旭屋本舗
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朝…天気は快晴で雲ひとつない綺麗な空だったが、
窓から眺める町並みはどこか暗い表情を浮かべていた。
そんな町並みを背にルークは洗ったばかりの髪をタオルで乱暴に
拭きながら衣装箱を真剣な目で見つめる。
それが数分続くと深く深呼吸をし、衣装箱の蓋を開けた。
中には新品の鎧などが入っており、まだ一度も袖を通したことがないことがわかる。
ルークはその鎧を手に取ると小さく笑った。
真実ノ唄【TFS08】
フレンとユーリはナイレンの部屋で作業をしていた。
それは楽しい作業ではない、人が一人入るくらいの大きな箱に
ナイレンの今まで使っていた物を詰めていく作業なのだから。
服、愛用品そして写真などを詰めると重々しい蓋を閉じ上には
古城でフレンが預かった愛用の剣を置いた。
ユーリは前にナイレンと話をした時にフレンの父親のことを
ナイレンが尊敬していたことを箱の前で伝えたが、フレンから何も答えが帰ってこなかった。
二人で箱の前で色々な感情をめぐらしていると部屋のドアが開く音がした。
振り返り入ってきた人物を確認するとそこにはアレクセイの部下であるグラダナだった。
帝都からやっと応援が来たのだろうが…すでに遅かった。
そしてグラダナから出た言葉にユーリは耳を疑う。
「ふん…アレクセイ閣下からあずかった隊に手傷を負わせよって…ヒーローにでもなったつもりか?」
ネチネチとユーリとフレンの感情を逆なでる言葉が続き、
フレンはグラダナを睨みつけるが新人騎士の睨みで怯むような人間ではない。
しかし、ユーリは違っていた。
グラダナの前へ立つと力を込めて殴り飛ばした。
「ふがっ!!!き、きさま何をする!!」
「ゆ、ユーリ!!!」
「うるせぇ!!ごちゃごちゃと!!そんな言葉がよく平気で言えるよな!!」
そのままにしておくとまだ数発殴りそうな勢いであるユーリの身体をフレンが必死に抑えつける。
フレンに抑えつけられて動きが取れないユーリを恨みを込めて睨みつけるグラダナ…
こんな屈辱を受けるのは初めてに近かった。
「し、新人騎士が風情が…この私にこのようなことをしたら…」
「何かあったのですか?」
グラダナの後から入ってきたのはユルギスと力のある男性隊員数名だった。
グラダナはユルギスに無言で殴られたことを表すが、
ユルギスは何も言わず箱の前へと行き運び出す準備を始めた。
その態度に怒りを覚えたグラダナは顔を真っ赤にして怒鳴り始める。
「何なんだこの隊は!!命令違反に上司にこの態度…隊長の居なくなったこの隊なんて解散だ!!
お前らの処分心待ちにしたらいい…この私が直々に閣下にっ…」
「隊は解散させない…つーか閣下に無いこと吹き込むつもりじゃねーだろうな?このブタ糞が…」
「ブタ糞だ……と……お、お前はっ!!!!!!」
聞いたことのある声にユーリが振り返ると目を見開き驚いた。
入口に立っていたのは見事な赤毛…いや朱毛。
その長く風に揺れる朱毛はまるで太陽を思い出させるような温かさ…
煌めく碧の瞳はまっすぐに未来を見つめ希望の光が輝きを放つ。
そして赤を主とした隊長クラスの制服…福与かな胸と細い腰が強調され、
ミニスカートから見える太ももはその素晴らしい身体を表している。
ユーリ達はしばらく声を発することができなかった…その姿は女性であることを誰もが理解させる。
が、その顔は数日前に研修としてナイレン隊に来た人物…自分達の仲間の顔だ。
震える声でユーリがその人物に確認するように問いかけた。
「る…ルーク…だよな?」
「そうだよ…何?俺の名前忘れたのか?ルーク・フォン・ファブレ…まぁファブレは実家の名前で
騎士団に登録してる名前はルーク・フェドロックだけどな。」
聞き覚えのある名字に我に帰ったフレンは震えながらルークを見つめる。
「る、ルーク・フェドロックって…隊長の娘さんで…あの『聖なる焔』の…?」
「……別にそんな大層なあだ名付けられるようなことしてねーんだけど。」
照れるように笑うその顔はまだ幼さが出ているが、空気は違っている…少なくともそこで腰を抜かしている
グラダナよりは強い空気、そしてナイレン隊長に近い空気だ。
そしてユーリがみんなが疑問に思っているが質問できなかったことを問いかけた。
「お、お前髪は?赤茶色だっただろ?」
「ん?悪の譜術師印の毛染めばーい茶色。ほんとは茶髪になるはずだったんだけど…俺の赤が強すぎて
綺麗な茶色にならなかったんだよな…ちなみに石鹸で簡単に落とせます。」
「じゃぁ目は?」
「同じく悪の譜術師印のカラーコンタクト。一日使い捨てばーじょん」
「胸は!?」
「何でそこ強調して聞くんだ?……サラシ巻いてて…すげー動きにくかった…男性の服しか余ってなかったし…」
あの戦い方で動きにくかったのか…
そこにいたルークの戦い方を見たことのあるメンバーは一同に呟いた。
本気の彼女を見てみたい気もするが、いろいろ壊して始末書が増えそうなので遠慮をした。
「ほら、さっさと運ぶぞ。みんなが待ってるからな…」
つまらない話で時間が掛かってしまい予定より時間がオーバーしていた。
ユーリ達は箱を持ち上げると部屋から運び出そうとしたが、さっきまで腰を抜かしていたグラダナがやっと動きだした。
「お、お前は休暇中のはずだろ!!何故ここにいるんだ!?」
「あ?休暇を使って父上のところに遊びに来たんだよ…隊長就任の報告も兼ねて。閣下から許可もらってるぞ?
あー…わりー…俺が申請書書くのめんどーだからって…内密にしてたんだ。」
その雑というかめんどくさがり屋なところは父親であるナイレンにそっくりだ。
ユルギスはその性格のせいで散々な目に会ったことを思い出す。
胃がきりきりとし出したのは気のせいだろう…気のせいだと信じたい。
「た、隊を解散させないとはどういうことだ!!隊長が居なくなった今この隊の解散は決定事項…
むしろブタ糞って何だブタ糞って!!!」
「閣下に金魚のフ糞見たいにひっつきまわってるから丁度いいだろ?隊長が居ないのなら…俺が隊長になればいい。
俺のまだ配属先は決まってねーし同じフェドロックだしいいんじゃね?」
「そんないい加減なことで就任先を決めるなぁ!!!」
そんな単純な理由で隊長を務めていいのか?と一同は思ったがどうみても遊ばれているグラダナが面白く
しばらく様子を見ることにした。…もともと助ける気などなかったが。
「大体閣下がそんなこと御許しになるはず………」
ルークがグラダナの前に突き出したのは一枚の紙…
それは人事異動命令書でルークの物だ。
「父上の騒動のあとすぐに閣下に願い出てな…お前が持ってきた書類の中に入っていたぜ…
俺のシゾンタニア就任の命令書がな…」
「な、なんだとおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
「あいつ何時の間に…」
あの夜はルークとユーリは一緒に犬小屋で寝た。
そのあともほとんどを一緒に過ごしていたが書類を送る姿を見ていない…
となるとユーリが見ていない時間…古城から戻ってきて本当にすぐに手紙を出したことになる。
侮れない…
「これでこの隊は俺のものだ…文句ねーよな?」
「こ、この…鮮血の分際で…」
「てめぇ…殴られたりねぇようだな…」
「……………ユーリ止めろ。」
ユーリは知っているルークがその二つ名を嫌っていることを…
今までこのような言われ方をしていたのだろう…その優しい心を傷つけながら耐えてきたのだ。
「俺は閣下のお気に入りだからな…閣下にお前の無いこと無いこと吹き込めば…どうなるかなー♪」
「なっ……」
「おいおい…無いこと無いことって…」
ルークがアレクセイ閣下のお気に入りというのは今までの話を見れば一目瞭然。
この場にいるメンバー全員が解りきっていた。
「お前の言う言葉と俺の言う言葉…閣下はどっちを信じるかな?」
ニヤリと笑うその姿…背後から黒いオーラが見えるのは気のせいだ、
気のせいだと信じたい…。
ルークのオーラに気負けしたグラダナは震えあがり言葉を発することすら忘れてしまっていた。
「ほら、さっさと運べ…みんな待ってるんだからな」
ルークはそう言うと長い髪を棚引かせて部屋を出て行った。
残されたユーリ達はショックのあまりその場で数分動けなかったが、
我に帰り箱を運ぼうとしたが、フレンが床に何かが落ちていることに気が付きそれを拾いあげた。
「フレン?何だそれ…?魔導器か?」
「あぁ…そうみたいだ…けど隊長はこんな魔導器使ってなかったし…
この魔導器古城にあったのと似ている気がする…」
フレンが広いあげた魔導器はひし形の形をしており特殊な魔導器だった。
その為使っている人間は限られている。
フレンは古城での最後の部屋で床にあった魔導器と今拾い上げた魔導器が似ていたことに
疑問を持ったがユルギスに呼ばれ拾った魔導器をポケットの中へと直した。
騎士団の外へ出ると街の人々がナイレンへの別れの為に集まっていた。
いきなり現れたルーク・フェドロックにみな驚きの表情を隠せなかったが、
快く受け入れてくれた。特に双子の姉妹は憧れのお姉さまに出会え飛び跳ねて喜んでいた。
ナイレンとの別れの為にみなが箱の中へ花を詰める。
その花の数はナイレンと街の人々の信頼の証…ナイレンが残した大切なものだ。
「フレン…死んだら何も残らないなんて…本当にそう思えるか?」
「……………。」
「少なくとも父上は残して行ったな…俺達全員の心にな…」
フレンは何も答えなかった。
自分の中で迷いがまだあるのだろう…それを見たルークは小さく笑い出発する馬車を見送る為
馬車の傍へと近寄りそして心を込めて別れの唄を歌った。
『トゥエ レイ ズェ クロア リョ トゥエ ズェ
クロア リョ ズェ トゥエ リョ レイ ネゥ リョ ズェ
ヴァ レイ ズェ トゥエ ネゥ トゥエ リョ トゥエ クロア
リョ レイ クロア リョ ズェ レイ ヴァ ズェ レイ
ヴァ ネゥ ヴァ レイ ヴァ ネゥ ヴァ ズェ レイ
クロア リョ クロア ネゥ トゥエ レイ クロア リョ ズェ レイ ヴァ
レイ ヴァ ネゥ クロア トゥエ レイ レイ…』
その唄は街の人々そして騎士団の人々の心を癒す綺麗な唄声だった。
ユーリはその歌声に耳を澄ませて聞き入る…
何度聞いても心が温かくなるその歌声…
名前も知らないその唄はこの世界でルークだけが歌える唄なのだと実感した。
唄に聞き入るユーリを横目でフレンが笑って見ていたが、
ふとある人物と目が合った。
そしてその人物が持っている魔導器に目が止まり、フレンは絶句した。
この瞬間今まで点と点が線で結ばれすべての謎が解明された。
フレンは震えた…真実をしって身体の震えが止まらない。
それに気がついたユーリは心配そうに声をかける。
「フレン…?どうした?」
「ユーリ…まだ終わっていない…」
「なんだって…」
ユーリとフレンはルークの歌う唄声を背にその場を誰にも気がつかれないように抜けだした。
窓から眺める町並みはどこか暗い表情を浮かべていた。
そんな町並みを背にルークは洗ったばかりの髪をタオルで乱暴に
拭きながら衣装箱を真剣な目で見つめる。
それが数分続くと深く深呼吸をし、衣装箱の蓋を開けた。
中には新品の鎧などが入っており、まだ一度も袖を通したことがないことがわかる。
ルークはその鎧を手に取ると小さく笑った。
真実ノ唄【TFS08】
フレンとユーリはナイレンの部屋で作業をしていた。
それは楽しい作業ではない、人が一人入るくらいの大きな箱に
ナイレンの今まで使っていた物を詰めていく作業なのだから。
服、愛用品そして写真などを詰めると重々しい蓋を閉じ上には
古城でフレンが預かった愛用の剣を置いた。
ユーリは前にナイレンと話をした時にフレンの父親のことを
ナイレンが尊敬していたことを箱の前で伝えたが、フレンから何も答えが帰ってこなかった。
二人で箱の前で色々な感情をめぐらしていると部屋のドアが開く音がした。
振り返り入ってきた人物を確認するとそこにはアレクセイの部下であるグラダナだった。
帝都からやっと応援が来たのだろうが…すでに遅かった。
そしてグラダナから出た言葉にユーリは耳を疑う。
「ふん…アレクセイ閣下からあずかった隊に手傷を負わせよって…ヒーローにでもなったつもりか?」
ネチネチとユーリとフレンの感情を逆なでる言葉が続き、
フレンはグラダナを睨みつけるが新人騎士の睨みで怯むような人間ではない。
しかし、ユーリは違っていた。
グラダナの前へ立つと力を込めて殴り飛ばした。
「ふがっ!!!き、きさま何をする!!」
「ゆ、ユーリ!!!」
「うるせぇ!!ごちゃごちゃと!!そんな言葉がよく平気で言えるよな!!」
そのままにしておくとまだ数発殴りそうな勢いであるユーリの身体をフレンが必死に抑えつける。
フレンに抑えつけられて動きが取れないユーリを恨みを込めて睨みつけるグラダナ…
こんな屈辱を受けるのは初めてに近かった。
「し、新人騎士が風情が…この私にこのようなことをしたら…」
「何かあったのですか?」
グラダナの後から入ってきたのはユルギスと力のある男性隊員数名だった。
グラダナはユルギスに無言で殴られたことを表すが、
ユルギスは何も言わず箱の前へと行き運び出す準備を始めた。
その態度に怒りを覚えたグラダナは顔を真っ赤にして怒鳴り始める。
「何なんだこの隊は!!命令違反に上司にこの態度…隊長の居なくなったこの隊なんて解散だ!!
お前らの処分心待ちにしたらいい…この私が直々に閣下にっ…」
「隊は解散させない…つーか閣下に無いこと吹き込むつもりじゃねーだろうな?このブタ糞が…」
「ブタ糞だ……と……お、お前はっ!!!!!!」
聞いたことのある声にユーリが振り返ると目を見開き驚いた。
入口に立っていたのは見事な赤毛…いや朱毛。
その長く風に揺れる朱毛はまるで太陽を思い出させるような温かさ…
煌めく碧の瞳はまっすぐに未来を見つめ希望の光が輝きを放つ。
そして赤を主とした隊長クラスの制服…福与かな胸と細い腰が強調され、
ミニスカートから見える太ももはその素晴らしい身体を表している。
ユーリ達はしばらく声を発することができなかった…その姿は女性であることを誰もが理解させる。
が、その顔は数日前に研修としてナイレン隊に来た人物…自分達の仲間の顔だ。
震える声でユーリがその人物に確認するように問いかけた。
「る…ルーク…だよな?」
「そうだよ…何?俺の名前忘れたのか?ルーク・フォン・ファブレ…まぁファブレは実家の名前で
騎士団に登録してる名前はルーク・フェドロックだけどな。」
聞き覚えのある名字に我に帰ったフレンは震えながらルークを見つめる。
「る、ルーク・フェドロックって…隊長の娘さんで…あの『聖なる焔』の…?」
「……別にそんな大層なあだ名付けられるようなことしてねーんだけど。」
照れるように笑うその顔はまだ幼さが出ているが、空気は違っている…少なくともそこで腰を抜かしている
グラダナよりは強い空気、そしてナイレン隊長に近い空気だ。
そしてユーリがみんなが疑問に思っているが質問できなかったことを問いかけた。
「お、お前髪は?赤茶色だっただろ?」
「ん?悪の譜術師印の毛染めばーい茶色。ほんとは茶髪になるはずだったんだけど…俺の赤が強すぎて
綺麗な茶色にならなかったんだよな…ちなみに石鹸で簡単に落とせます。」
「じゃぁ目は?」
「同じく悪の譜術師印のカラーコンタクト。一日使い捨てばーじょん」
「胸は!?」
「何でそこ強調して聞くんだ?……サラシ巻いてて…すげー動きにくかった…男性の服しか余ってなかったし…」
あの戦い方で動きにくかったのか…
そこにいたルークの戦い方を見たことのあるメンバーは一同に呟いた。
本気の彼女を見てみたい気もするが、いろいろ壊して始末書が増えそうなので遠慮をした。
「ほら、さっさと運ぶぞ。みんなが待ってるからな…」
つまらない話で時間が掛かってしまい予定より時間がオーバーしていた。
ユーリ達は箱を持ち上げると部屋から運び出そうとしたが、さっきまで腰を抜かしていたグラダナがやっと動きだした。
「お、お前は休暇中のはずだろ!!何故ここにいるんだ!?」
「あ?休暇を使って父上のところに遊びに来たんだよ…隊長就任の報告も兼ねて。閣下から許可もらってるぞ?
あー…わりー…俺が申請書書くのめんどーだからって…内密にしてたんだ。」
その雑というかめんどくさがり屋なところは父親であるナイレンにそっくりだ。
ユルギスはその性格のせいで散々な目に会ったことを思い出す。
胃がきりきりとし出したのは気のせいだろう…気のせいだと信じたい。
「た、隊を解散させないとはどういうことだ!!隊長が居なくなった今この隊の解散は決定事項…
むしろブタ糞って何だブタ糞って!!!」
「閣下に金魚のフ糞見たいにひっつきまわってるから丁度いいだろ?隊長が居ないのなら…俺が隊長になればいい。
俺のまだ配属先は決まってねーし同じフェドロックだしいいんじゃね?」
「そんないい加減なことで就任先を決めるなぁ!!!」
そんな単純な理由で隊長を務めていいのか?と一同は思ったがどうみても遊ばれているグラダナが面白く
しばらく様子を見ることにした。…もともと助ける気などなかったが。
「大体閣下がそんなこと御許しになるはず………」
ルークがグラダナの前に突き出したのは一枚の紙…
それは人事異動命令書でルークの物だ。
「父上の騒動のあとすぐに閣下に願い出てな…お前が持ってきた書類の中に入っていたぜ…
俺のシゾンタニア就任の命令書がな…」
「な、なんだとおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
「あいつ何時の間に…」
あの夜はルークとユーリは一緒に犬小屋で寝た。
そのあともほとんどを一緒に過ごしていたが書類を送る姿を見ていない…
となるとユーリが見ていない時間…古城から戻ってきて本当にすぐに手紙を出したことになる。
侮れない…
「これでこの隊は俺のものだ…文句ねーよな?」
「こ、この…鮮血の分際で…」
「てめぇ…殴られたりねぇようだな…」
「……………ユーリ止めろ。」
ユーリは知っているルークがその二つ名を嫌っていることを…
今までこのような言われ方をしていたのだろう…その優しい心を傷つけながら耐えてきたのだ。
「俺は閣下のお気に入りだからな…閣下にお前の無いこと無いこと吹き込めば…どうなるかなー♪」
「なっ……」
「おいおい…無いこと無いことって…」
ルークがアレクセイ閣下のお気に入りというのは今までの話を見れば一目瞭然。
この場にいるメンバー全員が解りきっていた。
「お前の言う言葉と俺の言う言葉…閣下はどっちを信じるかな?」
ニヤリと笑うその姿…背後から黒いオーラが見えるのは気のせいだ、
気のせいだと信じたい…。
ルークのオーラに気負けしたグラダナは震えあがり言葉を発することすら忘れてしまっていた。
「ほら、さっさと運べ…みんな待ってるんだからな」
ルークはそう言うと長い髪を棚引かせて部屋を出て行った。
残されたユーリ達はショックのあまりその場で数分動けなかったが、
我に帰り箱を運ぼうとしたが、フレンが床に何かが落ちていることに気が付きそれを拾いあげた。
「フレン?何だそれ…?魔導器か?」
「あぁ…そうみたいだ…けど隊長はこんな魔導器使ってなかったし…
この魔導器古城にあったのと似ている気がする…」
フレンが広いあげた魔導器はひし形の形をしており特殊な魔導器だった。
その為使っている人間は限られている。
フレンは古城での最後の部屋で床にあった魔導器と今拾い上げた魔導器が似ていたことに
疑問を持ったがユルギスに呼ばれ拾った魔導器をポケットの中へと直した。
騎士団の外へ出ると街の人々がナイレンへの別れの為に集まっていた。
いきなり現れたルーク・フェドロックにみな驚きの表情を隠せなかったが、
快く受け入れてくれた。特に双子の姉妹は憧れのお姉さまに出会え飛び跳ねて喜んでいた。
ナイレンとの別れの為にみなが箱の中へ花を詰める。
その花の数はナイレンと街の人々の信頼の証…ナイレンが残した大切なものだ。
「フレン…死んだら何も残らないなんて…本当にそう思えるか?」
「……………。」
「少なくとも父上は残して行ったな…俺達全員の心にな…」
フレンは何も答えなかった。
自分の中で迷いがまだあるのだろう…それを見たルークは小さく笑い出発する馬車を見送る為
馬車の傍へと近寄りそして心を込めて別れの唄を歌った。
『トゥエ レイ ズェ クロア リョ トゥエ ズェ
クロア リョ ズェ トゥエ リョ レイ ネゥ リョ ズェ
ヴァ レイ ズェ トゥエ ネゥ トゥエ リョ トゥエ クロア
リョ レイ クロア リョ ズェ レイ ヴァ ズェ レイ
ヴァ ネゥ ヴァ レイ ヴァ ネゥ ヴァ ズェ レイ
クロア リョ クロア ネゥ トゥエ レイ クロア リョ ズェ レイ ヴァ
レイ ヴァ ネゥ クロア トゥエ レイ レイ…』
その唄は街の人々そして騎士団の人々の心を癒す綺麗な唄声だった。
ユーリはその歌声に耳を澄ませて聞き入る…
何度聞いても心が温かくなるその歌声…
名前も知らないその唄はこの世界でルークだけが歌える唄なのだと実感した。
唄に聞き入るユーリを横目でフレンが笑って見ていたが、
ふとある人物と目が合った。
そしてその人物が持っている魔導器に目が止まり、フレンは絶句した。
この瞬間今まで点と点が線で結ばれすべての謎が解明された。
フレンは震えた…真実をしって身体の震えが止まらない。
それに気がついたユーリは心配そうに声をかける。
「フレン…?どうした?」
「ユーリ…まだ終わっていない…」
「なんだって…」
ユーリとフレンはルークの歌う唄声を背にその場を誰にも気がつかれないように抜けだした。
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