王族としてどうして行きたいかを述べるのが正しい
と頭ではわかっているが…自分の心にはどうしても捨てきれないものがあった。
どうすればいいかわからなくなって来てしまった…
その時どこからか声が聞こえた。
「自分の気持ちに素直になれよ…」
そう、その声の主はここに居るはずのない彼…ユーリの声だ。
ユーリが最後にルークにかけた言葉…
ここに居るはずのないユーリの声…幻聴だろうが無性に彼がそばに居てくれている気がした。
そんな気がするだけでとても心強い。
ルークは父親の目をしっかりとみつめゆっくりと口を開いた。
「私は……王位を継ぐ資格はありません。ですので私は王位継承を辞退します。」
「なっ…!!!」
「まぁ…ルーク…」
一番驚いたのはアッシュとナタリアだった。
ヴァンとガイは予想をしていたのかあまり驚いた表情は見せなかった。
「王族を捨ててどうするつもりだ?」
父親が静かにルークへ聞いた。
「ギルドに…アドリビトムに戻ります。まだ世界の混乱は終わっていません…
王になって民を守ることも大切ですが、もっと身近で守りたい…貴族として育った私だからこそ
できることがあると思うのです。」
「お前があのギルドに戻りたいと思うのは勝手だが…あのギルドの者たちがお前を歓迎するのか?
あまり熱心に仕事をしていなかったようだし、
我儘で傲慢な性格のお前なんて居なくなって安心してる人のが多いのではないのか?」
「そ、それは………」
確かに自分のギルド内での生活は我儘で傲慢なことだらけだった。
もしかしたらルークが居なくなって喜んでいるメンバーがほとんどかもしれない…
そんなところに戻っていいのか…?と不安が押し寄せてきた。
「戻って歓迎される保証もないところに戻りたいとはよく言ったものだな…それだからお前は…」
「そんなに保障がみたいなら見せてやるよ」
声の主はルークを迎えにきたメイドだった。
メイドはルークの真横にくるとかけていた分厚い眼鏡をはずし結っていた髪を下ろした。
その顔はルークにとって忘れたくても忘れられない顔だった。
「だれだお前は…」
「俺か?俺はアドリビトムのメンバー…ユーリ・ローウェルだ」
かっこよく名前を言って決めているが…きている服はメイド服…いまいち格好がつかない。
しかしよくお似合いです。
「え?ちょ…ユーリ…!!!何でここに!?」
「お前を誘拐しに来たんだよ。お前に伝えたいこともあったしな」
「え?」
「我が屋敷に不法侵入するとは…罪は重いぞ?」
バタバタバタと武器を持った兵士達が入口から入ってきて、周りを取り囲んだ。
本来ならばピンチのはずだが…何故かユーリは余裕の表情だった。
「別にいまさら罪の一つや二つ犯しても変わりはしないさ。」
「根性はあるようだな…流石一人でファブレ家に乗り込んできただけのことはある」
「だーれが一人で乗り込んだだって?こっちにはすっげーつよい味方がいるんだよ」
ユーリの瞳がアッシュの後に立っていたメイドの方に視線が動いた。
視線を感じたメイドは被っていたカツラを外した。
その姿はいつも自分の隣にいた英雄だった…。
「え…な…あ、アレン!?」
「えへへ…ユーリと一緒に来ちゃった」
まるでどこかの遊園地に遊びに来ましたというノリのディセンダーである。
「ようお前ら…このチビのことしってるか?こいつはこのルミナシアのディセンダーだ。
ディセンダーに勝てる腕のやつこの中にいるか?」
ユーリをとらえようとしていた兵士達がアレンの姿を見て後に下がりだした。
ディセンダーの話はこの世界では誰でもしっている話だから勝てるとは思う人など居なかった。
兵士達の代わりにユーリの前に出た者が居た…それはルークだった。
「ユーリ…お前馬鹿だろう!!!父上を敵に回したらライマ国を敵に回すようなもんだぞ…それなのに…」
「あたりだ。俺は馬鹿だよ…馬鹿だからこんなことするんだ…俺はなルーク…
お前の為ならライマ国くらい敵に回してもいいと思ってここに来たんだ。」
その言葉を聞いてルークの顔が真っ赤になった。
ルークを真っ赤にさせたユーリはそんなこと気にもしていないのか口をまた動かした。
「この前言えなかったことだが…ルーク、ギルドに戻ってこい。そして俺の相棒に…いや…
それだけじゃない…俺と付き合ってくれ。」
「えええぇっ!!!!???」
驚きのあまりルークはまるで金魚のように口をぱくぱくしたまま動かなくなった。
心配したアレンがファーストエイドをかけたがルークはもとに戻らなかった。
「ははははっ…もうこれはルークはギルドに戻るべきですな。
こんなにも愛されているのですから」
今までだまっていたヴァンが父親に話しかけた。
父親は渋い顔をしていたがため息をついて諦めた表情をした。
「そうだな…わかった…ルークよギルドに戻りなさい。
そして今度はしっかりとギルドの為に…民の為に働きなさい。わかったか?」
「え?は、はいっ!!!」
やっと硬直から解放されたルークは嬉しそうな顔を父親に見せた。
こんな嬉しそうな顔をする息子を見るのは久しぶりかもしれないと思った。
「一応誘拐ってことだからいろいろ変装道具持ってきたのになぁ…予告状とか…」
「お前は一体何しにきたんだ…」
アレンが何処からか取りだした衣装はまっ白いスーツにマントそしてシルクハットだった。
そんな格好で誘拐などしたら逆に目立つだろうと思ってしまうが本人はいたって本気だ。
アレンとルークが笑いながら話しているとユーリがルークのそばへと近づいてきた。
「で?俺への返事はどうなんだ?」
「え?あ……そんなの…決まってるだろ………よろしくな…相棒…だけじゃないか…」
少し照れながらもユーリに笑顔を見せた。
その笑顔を見たユーリはにやりと笑いルークの腰に腕を回し自分のそばへと引き寄せた。
怒りにまかせてギルド内にある自室の扉を開けたルークは
その勢いのままベッドへと飛び込んだ。
中にいたガイは毎度のことなので慣れているので
軽く笑いながらルークが寝転ぶベッドへと近づいてきた。
「今度はなんだ?また楽しみに取ってたデザートでも食われたか?」
「そんなんじゃねぇよ!!あー…もう、あいつの顔なんて見たくもねぇ!!!」
「おや、それは丁度よかったですね」
ジェイドがルーク達の部屋に入ってきたが、その顔は何故か笑顔…
この顔のジェイドは毎度よからぬことを考えている時の顔だとルークは知っている。
「な、何が丁度いいんだよ…」
おそるおそるジェイドに聞くと、笑顔でルークの質問に答えた。
「皇帝陛下より帰国命令が先ほどありました。ですので来週このギルドを脱退し
ライマ国へと帰ります。」
「え…?」
嬉しいはずなのに、何故か頭を鈍器で殴られたような気持ちになった…。
罪×素直×告白
明日は本国ライマ国へ帰る日。
ルーク達最後の夜ということもあって、ギルドの食堂で送別会が盛大に開かれた。
ティアとナタリアは仲良くなったエステル達と別れを惜しみ、
アッシュはティトレイなどからの一方的な友情の別れに付き合い、
ガイは今まで女性陣とあまり話していなかったせいか
ここぞとばかりに女性に囲まれ、
アニスは何だかんだ言って仲良くなったちびっこ達と笑い、
ヴァンは大人の付き合いをし、
ジェイドは相変わらずだがどこか寂しそうで…
皆それぞれ思い思いにギルドのメンバー達との最後の交流をしている。
そんな中ルークはただ一人暗い展望室でバンエルティア号から見える夜景を楽しんでいた。
そこへ誰かが展望台に上がってくる音がした。
ガイが心配して探しに来たのかと予想したがルークの予想は外れ、
展望台に上がってきたのはユーリだった。
「よう、お坊ちゃん。こんなところで何してるんだ?
アレンのやつが泣き顔で探しまくってたぜ。」
「もう少しだけ…ここにいたい…」
「…わかった。」
ユーリのことだから何かつっかかってくるかと思ったが、
今日のユーリは変だった…いや、ユーリの様子が変なのは
ルークの帰国が決まってからだ。
鈍感と周りからいつも言われるルークが気がつくのだから相当様子がおかしい。
「隣…いいか?」
「あぁ…」
ルークの隣に静かにユーリが座った。
何か話かけてくるかと思ったが特に何も話かけてはこなかった。
前だったら断りもなく隣に座ってきて口喧嘩をしたはずなのに…
出会ってからこの二人にはなかった沈黙が生まれる。
その沈黙を破ったのはルークの方だった。
「お前は…まだしばらくギルドにいるのか?」
「あぁ…エステルがまだ帰らないって言ってるからな…」
「そっか…」
そしてまた沈黙が生まれる。
自分達はこれほど会話が下手くそだったか?と疑問に思ってしまうくらいの沈黙だった。
次に居心地の悪い沈黙を破ったのはユーリだった。
「国に帰ったら…王位を継ぐのか?」
「さぁな…アッシュと俺どっちが継ぐのかまだ正式に決まってねぇし…
選ばれたら……………継ぐ……………」
「歯切れが悪いな。迷ってるのか?」
「………………………そろそろ…食堂に戻るか。」
ユーリの質問には答えずルークが立ちあがろうとした時、
ルークの腕をユーリが掴んで行くてを阻んだ。
「な、何だよ…」
ユーリの顔を見ると今までみたことのない真剣な表情でルークを見つめていた。
そんなユーリの姿に頬を少し赤く染めた…
ユーリが女性達から人気がある理由がなんとなくわかる。
「なぁ、ルーク…もし迷っているなら………………」
何かを言いかけたがユーリがその言葉を口に出さずに自分の心に押し込め、
それと同時に掴んでいたルークの腕も離した。
「悪い…何でもない…今のは忘れてくれ…」
「な、何だよそれ…最後まで言えよ」
「俺の我儘でお前の人生狂わせるわけにはいかないからな。」
「俺だっていっぱい我儘言ってるんだから言えよ」
ルークが拗ねた表情でユーリを睨みつけると
ユーリは少し困った顔をしながら笑った。
「お前のは本当の我儘じゃねぇよ…ただ人と関わり合いを持つために言ってるだけだ。」
「は?」
そんなこと言われるのは初めてだった。
周りからはいつも「お前は我儘だ」といわれていたのに…
やっぱりユーリの様子は変だ。
いつもならこんなこと言うはずないのに…
「王族って立場を考えて行動するのはいいが…たまには自分の気持ちに素直になれよ…」
そういうとユーリは展望台を降りた。
一人取り残されたルークは何が何だかわからなくなっていた…
「何なんだよ…ユーリの馬鹿…自分の気持ちって…俺は王族なんだから…そんなのできねぇよ…」
まさかギルド最後の夜にこんな悲しい気持ちになるとは思ってもいなかった。
ルーク達がギルドを脱退して数日が過ぎた。
ギルド内は少し寂しい雰囲気を漂っていたが、少しずつ元の空気に戻りつつあった。
約二名を除いては…
「ユーリまたケーキ焦がしたんだって?エステルが心配してたよ」
「アレンこそダンジョンでまた迷子になったんだろ?カノンノが心配してたぞ」
二人で顔を見合わせると同時にため息がでた。
二人が居るのはバンエルティア号の甲板。
風が気持ちよく吹いているが、今の二人にはそんな風も心に開いた傷を開かせる材料でしかなかった。
ルーク達が居なくなってずっと調子が戻らない二人とはユーリとディセンダーのアレンだった。
アレンはルークとまるで本当の兄弟のように仲が良かったから仕方がない。
ユーリも出会えば口喧嘩ばかりしていたが何だかんだで仲は良かった……かもしれない。
「なぁユーリ…ルークが王様になったら会えないのか?」
「王様と一般市民じゃ無理だな…」
「つまんねぇ…」
ずっとルークと一緒に居たせいか最近純粋無垢だったこのディセンダーの口調はだんだんルークに似てきた。
何も知らなかったから学習能力が高いのか…ただたんに影響を受けやすいだけなのかは定かではない。
「なぁ、ユーリ…」
「今度は何だよ…」
「前ユーリが言ってたけど…罪って一度犯すのも二度犯すのもたいして変わらないんだよな?」
「……………確かに」
どことなく死んでいたユーリの瞳が以前のように輝きを取り戻した。
「俺らしくもなかったな…やっぱり人生我儘に行くか。お前も行くか?」
「行く!!!」
二人はニヤリと笑い何か打ち合わせをするために甲板を後にした。
ここはライマ国にある豪華な屋敷の一室。
ルークはこの城に戻って来てから一歩も外へ出してはもらえなかった。
そう、それはギルドに入る前と同じ状況…
戻ればこの生活になると分かっていたが、心のどこかで違う希望を抱いていた。
こんな生活をしていたらギルドにいたころの生活がとても懐かしく思えてくる。
ギルドのメンバーは今頃どうしているのだろうか…
アンジュは相変わらず体重を気にしているのだろうか…
ロックスは相変わらず忙しそうなのだろうか…
アレンは相変わらずギルドの仕事に追われているのだろうか…
ユーリは………
ユーリのことを思い出すとあの日の夜のことを思い出す。
彼は自分に何を伝えたかったのだろうかと…
自分の気持ちに正直に生きたいと思う反面、王位を継ぐ可能性のある者としてそれはどうなのかと…
今までの自分ならば王位などどうでもよかっただろう。
だけど、あのギルドに関わってから少し自分の考えが変われるようになった気がする。
そんなことを考えながらルークの部屋から見える空を見上げていると、
部屋の扉をノックする音が聞こえた。
軽く返事をすると扉が開きそこには一人のメイドが立っていた。
「ルーク様。旦那様がお呼びです…至急来るようにとのことです。」
「あぁ…わかった。」
ついに来たか…とつぶやいた。
今日はアッシュとルークどちらが王位継承者になるか決める日だった。
ヴァンを交えて今日決定される予定だ。
呼ばれればすぐに父親の元へ行ける準備はできていたので、
すぐに自分の部屋を出てメイドの前を通りすぎた。
呼びに来たメイドはルークのすぐ後ろを付いてくる。
分厚い眼鏡をかけていたので顔はよく見えなかったが記憶が確かならば話をしたことがないメイドだ。
ルークが旅に出ている間にメイドもかなり入れ替わっていたので知らない顔がいるのは当たり前だった。
馴染みのメイドが少なくなるのはとても寂しい気分になってしまう…
父親が待つ大広間に着いたルークは扉をノックして部屋に入った。
部屋にはすでにアッシュ、ナタリア、ガイ、ヴァンそして父親が居た。
アッシュのそばには顔なじみではないメイドが一人立っていた。
多分こちらも自分達が旅に出ている間に入ったメイドなのだろう…。
着いてきたメイドに案内されてルークが席につくと父親の口が動いた。
「では…これより王位継承について話を始める。」
「はい。」
「……はい。」
ここでついに正式な王位継承が決まる。
もしルークが第一王位継承者になれなくとも王族して窮屈な生活があるのは変わりはない。
ギルドの居たころのように自由にはなれない…アドリビトムのように…
「ヴァン…この度の旅を通じてこの二人はどう思う?」
「はい。アッシュにはもともと王位継承者として素質や気品など取り揃えておりました。
旅をしてそれが磨かれております。しかし、ルークもなかなかのものです。
最初は王位継承者として失格でしたが、ギルドに入り多くの仲間と関わりを持ってからは変わりました。
アッシュにはない王位継承者としての何かを持っております。
私は二人でこの国を支えて行くべきではないかと…」
ヴァンにほめられたことで少し嬉しく思うルークだったが、
今は心から喜べる気分にはなれなかった…。
アッシュと二人で…そんなこと今の自分に可能なのだろうか…
「アッシュお前は今後どうしていきたい?」
「私は………」
アッシュはスラスラと自分の今後王族としてどうしていきたいかを父親に述べていった。
今のルークに今後のことなんて言える状況ではなかった…。
「ルーク…お前は今後どうしていきたい?」
「お…いや、私は………」
言葉に詰まった。
アッシュと同じように王族としてどうして行きたいかを述べるのが正しい
と頭ではわかっているが…自分の心にはどうしても捨てきれないものがあった。
どうすればいいかわからなくなって来てしまった…
その時どこからか声が聞こえた。
「自分の気持ちに素直になれよ…」
そう、その声の主はここに居るはずのない彼…ユーリの声だ。
ユーリが最後にルークにかけた言葉…
ここに居るはずのないユーリの声…幻聴だろうが無性に彼がそばに居てくれている気がした。
そんな気がするだけでとても心強い。
ルークは父親の目をしっかりとみつめゆっくりと口を開いた。
「私は……王位を継ぐ資格はありません。ですので私は王位継承を辞退します。」
「なっ…!!!」
「まぁ…ルーク…」
一番驚いたのはアッシュとナタリアだった。
ヴァンとガイは予想をしていたのかあまり驚いた表情は見せなかった。
「王族を捨ててどうするつもりだ?」
父親が静かにルークへ聞いた。
「ギルドに…アドリビトムに戻ります。まだ世界の混乱は終わっていません…
王になって民を守ることも大切ですが、もっと身近で守りたい…貴族として育った私だからこそ
できることがあると思うのです。」
「お前があのギルドに戻りたいと思うのは勝手だが…あのギルドの者たちがお前を歓迎するのか?
あまり熱心に仕事をしていなかったようだし、
我儘で傲慢な性格のお前なんて居なくなって安心してる人のが多いのではないのか?」
「そ、それは………」
確かに自分のギルド内での生活は我儘で傲慢なことだらけだった。
もしかしたらルークが居なくなって喜んでいるメンバーがほとんどかもしれない…
そんなところに戻っていいのか…?と不安が押し寄せてきた。
「戻って歓迎される保証もないところに戻りたいとはよく言ったものだな…それだからお前は…」
「そんなに保障がみたいなら見せてやるよ」
声の主はルークを迎えにきたメイドだった。
メイドはルークの真横にくるとかけていた分厚い眼鏡をはずし結っていた髪を下ろした。
その顔はルークにとって忘れたくても忘れられない顔だった。
「だれだお前は…」
「俺か?俺はアドリビトムのメンバー…ユーリ・ローウェルだ」
かっこよく名前を言って決めているが…きている服はメイド服…いまいち格好がつかない。
しかしよくお似合いです。
「え?ちょ…ユーリ…!!!何でここに!?」
「お前を誘拐しに来たんだよ。お前に伝えたいこともあったしな」
「え?」
「我が屋敷に不法侵入するとは…罪は重いぞ?」
バタバタバタと武器を持った兵士達が入口から入ってきて、周りを取り囲んだ。
本来ならばピンチのはずだが…何故かユーリは余裕の表情だった。
「別にいまさら罪の一つや二つ犯しても変わりはしないさ。」
「根性はあるようだな…流石一人でファブレ家に乗り込んできただけのことはある」
「だーれが一人で乗り込んだだって?こっちにはすっげーつよい味方がいるんだよ」
ユーリの瞳がアッシュの後に立っていたメイドの方に視線が動いた。
視線を感じたメイドは被っていたカツラを外した。
その姿はいつも自分の隣にいた英雄だった…。
「え…な…あ、アレン!?」
「えへへ…ユーリと一緒に来ちゃった」
まるでどこかの遊園地に遊びに来ましたというノリのディセンダーである。
「ようお前ら…このチビのことしってるか?こいつはこのルミナシアのディセンダーだ。
ディセンダーに勝てる腕のやつこの中にいるか?」
ユーリをとらえようとしていた兵士達がアレンの姿を見て後に下がりだした。
ディセンダーの話はこの世界では誰でもしっている話だから勝てるとは思う人など居なかった。
兵士達の代わりにユーリの前に出た者が居た…それはルークだった。
「ユーリ…お前馬鹿だろう!!!父上を敵に回したらライマ国を敵に回すようなもんだぞ…それなのに…」
「あたりだ。俺は馬鹿だよ…馬鹿だからこんなことするんだ…俺はなルーク…
お前の為ならライマ国くらい敵に回してもいいと思ってここに来たんだ。」
その言葉を聞いてルークの顔が真っ赤になった。
ルークを真っ赤にさせたユーリはそんなこと気にもしていないのか口をまた動かした。
「この前言えなかったことだが…ルーク、ギルドに戻ってこい。そして俺の相棒に…いや…
それだけじゃない…俺と付き合ってくれ。」
「えええぇっ!!!!???」
驚きのあまりルークはまるで金魚のように口をぱくぱくしたまま動かなくなった。
心配したアレンがファーストエイドをかけたがルークはもとに戻らなかった。
「ははははっ…もうこれはルークはギルドに戻るべきですな。
こんなにも愛されているのですから」
今までだまっていたヴァンが父親に話しかけた。
父親は渋い顔をしていたがため息をついて諦めた表情をした。
「そうだな…わかった…ルークよギルドに戻りなさい。
そして今度はしっかりとギルドの為に…民の為に働きなさい。わかったか?」
「え?は、はいっ!!!」
やっと硬直から解放されたルークは嬉しそうな顔を父親に見せた。
こんな嬉しそうな顔をする息子を見るのは久しぶりかもしれないと思った。
「一応誘拐ってことだからいろいろ変装道具持ってきたのになぁ…予告状とか…」
「お前は一体何しにきたんだ…」
アレンが何処からか取りだした衣装はまっ白いスーツにマントそしてシルクハットだった。
そんな格好で誘拐などしたら逆に目立つだろうと思ってしまうが本人はいたって本気だ。
アレンとルークが笑いながら話しているとユーリがルークのそばへと近づいてきた。
「で?俺への返事はどうなんだ?」
「え?あ……そんなの…決まってるだろ………よろしくな…相棒…だけじゃないか…」
少し照れながらもユーリに笑顔を見せた。
その笑顔を見たユーリはにやりと笑いルークの腰に腕を回し自分のそばへと引き寄せた。
それから数カ月後…
アドリビトムにはとても優秀な3人組のチームがあるとの噂がながれた。
彼らはどんな難易度の高い依頼も難なくこなすチームらしい…
だが…
「っておい誰だ寝ていたボスを起こしたのは!!!!」
「間違えて尻尾踏んじゃった」
「俺はただその様子を見ていただけだ」
「このあほディセンダー!!!そんなんで世界守れるのかよ!!!
ってかユーリお前も見てるならとめやがれ!!!」
「やっぱり髪長い方がルークらしいよ」
「全くだ…短いのもいいが長くないと髪の毛にキスできないだろ」
「うっせーぞこのエローウェル!!!短くてもところかまわずキスするだろうが!!
ってかぐだぐだ言ってないでにげろおおおおおおおおおおおお!!!」
「へいへい。」
「やっぱりルークといると楽しいね」
こんなやりとりを見ていると依頼者は不安になるが、
どんな依頼でも解決してしまうのでアドリビトムには彼らへの依頼が絶えなかった。
アドリビトムにはとても優秀な3人組のチームがあるとの噂がながれた。
彼らはどんな難易度の高い依頼も難なくこなすチームらしい…
だが…
「っておい誰だ寝ていたボスを起こしたのは!!!!」
「間違えて尻尾踏んじゃった」
「俺はただその様子を見ていただけだ」
「このあほディセンダー!!!そんなんで世界守れるのかよ!!!
ってかユーリお前も見てるならとめやがれ!!!」
「やっぱり髪長い方がルークらしいよ」
「全くだ…短いのもいいが長くないと髪の毛にキスできないだろ」
「うっせーぞこのエローウェル!!!短くてもところかまわずキスするだろうが!!
ってかぐだぐだ言ってないでにげろおおおおおおおおおおおお!!!」
「へいへい。」
「やっぱりルークといると楽しいね」
こんなやりとりを見ていると依頼者は不安になるが、
どんな依頼でも解決してしまうのでアドリビトムには彼らへの依頼が絶えなかった。
落ちて行く人
落ちて行く動物
落ちて行く建物
落ちて行く大地
落ちた先にはまた別の広がる大地
俺は多くの人をこの手で…
コロシテシマッタ…
苦しい…クルシイ…
タスケテ…助けて…
誰か…ダレカ…
ヨゴレタ紅カラタスケテ…
「っは…はぁ…はぁ…ゆ、夢…?何て…悪夢だ…」
悪夢にうなされて目が覚めた。
今何時なのだろうか…汗で身体が気持ち悪い…
まだ夢の中なのだろうか…
ここは…自分が使っている部屋…
どうやら現実の世界に戻ってきたようだ。
けれど、ガイの姿を探しても何処にも見当たらない。
今何時何だろう…
時計を探そうと手を伸ばした時、異変に気がついた…
自分の手に付いていたのは、
そう…真っ赤な……… 。
【赤×黒】
真っ赤に燃える長い髪を風にたなびかせ、
バンエルティア号の甲板に一人佇むルークの姿があった。
いつもはこの場所にいるはずの氷の精霊の姿も何故か見当たらない。
甲板にはただ一人だけ…一人でいると心が悲しくなるような場所だったが、
今のルークにとってはそれは好都合だった。
ここ数日悪夢にうなされあまりよく眠れていない。
自分が多くの人々の命を奪ってしまう夢…
そして、仲間達と旅をする夢…
最後に来るのは何かを解放し、
自分が生きる意味を知って消えていく夢…
ただの夢と思えばそれでいいが、
何故かとても現実的で…自分が本当に体験したような実感がわいてしまう。
王家第一継承者のルークが今までそんな経験などしたことがないのは分かり切っているはずなのに
何故か無性に気になってしまう。
気になって…気になって…眠れない…無償に泣いてしまう。
こんなみっともない姿をギルドのメンバーに見られるのは嫌なので、
甲板にでて涙が止まるのを待つのが日課になっていた。
今日もまた涙が止まるのを待っていると、強い風が吹きルークの髪をなびかせた。
「今日は風が強いな…そんな天候なのか?」
船内の方からチャットが放送で何かを言っているのが聞こえたが、
今のルークにその声は届かなかった。
ルークに今届くのは
空に浮かぶバンエルティア号から見えるどこまでも続く大地…
そして、世界樹…。
夢ではこの大地を自分が壊してしまう…
何故自分はそんなことを夢の中でしてしまったのだろうか…
考えてもわからない…わかりたくもない…
考えれば考えるほど涙が止まらなくなってくる。
いろいろと考えているとまた涙が止まらなくなってきてしまった。
仕方がないので手で涙を拭いていると、後ろから人の気配がした。
「おい、お坊ちゃん…何でこんなところにいるんだ。」
顔だけ振り向くとそこには漆黒の青年…ユーリがいた。
今は人に会いたくなのに…泣いている姿なんてみせたくないのに…
「な、何だよ…何か用か?用がないならあっちいけ…」
泣いているのがばれないようにルークはユーリに向けた顔を
ユーリから逆の方に顔をむけた。
顔は見えないがユーリがため息をつくのが音でわかった。
「はぁ…何を拗ねているんだ?いいから船内に戻れ」
「やだ…お前うぜぇーんだよ…あっちいけ…」
「はいはい、俺がうざいのはわかったからとにかく船内に…」
ユーリはルークを無理に船内へと連れていこうと肩を掴むが、
ルークが反射的にその手を強く払いのけそしてユーリを睨みつけた。
「いてっ…お前何す…お前…泣いてるのか?」
「五月蠅い!!俺が泣こうが何処にいようが勝手だろ!!いちいちかまうn…」
ユーリを怒鳴りつけている時、バンエルティア号がゆらりと大きく揺れた。
甲板の一番端にいたルークはその揺れで身体が大きく揺れバランスを崩し、
自分の甲板から身体が外へ落ちて行くのが身体で感じた。
ゆっくりと落ちて行く身体…
自分が壊してしまった大地もこんな風に落ちていくのかと思っていた時。
ルークの身体は途中で落ちるのをやめた。
甲板を見るとユーリが必死になってルークの腕をひっぱり、
甲板から落ちそうになっているルークの身体を止めていた。
「っく…世話かけさせるんじゃ…ねぇ!!!」
ルークの身体を強くひっぱり落ちかけた身体を甲板へと戻した。
その反動でルークはユーリの腕の中へもぐりこむ体制になってしまった。
「ったく…チャットが放送で言ってたの聞こえなかったのか?
風が強くて危ないから甲板には出ないでくださいって放送…
放送鳴ってるのに甲板にずっといるお前の姿見て
あわてて走ってきてやったんだからな」
「放送…?俺そんなのしらねぇ…」
よく思い出してみればチャットの放送が聞こえていたが、まったくルークの耳には届いていなかった。
「………放送…聞こえてなかった…わるい…それと…あ、ありがとう…」
ユーリは目を丸くして自分の腕の中にいるルークを見た。
あのギルドで一番素直じゃないルークが素直にお礼を言ったのだから、
ユーリが驚くのも無理はなかった。
「で?何で泣いていたんだ?お前最近ちゃんと寝れてないだろ?
ガイが心配してたぞ」
「夢で…うなされて…寝れない…」
素直すぎるルークを拝める日が来るとは思っていなかったユーリは
もしやこれは夢ではないかと思い、自分の頬を引っ張った。
だが、痛かったのでこれは夢ではないことが確認できた。
「どんな夢だ?」
「…言いたくない。」
「言いたくないのなら言わなくていいさ」
優しくルークを抱きかかえるように肩に手を置くと、ルークの身体が一瞬だけ震えた。
「俺…汚れてて…真っ赤に汚れてて…けど落ちなくて…」
ルークの表情は前髪が邪魔してよく見えなかったが、
声で相当ルークが追い詰められていることがわかる。
ため息をついたユーリはルークの頬に優しくキスをし耳元で優しく声をかけた。
「真っ赤に汚れているなら…俺も一緒に汚れてやるよ…知ってるか?
赤と黒は混ぜても黒にしかならないんだぜ?」
その言葉でルークの身体がまた震えた。
震えながらユーリの背中に手を回すと強く…強く抱きつき、そして静かに泣き始めた。
ルークの頭を優しくなでながら、ユーリは空を見上げた。
見上げた空は何処までも澄んだ蒼い色が続いている。
早く自分の腕の中で泣いている青年の心がこの空のように澄んだ心に戻ってくれることを願いながら…
「ローレライを解放する…」
ローレライの剣と宝珠でローレライを解放すると
エルドランドが崩れ始めた…
ここで自分の短い人生が終わるのだと悟った。
この旅でやっと自分の生きる意味を見つけた。
レプリカである自分の生きる意味を…
目を閉じて浮かぶのは…旅をした仲間達、同じ顔の青年、父上母上…旅でであった人達、
そして…
漆黒の青年…
名前も知らない…会ったことはないはずなのに…
なぜか無性に愛おしく思えるその姿。
何故彼の姿が目に浮かぶのかはわからない。
ただ…ひとつだけ思うのは…
もしも、生まれ変わったら…漆黒の青年と……………。
そう願いながらルークの身体は消えていった。
落ちて行く動物
落ちて行く建物
落ちて行く大地
落ちた先にはまた別の広がる大地
俺は多くの人をこの手で…
コロシテシマッタ…
苦しい…クルシイ…
タスケテ…助けて…
誰か…ダレカ…
ヨゴレタ紅カラタスケテ…
「っは…はぁ…はぁ…ゆ、夢…?何て…悪夢だ…」
悪夢にうなされて目が覚めた。
今何時なのだろうか…汗で身体が気持ち悪い…
まだ夢の中なのだろうか…
ここは…自分が使っている部屋…
どうやら現実の世界に戻ってきたようだ。
けれど、ガイの姿を探しても何処にも見当たらない。
今何時何だろう…
時計を探そうと手を伸ばした時、異変に気がついた…
自分の手に付いていたのは、
そう…真っ赤な……… 。
【赤×黒】
真っ赤に燃える長い髪を風にたなびかせ、
バンエルティア号の甲板に一人佇むルークの姿があった。
いつもはこの場所にいるはずの氷の精霊の姿も何故か見当たらない。
甲板にはただ一人だけ…一人でいると心が悲しくなるような場所だったが、
今のルークにとってはそれは好都合だった。
ここ数日悪夢にうなされあまりよく眠れていない。
自分が多くの人々の命を奪ってしまう夢…
そして、仲間達と旅をする夢…
最後に来るのは何かを解放し、
自分が生きる意味を知って消えていく夢…
ただの夢と思えばそれでいいが、
何故かとても現実的で…自分が本当に体験したような実感がわいてしまう。
王家第一継承者のルークが今までそんな経験などしたことがないのは分かり切っているはずなのに
何故か無性に気になってしまう。
気になって…気になって…眠れない…無償に泣いてしまう。
こんなみっともない姿をギルドのメンバーに見られるのは嫌なので、
甲板にでて涙が止まるのを待つのが日課になっていた。
今日もまた涙が止まるのを待っていると、強い風が吹きルークの髪をなびかせた。
「今日は風が強いな…そんな天候なのか?」
船内の方からチャットが放送で何かを言っているのが聞こえたが、
今のルークにその声は届かなかった。
ルークに今届くのは
空に浮かぶバンエルティア号から見えるどこまでも続く大地…
そして、世界樹…。
夢ではこの大地を自分が壊してしまう…
何故自分はそんなことを夢の中でしてしまったのだろうか…
考えてもわからない…わかりたくもない…
考えれば考えるほど涙が止まらなくなってくる。
いろいろと考えているとまた涙が止まらなくなってきてしまった。
仕方がないので手で涙を拭いていると、後ろから人の気配がした。
「おい、お坊ちゃん…何でこんなところにいるんだ。」
顔だけ振り向くとそこには漆黒の青年…ユーリがいた。
今は人に会いたくなのに…泣いている姿なんてみせたくないのに…
「な、何だよ…何か用か?用がないならあっちいけ…」
泣いているのがばれないようにルークはユーリに向けた顔を
ユーリから逆の方に顔をむけた。
顔は見えないがユーリがため息をつくのが音でわかった。
「はぁ…何を拗ねているんだ?いいから船内に戻れ」
「やだ…お前うぜぇーんだよ…あっちいけ…」
「はいはい、俺がうざいのはわかったからとにかく船内に…」
ユーリはルークを無理に船内へと連れていこうと肩を掴むが、
ルークが反射的にその手を強く払いのけそしてユーリを睨みつけた。
「いてっ…お前何す…お前…泣いてるのか?」
「五月蠅い!!俺が泣こうが何処にいようが勝手だろ!!いちいちかまうn…」
ユーリを怒鳴りつけている時、バンエルティア号がゆらりと大きく揺れた。
甲板の一番端にいたルークはその揺れで身体が大きく揺れバランスを崩し、
自分の甲板から身体が外へ落ちて行くのが身体で感じた。
ゆっくりと落ちて行く身体…
自分が壊してしまった大地もこんな風に落ちていくのかと思っていた時。
ルークの身体は途中で落ちるのをやめた。
甲板を見るとユーリが必死になってルークの腕をひっぱり、
甲板から落ちそうになっているルークの身体を止めていた。
「っく…世話かけさせるんじゃ…ねぇ!!!」
ルークの身体を強くひっぱり落ちかけた身体を甲板へと戻した。
その反動でルークはユーリの腕の中へもぐりこむ体制になってしまった。
「ったく…チャットが放送で言ってたの聞こえなかったのか?
風が強くて危ないから甲板には出ないでくださいって放送…
放送鳴ってるのに甲板にずっといるお前の姿見て
あわてて走ってきてやったんだからな」
「放送…?俺そんなのしらねぇ…」
よく思い出してみればチャットの放送が聞こえていたが、まったくルークの耳には届いていなかった。
「………放送…聞こえてなかった…わるい…それと…あ、ありがとう…」
ユーリは目を丸くして自分の腕の中にいるルークを見た。
あのギルドで一番素直じゃないルークが素直にお礼を言ったのだから、
ユーリが驚くのも無理はなかった。
「で?何で泣いていたんだ?お前最近ちゃんと寝れてないだろ?
ガイが心配してたぞ」
「夢で…うなされて…寝れない…」
素直すぎるルークを拝める日が来るとは思っていなかったユーリは
もしやこれは夢ではないかと思い、自分の頬を引っ張った。
だが、痛かったのでこれは夢ではないことが確認できた。
「どんな夢だ?」
「…言いたくない。」
「言いたくないのなら言わなくていいさ」
優しくルークを抱きかかえるように肩に手を置くと、ルークの身体が一瞬だけ震えた。
「俺…汚れてて…真っ赤に汚れてて…けど落ちなくて…」
ルークの表情は前髪が邪魔してよく見えなかったが、
声で相当ルークが追い詰められていることがわかる。
ため息をついたユーリはルークの頬に優しくキスをし耳元で優しく声をかけた。
「真っ赤に汚れているなら…俺も一緒に汚れてやるよ…知ってるか?
赤と黒は混ぜても黒にしかならないんだぜ?」
その言葉でルークの身体がまた震えた。
震えながらユーリの背中に手を回すと強く…強く抱きつき、そして静かに泣き始めた。
ルークの頭を優しくなでながら、ユーリは空を見上げた。
見上げた空は何処までも澄んだ蒼い色が続いている。
早く自分の腕の中で泣いている青年の心がこの空のように澄んだ心に戻ってくれることを願いながら…
「ローレライを解放する…」
ローレライの剣と宝珠でローレライを解放すると
エルドランドが崩れ始めた…
ここで自分の短い人生が終わるのだと悟った。
この旅でやっと自分の生きる意味を見つけた。
レプリカである自分の生きる意味を…
目を閉じて浮かぶのは…旅をした仲間達、同じ顔の青年、父上母上…旅でであった人達、
そして…
漆黒の青年…
名前も知らない…会ったことはないはずなのに…
なぜか無性に愛おしく思えるその姿。
何故彼の姿が目に浮かぶのかはわからない。
ただ…ひとつだけ思うのは…
もしも、生まれ変わったら…漆黒の青年と……………。
そう願いながらルークの身体は消えていった。
~ユリルク~
とある中庭で少女が一人ティータイムを楽しんでいた。
その少女の髪はピンク色をしており、毛先まで綺麗に揃えられており品の良さが伺える。
そんなティータイムを楽しんでいる少女のそばに一人の青年が近づき声をかけた。
声をかけられた少女は青年の顔を見ると、優しく微笑んだ。
「こんにちわ、ユーリ。何か御用です?」
「あぁ…ちょっとエステルに頼みがあってな。」
ユーリと呼ばれた青年は何かを企んでいるような笑顔をエステルに見せた。
「ふふっ…ユーリ、悪戯はほどほどにしてくださいね。どんな頼みです?」
あまりよろしくない事を考えているのを分かっているにも関わらず
自分の頼みを聞き入れてくれるエステルの心の広さには毎回感動を覚えてしまうユーリだ。
いや、エステル自身が少し楽しみにしているだけなのかもしれないが…
「確か今度の日曜日に、アビス学園高等部の生徒会長とお茶会の予定だったよな?」
「はい。我が学園でお茶会の予定ですが…それが?」
「実はそのお茶会に是非呼んで欲しいやつがいるんだ。」
「?」
車の窓から見えるのは豪華に装飾さえた大きな門。
そしてその左右に何処まででも続くまっ白い壁。
自分が通う学校の広さにも入学当初は驚いてしまったが、
ここの広さは桁が違っていた…むしろ同じ国なのかと聞きたくなるほどだ。
「まぁ、ルークったら。そんな大きな口をあけて、みっともないですわよ」
校門の大きさに感動して口が開きっぱなしになっていたルークを、
幼馴染であるナタリアが優しく注意をする。
ルークは慌てて開いたままの口を閉じると照れた表情でナタリアに話しかけた。
「だって、すっげーでかい校門に驚いちまって…アッシュも来たらよかったのに…」
「仕方ありませんわ。アッシュは招待されてませんもの…」
ナタリアが鞄から取り出したのは二枚の招待状。
一枚はアビス学園高等部生徒会長であるナタリアへ届いたモノ。
そして、もう一枚はルークに届いた招待状だった。
「アッシュがいくら付いて行くと言い張っても、この招待状がなければセイント・ヴェスペリア学園には入れませんわ」
古くからアビス学園とセイント・ヴェスペリア学園は交流は良く、
生徒同士のお茶会なども毎年数多く実施されていた。
そして今日は前々からセイント・ヴェスペリア学園の生徒会長と
アビス学園の生徒会長とのお茶会の約束だったが、何故か急にセイント・ヴェスペリア学園側から
生徒会ではないルークも招待されてしまった。
「何で俺まで招待されたんだろうなぁ…?アッシュは不信感丸出しで行くなって言うし…」
生徒会のメンバーだから一緒に招待されるのならまだわかる。
けど、ルークは生徒会メンバーではない…ましてや向こうの生徒会長とも面識など一切なかった。
ルークに招待状が届いてからずっとアッシュが機嫌を悪くしている。
挙句の果てには何故か行くなと言いだしてしまったからルークも困り果てていたが、
幼馴染であるナタリアがアッシュを説得し、なんとか今日お茶会に出席できるようになった。
出かける際もそれが原因で喧嘩をしてしまった…帰ったら謝ろうと思いながら
セイント・ヴェスペリア学園内の景色を見ていた。
「先日の剣道部の試合のお話を詳しく伺いたいみたいですわ。
セイント・ヴェスペリア学園の生徒会長であるエステルさんにはルークとアッシュの話は
何度かしておりましたから」
「ふーん…」
先日の助っ人で駆り出された剣道の試合…
自分の平凡な学生生活が終わってしまった試合でもある。
あいつに出会わなかったら自分は変な通称で呼ばれることはなかったのに…
そう思いながら黒髪の王子の姿を思い浮かべる。
「けど、ルーク。その髪型とてもお似合いですわよ。普段からそうなさったらいかが?」
普段は腰くらいまである髪も特に手を加えず下ろしたままだったが、
今日は招待されているとのことでナタリアに無理やりポニーテールにされてしまった。
「そうか…?俺この髪型好きじゃないなぁ…括るのに慣れてないから痛いし…それに…」
今日出かける前に見送りにきたガイの言葉を思い出した。
ポニーテールにしているのを指摘され、カッコイイなとか言ってくれると思っていた…
が、ガイからでた言葉は全く違っていた。
『その髪型にしてると、どっかのボー○ロイドみたいだな』
『なっ…は、腹切れきさまあああああああああああっ!!!!』
予想外の言葉だった為、怒りにまかせて回し蹴りでガイを壁の中へ埋め込んでしまった。
朝から無駄な体力を使ってしまったと心から思っている。
そうこうしているうちに車が止まった。
どうやら目的地についたようで車を降りると、
校舎の中からピンク色をした髪の少女が笑顔で出迎えた。
「ようこそいらっしゃいました。あなたがルークさんですね?」
「あ、はい…えっと。この度はご、ご招待いただきまして誠にありがとう…ございます。
おれ…じゃない、私はルーク・フォン・ファブレと申します。ルークとおよびください…」
慣れない丁寧な言葉を使っていると、迎えてくれた少女はにこりと笑った。
「ご丁寧にありがとうございます。私はセイント・ヴェスペリア学園生徒会長をしています
エステリーゼ・シデス・ヒュラッセインです。みんなからはエステルと呼ばれています
どうぞ、話しやすい言葉でお話ください。」
「あ、ありがとう…その…えっと…エステル?」
エステルと呼ばれた少女はルークに微笑むと、お茶会の会場まで案内をしてくれた。
ナタリアとエステルはすでに何度か会っているので、お茶会の会場まで二人で何やら会話をしている。
取り残されてしまったルークは校舎の廊下をきょろきょろと見まわし
ある人物を探していたが、その人物はどこにも見つからなかった。
(まぁ、俺が来ること言ってないし…しょうがないか)
案内されたお茶会の会場は中庭が見渡せるテラスのようなところで、自分達以外は誰もいなかった。
用意されていた椅子に座っていると、カラカラと台車の音が聞こえてきて誰かが運んできてくれた。
ここの学園の制服を着ているので、多分生徒会のメンバーの誰かなのだろう…
その青年はルークの目の前に美味しそうなケーキを一つだした…もちろん、一緒に出された紅茶もいい香りがしている。
「うわっ…すっげー美味そうなケーキ…」
「ルーク…お行儀が悪いですわよ」
「だ、だって…」
育ち盛りなルークは紅茶より、お腹にたまるケーキの方に興味がいってしまう。
「うふふ…どうぞ遠慮なく食べてください。他にも種類がありますからね」
「じゃぁ、お言葉に甘えて…頂きます」
一番最初に出されたのはシンプルなショートケーキだったが、
食べてみると普通のショートケーキのはずなのにとても美味しかった。
今まで食べたショートケーキの中で一番美味しい。
「うわっ…このショートケーキめちゃくちゃ美味しい…生クリームもすっげーバランスよく甘くておいしい…」
幸せそうな顔をして食べるルークの姿を見てエステルは少し笑ってしまった。
「ルークに喜んでいただけて作った彼も喜んでいるみたいです。ところでルーク…ユーリとの対戦どうでした?」
「ふぇ?」
いきなりの話題にルークは間抜けた声を出してしまった。
ナタリアに睨まれてしまったが、出てしまったものはしょうがない…はずだ。
「どうって…あいつすっごく強いってのがわかった…アッシュが対戦しても…勝率五分五分じゃないかな?
俺が勝てたのは本当に奇跡に近いよ…まぁ、勝ってしまったおかげであんな変な通称つけられちゃったけどな…」
「『紅き鎧の姫』です?よく似合っていると思うんですが…ユーリも自分が王子と呼ばれることに不満はある見たいです。」
先ほどケーキと紅茶を運んでくれた青年が少なくなったエステルのカップに新しい紅茶を入れる。
エステルが小さくお礼を言うとルークにまた頬笑みかけた。
「俺は男だから姫じゃねぇのに…まぁ、あいつが王子って呼ばれるのは…俺は似合ってると思うけどな
カッコイイし…背も高いし…強くて優しいし…女子とかにすっげー人気ありそう…男の俺からみてそう思うから
やっぱりカッコイイんだと思う…あ、この話ユーリには内緒な」
こんな話ユーリに聞かれたら恥ずかしくて死んでしまいそうになる。
多分ユーリのことだからこの話を聞けばいろいろとめんどうなことになるのも分かっていた…
知り合ってまだ日は浅いはずなのに、何故ここまでわかるようになったかが不思議だ。
「ふふ…わかりました。私は彼にはお話しません…けど、私が話しなくても彼は知ってしまっていますよ」
「え????」
エステルの言っている意味が理解できないルークであったが、すぐにその意味を理解できた。
「へー…愛しい俺のお姫様にそんな風に思われてたとか…感激だな」
ケーキと紅茶を持ってきた青年の声には聞き覚えがあった…
おそるおそる青年の顔を見ると青年の顔は先日試合をした人物であった。
「な、ななななななっ…ユーリいいいいいいいいいいぃ!!!!!!!!!!!!!!」
「ようやく気がついたか…気がつくの遅いんだよ。まぁそのおかげでいいモノ聞けたけどな」
顔を真っ赤にさせたルークが立ちあがって反論をしようとしたとき、
膝がテーブルに当たってしまい自分の紅茶が自分の制服にかかってしまった。
「あちっ…あ、ご、ごめん…俺…」
「おいおい、大丈夫か?そんな照れなくても…」
少し呆れた声でルークの制服についた紅茶をユーリが拭こうとしたが、
ルークが恥ずかしがって拭かせてくれなかった。
「いいよ、家帰って洗濯すれb…」
「ダメですわ。今すぐ着替えないとシミになりますわよ」
「いや、でも…」
ここは自分の通う学校ではない。
自分の教室に行けばジャージなどに着替えることができるが、あいにく他校に着替えを持ってくる
ような性格ではない。むしろ普通は持ってこないが…
「じゃぁ、今すぐ洗濯すればいいんです。洗濯している間はユーリの服を借りればいいんです」
「そいつは名案だな…よし、まぁ行くか」
「え?ちょ、何するんだえぇえええええええええ!!!??」
そういうとユーリはルークを抱きかかえると素早い動きでお茶会の会場を後にした。
「こういうのって誘拐っていわないか?」
「本人の同意があればいわねぇよ」
「俺は同意してねぇ!!!!」
「そうだったか?」
ルークが連れてこられたのは学園内になる寮の一室。
表の表札にはユーリの名前だけがあったのでユーリの使用している部屋ということがわかる。
連れて来られてすぐにベッドに放りだされ、ユーリに服を脱がされかけたが
さすがのルークも身の危険を感じユーリの隙を見て備え付けられているシャワールームに逃げて汚れた制服を脱いだ。
汚れた制服はすぐさま学園内にあるクリーニング屋に出されて、すぐ出来上がるとのことだった…
次元がいろいろと違いすぎる学園である。
流石に下着一枚でいるのは嫌だったので、大人しくユーリの服を借りたが…
少し大きくて何故か不愉快な気持ちになってしまった。
「うぅ…やっぱり少しでかい…いいよ。いつか追いぬいてやるから」
「無駄なあがきはやめとけ。それより火傷とかはしてないか?」
よくよく考えてみれば、紅茶が身体にかかったのだから軽い火傷などしてても可笑しくはないが
先ほど制服を脱いだ時そのような怪我はなかったので多分大丈夫だろう…
「えっと…大丈夫だよ。…多分」
「多分…?信用できないな」
「へ?ちょ…!!!!」
腕を引っ張られいきなりベッドの上に転がされ上に乗られた。
抵抗しようにも手は頭の上でしっかりと握って固定され、足を動かそうにも自分の上に乗っているユーリの足が邪魔で
思うように動かすことができない。俗にいう絶対ピンチというやつだ。
「おい、ユーリ!!!何しやがる!!!」
「俺が隅々まで確認してやるよ…愛しい俺のお姫さま…」
「いらない…って!!!やめっ…!!!」
ルークが何か言いかけたが、ユーリはそれを無視してルークの耳にキスを落とし
そして頬、首筋…最後に唇にキスを落とそうとしてルークの異変に気がついた。
「っひく…いやだぁ…たすけて…あ…あっしゅ…あっしゅぅ…」
ルークが泣いていた。
涙を流すルークの姿をみてユーリの心は重くなっていった。
出会ったばかりであったが、この純粋な青年といると心が温まった。
自分の物にしてもっと彼を知りたい…という感情が芽生えた
そして、まずは彼の身体を自分の物にしたらいい…心なんてあとから付いて来させればいいと思っていた。
けど、彼の涙を見て心が冷たくなっていく…彼と居るだけで温かくなれると思っていたのに…
それだけではない、今ここで彼の身体を自分の物にしても心は付いてこないことがわかった。
彼の心の中には同じ姿をした弟が今一番占領している…
自分の物にするのならやはり身も心も自分の物にしたい…そう感じた。
ユーリはルークの唇にキスを落としかけていたが、
いつまでも止まることのないルークの涙にキスをした。
「馬鹿…泣くな…お前に泣かれると困るんだよ…」
「え?」
ルークの腕を抑えていた手を離し、ベッドに寝転んでいたルークの身体を起こし優しく抱きしめた。
「ユーリ…?」
「悪かった…お前があまりにも可愛いから…つい意地悪したくなった…ごめんな」
ルークは恥ずかしそうにユーリの胸へ顔をうずめた。
その様子に少し満足そうな顔をしてユーリはルークの頭を優しくなでた。
「ユーリの馬鹿…」
「仕方ないだろ?俺の作ったケーキをべた惚れするし、俺のこともほめるし…嬉しすぎるっての」
「え?あれユーリが作ったのか?」
「あぁ…何ならまだあるから持って帰るか?」
「まじ?ありがとうユーリ!!!」
さっきまで犯されそうになった相手なのに警戒心もなくルークはユーリに抱きついた。
単純なやつ…と思いながらも今はこの距離感が一番ベストだとユーリは思った。
「あ、一つ聞きたいことがあるんだが…」
「ん?何?」
ユーリから離れてにこにことユーリの質問を待った。
「お前とアッシュってどこまでの関係だ?」
笑顔だったルークの表情が変わった…
その表情でユーリはルークとアッシュとの関係がすぐに理解できたが
あえてルークの言葉を待った。
「アッシュとの関係…?そんなの双子の弟以外ないけど?」
ルークの変った表情はユーリの質問に理解ができていません。という表情だった。
普通の人なら嘘をついているかもしれないが、嘘を付くのが苦手なルークが
こんな表情をして言うのだから多分兄弟以上の関係はない。
一つ屋根の下で暮らしているのだからチャンスなどいくらでもあっただろうに…
関係がないということは、アッシュはそんな関係に興味がないのかただの奥手なのだろうか…
アッシュのルークに対する普段の態度などを考慮すると多分後者だと結論がでた。
「いや、ないのならいいんだ…あぁ…そうだ、お前に言っておきたいことがある」
「ん?何だ?」
ユーリの口元がにやりと笑い
その表情に少し嫌な予感がするルークだった…
「俺は近いうちにお前のこと惚れさせるから覚悟しておけよ」
最初は理解できていなかったルークだが、意味がわかったとたん顔を真っ赤にさせた。
「なななな、何言ってるんだ!!!変態ユーリ!!!」
「ん?言葉のままだが?愛してるぜ…愛しい俺のお姫様…いや、ルーク…」
ユーリがルークの唇にキスをするとルークの顔はますます赤くなった。
「な、何するんだよ!!!俺初めてなのに!!!俺のファーストキス返せ!!!!」
「何だ、初めてだったのか…だったらいいもん貰ったな」
「ユーリの馬鹿!!お前なんか大嫌いだああああああああ!!!!」
ユーリにぽかぽかと殴りかかろうとしたが、軽くかわされ、何故かベッドに引きずりこまれた。
「今は嫌いでいい…けど…いつかは…」
「お、お前のことなんて好きになんか…!!!」
「へいへい」
ベッドで暴れたせいかポニーテールにしていた髪が乱れていたので、
リボンをほどき毛先にキスを落としていると部屋のドアを叩く音がした。
ユーリが軽く返事をするとドアが開きそこには短髪で赤い髪をした見たことのない青年が立っていた。
「ユーリ、言われていた制服クリーニングが終わったから持ってきた…」
「おぉ、アスベルか…悪い助かった」
アスベルと呼ばれた青年からルークの制服を受け取ろうとしたが、
何故かアスベルが固まっていて制服を受け取ることができなかった。
不思議に思いアスベルが固まっている方向に振り向き、やっと理解ができた。
アスベルの視線の先に居たのは髪と服が少し乱れているルーク…
未遂には終わったが、行為のあとなどとアスベルは勘違いしているのだと思った。
「アスベル…何か間違えるようだけどな…」
「ゆ、ユーリ…君は…」
「ん?」
「男性寮に女性を連れ込んだりするとは…なんて破廉恥はことをしているんだ!!!!!!!!」
「誰が女だ誰があああああああああああああああああ!!!!」
ユーリはどこから説明すればいいか頭を悩ませた。
~アシュルク~
ユーリ特性のケーキをお土産にもらいルークは嬉しそうに自宅へと帰ってきた。
自宅の門の壁をみると、朝にガイを埋め込んだ壁の跡がまだ残っている…
明日ガイに謝ろうと思い自宅のドアを開けると、そこにはアッシュが待っていた。
「あ、アッシュ…そのただいま…あのさ、今朝はごめん…俺ひどいこと言って…心配してくれたのに…」
「いや、俺も言いすぎた…すまない…」
めずらしくアッシュが素直に謝ってきたのに驚きを隠せなかったが、
そんなアッシュが嬉しくて無意識に笑顔になった。
「あ、これお土産のケーキ!!ユーリが作ったケーキですっごく美味しい…」
「おい、屑…」
「え?何?」
腕を引っ張られアッシュの胸の中へ引きずり込まれた。
「目が少し赤くなって腫れてる…泣いたようだが…あの馬鹿王子に何かされたのか?」
流石アッシュ…よくルークのことを見ている。
しかし、本当のことをいうとユーリとアッシュの全面戦争が始まってしまうかもしれないので
本当のことなど言えなかった。
「え?あ…さっき目にゴミが入って…それで…」
自分が嘘を付くのは下手なことは知っている。
特にこの片割れには今まで嘘など通じたことなど一度もなかった。
アッシュの次の言葉にどきどきしながら待っていると、アッシュは小さいため息をついた。
「はぁ…お前がそういうのなら…それでいい…さっさと着替えてこい…紅茶入れて待っててやるから」
「いや、紅茶は今日はもう…」
「何か言ったか?」
紅茶のおかげで散々な目にあったのでできれば遠慮したかったが、
アッシュへの拒否権などルークに存在はしなかった。
「いいえ…じゃぁ着替えてくる」
アッシュにお土産のケーキを渡し、二階にある自分の部屋へと駆け足で走っていった。
ケーキを受け取ったアッシュだったが、ユーリ特性というだけで
今はこのケーキを叩きつぶしたくなったが、そんなことをするとルークに泣かれてしまうのが目に見えていた。
「ったく…ただでさえ敵が多いのに…無駄に敵増やしやがって…やっぱり行かせるんじゃなかったな…」
ルークのことが心配で待っている時間が長く感じられたが、
これから先とてもやっかいな強敵が現れたと思うと気分が重くなってしまった…。
とりあえず今はこれから始まる二人だけのティータイムを楽しもうと思った。
とある中庭で少女が一人ティータイムを楽しんでいた。
その少女の髪はピンク色をしており、毛先まで綺麗に揃えられており品の良さが伺える。
そんなティータイムを楽しんでいる少女のそばに一人の青年が近づき声をかけた。
声をかけられた少女は青年の顔を見ると、優しく微笑んだ。
「こんにちわ、ユーリ。何か御用です?」
「あぁ…ちょっとエステルに頼みがあってな。」
ユーリと呼ばれた青年は何かを企んでいるような笑顔をエステルに見せた。
「ふふっ…ユーリ、悪戯はほどほどにしてくださいね。どんな頼みです?」
あまりよろしくない事を考えているのを分かっているにも関わらず
自分の頼みを聞き入れてくれるエステルの心の広さには毎回感動を覚えてしまうユーリだ。
いや、エステル自身が少し楽しみにしているだけなのかもしれないが…
「確か今度の日曜日に、アビス学園高等部の生徒会長とお茶会の予定だったよな?」
「はい。我が学園でお茶会の予定ですが…それが?」
「実はそのお茶会に是非呼んで欲しいやつがいるんだ。」
「?」
車の窓から見えるのは豪華に装飾さえた大きな門。
そしてその左右に何処まででも続くまっ白い壁。
自分が通う学校の広さにも入学当初は驚いてしまったが、
ここの広さは桁が違っていた…むしろ同じ国なのかと聞きたくなるほどだ。
「まぁ、ルークったら。そんな大きな口をあけて、みっともないですわよ」
校門の大きさに感動して口が開きっぱなしになっていたルークを、
幼馴染であるナタリアが優しく注意をする。
ルークは慌てて開いたままの口を閉じると照れた表情でナタリアに話しかけた。
「だって、すっげーでかい校門に驚いちまって…アッシュも来たらよかったのに…」
「仕方ありませんわ。アッシュは招待されてませんもの…」
ナタリアが鞄から取り出したのは二枚の招待状。
一枚はアビス学園高等部生徒会長であるナタリアへ届いたモノ。
そして、もう一枚はルークに届いた招待状だった。
「アッシュがいくら付いて行くと言い張っても、この招待状がなければセイント・ヴェスペリア学園には入れませんわ」
古くからアビス学園とセイント・ヴェスペリア学園は交流は良く、
生徒同士のお茶会なども毎年数多く実施されていた。
そして今日は前々からセイント・ヴェスペリア学園の生徒会長と
アビス学園の生徒会長とのお茶会の約束だったが、何故か急にセイント・ヴェスペリア学園側から
生徒会ではないルークも招待されてしまった。
「何で俺まで招待されたんだろうなぁ…?アッシュは不信感丸出しで行くなって言うし…」
生徒会のメンバーだから一緒に招待されるのならまだわかる。
けど、ルークは生徒会メンバーではない…ましてや向こうの生徒会長とも面識など一切なかった。
ルークに招待状が届いてからずっとアッシュが機嫌を悪くしている。
挙句の果てには何故か行くなと言いだしてしまったからルークも困り果てていたが、
幼馴染であるナタリアがアッシュを説得し、なんとか今日お茶会に出席できるようになった。
出かける際もそれが原因で喧嘩をしてしまった…帰ったら謝ろうと思いながら
セイント・ヴェスペリア学園内の景色を見ていた。
「先日の剣道部の試合のお話を詳しく伺いたいみたいですわ。
セイント・ヴェスペリア学園の生徒会長であるエステルさんにはルークとアッシュの話は
何度かしておりましたから」
「ふーん…」
先日の助っ人で駆り出された剣道の試合…
自分の平凡な学生生活が終わってしまった試合でもある。
あいつに出会わなかったら自分は変な通称で呼ばれることはなかったのに…
そう思いながら黒髪の王子の姿を思い浮かべる。
「けど、ルーク。その髪型とてもお似合いですわよ。普段からそうなさったらいかが?」
普段は腰くらいまである髪も特に手を加えず下ろしたままだったが、
今日は招待されているとのことでナタリアに無理やりポニーテールにされてしまった。
「そうか…?俺この髪型好きじゃないなぁ…括るのに慣れてないから痛いし…それに…」
今日出かける前に見送りにきたガイの言葉を思い出した。
ポニーテールにしているのを指摘され、カッコイイなとか言ってくれると思っていた…
が、ガイからでた言葉は全く違っていた。
『その髪型にしてると、どっかのボー○ロイドみたいだな』
『なっ…は、腹切れきさまあああああああああああっ!!!!』
予想外の言葉だった為、怒りにまかせて回し蹴りでガイを壁の中へ埋め込んでしまった。
朝から無駄な体力を使ってしまったと心から思っている。
そうこうしているうちに車が止まった。
どうやら目的地についたようで車を降りると、
校舎の中からピンク色をした髪の少女が笑顔で出迎えた。
「ようこそいらっしゃいました。あなたがルークさんですね?」
「あ、はい…えっと。この度はご、ご招待いただきまして誠にありがとう…ございます。
おれ…じゃない、私はルーク・フォン・ファブレと申します。ルークとおよびください…」
慣れない丁寧な言葉を使っていると、迎えてくれた少女はにこりと笑った。
「ご丁寧にありがとうございます。私はセイント・ヴェスペリア学園生徒会長をしています
エステリーゼ・シデス・ヒュラッセインです。みんなからはエステルと呼ばれています
どうぞ、話しやすい言葉でお話ください。」
「あ、ありがとう…その…えっと…エステル?」
エステルと呼ばれた少女はルークに微笑むと、お茶会の会場まで案内をしてくれた。
ナタリアとエステルはすでに何度か会っているので、お茶会の会場まで二人で何やら会話をしている。
取り残されてしまったルークは校舎の廊下をきょろきょろと見まわし
ある人物を探していたが、その人物はどこにも見つからなかった。
(まぁ、俺が来ること言ってないし…しょうがないか)
案内されたお茶会の会場は中庭が見渡せるテラスのようなところで、自分達以外は誰もいなかった。
用意されていた椅子に座っていると、カラカラと台車の音が聞こえてきて誰かが運んできてくれた。
ここの学園の制服を着ているので、多分生徒会のメンバーの誰かなのだろう…
その青年はルークの目の前に美味しそうなケーキを一つだした…もちろん、一緒に出された紅茶もいい香りがしている。
「うわっ…すっげー美味そうなケーキ…」
「ルーク…お行儀が悪いですわよ」
「だ、だって…」
育ち盛りなルークは紅茶より、お腹にたまるケーキの方に興味がいってしまう。
「うふふ…どうぞ遠慮なく食べてください。他にも種類がありますからね」
「じゃぁ、お言葉に甘えて…頂きます」
一番最初に出されたのはシンプルなショートケーキだったが、
食べてみると普通のショートケーキのはずなのにとても美味しかった。
今まで食べたショートケーキの中で一番美味しい。
「うわっ…このショートケーキめちゃくちゃ美味しい…生クリームもすっげーバランスよく甘くておいしい…」
幸せそうな顔をして食べるルークの姿を見てエステルは少し笑ってしまった。
「ルークに喜んでいただけて作った彼も喜んでいるみたいです。ところでルーク…ユーリとの対戦どうでした?」
「ふぇ?」
いきなりの話題にルークは間抜けた声を出してしまった。
ナタリアに睨まれてしまったが、出てしまったものはしょうがない…はずだ。
「どうって…あいつすっごく強いってのがわかった…アッシュが対戦しても…勝率五分五分じゃないかな?
俺が勝てたのは本当に奇跡に近いよ…まぁ、勝ってしまったおかげであんな変な通称つけられちゃったけどな…」
「『紅き鎧の姫』です?よく似合っていると思うんですが…ユーリも自分が王子と呼ばれることに不満はある見たいです。」
先ほどケーキと紅茶を運んでくれた青年が少なくなったエステルのカップに新しい紅茶を入れる。
エステルが小さくお礼を言うとルークにまた頬笑みかけた。
「俺は男だから姫じゃねぇのに…まぁ、あいつが王子って呼ばれるのは…俺は似合ってると思うけどな
カッコイイし…背も高いし…強くて優しいし…女子とかにすっげー人気ありそう…男の俺からみてそう思うから
やっぱりカッコイイんだと思う…あ、この話ユーリには内緒な」
こんな話ユーリに聞かれたら恥ずかしくて死んでしまいそうになる。
多分ユーリのことだからこの話を聞けばいろいろとめんどうなことになるのも分かっていた…
知り合ってまだ日は浅いはずなのに、何故ここまでわかるようになったかが不思議だ。
「ふふ…わかりました。私は彼にはお話しません…けど、私が話しなくても彼は知ってしまっていますよ」
「え????」
エステルの言っている意味が理解できないルークであったが、すぐにその意味を理解できた。
「へー…愛しい俺のお姫様にそんな風に思われてたとか…感激だな」
ケーキと紅茶を持ってきた青年の声には聞き覚えがあった…
おそるおそる青年の顔を見ると青年の顔は先日試合をした人物であった。
「な、ななななななっ…ユーリいいいいいいいいいいぃ!!!!!!!!!!!!!!」
「ようやく気がついたか…気がつくの遅いんだよ。まぁそのおかげでいいモノ聞けたけどな」
顔を真っ赤にさせたルークが立ちあがって反論をしようとしたとき、
膝がテーブルに当たってしまい自分の紅茶が自分の制服にかかってしまった。
「あちっ…あ、ご、ごめん…俺…」
「おいおい、大丈夫か?そんな照れなくても…」
少し呆れた声でルークの制服についた紅茶をユーリが拭こうとしたが、
ルークが恥ずかしがって拭かせてくれなかった。
「いいよ、家帰って洗濯すれb…」
「ダメですわ。今すぐ着替えないとシミになりますわよ」
「いや、でも…」
ここは自分の通う学校ではない。
自分の教室に行けばジャージなどに着替えることができるが、あいにく他校に着替えを持ってくる
ような性格ではない。むしろ普通は持ってこないが…
「じゃぁ、今すぐ洗濯すればいいんです。洗濯している間はユーリの服を借りればいいんです」
「そいつは名案だな…よし、まぁ行くか」
「え?ちょ、何するんだえぇえええええええええ!!!??」
そういうとユーリはルークを抱きかかえると素早い動きでお茶会の会場を後にした。
「こういうのって誘拐っていわないか?」
「本人の同意があればいわねぇよ」
「俺は同意してねぇ!!!!」
「そうだったか?」
ルークが連れてこられたのは学園内になる寮の一室。
表の表札にはユーリの名前だけがあったのでユーリの使用している部屋ということがわかる。
連れて来られてすぐにベッドに放りだされ、ユーリに服を脱がされかけたが
さすがのルークも身の危険を感じユーリの隙を見て備え付けられているシャワールームに逃げて汚れた制服を脱いだ。
汚れた制服はすぐさま学園内にあるクリーニング屋に出されて、すぐ出来上がるとのことだった…
次元がいろいろと違いすぎる学園である。
流石に下着一枚でいるのは嫌だったので、大人しくユーリの服を借りたが…
少し大きくて何故か不愉快な気持ちになってしまった。
「うぅ…やっぱり少しでかい…いいよ。いつか追いぬいてやるから」
「無駄なあがきはやめとけ。それより火傷とかはしてないか?」
よくよく考えてみれば、紅茶が身体にかかったのだから軽い火傷などしてても可笑しくはないが
先ほど制服を脱いだ時そのような怪我はなかったので多分大丈夫だろう…
「えっと…大丈夫だよ。…多分」
「多分…?信用できないな」
「へ?ちょ…!!!!」
腕を引っ張られいきなりベッドの上に転がされ上に乗られた。
抵抗しようにも手は頭の上でしっかりと握って固定され、足を動かそうにも自分の上に乗っているユーリの足が邪魔で
思うように動かすことができない。俗にいう絶対ピンチというやつだ。
「おい、ユーリ!!!何しやがる!!!」
「俺が隅々まで確認してやるよ…愛しい俺のお姫さま…」
「いらない…って!!!やめっ…!!!」
ルークが何か言いかけたが、ユーリはそれを無視してルークの耳にキスを落とし
そして頬、首筋…最後に唇にキスを落とそうとしてルークの異変に気がついた。
「っひく…いやだぁ…たすけて…あ…あっしゅ…あっしゅぅ…」
ルークが泣いていた。
涙を流すルークの姿をみてユーリの心は重くなっていった。
出会ったばかりであったが、この純粋な青年といると心が温まった。
自分の物にしてもっと彼を知りたい…という感情が芽生えた
そして、まずは彼の身体を自分の物にしたらいい…心なんてあとから付いて来させればいいと思っていた。
けど、彼の涙を見て心が冷たくなっていく…彼と居るだけで温かくなれると思っていたのに…
それだけではない、今ここで彼の身体を自分の物にしても心は付いてこないことがわかった。
彼の心の中には同じ姿をした弟が今一番占領している…
自分の物にするのならやはり身も心も自分の物にしたい…そう感じた。
ユーリはルークの唇にキスを落としかけていたが、
いつまでも止まることのないルークの涙にキスをした。
「馬鹿…泣くな…お前に泣かれると困るんだよ…」
「え?」
ルークの腕を抑えていた手を離し、ベッドに寝転んでいたルークの身体を起こし優しく抱きしめた。
「ユーリ…?」
「悪かった…お前があまりにも可愛いから…つい意地悪したくなった…ごめんな」
ルークは恥ずかしそうにユーリの胸へ顔をうずめた。
その様子に少し満足そうな顔をしてユーリはルークの頭を優しくなでた。
「ユーリの馬鹿…」
「仕方ないだろ?俺の作ったケーキをべた惚れするし、俺のこともほめるし…嬉しすぎるっての」
「え?あれユーリが作ったのか?」
「あぁ…何ならまだあるから持って帰るか?」
「まじ?ありがとうユーリ!!!」
さっきまで犯されそうになった相手なのに警戒心もなくルークはユーリに抱きついた。
単純なやつ…と思いながらも今はこの距離感が一番ベストだとユーリは思った。
「あ、一つ聞きたいことがあるんだが…」
「ん?何?」
ユーリから離れてにこにことユーリの質問を待った。
「お前とアッシュってどこまでの関係だ?」
笑顔だったルークの表情が変わった…
その表情でユーリはルークとアッシュとの関係がすぐに理解できたが
あえてルークの言葉を待った。
「アッシュとの関係…?そんなの双子の弟以外ないけど?」
ルークの変った表情はユーリの質問に理解ができていません。という表情だった。
普通の人なら嘘をついているかもしれないが、嘘を付くのが苦手なルークが
こんな表情をして言うのだから多分兄弟以上の関係はない。
一つ屋根の下で暮らしているのだからチャンスなどいくらでもあっただろうに…
関係がないということは、アッシュはそんな関係に興味がないのかただの奥手なのだろうか…
アッシュのルークに対する普段の態度などを考慮すると多分後者だと結論がでた。
「いや、ないのならいいんだ…あぁ…そうだ、お前に言っておきたいことがある」
「ん?何だ?」
ユーリの口元がにやりと笑い
その表情に少し嫌な予感がするルークだった…
「俺は近いうちにお前のこと惚れさせるから覚悟しておけよ」
最初は理解できていなかったルークだが、意味がわかったとたん顔を真っ赤にさせた。
「なななな、何言ってるんだ!!!変態ユーリ!!!」
「ん?言葉のままだが?愛してるぜ…愛しい俺のお姫様…いや、ルーク…」
ユーリがルークの唇にキスをするとルークの顔はますます赤くなった。
「な、何するんだよ!!!俺初めてなのに!!!俺のファーストキス返せ!!!!」
「何だ、初めてだったのか…だったらいいもん貰ったな」
「ユーリの馬鹿!!お前なんか大嫌いだああああああああ!!!!」
ユーリにぽかぽかと殴りかかろうとしたが、軽くかわされ、何故かベッドに引きずりこまれた。
「今は嫌いでいい…けど…いつかは…」
「お、お前のことなんて好きになんか…!!!」
「へいへい」
ベッドで暴れたせいかポニーテールにしていた髪が乱れていたので、
リボンをほどき毛先にキスを落としていると部屋のドアを叩く音がした。
ユーリが軽く返事をするとドアが開きそこには短髪で赤い髪をした見たことのない青年が立っていた。
「ユーリ、言われていた制服クリーニングが終わったから持ってきた…」
「おぉ、アスベルか…悪い助かった」
アスベルと呼ばれた青年からルークの制服を受け取ろうとしたが、
何故かアスベルが固まっていて制服を受け取ることができなかった。
不思議に思いアスベルが固まっている方向に振り向き、やっと理解ができた。
アスベルの視線の先に居たのは髪と服が少し乱れているルーク…
未遂には終わったが、行為のあとなどとアスベルは勘違いしているのだと思った。
「アスベル…何か間違えるようだけどな…」
「ゆ、ユーリ…君は…」
「ん?」
「男性寮に女性を連れ込んだりするとは…なんて破廉恥はことをしているんだ!!!!!!!!」
「誰が女だ誰があああああああああああああああああ!!!!」
ユーリはどこから説明すればいいか頭を悩ませた。
~アシュルク~
ユーリ特性のケーキをお土産にもらいルークは嬉しそうに自宅へと帰ってきた。
自宅の門の壁をみると、朝にガイを埋め込んだ壁の跡がまだ残っている…
明日ガイに謝ろうと思い自宅のドアを開けると、そこにはアッシュが待っていた。
「あ、アッシュ…そのただいま…あのさ、今朝はごめん…俺ひどいこと言って…心配してくれたのに…」
「いや、俺も言いすぎた…すまない…」
めずらしくアッシュが素直に謝ってきたのに驚きを隠せなかったが、
そんなアッシュが嬉しくて無意識に笑顔になった。
「あ、これお土産のケーキ!!ユーリが作ったケーキですっごく美味しい…」
「おい、屑…」
「え?何?」
腕を引っ張られアッシュの胸の中へ引きずり込まれた。
「目が少し赤くなって腫れてる…泣いたようだが…あの馬鹿王子に何かされたのか?」
流石アッシュ…よくルークのことを見ている。
しかし、本当のことをいうとユーリとアッシュの全面戦争が始まってしまうかもしれないので
本当のことなど言えなかった。
「え?あ…さっき目にゴミが入って…それで…」
自分が嘘を付くのは下手なことは知っている。
特にこの片割れには今まで嘘など通じたことなど一度もなかった。
アッシュの次の言葉にどきどきしながら待っていると、アッシュは小さいため息をついた。
「はぁ…お前がそういうのなら…それでいい…さっさと着替えてこい…紅茶入れて待っててやるから」
「いや、紅茶は今日はもう…」
「何か言ったか?」
紅茶のおかげで散々な目にあったのでできれば遠慮したかったが、
アッシュへの拒否権などルークに存在はしなかった。
「いいえ…じゃぁ着替えてくる」
アッシュにお土産のケーキを渡し、二階にある自分の部屋へと駆け足で走っていった。
ケーキを受け取ったアッシュだったが、ユーリ特性というだけで
今はこのケーキを叩きつぶしたくなったが、そんなことをするとルークに泣かれてしまうのが目に見えていた。
「ったく…ただでさえ敵が多いのに…無駄に敵増やしやがって…やっぱり行かせるんじゃなかったな…」
ルークのことが心配で待っている時間が長く感じられたが、
これから先とてもやっかいな強敵が現れたと思うと気分が重くなってしまった…。
とりあえず今はこれから始まる二人だけのティータイムを楽しもうと思った。
オリジナル登場人物
アレン(ディセンダー)♂
長髪で銀色の髪をしている。瞳は蒼。
身長は154cmでもっと伸びたいと願っている。
ギルドの仕事のほとんどをルークかカノンノどちらかがPTにいる為
この二人の性格などの影響を受けている。
基本何を考えているかは不明…だって0歳児だもん☆ミ(マテ
チャームポイントは頭のてっぺんにある何故か直らない寝ぐせ。
気分によってしおれたり、踊ったりします
アレン(ディセンダー)♂
長髪で銀色の髪をしている。瞳は蒼。
身長は154cmでもっと伸びたいと願っている。
ギルドの仕事のほとんどをルークかカノンノどちらかがPTにいる為
この二人の性格などの影響を受けている。
基本何を考えているかは不明…だって0歳児だもん☆ミ(マテ
チャームポイントは頭のてっぺんにある何故か直らない寝ぐせ。
気分によってしおれたり、踊ったりします
